美しくあるために   作:ゲボ

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1対1

 ーー10日後。

 ついに、ツェズゲラ達は帰ってこなかった。念の為10分ほど余分に待ったけど、結果は変わらずだ。

「これであとはガキ共だけだな」

「大人も2人だからね! 作戦通り行くよ」

「OK」

 3人が頷く。私がビスケ、ゲンスルーがゴン、サブがキルアでバラがゴレイヌ。バインダーを見る限り主なカードを所有しているのはゴンとゴレイヌだけど、この中でおそらく一番強いであろうビスケは一発逆転が狙える私の能力でしか倒せない。その私の能力ですら向こうには知られちゃってるし……とにかくビスケとは戦わない方針で行きたいところだ。その為の作戦だし、ね。

「準備はいいか?」

「ああ。ここまで来たんだ! クリアしようぜ」

 サブが言う。バラが少し笑って、私の方を見た。

「最後まで気を抜かないように……だろ?」

「あ、言おうとしてたのバレた? 皆、しっかり気をつけてね。何かあったら作戦に縛られず臨機応変に対応すること! 終わったら、できればまだ戦ってるとこに加勢すること。それも終わったら交信(コンタクト)で連絡ーーいいね?」

「何十回も聞かされたからな。嫌でも覚えるさ」

 ゲンスルーが呆れたように笑った。そして全員でバインダーを開く。ゲンスルーが同行(アカンパニー)を1枚手に取った。

同行(アカンパニー)オン! ゴン!」

 私達は光で包まれ……ゴン達の元へと飛んでいく。到着したそこは、私達が修行をしていた岩石地帯だった。

 案の定ゴレイヌを含めた4人がそこで待ち構えている。

「チア……やっぱり、そっちの仲間だったんだね」

 ゴンが私をキッと睨め付ける。

「そっちこそ、ゴレイヌも仲間だったんだね。知らなかったな」

 キルアが冷たく「何の用だ?」と言い放った。

「まぁそんなにトンガるなよ。取引しに来たんだ」

 ……ま、そんなのは嘘っぱちで戦闘のつもりで来てるんだけどね。

「取引……? こっちにはないね!」

 一応は()()()()()()をしている……といったところだろうか。

「話ってのはシンプルだ。報酬を山分けしよう。俺達がみんなを代表してクリアする。全員で現実へ戻りバッテラから報酬をもらい分配する。簡単だろ?」

「とても信じられないね。アンタらがつい昨日までプレイヤーを殺してカードを奪ってたのを俺達は知ってんだよ!」

 こりゃ、やっぱり監視されてたな。私はふうっと息を吐いてゲンスルーの方を見た。

 そろそろかな?

「心を入れ替えたのさ。ツェズゲラ達はゲームをリタイアしたんだろう? 一人一人の額はツェズゲラ組を入れた時より大きくなる。悪い話じゃないだろう?」

「ハッ……、ウソだな」

 そう、これは真っ赤なウソ……。私達はツェズゲラ組が彼らにカードを託しているのを知っているし、向こうも()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「ああそうだ。じゃどうする? 死ぬか?」

 ゲンスルーの雰囲気に彼らが気圧されるのが分かる。

「ゴチャゴチャ言わずカードをよこせ。ぶっ殺すぞ」

「早速正体現しやがったぜ!」

 彼らが後ろに飛び退いた! 鬼ごっこの始まりだ。

同行(アカンパニー)オン! ソウフラビへ!」

 光に包まれ彼らがソウフラビまで飛んでいく。私達の同行(アカンパニー)は全部で5枚。ゴン組の同行(アカンパニー)はあと3枚……!

「奴等の同行(アカンパニー)はあと3枚……磁力(マグネティックフォース)はゴレイヌが1枚、離脱(リーブ)は0……! 行くぞ」

同行(アカンパニー)オン! ゴン!」

 私がスペルを唱える。

 そうしてスペルでの追いかけっこを繰り返して、ゴン組の同行(アカンパニー)が残り0になった時ーー。

再来(リターン)オン! マサドラへ!」

 全員がカードを持ち、マサドラへ飛んでいった。

 マサドラ……。カードを補給する気か? それとも港から現実に?

