生命の冒涜者 作:アトランティスの観測者(自称)
Tips : 深月の仮面
ユイロが所持している仮面。
使うと(相手が)危険な代物ゆえ、普段はユイロが拠点としている場所に封印(机の引き出しに入れてるだけ)している。
そのため、せっかく作ったのに使い所がなくて困っている。 作者が。
「・・・さっきはビックリしたわね。 まさかあんな不審者が来るなんて」
「セリカ、エファイルはちゃんと目的があって来たんだし、不審者呼びは失礼。 ・・・気持ちはわかるけど」
ふざけた骸骨仮面が去った後、教室で一同は先程の変なのについて話していた。
「エファイルさんが言うには、ユイロさんは仮面無しだと外に出られない人見知りだそうですが・・・」
「そう言う割に、ユイロさんが仮面を付けてる姿なんて一度も見てないわよね。 ずっと腰の鎖にぶら下げてるだけで」
「持ってることに意味があるんですかね~? ないと外に出れないというのは極端な気もしますが・・・」
そうして思い浮かべるのは、あの飄々とした助っ人枠の少女である。
・・・ユイロが来ていないため、定例会議が始められないのだ。 やることがなければ、場は必然と雑談に興じることとなる。
「それより驚いたのは、ユメ先輩がエファイルさんにあんな質問をしたことです。 ・・・昔の後輩というと、この前言っていたライ先輩のことでしょうか」
「いやー、ないない。 あんなのライとは似ても似つかないよ。 ユメ先輩のことだし、エファイルさんの言う通りただの気のせいじゃないかな~?」
「ひぃん・・・」
「あーんな軽薄で信用できなそうな人が、ライなわけないって。 “顧問”って言ってたし、多分大人じゃないかな? ライは私と同い年だし、あのへんちくりんな骨頭がライだなんて思えないよー」
((((・・・さすがに辛辣すぎ
やめてやってほしい、あの骨頭はライ本人が作った世を忍ぶための傀儡なのだ。 本人が聞いたら多分泣いてしまう。
「ね、ユメ先輩。 ライ先輩ってどんな人だったの? 気になる」
「あ、私も!」
「うーん、それじゃ、ユイロちゃんが来るまで昔話でもしよっか。 多分結構時間かかるだろうし」
そう前置きをし、ユメは昔話を始めた。
その出会いは偶然だった。
「う~ん、こっちの方から凄い音が聞こえたんだけど・・・」
あの日の私たちは、ポツリポツリと廃墟が姿を見せる砂漠の外れを歩いていた。
特にここに目的があったわけではない。 パトロールをしてたら、遠くの方からなにかの崩落する音が耳に入ったので様子を見にきた、ただそれだけ。
「ん、あれ? び、ビルが倒壊してる!? だ、誰か巻き込まれてたりしてないよね・・・?」
「いや、ないでしょう。 こんな廃墟に寄り付くような人間はいませんよ、先輩」
ホシノちゃんの言う通り、この辺の廃墟は長いこと放置されていたのか砂嵐によりどこもかしこも崩落し壊滅している。
でも、この時は違った。
「・・・うぅ、重い、動けない・・・・・・」
「っ! 今声がした! 瓦礫の下だよね? 助けるから待ってて!」
「・・・本当に人が? ユメ先輩は下がっててください、私がやります」
言うが早いがホシノちゃんは瓦礫の山を払いのけ、その下に生き埋めになっている誰かの救助を試みる。
時間にして数分、かなりの数の瓦礫をどかした末、私たちは青髪の少女を発見した。
「キミ、大丈夫!? 意識はある? 立てる?」
「・・・・・・そっ、か。 ははっ、生きてる、か」
彼女、生き埋めになっていたライちゃんは、私たちを一目見ると、安堵と喜びの混ざった笑顔を浮かべながらそう呟き意識を手放した。
「き、気絶しちゃった・・・のかな? と、とりあえず連れてって治療しないと!」
「・・・いや、おかしいでしょう。 何でこの人はこんな今にも崩落しそうな廃墟にいたんですか? ・・・どう考えてもおかしいです」
「ホシノちゃん。 今はこの子を助けるのが先だよ。 確かにこの子がなんでここにいたのかはわからないけど、疑う前に、まずは助けなきゃ」
「・・・はぁ。 わかりました、見捨てて死なれても目覚めが悪いですし」
そうして私たちはライちゃんを背負い、アビドスに連れ帰った。
借金まみれのアビドスに病院で治療を受けてもらうお金なんてないので、ホシノちゃんと二人で手当てや看病をする。
彼女が目覚めたのは、看病をして二日が経ってからのことだった。
「・・・知らない天井だ」
「あ、目覚めたんだね、よかった~!」
「あなたは───」
「えっとね、私は「───梔子ユメ、さん」・・・えっ、私のこと知ってるの!?」
驚く私をよそに、彼女は自分の状態を確認している。
体を動かし、手を握ったり広げたり、立ち上がって軽くジャンプしたり。
・・・ジャンプ?
