機動戦士Gundam GQuuuuuuX 01ガンダム戦記 作:普段は読む人⊂( ・ω・ )⊃
絶賛公開中の映画のネタバレが入って来たりもするので、ご注意を。
転生した、と気付いたのはいつの日だったか。
目が覚めるような感覚とともに、目の前の景色が歪んで見えたのを覚えている。
そう。転生、転生だ。
俺は転生したのだ。この世界に。
人類が増え過ぎた人口を宇宙に移民させるようになり、既に半世紀以上。なんて言葉が、教科書に大真面目に書かれていた時は思わず目を疑ったものだ。
授業中に、思わずガンダムかよと声に出してしまうくらいには混乱したし、その後廊下に立たされもした。
まぁ整理する時間が欲しかったし、ちょうどよかったけどな。
今はそうでもないとはいえ、慣れるまでは他も色々とギャップが酷かったし。
宇宙世紀、それがこの世界――俺の生きる世界の名前だ。
前世の俺の世界なんて、それこそ比較にならないほど化学が進んでおり、人口の半分が宇宙で生活しているという、想像もつかないような世界。
……そして、これは俺だけが知ることだが、とある映像作品で描かれた世界でもあるのだ。
1979年に放送された、機動戦士ガンダムから始まるガンダムシリーズ。
その中でも、所謂宇宙世紀シリーズに分類される作品は、その名の通りこの宇宙世紀を舞台としている。
様々なガンダム作品がある中でも、俺はこの宇宙世紀シリーズが大好きで、ハマっていた。
別に何か特別な理由があった訳でもない。
本当に、ただ好きだったんだ。
……だからこそ、宇宙世紀に転生したのだと、ようやく飲み込むことができたその時は、これからのことを思って嘆きもしたが、同時にワクワクしたものだ。
俺の知る物語を、体験できるんじゃないかって。
――そして、時は宇宙世紀0079。
「レン・シンドウ少尉、前へ!」
「ハッ!」
俺は連邦に志願し、軍人となっていた。
……ハッキリと言おう。ここは地獄だ。
断じて実際に物語を体験したいなどという、アホな理由で飛び込んでいい世界ではない。
憎しみが憎しみを呼び、血で血を洗う負の連鎖。
昨日までいた筈の仲間が、気付けばいなくなる。
一度誰かの命を奪ってしまえば、もう止まることは許されない。
俺が足を踏み入れてしまったのは、そんな世界だった。
何度逃げ出したいと思ったか。
何度あの時にこうしていればと嘆いたか。
何度、喪った友達の顔が……夢に出てきたか。
……。もう止まれない。戻せない。死んだ者は帰ってこない。
涙を堪え、戦い続けるしかない。
「――ドウ少尉!」
嗚呼、まだか、まだなのか。
ガンダムは、アムロ・レイは、まだ大地に立たないのか!?
「―ンドウ少尉!」
早く、早くしてくれ……早く、この地獄から俺を……!
「シンドウ少尉!」
「っ、ハッ!?」
くっ、しまった。つい意識が……
「大丈夫か、顔色が悪いが…?」
「いえ、平気です」
慌てて呼吸を整え、訝しげにこちらを見ていた上官に、返事を返す。
「……、無理はするなよ」
「はい」
「では、着いてきてもらおう。こっちだ」
「ハッ!」
上官の後に続いて、部屋から出て歩き出す。
向かう先は――格納庫。
なぜ上官と格納庫へ向かうのか?