「今更逃げはしないだろうさ。どうせ待ち構えてるんだ、行くぞ」

「……うん」

同行(アカンパニー)オン! ゴン!」

 そうして私達がマサドラに飛ぶと、そこは森のすぐ側だった。ゴン達の姿は見当たらないけれど、でもここに飛んだってことはすぐ側にいるはずーー。

「一応店を確認しとくか」

 ゲンスルーに言われ街の中に行こうとしたその時。「後ろ!」という声が聞こえて、とっさにガードした腕に衝撃が走りーー私は一瞬で20メートル以上弾き飛ばされていた。

「ぐ……ッ!」

「中々いい反応だわね」

 ビスケか! 多分角度的に、先に気付いたのはサブとバラだ。彼らのおかげでさほどダメージを受けずに済んだ……しかし、ビスケも全力ではないだろう。なら、なぜ? 移動系スペルはもうないはずじゃ……。

 ビスケがカードを手にした瞬間、ボンッと()()が解ける。聖騎士の首飾りと……贋作(フェイク)か!?

同行(アカンパニー)オン! ソウフラビへ!」

 

 

 潮風が私達の髪とスカートを揺らす。波の音だけが響く静かな海辺には、私とビスケの2人だけ。

「どうしてわざわざここに飛んだの? ビスケの強さなら、私を狙わないで他の全員やっちゃった方が早いんじゃないの」

「愚問だわね。アイツらはゴン達で()()倒せる」

 嘘だ。実力が未知数なゴレイヌは置いておいて(しかしレイザーの球に反応できなかった所からそこまで強くはないだろう)、ゴンとキルアがゲンスルー達と対等な訳がない!

「それに……あたしが着いていながらアンタみたいな裏切り者に気付けなかったこと、責任感じてんのよ。でもそんなクズに遠慮はいらないわね。殺す気でかかってきなさいな。殺してあげるから」

「な……っ」

 ビスケの体が……どんどん、大きくなってる……?

 デカい、この体から繰り出される攻撃は、今までとは絶対に威力が違う……!

 いや……しかし体が大きい分小回りは効かなくなるだろう。私がやることはダメージを与えることじゃない、あくまで()()()()にさせること。

 目の前にビスケの拳が迫る。なぜか……コマ送りのように不思議とゆっくりに見えて……私はスレスレでそれをかわした。

「避けたか」

「ブック!」

 私がバインダーを出すと、ビスケもバインダーを出す。

「びっくりしちゃったよ……同じ作戦だなんて、流石()仲間なだけあるんじゃない?」

 私が手にしたのは、贋作(フェイク)で指定ポケットカードに変身させておいた同行(アカンパニー)。触れると聖騎士の首飾りでボンッと呪いが解ける。

 ゲンスルーらに加勢しに行く手もあるけど、磁力(マグネティックフォース)の手持ちはないし、この状態で20メートル以上ビスケを引き離す自信もない。ビスケがまだ贋作(フェイク)で変身させた移動系スペルを持っている可能性もあるから、これで彼らに加勢しに行くのはほぼギャンブルだ。

 それに下手に危険因子を近付けるよりかは、私がやられる覚悟で時間稼ぎをした方がマシ……!

同行(アカンパニー)オン! アイアイへ!」

 私達は光に包まれ猛スピードでアイアイに飛んでいく。これで私も移動系スペルは0! 本当はビスケを引き離して使う一枚のハズだったけど……それが成功していたとて、向こうも同じ作戦を用意してたから無意味だったというわけか。

 アイアイの入り口に到着する。ここは建築物も人も多い街……! その姿は解かざるを得ないでしょ?

「倒したいなら……追いかけて来なよ!」

 私は街の中に飛び込んだ。しばらく住んでいた場所だ、この辺りの地形はよく理解している……!