「わっ・・・っとと」
急に動いたからだろう、彼女はバランスを崩して再びベッドに転がった。
「・・・はぁ。 ダーメだこりゃ」
「ユメ先輩、新しい水と包帯を持ってきまし・・・って、目を覚ましたんですね」
ガラガラとドアが音を立てて開き、バケツとビニール袋を持ったホシノちゃんが帰ってきた。
「・・・あー? あぁ、どうも。 看病ありがとう、お邪魔しました」
「いや待って!? もう少しいようよ、せっかく会ったんだし、キミのこと色々知りたいな」
「・・・・・・」
「キミ・・・そうだ、名前は?」
「名前・・・? 名前、か・・・」
私が名前を訊ねると、彼女は困惑に染まった表情で考え始めた。
・・・もしかして記憶喪失とか? そうなら、廃墟にいたことも説明がつく。
「・・・うつつ、きらい・・・うつつ、き、らい。 ・・・・・・虚月ライ、それが俺の名前だ」
「そっか、よろしくね、ライちゃん!」
「ライ、ちゃん・・・?」
「・・・この人はこうなんです、諦めてください」
「そう・・・」
ため息混じりにホシノちゃんがライちゃんに言葉を投げると、ライちゃんは無気力に相槌を返した。
私たちもライちゃんに自己紹介をし、そのままライちゃんについて聞いてみた。
話を聞くと、彼女は記憶喪失であること、なんであの廃墟にいたのかはわからないこと、行く場所も宛もないことを話してくれた。
「それなら、ライちゃんもアビドスに入学しない? 見ての通り何もない場所だけど、これも何かの縁ってことで」
「それは・・・いいのか?」
「もちろんだよ! ね、ホシノちゃん?」
「・・・まぁ、他に行く宛もないみたいですし。 下手に他の自治区へ行こうとして遭難でもされたら大変ですからね」
「それじゃあまずはライちゃんの制服を用意しよう! そしたら次は記念撮影でしょ? あ、でもその前に皆でご飯にしよっか。 ライちゃんは目覚めたばっかだし」
「ん? ・・・あー」
言われて気づいたのだろう、ライちゃんのお腹から空腹を訴える音が聞こえてきた。
何はともあれ、こうして私たち二人しかいなかったアビドスに、新しい後輩がやってきた。
「ライちゃんはね、一言で言うと無気力な子だったの。 今のホシノちゃんみたいだったって言えばわかるかな?」
「ユメ先輩ー? いくらライが無気力だったからって、今の私と比べるのはライに失礼だと思うなぁ~」
((((ホシノ先輩にじゃなくてライ先輩になんだ・・・)))
「昔は大変だったからねー。 ユメ先輩はお気楽ですぐ騙されるトラブルメーカーだったし───」
「ひぃん・・・それはそうだけど~・・・」
こう言われると、何も否定できる材料がない。 何度も何度も後輩の皆に止められたり助けられたりの毎日で、それは今でも変わってないから。
「そんな会長を支えるべき後輩も、片や理想ばかり高くて何も解決できない私と、どこか楽観的なくせにやたら達観してて、現実ばかり見て何にも変えようとしないライとで・・・」
「でも、二人ともちゃんと私を支えてくれてたよ。 私が何度騙されたり襲われそうになっても、すぐに助けに来てくれた」
「・・・ユメ先輩は少し学習した方がいいと思う」
「・・・う~ん、シロコちゃんの言うことはもっともだけど、そこがユメ先輩のいいところじゃーん? 大丈夫だよ、ライはもういないけど、今はおじさんだけじゃなくて皆もいるんだから」
「それは・・・そうですけど・・・」
「ホシノちゃん、アヤネちゃん・・・!」
周りを見れば、後輩の皆が苦笑いを浮かべながらも頷いていた。
