「あたしが手叩いたら始めるわよ。いいね?」
「オス!」
見晴らしのいい平地。風が吹き、砂が散り、風が吹きーー。
お互いに緊迫した空気が流れる。集中力を高めて、高めてーー
パン!
試合が始まった。
「えっ?」
「ゴン!」
その瞬間ゴンが倒れる。キルアはそれに一瞬気を取られて、私から目を逸らした。
「殺し合いでよそ見とか、ダメで、しょ……っ!」
「な……っ」
オーラを手から放つ。キルアが壁のように迫るオーラを避けたところには、私。
ここは軽くジャブと行こうか。開いた手のひらを、腕をしならせ顔に打ち付ける。ほぼ念を込めていないからダメージなんて毛ほどもないだろう。……それでも。
私に反撃を喰らわせようとしていたキルアの膝が、一瞬がくりと折れた。
「隙ありっ」
無抵抗な体に抱きつく。離れると、キルアもその場に崩れ落ちた。
「はい。チアの勝ち」
「やったー!」
呆れたようにビスケが言う。二人はと言うと、地面に手をついて膝をついて、なんとか立ちあがろうとしてはまた崩れ落ちている。
「な、なんで!? 意識はあるのに、全然力が入んないや……」
「クッソ……能力か」
「そう。私は操作系能力者。特にゴン、他人に簡単に接触を許しちゃダメだよ」
「接触って……あー! あの時の!」
私の能力、
「そーいやあんた達、操作系と戦うのは初めてだったわね。運が良い。特にゴン、あんた実戦だったら殺されてたわよ?」
「うぐ……」
「操作系……兄貴と一緒か。発動条件は触れること……だろ? でも俺もゴンも動けなくなっただけで、操作はされてない。つまり発動条件が緩い分効果も緩いっつーことか」
このキルアという少年は中々鋭いようだ。
「そういうこと。私の能力
ただし、ただ触れるだけなら効果は1秒だけ。握手で5分、ハグで30分、キスで1時間。精神的な鎮痛効果と肉体的な鎮痛効果の両方を発現させることもできれば、どちらかだけということも可能! もちろん時間内ならオンオフは何度でも切り替え可能だよ。どう、便利でしょ?」
ちょっぴり嘘だけど。
本当はキスで1時間なんじゃなくて、私の体液を相手に入れることで1時間なんだよね。でも、これは秘密だ。
二人の効果を切ってあげると、今度は難なく立ち上がった。
「操作系は一撃必殺。故に能力者は操作系の能力を一番警戒するーーチアの能力はそれ自体に攻撃性はないけれど、実戦で1秒のロスは致命的だわね」
「そーいうこと! でもこれ、ほんとは実戦用じゃないんだよね。鎮痛効果が本当の目的」
「うん、自由を奪いたいならわざわざ痛みを取る必要なんてないもんね」
「あー、確かに、全身が歯医者で麻酔打たれた時みたいな感じだったな。上手く力が入らないっつーか……」
「そう。だから慣れればその状態でも普通に戦えるようになるよ」
「これより怖い能力なんて、この世にうようよいるわよォ」
それに比べたら私の能力なんて可愛いもんだ。ただ痛覚を奪うだけだし。
「で、ビスケ。私と模擬戦してくれる?」
「いーけど、本気でやったらあんた死ぬわよ?」
「うん……だから、私をどうやっていなすか見せてください。お願いしますっ、先輩♡」
「しょーがないわねぇ。ゴン、キルア、見ときなさい」
ビスケが指を立てる。
「あ、4」
「数字の4!」
「遅い! チアのが早いじゃない、二人とも腕立て500!」
「なんでこいつは知ってんだよ!」
弱くて頭の悪い私は、ビビリにならざるを得ない。自覚はなかったけど……凝はもうすっかり習慣になってしまっているようだ。