 それに私みたいな服の女の子も多いし、目眩しにちょうどいい。

 ビスケはと言うと、どうやら姿を戻さずそのまま突っ込んで来ているようだ。……私と同じく見た目にこだわりがあるタイプだと思ってたけど、あの姿への執着はそれぐらいなの?

 しかしまだ私を見つけられていないようだ。それならこのまま自宅に戻り、アーニー君のバインダーから再来(リターン)をもらってマサドラに行こう。カードを補給してゲンスルー達に加勢しに行くしかない!

 その瞬間、ぶわっと身体中をオーラが包み込んだ。これは……“円”!

 バカ広いじゃんこんなの……ずるいよ。絶対バレたじゃん!

 無防備な“絶”状態の体にオーラを長時間浴びているわけにもいかず、私はしょうがなく絶を解いた。振り向いても周りを見渡してもビスケの姿は見当たらない。……姿を戻したか。なぜわざわざ……?

 とにかく、見晴らしのいい建物の上に行こう。私も円は使えるけど、こんなに人がいるところで特定の人間を探すためだけに使うのは……神経を使いすぎる。その瞬間を突かれる方が厄介だ。

 私はここら辺で一番高い、お姫様が住んでいると言う塔の頂上に登った。

 見渡してもビスケのような人間はいない。フリーポケットに変装道具は見当たらなかったし、わざわざ服を買って変装するような金はなかったはず……。逃げたとも考えにくい。

 その時、嫌な想像が脳裏をよぎった。

 ……もしかして私、ミスった?

 私側からすれば、ビスケが見つからないから見晴らしのいい高台から探すのは当然のこと。でもそれは大抵の人間がやることで……ってことは、予測もしやすい。

 ビスケの円はブラフ……。確実に私を探す為に、姿を元に戻して私が高台に登るのを狙った?

 もしそうだったとしたら()()()。完全にやらかした!

 しょうがない、ここで待とう。地上じゃない分円を使っても人がいたら分かりやす……

 ……いる。背後!? 既に……!?

「ハァッ!」

「……ッ!」

 ビスケの回し蹴りをとっさに飛んで避ける。こんな狭い塔で戦うか普通!?

「残念、まともに戦うつもりはないんでね!」

 塔から飛び降りる。どうやら今度はしっかり着いて来るようだ。空中でも流石の技術で私を捉えて拳を入れようとしてくる。しかしこの姿のビスケなら、喰らっても致命傷は受けない。

 私は攻撃をガードしつつ地面に足をつけた。このまま走って、一旦自宅まで帰ろうか。足を踏み出した時……何か違和感を感じた。あれ、人が向こうの道にいない?

 なにか、変だ。

 こういう時は“凝”! 目を凝らして()()を見ると、建物と建物の間をオーラが繋いでいた。まるで立ち入り禁止テープのように。

 何かの罠か? ヒソカの伸縮自在の愛(バンジーガム)の例がある。迂闊に突っ込むのはまずい。

 しかし後ろにはビスケ!

 逃げ道は……左! ここしかない。

「な……っ」

 私が足を踏み入れたのは、路地裏。袋小路……。

 そうだここ、初めてゲンスルーとサブとバラと会って戦った場所だ。

「もう逃げられないわよ。観念して戦いなさいな」

「……言われなくても」

 またしても、呪いが解けるかのようにビスケの体が変化する。この体の大きさじゃ隙間を縫って逃げるなんて到底不可能。しかし攻撃が当たればタダでは済まないだろう。

 私が構えて練をすると、ビスケのオーラ量が一瞬にして跳ね上がった。後退りして、()()()()躓いてしまう。

 なんて、オーラ……。全身の皮膚がビリビリする。これじゃ私愛用の針なんて、到底刺さりそうもないな。

 ……だから。

「いいよ。正々堂々、戦おう」

 わざとらしく笑って見せた。ビスケが振りかぶる。ああ……避けられない。このリーチの差じゃカウンターなんて不可能。私の拳がなんとか当たったとしても、致命傷にはなり得ない。

 目の前には拳しか見えない。……当たる! 

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