私は今も昔も、ずっと後輩に恵まれている。 きっと私は、幸せ者なんだろうな。
「ま、今にして思えば、ライが無気力なのは仕方なかったのかなって。 ライはさ、記憶喪失だったんだ」
「・・・私と同じ」
「そ、シロコちゃんと同じ記憶喪失。 ライの場合は気づいたら廃墟の廃ビルにいたんだって。 そのビルが崩落して、その音を聞き付けた私たちが救助したのがアイツとの出会いだった」
「いやぁ~、懐かしいねぇ」と話すホシノちゃんは、どこか寂しそうだ。
・・・無理もない、ホシノちゃんからすれば、唯一の同い年の親友だったのだ。 当時のホシノちゃんは、絶対に認めなかっただろうけど。
「ホシノちゃん、最初はライちゃんのこと、得体が知れないって言って警戒してたんだけど、
あの頃のホシノちゃんも本当に可愛かった。
昔のホシノちゃん、私に対してもライちゃんに対してもすごくわかりやすく懐いてて、まるで子犬みたいだったな~。
「・・・本当に、懐かしいね」
「ユメ先輩・・・」
「・・・あ、見て見て! これ、ライちゃんがアビドスに入学した時の写真!」
そう言って見せた写真には、"祝入学"と書かれたパネルの前に花束を持って立つライちゃんの姿がある。
写真に映るライちゃんは無気力な瞳をしているものの、その表情はどこか照れくさそうだった。
「・・・わ、ホントに中性的な顔立ちしてるわね。 確かにこの見た目で男口調だったら男の子みたいに思うかも」
「綺麗な青髪ですね~、まるで夜空みたいな濃紺で・・・」
「・・・この瞳の赤色、ユイロの右目にそっくり。 ユイロの右目も、ライ先輩と同じような血みたいに濁った赤色だった」
「・・・言われてみれば、この青髪もユイロさんの髪と似ていますね。 ユイロさんの髪は首から上の部分が
・・・確かに、ユイロちゃんの容姿にはどこかライちゃんを想起させる要素がある。
でも、ユイロちゃんがライちゃんなんてことはあり得ない、他人の空似だろう。
だってライちゃんはもう・・・・・・帰ってこれないはずなんだから。
(何・・・? この音・・・・・・)
その日、私はすぐ近くで起こった激しい爆発音で目を覚ました。
私は確か・・・砂漠で遭難して、そのまま砂漠の熱で意識が朦朧として・・・。 でも、その時はこんな日陰にはいなかった。
心なしか、倒れた時より身体が楽になっている気もする。
(もしかして、ホシノちゃんとライちゃんが助けに来てくれたの・・・?)
まだ意識が朦朧とする、空腹と脱水で体がうまく動かせない。
そんな中、どうにか地面に横たわる体を捩って音のする方を見ると、そこには・・・・・・
(・・・ぇ?)
白い蛇、あるいは鯨のような怪物に、単身で立ち向かうライちゃんの姿があった。
(ダメ・・・! 助けなきゃ・・・)
そう心は叫んでいるのに、私の身体は言うことを聞かなくて、立ち上がることすらできやしない。
あんな化け物相手に、たった一人で抗えるワケがない。 ・・・そう、思った。
でも、実際に見ているとライちゃんはレーザーを回避し、冷静にミサイルを撃ち落とし、大きく空へ跳躍すると鉄筋で装甲を殴って破砕した。
「暴れんなッ・・・!」
その怪物が身を大きく捩って振り落とされても、鉄筋を振って起こした空気の壁で砂嵐を防ぐ。
ただ、砂煙の向こうから飛来したミサイルは防ぎきれず、モロに喰らってしまい地面に体が打ち付けられる。
けど、そんな中でもしっかり受け身は取っていた。
砂煙が晴れると、今度は怪物がレーザーのチャージを完了させていた。
(マズい、あの位置じゃ避けられな・・・・・・えっ?)
