美しくあるために   作:ゲボ

37 / 46
プレイヤー狩り

「お兄さん、ちょっといいですか?」

「え? あ、ああ、はい」

 カードショップから出てきた男の肩に手を乗せる。そのまま近くの林まで連れて行ってーー思いっきり殴った。

「カード出してよ」

 倒れ込んだ男が這いずりながらなんとか逃げようとする。逃げられるわけがないのに、鈍臭い奴だ。せめてスペルカードで逃げればいいものを……。

「ちょっと!」

 腹を蹴り上げると、ゴロンと表にひっくり返った。

「ひいっ!」

「バインダーは?」

「う"ぐ、ブ、ブック……」

「よしよし、ありがとう! 君名前は?」

「モ、モタリケ、です……」

「モタリケ君、バインダー見せてね」

 能力発動の為にぎゅっと抱きしめる。肉体と精神の鎮痛、両方をオン。これなら絶対に逃げる心配はない。

 そのまま彼のバインダーを漁ると、ランクは低いがいくつかの指定ポケットカードとーー同行(アカンパニー)交信(コンタクト)などの有用カードがいくつかあった。彼も離脱(リーブ)待ちのプレイヤーだろうか? そう思ってページをめくっていると、なんと普通に離脱(リーブ)があるじゃないか。

「あれ……モタリケ君ってここに住んでるの?」

「は、ハイ……! 妻がいて……優しくて可愛いんですよ」

「へ〜! いいね、結婚してるんだ」

 お手軽桃源郷(ユートピア)のおかげでいい感じに気分が良くなって、ペラペラ喋ってくれる。妻がいる……ねえ。この人はいい奴隷になりそうだ。

 私はコッソリポケットから携帯を取り出した。

「ねえ」

「……?」

 ちゅ。

 それと同時にパシャリと写真を撮る。口を離して、精神の鎮痛だけ解いてやった。

「あ……ぁ、ああ……!」

「バッチリちゅ〜してるの写っちゃってるね! 結婚してる男の人が他の女とキスだなんて……いいのかな? これ、奥さんが見ちゃったら……どう思うだろうね」

 モタリケ君がわなわなと震える。

「こればら撒かれたくなかったら……さ、協力してよ」

 

 

 しばらくプレイヤー狩りを続けて、並行して奴隷集めをしていた時。交信(コンタクト)がかかってきた。

「ゲンスルーだ。あいつらの爆弾が作動したよ。あと1時間前後で交渉だから、お前もシソの木前に来ておけ。それと……そっちはどうだ?」

「うん、私がここでプレイヤー狩りしてるって情報が流れて、カードショップには誰も寄り付かないよ。奴隷も5人ゲット! カード自体は大した収穫が得られなかったけど……あ、離脱(リーブ)が1枚手に入ったよ」

「そうか。そいつらはどうやって保管してる?」

「1人は写真使って脅してる。でも全員マサドラ付近で『プレイヤー狩りがいる』って伝える役割をしてもらってるよ。……もし私が交信(コンタクト)で連絡しても来なかったら殺すって条件でね。もちろん全員に磁力(マグネティックフォース)1枚配布してるから、安心安全!」

「ハハ……抜かりないな。じゃ、そろそろ切るぞ」

「うん。頑張ってね!」

 交信(コンタクト)が切れて、沈黙が訪れる。5年……私のクリアという目的なしにしても、彼らにはクリアして欲しい。だって一回仲間になっちゃったんだもん。30年ほど生きてきて、これほど本当に仲良くなれたって思った人達は初めてだ。

 ちなみに、私がプレイヤー狩りをしているのには理由がある。

 ゲンスルー達がハメ組を一斉爆破させれば、彼らが集めていたスペルカードは全て消滅ーーつまりカード化限度枚数に空きが出る。

 そこを突いてカードショップでカードを購入すれば、普段よりレアカードが入手しやすいという算段だ。それも、奴隷(モタリケ君達)にリスキーダイスを振らせることによって……。

 宝籤(ロトリー)が出たらそれでさらにカードを入手してもらえればいいし、クズカードは売っぱらって金にして、また買えばいい。もう外面を気にしなくていい私にとってはうってつけの作戦だ。

 狙いは堅牢(プリズン)……!

 指輪での取引は現実世界で行われるから、フリーポケットに入れる堅牢(プリズン)は取引できない。おそらくレアカードは何人かに分けて所持し、それぞれが堅牢(プリズン)でそのページを守っているはず……。まあ要は、指定ポケット11ページ分の堅牢(プリズン)を用意させるのは不可能ということだ。そもそもアレ、カード化限度枚数10枚だし……。

 ゲンスルーは初期メンバーだから既に指定ポケットカードを9枚持ってて、堅牢(プリズン)で1ページを保護。ゲンスルー1人にカードを持たせるには、私達はあと10枚堅牢(プリズン)を集めなきゃいけないってわけだ。それまでは4人で分散。

 シャッフルガード法をするには私達は全員持っているカードが貴重すぎる。フルポケットガード法をするには、フリーポケットがスペルカードでいっぱいだし……。とにかく、彼らには頑張ってもらおう。

「さて……私も行くかな」

 バインダーを開く。

初心(デパーチャー)オン!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。