強い。比べものにならないぐらいに。私が念弾を放っても動揺せず避け、かつ体に一切触れさせず、一方的に私に拳を叩き込む。
「ぐ……っ!」
手加減してくれてるからダメージはあまりないけれど、これが実戦だったなら確実に殺されているだろう。
かくなる上は……!
「……!」
私は足で思いっきり地面を踏みつけた。割れた地面を蹴り上げて視界を悪くする。そうして舞い上がった土埃と岩は……全てビスケに向かって降り注いで行く。
これぐらいの軽いものを浮かせるなんて、ちょちょいのちょいだ。
絶。オーラを纏った岩に紛れて背後から首筋に手を伸ばすーーしかし次の瞬間には、腕を掴まれていた。
「見えなくても分かるんだわよ」
「が……ッ!」
腕を掴まれたまま、勢いを横に流されて私は地面に倒れた。
……両腕を後ろ手に掴まれたまま。しかもビスケに乗られている。
「中々だわね。プロの中堅レベルってとこかしら? 流も滑らかだし、オーラの量も申し分ない。体術はまだまだだけど。あんた、伸びるわよ」
「う、嬉しいお言葉……ありがとうございます。さっすが、やっぱ強いなぁ……。本気だったら殺されてた」
「何言ってんだわさ! あんたこそ不意打ちメインでしょうに」
手を離されて、起き上がる。パンパンと服の砂埃を落としていると、ゴンとキルアが近づいてきた。
「あんた達、今の見てどうだった?」
「早かった……! チアが背後に回ったとことか、倒れるまで気付かなかった」
そう言うゴンは、少し嬉しそうだ。
「俺も。ジャブとか、打ってんだろうなってのは分かるけど……ハッキリとは」
「ま、そーだわね。チアは力より速さ重視、そうでしょ?」
「うん。というか、適性みたいなもんだけど」
「ちょうどいい機会だわさ。あんた達、操作系能力者の対策をしてないだろう? これを機に勉強だわよ。チアは体術を二人から学ぶこと。格上と戦う上で、スピードだけじゃ話になんないわよ」
手痛い指摘だ。確かに私は独学でろくに戦闘を学ばず、ただ念を鍛えれば強くなれると思って修行していた。狙う相手も格下に限定して。
「操作系の対策って、能力発動の条件を満たさないことだけじゃないの? そりゃあ相手によって条件も難易度も変わってくるけどさ」
キルアの言う通りではある。確かにそこが一番重要だ。後はその条件を察すること、考察力が問われる。
「それも正解。ただ、邪道だけどもう一つ方法がある。それは、
「えぇ!? 操作されちゃったらおしまいなんじゃないの?」
「チア、あんたは分かるわね?」
頷いて見せる。二人は考え込んでーーどうやらキルアは気付いたようだ。
「そうか……! 仲間の能力者に事前に操作されておくことで、他の操作系攻撃を防ぐ……!」
「正解! 操作系には3つの種類がある。強制型、半強制型、要請型。前二つは名前でなんとなく察しがつくと思うけどーー要は一般的な、相手の自由を奪って操作する能力だわね。半強制型は、体の自由だけを奪う。そして要請型」
「私はこれだね」
体の自由を直接的には奪わない、そして精神も操らない。その代わりに発動条件が緩い。
「要請型は、強制型などと比べてその名の通り強制力が薄いの。それでも術者の有利になるように動かすことができる。この3つで一番発動が簡単で、広範囲に能力を使うことが可能」
「そして操作系の能力には重要なルールがある。『操作系は早い者勝ち』」
「つまり仲間の、特に要請型の能力者に事前に操作されておけば、敵のもっと強力な能力を受けずに済むってことだよな?」
「そう! でも強制型や半強制型の能力でも、操作の度合いを変えることはできるから一応は使えるわさ。まあこの戦法は、よっぽど信頼している仲間じゃないと使えないけどね」
でも覚えておいて損はない。だって今私は、常に自分の能力にかかった状態なんだから。