私がスタート地点に来た時には、まだ誰もいなかった。まあ気長に待とうと思って柱の後ろに隠れて絶をする。どうせ爆弾で気が動転して気配とか気にしてないだろうし、これなら彼らが来たとて気付かれないだろう。
奴隷達がちゃんと働いているか
会話することなく、不安そうに押し黙っている。
すると私の座る柱の後ろで、誰かが階段を降りてきた。……バラだ!
手に持っているのはビニール袋……に、プーハットの首。きっと交渉をしようとして殺されたんだろう。こういう心臓の強さは結構好きだったけど……死んじゃうぐらいの弱さだったのが残念だ。
バラは彼らの元に歩いていき、ドスッと袋を放り投げた。
「土産だ」
「う……っ!」
ここからは見えないけど、プーハットの首に驚いているんだろう。
「もし次! 指定ポケットカード81種を持ってこなかったら交渉中止だ。……『
彼らは応えない。命を握られている立場なのに、媚びへつらうのも下手で可愛げもない。
「スペルカードだよ、『
「ふざけるな『
「おい」
こういう時まで価値とか気にするアッサムが声を荒げた。それをノームデューが止める。
「そうか。じゃあしかたないな。俺が戻らないとお前達の爆弾を一斉解除するのはムリなんだが」
「何?」
「実は俺も
うわ、備品だなんて……ゲンスルーが聞いたらめちゃくちゃ怒りそうな発言だ。後でチクっておこう。
「3人が右手親指を合わせてキーワードを言うと
「ちょ、待ってくれ! 使ってくれ……!」
「ん」
コンターチがバラに
「始めからそうしろ……! グズがよ。次の交渉の時も『
バラはそう言い残すと、
……そういえば、ニッケスがいないな。それとジスパーも。主要メンバーが集まっている現状を見るに、何か来れない事情があるのだろうか?
それとも、ここにいるのは交渉に行ったプーハット待ちの人間だけか……。というか、生首って持ち込めるんだ。あれは死体として消滅しないだろうし、このまま朽ちていくのだろうか。
その時。
『他プレイヤーがあなたに対して
私は会話が聞こえるように聞き耳を立てる。
「……ニッケスだ。ジスパーが今、死んだよ……。死体も残らなかったさ……。こちらは指定ポケットカード81種をあいつらに渡すということで意見が一致した。そっちはどうだ?」
「交渉に行ったプーハットだが、生首になって帰ってきたよ。それと追加で
アッサムが答える。そっか、ジスパー死んじゃったんだ。彼はハメ組内の貴重な戦闘要員だし、大方ゲンスルーを攻撃しようとして
「それぐらい命に比べれば大したことないさ。今カードを全て俺のバインダーに集めている。……少ししたらあいつらの所に行くよ」
「ああ……」
重苦しい空気の中、
しばらくして。ニッケスとゲンスルー、サブ、バラが階段を降りてきた。
「どうなったんだ!?」
「解除はまだか!?」
そう言うアッサムとノームデューを他所に、サブの出したバインダーをゲンスルーとバラが覗き込む。
「おお……」
バラの口から声が漏れた。これだけのカードが揃ったバインダーは、さぞ壮観だろう。私も早く拝みたいなあ。
「指定ポケットカード81種……確かに受け取った」
「さあ条件通りにしたぞ! 爆弾を解除してくれ!」
「もちろんだ、約束は守る。その前に俺達がゲーム外へ戻るための『
ニッケスがゲンスルーに3枚の
「OK取り引き成立だ。サブ! バラ!」
3人が右手親指を合わせる。
「行くぜ」
そして……!
「『
瞬間、物凄い衝撃音と共に彼らの身体が弾け飛んだ。頭に取り付けられた者は眼球から脳みそ、顔の大部分。肩に取り付けられた者は肩から顔ーー顎、そして歯。腹に取り付けられた者は内臓が飛び散る。
人間が一瞬で死体になり、動かなくなった体と内容物と血液が、グリードアイランドの綺麗な草原を汚した。
……5年。彼らの地道な努力が実った瞬間だった。
「解放してやったぜ……くくくくく……恐怖からな。守るわきゃねーーだろてめーらクズとの約束なんてよォ! 『
ゲンスルーの高笑いが静かになった草原に響き渡る。私も静かに笑いを漏らした。ゲンスルーって普段結構冷静なのに……それだけ嬉しいんだな。
「おいチア! いるんだろ、出てこい」
「バレてた?」
絶を解き、柱の後ろからひょっこり顔を出す。彼らの後ろでハメ組の死体が消滅した。
「勘だよ。お前は近くで見たいタイプだろ?」
「その通り。それにしても、言ってた通り派手だったね」
「だろ? にしてもスッキリしたなー。仲間ごっこも5年やると疲れてしょうがねェよ」
「これで俺らも堂々と一緒にプレイできるってワケだ!」
「チアも正体バレてるしな」
サブとバラが笑う。彼らもゲンスルーと仲間でありながら、G.I内ではコソコソとプレイしなくちゃならなくてしんどかっただろう。
「あっ、私にもバインダー見せてよ!」
「ブック!」
サブの開いたバインダーを見せてもらう。……すご。これは確かに声も漏れるな。
「ハハ……やったね! すごい……マッド博士の整形マシーンもある〜!」
「これに俺の手持ち9種と、奇運アレキサンドライトで合計91種……!」
「まずは
サブの言う通りだ。ツェズゲラ組が大天使を保有した可能性は十分にある。ということで指定ポケットのカードを整理しがてら、私達は大天使の息吹に
「よしっ! 2枚ゲット! これで大天使の息吹と闇のヒスイを独占だな」
「これで少なくとも他のチームが先にクリアすることは防げるね」
バラとハイタッチをする。聖騎士の首飾りは
「んじゃ早速マサドラ行くか。奴隷は……5人だったか?」
「そ、5人。
そうして私たちは、可哀想なモタリケ君の元へ飛んだのだった。
「みんな集まってくれてありがとう! これから君たちには、リスキーダイスを振って、カードショップで買い物をしてもらいます」
集めた5人の前で説明する。「リスキーダイス」の言葉を聞いた瞬間、彼らが震え上がるのが分かった。
「じゃあ後はお願いね」
私は続きをゲンスルーらにバトンタッチした。こういう恫喝まがいのことは、私よりも彼らの方が適任だろう。
「お前達の有金がなくなれば俺らの金を渡すから、ダイスを振った者からショップに買いに行け。くれぐれも
ゲンスルーがダイスを持ち、彼らの前に差し出した。
「ほら、最初にやる奴は?」
答えはもちろん沈黙……。
「じゃ順番に行くか。お前が最初に振れ」
「え……っ、あ、ハ、ハイ!」
ゲンスルーは一番左に座っている男にダイスを押し付けた。彼は目をぎゅっと閉じ、震える手でダイスを振る。
それは転がり……「大吉」で止まった。
「はぁあ……」
「よし、じゃあお前買ってこい」
「頑張れよ〜」
サブとバラがヨロヨロとカードショップに向かう男に手を振る。
ゲンスルー達が、残る男達に視線を戻す。
「さて……じゃあ次はお前だな」