「か、勘弁してくれ……も、もう、頼む」
リスキーダイスと
「お前まだ3回目だろ? 死にゃしねーよ振れ」
「違う! 違うんだ! 俺は知ってる! 一振り目で大凶が出て死んだ奴! きっとこのダイスは全部合わせて1つみたいなもんなんだ! もし俺が大凶を出してしまったらその間他のプレイヤーが出した大吉分の不幸が俺に降りかかっ……」
「知らねェよ。振れ」
ゲンスルーがモタリケ君の顔を鷲掴む。
「
「ま、どうせこれで振るだろ」
隣で監視するサブが答えてくれた。確かに、これで拒否するほどの度胸はなさそうだ。
「それとも今すぐ死ぬか?」
モタリケ君の目が私を見ている。口が「助けてください」とパクパク動いたけど、にっこり微笑んでみせた。
「た……頼むっ!」
観念したのか、神に祈るかのような必死さで彼はダイスを振った。結果は見事大吉!
「見ろ。そう簡単に大凶なんて出ねーよ」
「じゃーまた買ってこい。他のプレイヤーいたら道連れにしてきてもいいぜ」
とぼとぼと歩いていくモタリケ君を皆で見守る……と、入れ替わりに買い終わった者が帰ってきた。
「バインダー見せろ」
「ブック……!」
「お……おおっ……ああ〜!
「無駄な運使っちまったな。ハイ、もー1回!」
彼は恐る恐るダイスを振って、大吉が出たのでまた解放。
「とりあえずゲン使っとけよ。当分外には出ないだろ?」
「そうだな」
ゲンスルーが
捕まえた奴隷達は全員カードショップで買い物中で、私達は手持ち無沙汰になってしまった。
「チッ……あいつらわざと時間稼ぎしてやがるな。フツーこんな時間かからねぇだろ!」
バラがイライラした様子で舌打ちする。わざとゆっくり買い物しているのは事実だろう……誰だってわざわざ命の危機に晒されたくないしね。
「まあまあ……。それより
「No.80『浮遊石』、No.85『身代わりの鎧』があいつらの独占カードだ。残り9種のうち2種はハガクシ組とトクハロネ組のゲイン待ち。No.21『スケルトンメガネ』、No.9『豊作の木』、No.65『魔女の若返り薬』は自分達で獲ればいい。それが終わってから、一坪の海岸線をどうするかーーだな」
ゲンスルーが答えてくれた。スペルカードは頑張って覚えたけど、指定ポケットカードの独占とかゲイン待ちとかは新参の私にとっては覚えるのが難しい。
「どっちにせよ戦闘は避けられないだろ?」
「特にツェズゲラ! 独占カードがある以上、どこかで衝突しないとクリアできない」
「ああ……。問題はゴン組とツェズゲラ組、どちらが一坪の海岸線のオリジナルを持っているかだ」
と、その時。カードを買い終わったモタリケ君がヘロヘロと帰ってきた。
「か、買ってきました……」
「見せろ」
バラがバインダーを覗き込む。
「おおっ!
「え……?」
「お前ノってるな〜。ほい、
彼らはバインダーから
「こ、これは必要ないんじゃ……」
「何口答えしてんだよ。振れ」
ゲンスルーが一言凄むだけで、モタリケ君は震えながらダイスを振った。
「よし、大吉だな。
バラが
「ゲン、これどうする?」
「ダブりで取っとけ」
「了解。はい、次はカードショップ分な」
モタリケ君からバラがカードを受け取ったが、ちょうどさっきカードを買いに行った人達が2人戻ってきたのでーー私とゲンスルーはそっちの対応に回ることになった。
「もー1回! もー1回! ハイハイハイハイモタリケ君の、ちょっといいトコ見てみたいー♪」
「うううう……」
……それにしても、あっちは随分楽しそうだな。
「よっし、
「1人死んだけどね」
モタリケ君がダイスを振ってすぐ、私がダイスを振らせた男が大凶を出したのだ。彼は怖がる間もなく胸を押さえて苦しみ出し、死んだ。でも死者はそれだけ。モタリケ君含む他4人は無事解放されたのだった。
「これでゲンのバインダーは計8ページ安全ってワケだ」
「あと3枚欲しいとこだよなー」
「ま、そこはチビチビ集めてけばいいさ。それまでは
「だな」
カードを何枚か振り分けられて、私はそれをバインダーに入れた。……というか。
「いくらリスキーダイスありとはいえ、5人でSランク7枚って超多くない?」
「アイツらが死んだ上、お前の下準備のおかげで他のプレイヤーが買ってないからな……。あとは試行回数と、純粋な俺らの
「そーかなあ? ラッキーの前借りみたいでなんか怖いんだけど」
特に私は、昔から絶望的に運が悪い。だからこそリスキーダイスみたいなものは振りたくないんだけど、ここまで運がいいと不安になってしまう。
「チア、ギャンブラーの誤謬って知ってるか?」
「ごびゅ……ごびゅう?」
『
「ある事象の発生頻度が特定の期間中に高かった場合、その後の試行におけるその事象の発生確率が低くなると信じてしまうーーだったかな。ま、俺も曖昧なんだが。例えばさっきのリスキーダイスだと、ずっと連続して大吉が出たら、次こそは大凶が出ると思い込むみたいなことだ。実際過去に、ルーレットゲームで26回連続して黒が出てーー多くの奴らが『次こそは赤だ』と信じて赤に賭けたが、結果は黒で全員大損したって話がある」
「でもそれはあくまで2択での話だろ。リスキーダイスはアイツの言ってた通り
「あ、そっか」
ゲンスルーの突っ込みにサブが笑う。……要は、励ましてくれてるってこと?
