美しくあるために   作:ゲボ

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ソロプレイ開始!

 薄ピンクの髪はコテで巻いて、カラコンで綺麗な大きい黒目にして。粗が出てきた肌はベースメイクで丁寧に隠して、ナチュラルに見える陰影程度のアイシャドウとアイラインと、アイブロウ。短ーいまつ毛をしっかり上げてマスカラで長さとボリュームを出す。最後にキープミストを顔に振りかけて、前髪をセットして完成。

 私好みの甘い香りの香水を腰に振って、精一杯の可愛い服にリボンのアクセサリー。

 これが私の日課だ。

 この世界に入ってすぐは、とにかく金やら場所やらがなくって大変だった。あいつらと組むことでゲームのシステムやスペル、何よりプレイの仕方を知れてラッキーだ。

「んー! これで何やっても自由ー!」

 思いっきり伸びをする。この家も、ゲームキャラクターと結婚した男を殺して手に入れた。所詮もう一人の女はゲームキャラだから、上手いこと説明したら簡単に居候を許可された。まあ私が光熱費とか出す前提だけど。それも大した額じゃないし、必要ない指定カードは売っぱらえばいいんだからなんてことない条件だ。

 ふかふかのベッド、美人な女性、沢山服の入るクローゼットに現実世界と遜色ないコスメ達。元の世界の家よりずっと快適だ。一生ここで暮らさないまでも、しばらくのんびり生活するのもいいかもしれない。念使いしか入れない場所だから何も隠さなくていいし、モンスターもいるから念の修行だってやり放題。育成の為に作られたゲームと言っても過言ではない。

 でも、あわよくばクリアを目指しているのも事実。きっと“彼ら”が穏便にクリアするなど無理だろう。最も可能性が高いのはツェズゲラチームだ。このままにしておけば、必ず彼らがクリアする。上手く取り入るか……破滅を待つか……。まあ、考えても仕方がない。

 今日も念の修行兼金稼ぎに、モンスター狩りとカード集めに行こう。

 

 

 しばらくモンスターを倒しながらぶらぶらして、また例の岩石地帯へやってきた。今は随分と平和なようだ。

 高所から辺りを見渡していると、私が乗っている岩(と呼んでいいのだろうか)の中から子供が二人飛び出してきた。……あの子供は、確か!

「ねえ、なにやってるの?」

「ブック!」

 スコップやら何やらを放り出して肩で息をしていたのに、話しかけた瞬間臨戦態勢に入った。なるほど、やはり強いようだ。

「危害は加えないし、カードも奪わない。ただちょっと気になっただけだよ。ほら君たち、最初一緒に勧誘を受けたでしょ?」

「あー! 思い出した、確かにあそこにいた人だ!」

「あー。フリフリの……で、なんか用?」

 黒いツンツン髪の方はそこまで敵意を露わにしないけれど、白髪の方は警戒しているのを隠そうともしない。

「私あのチーム抜けたんだ。それでもここ、修行に快適だからまだ居座ってるの。君達もそうなのかなって」

「修行はしてるけど、俺達はクリアするつもりだよ」

「そっか、じゃあ目的が違うね」

 会ったことのあるプレイヤーは、多いに越したことはない。多少なりとも話しておけば、後々交渉しやすくなる。ここからどうしようかと考えていると、あの時いた……金髪の少女が歩いてきた。

「まあ、あの時の……!」

 二人に向けていた凛とした顔つきとは一変。私を目にすると、きゅるんと可愛らしい表情に切り替わった。この感じは身に覚えがある。……私と一緒だ。

「初めまして、チアです。チア=クロッバー。あなたのお名前を伺っても?」

「ビスケット=クルーガーです。それより、どうされたんですか?」

「私も修行をしてて……ずっと独学だから、もし師匠がいるなら、良ければ教わりたいなって。まあいきなりおこがましいお願いですけど」

 可愛らしい表情の奥に、思案しているのが読み取れる。目的はなにか。きっと、探っているのだろう。

 このビスケットって人、きっとかなりの使い手だ。プロハンターとして名前を聞いたことがあるし、何より隙がない。……この人に念を教われるなら最高だ。

「あなたが二人の師匠でしょう? 私はそこの二人よりは強いと思いますけれど、あなたよりは確実に弱い。何かあれば私を殺してくだされば結構です。だから私にも稽古をつけてくれませんか?」

 顔つきが変わる。

「……そう。でもタダじゃないわよ。交換材料はあるんでしょうね?」

「ハァ!? ビスケ、こんな奴信用できるかよ! ぜってー危ないって!」

「まあまあ、話は最後まで聞きなさいな。それで、交換材料は?」

「カードはほとんど売っぱらっちゃってるけど……金だけは大量にありますよ。ショップでの買い物に役立つはずです」

「いくら?」

「家買えるぐらいには」

 家!? と子供二人から声が上がる。あれは奪った家だけど、実際それぐらい貯めてるし。

「OK。ただしこの子達の修行は見せないわよ。あくまでも模擬戦のみ! それが終わったら、今度はあたしが相手をする」

「ありがたいです」

「模擬戦!? こんな素性も知らない奴と修行すんのかよ!」

 白髪の子の方は随分と警戒心が強いようだ。

「でもビノールトさんだってそうでしょ? お互い命懸けだったわけだし」

 黒髪の方は受け入れ態勢だ。ビノールトさんが誰かは知らないけど、どうやら前にも似たような状況があったらしい。

「じゃ、まずはその堅っ苦しい敬語はやめなさいな。あたしのことはビスケでいいわさ。ど〜おしてもなにかつけたいなら、ビスケちゃまで♡」

「あーこれ聞かなくていいから。俺はキルア。んでこっちがゴン」

「何遮ってんのよ人が喋ってんのに!」

 仲が良さそうだなあ……。二人を尻目に、黒髪の方、ゴンが私に近寄る。

「よろしく、チアさん!」

「私のこともチアでいいよ。よろしく」

 軽く握手を交わして、私達の修行が始まったのだった。

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