答えは簡単、格納庫で俺を待っている新たな愛機を受領する為だ。
……けど、まさかだったな。
「しかし、本当によろしいのでしょうか」
思わず口から言葉が零れる。
「何がだ、少尉」
こちらを振り向く上官に、しまったと思った。
慌ててなんでもないと誤魔化そうとしたが、口から漏れ出たのは全く別の言葉――もとい、本音だった。
「あ、いや……私では、力不足なのではないかと」
「力不足だと?少尉がか?」
「はい。恥ずかしい話ですが」
足を止め、俯く。
これから俺に託されるであろうその新兵器は、文字通りに連邦軍の期待を肩に背負った機体といえる。
……重すぎた。
守りたい者も守れず、ただただ失うだけの俺には、到底背負いきれなかった。
俺よりももっと、相応しい人がいるんじゃないかって、そう思わずにはいられなかった。
何せ、
「……。私は、君にこそあの機体が相応しいと考えている」
「え」
顔を上げる。
「君がどう思っているのかは分からない。だが、私にとっての君は、紛れもなくエースの1人なんだ」
「わ、私は、そんな」
違う。
俺は、俺は…エースなんて、呼ばれていい人間なんかじゃないんだ。
俺が本当にエースなら、あいつらは……
「……嫌だろうな。君はそういう人間だ」
「い、いえ。嬉しいです」
「誤魔化さなくて良い。そこそこの付き合いだからな、分かるとも」
上官の言葉に、口を閉じる。
この人がこういう言い方をする時は、大抵正直に話して欲しい時。
……なら、少しだけ。
「本音を言いますと、嫌だと感じています」
「……だろうな」
「周りから、エースだと持て囃される度に、あいつらの……仲間達の顔がチラつくんです」
「……」
「なんで俺がって、そう思わずに、いられないんです」
途中から口調を維持できなくなり、敬語が崩れてしまったが、そんなことを一々気にしていられる余裕もなかった。
上官が聞きに徹してくれたのをいい事に、俺は口からどんどん言葉を溢れさせる。
そして、ある程度吐き出したところで、今度は上官が口を開いた。
「……こんな仕事をしているとな、聞こえの良い言葉を吐くことばかりが上手くなっていくのだよ」
「き、聞こえの良い言葉、で、ありますか」
「あぁ。それこそ君達のような、未来ある若者達をその気にさせて、戦場に飛び込ませるような。な」
吐き捨てるような上官の言葉尻からは、隠しきれない苦々しさが滲み出ていた。
「彼らは我々が死なせたようなものだ」
「それは、違います。彼らの命を奪ったのは、ジオンの連中です」
「所詮直接か間接の違いだ。我々も同罪なことに変わりは無い」
「……」
何も、言えなかった。
上官の表情は固く、悲しみに満ちていた。
その表情を見ると、もう何も、言えなかったのだ。
「彼らの名前を全て記憶に刻むことすらできない。……情けない話だがな」
そこで上官は俺から目を離し、長い廊下の先へと視線を向けた。
「君は私に似ている」
「え?」
思わず上官を見る。
上官はまだ視線を廊下の先へ向けたままだ。
「君は常に恐れているだろう。己の死よりも、周りの死を」
「は、はい」
「ふっ、私もそうさ」
上官が歩き出す。
俺も慌てて足を動かし、上官を追った。
「ある時、仕事に意味を見い出せなくなってな」
「意味を…」
「早期に片がつくかと思われた戦争は長引き、今も尚多くの兵士達がその命を散らしている。嘆かわしいことにな」
「……」
「結局今の今までジオンが優勢で、我々は劣勢だ」
上官の言う通りだ。ジオンが持つMSという強大な力に苦しめられ、俺達連邦は劣勢を強いられている。
……そして、だからこそ、あの機体が作られた。
「本当にこれでいいのか?と常々悩んでいた時にな、私はある1人の兵士と出会ったのだ」
話ながら、ある1つの扉の前で足を止めた上官は、懐から取り出したカードを読み込ませ、扉に掛けられていたロックを解除した。
「それが君だよ。シンドウ少尉」
振り向いた上官と目が合う。
強い意志の中にも、確かな優しさを感じる瞳だった。
「憎しみに囚われる訳でもなく、かといって無感情な訳でもない。ただ守るべき民間人を、共に戦う仲間達を守ろうと奔走するその姿に、私は勇気づけられた」
「あ…」
「これからの連邦を引っ張っていくのは、君のような若者だと確信したよ」
開かれた扉を上官とともに潜ると、正面にある1機のMSが目に入った。
黒と白に塗装されたボディに、ガンキャノン等と同じバイザーに覆われた頭部。
機体各部の形状には、俺の記憶にあるそれとは異なる点がいくつか存在しており、アニメと現実の違いを感じさせる。
これが、こいつが……
「だからこそ、この機体を、君に託したい」
俺の……
「ガンダム。我が軍の希望を」
RX-78-01 プロトタイプガンダム。
通称――01ガンダム。
俺の、新しい相棒。
こんな感じで、ぼちぼちやっていこうと思います。
※Ceta様、ご指摘どうもありがとうございましたm(*_ _)m