「細かいことは置いといて、ニュアンス的には今運がいいからって後で運が悪くなるワケじゃない……みたいなことを言いたいんだろ?」
バラの言葉にサブが頷く。ふーん。やっぱり励ましてくれてるじゃん!
思わず笑いが溢れてしまった。
「なにニヤニヤしてんだよ」
きっと分かってるだろうに、ゲンスルーがため息を吐いてそう言う。
「え〜? ありがとね、サブ」
「ハァ〜!? おい、俺は普通に励ましたからな、バレたくなくて遠回しに言ってた訳じゃないんだぞ!」
それを人が照れてるみたいに言いやがって……とサブはご立腹な様子だ。
「そんなこと言って、チアを元気付けたかったんだよな」
「だからそーなんだよ!」
バラとサブが小突き合うのを、ゲンスルーが止める。
「ハイハイそこまでな。で、チア。お前はどっちからやりたい?」
「ゴン組かツェズゲラ組か……ってこと?」
「ああ。あの試合を見る限りでは、オリジナルはゴン組になりそうだが……その後の動きはツェズゲラが指示した可能性が高い。それがなきゃ一坪の海岸線はお前に取られてたわけだからな。特にゴン組はオリジナルかどうかにこだわってなさそうだしーーその
「んー……やっぱツェズゲラ組じゃない? 負傷も大きいし、独占カードも取らなきゃだし……何よりあの頭が厄介だね。先に潰しとけばゴン組との戦闘もいくらかやりやすくなるでしょ」
「お前らは?」
意義なしとサブバラ。しかしその後「あっ」とバラが口を開いた。
「ゴレイヌっつー奴もいたんだろ? アイツは?」
「分け前はもらってるだろうが……コピーの方だろうな。それがどうした?」
「いや……確かあいつは指定ポケット50種ぐらいだろ。このまま行けば普通にクリアできる可能性は少ないし、先にクリアしそうなツェズゲラ組かゴン組と組んでるんじゃないか。もしくは全員で結託してるか」
「でもゴンの性格上、協力は厭わないだろうけどツェズゲラ組にカードを渡してクリアさせて分け前をもらうーーなんてことはしないと思うよ。自分でクリアしたいんだから。だからツェズゲラ組とゴレイヌーーもしくはゴン組とゴレイヌの協力はあっても、ツェズゲラ組とゴン組の協力はあくまで取引じゃないかな」
ゲンスルーが、
「となると可能性が高いのはツェズゲラへの協力か……。ゴレイヌを合わせると5人になる訳だ」
こっちより1人多いな、と一言。
「サポートに回られると厄介だよな」
サブの言葉に「ああ」とバラが頷いた。
「じゃあこうするのは? 向こうがツェズゲラ組かゴン組+ゴレイヌで行動しているようなら、私があなた達との行動を一緒にするのをやめて、同じくサポートに徹する」
「互いに偵察が1人か」
「カードを全て取られるって心配はないでしょ」
「でもそうなると
フリーポケットが大分カツカツだなと顔を顰めるゲンスルーに、私はにっこり笑ってみせた。
「フリーポケットなら任せてよ♡」
全員の疑問の視線が、すぐ納得に変わる。そう、私の家にはスペルで帰宅する用の人間……アーニー君がいるのだ。彼のフリーポケットを使えば、向こうと同じく5人分のスペルを用意できる。
「おそらく奴らはメンバーが増えたのを気に、大天使の息吹の引換券を入手するだろう。スペルカード40種を失ったその時を突こうーー!」
「おーっ!」
余談ですが、新アニメだとサブの声優とアッサムの声優が同じ人です。ゲンスルーはアッサムと会話する時、サブのことを思い出していたかもしれませんね。