この時は、本当に信じられないモノを見た気分になった。
ライちゃんは鉄筋を何度も振り、文字通りレーザーを斬って自身に当たらないようにしていた。
レーザーが終わる間際、下から大きく斬り上げて衝撃波を怪物にぶつけると、その勢いのまま跳び上がる。
「幕引きの、時間だ!!」
ライちゃんは鉄筋を上段に構え、怪物の頭部の装甲を砕かんと振り下ろす。
・・・でも、その攻撃が通ることはなかった。
ライちゃんの鉄筋は衝撃で粉々に砕け散り、発射されたミサイルがライちゃん目掛けて飛んでくる。
そして怪物は、重力に従って落下するライちゃんを殺そうとレーザーのチャージを始めた。
・・・それでも、ライちゃんは最後まで抗うことをやめなかった。
飛来するミサイルの隙間を縫うようにリボルバーを発砲し、怪物に一矢報いることに成功した。
(ぁ・・・ダメ、意識が・・・・・・)
私が最後に見たのは、ミサイルが全て直撃し無防備な状態のライちゃんが、怪物の熱線に焼却される場面だった。
「・・・ここは」
次に気が付くと、私は病院のベッドで横たわっていた。
「っ、ユメ先輩・・・!」
「ホシノちゃん・・・?」
私が目を覚ますと、ホシノちゃんが周りに目もくれずに駆け寄ってきて、私の存在を確かめるみたいに強く抱き締める。
「ホシノちゃん、そんな強く抱き締めたらいたいよ~・・・?」
「ぁ・・・ごめんね、ユメ先輩。 嬉しくてつい・・・」
少し見ない間にずいぶんと雰囲気の変わったホシノちゃんが言うには、私は何ヵ月も意識不明の昏睡状態だったらしい。
病室の窓を見ると、外は雪が降り積もっていた。
「・・・毎日毎日お見舞いに来て、もう目を覚まさないんじゃないかって・・・」
「ホシノちゃん・・・」
そう涙を浮かべながら笑ったホシノちゃんの小さな体を、今度は私からしっかりと抱き締める。
「心配かけてごめんね、ホシノちゃん。 私ならここにいる、だから泣かないで、ね?」
「ユメ先輩・・・ユメ、せんぱい・・・!」
ホシノちゃんは私の胸に顔を埋めると、子どもみたいに大泣きした。
何ヵ月もずっと一人きりで、ずっと心細かったんだろう。 今までの不安が上書きされるようにと、私はホシノちゃんを強く強く抱き締め、泣き止むまでずっと頭を撫で続けた。
・・・“一人きり”。
(そうだ、ライちゃんは・・・)
「・・・ホシノちゃん、ライちゃんは・・・」
「あー・・・えっとねぇ、ライなら今ユメ先輩の治療費を集めに出稼ぎに行ってて」
・・・違う。 ライちゃんは砂漠で怪物と戦って、もう・・・・・・。
「ホシノちゃん、今から話すのは、荒唐無稽で到底信じられないような話なんだけど───」
そうして、私は砂漠で見たことを包み隠さずホシノちゃんに話した。 白い巨大な蛇、それに単身で立ち向かったライちゃん。
そしてその果てに、ライちゃんが死んだことも・・・。
「・・・そっ、かぁ~。 見ちゃってたんだ、アレ」
私が話を終えると、ホシノちゃんは困ったような苦笑いを浮かべていた。
「ユメ先輩、ライは生きてるよ」
「・・・そんなの嘘だよ。 あんなのに焼き尽くされて、生きてるハズがないもん」
「う~ん・・・・・・ユメ先輩、実は私、今まで隠し事しててさ。 ちょっとビックリするかもしれない内容なんだけど───」
そうしてホシノちゃんは私に話した内容は、確かにホシノちゃんの言う通り驚くような話だった。
“黒服”という大人のこと、ホシノちゃんがソイツから契約を持ち掛けられていたこと、ソイツがホシノちゃんの知らないところでライちゃんとも接触していたこと。
そして、ライちゃんは私を病院に送るためにソイツと契約を交わして、ホシノちゃんにアビドスを託したこと。
なんでホシノちゃんが詳細を知っているのかと問えば、例の黒服からライちゃんの戦闘ログデータを貰ったらしい。
この場で見せてもらったが、確かにあの時見た光景と映像が一致した。
ホシノちゃんは、私にその日の出来事を話している間、ずっと己の無力を悔やんでいた。
曰く「私は何もできなかった」、「私のせいで、ライはアイツを頼らざるを得ない状況に追い込まれた」と。
ホシノちゃんの話を総合すると、ライちゃんは私をあの怪物から守るために戦って死にかけた。
ただ、その後黒服によって命を取り繋げたライちゃんは、私を病院に入院させるために自分の身を売った。
“出稼ぎ”というのは、あながち間違いでもないみたいだ。
(・・・私が今こうして生きていられるのは、全部ライちゃんのおかげ・・・)
・・・でも、私に何か返せるものなんてない。 それにきっと、ライちゃんは償いとか恩返しなんて望んでない。
だから私にできることは、ライちゃんが守ってくれたこの命を、アビドスの未来に繋ぐこと。
そしてここを、ライちゃんがいつでも戻ってこれる場所にする。 いつかライちゃんが帰ってきた時のために。
大丈夫、私とホシノちゃんの二人なら、きっとできるから。
「確かに似てる要素はあるけど、あの飄々としてて笑顔を絶やさないユイロちゃんと、無気力で表情の変化が乏しかったライは結び付かないなー」
「うーん、そうかなぁ? ライちゃん、結構感情出るタイプだったよ? 私がカツアゲされそうになった時なんか、"小悪党如きが、ウチの会長に何してる?"って、すごくドスの効いた声で威圧してたし」
((((なにそれ怖い・・・))))
「あったねぇそんなことも。 ライってば、態度ではユメ先輩のことをあまり心配してなさそうに振る舞うクセに、いざユメ先輩が絡まれてるのを見るとすごく怖い笑みを浮かべて突っ込んでたからねぇ」
ホシノちゃんの言葉と共に、昔のライちゃんを思い出す。
ライちゃんは、元々虚無的な性格をしていて、瞳もそれを表しているかのように光がない。
文字通り血のように赤黒く濁っていて、そんな目をしたライちゃんが口元は笑みを浮かべ、ドスの効いた声と共に迫ってくるのだ。
チンピラや小悪党なんかはそれを見ただけで萎縮して逃げ出したし、正直助けられる側である私から見ても少し恐怖を感じる程度には・・・・・・うん。
「・・・じゃあ、エファイルさんとも違いそうね。 あの人もユイロさんみたいな飄々とした人だったし」
「いや、ほんとほんと。 アレはどう見たって別人だよ、いまだにあんな怪しいのがユイロちゃんの顧問だなんて信じきれないし」
「怪しさって点なら、割とユイロさんもとんとんな気がするけどね・・・」
・・・セリカちゃんとホシノちゃんの言う通り。 どう考えたって、ライちゃんとエファイルさんが結び付くハズがない。
なのに・・・なんでだろう。 言葉では説明できないのに、何故かあの人の雰囲気から懐かしさを感じた。
・・・ホシノちゃんが言うには、ライちゃんは黒服に連れてかれて消息不明。
もしあの感覚が間違いじゃないのなら、きっとエファイルさんは・・・・・・。 いや、悪い方に考えるのはよくないな。
ライちゃんはきっと今もどこかで生きてる。 私はそう信じて、ライちゃんの故郷を守り続けなくちゃ。
「まぁまぁ、そう言わないであげてよセリカちゃん。 ユイロちゃん、セリカちゃんが拐われた時大慌てだったんだよ?」
「え、そうなの?」
「うん。 先生がセリカちゃんの反応が途絶えた場所から追跡するって言ったら、"そんな悠長なことしてるヒマないわ! ワタシはさっさと現場で足止めしてるから、アナタ達も来なさい!"って叫んで、ドローンの映像を送ってきたくらいには」
「へぇ~・・・。 あの人、結構感情的に動くタイプなのね。 なんというか、普段とのギャップが凄いわね・・・」
そんな会話が続く中、ふと廊下の方から足音が聞こえてきた。
足音の主はこの部屋の前で止まると、“バンッ”と音を立てながら勢いよくドアを開け放った。
「どうもこんばんは、遅刻者一名入場で~す!」
謎にテンションの高い笑顔のユイロちゃんが部屋に入り、流れるように席に着く。
思っていたよりも早く来たな、というのが正直な感想だった。
エファイルさんがミレニアムにあるMemento moriまで戻ってユイロちゃんに仮面を届け、そこからユイロちゃんがアビドスに来る。 そうなれば、そこそこの時間を要すると想定していたからだ。
「ほら、今日は定例会議なんでしょ? ワタシが遅れてきて時間押してるんだし、さっさと始めなさいな」
私も含めた皆が呆気に取られていると、ユイロちゃんは頬杖をついて会議を急かしてきた。
・・・遅刻してきたのだから少しくらい悪びれてもいいのではないか、と思ったのは、きっと私だけではないだろう。
なんとか間に合って一安心。
誤字脱字を確認する余裕がなかったので、もし見つけたら誤字報告でこっそり教えてください。
□本編に一言
ユメ先輩を曇らせることは万死に値する・・・らしい。