その名に宿るは嘘か未来か 作:アトランティスの観測者(自称)
Tips : 装飾
NecroWingにはサイトの右に、DoomsWingには左にそれぞれ、黒/白の折り畳まれた翼のような装飾がある。
神秘がチャージされることで展開され、最大までチャージされると青白く発光するようになる。
成り行きでユイロがシャーレを手伝い始めてからかれこれ三日、ユイロは先生と共に大量の書類を捌き続けていた。
["うぅ・・・多すぎる・・・・・・。 か、カフェインを・・・"]
「あのねぇ、もう今日だけで三本飲んでるじゃない。 一旦休憩なさいな、こっちはあらかた片付いたから、ね?」
流れるような動作でエナジードリンクに手を伸ばそうとした先生はユイロが未開詮の缶を取り上げたことで宙をただようことになる。
["ありがと・・・ゆいろ・・・・・・"]
(・・・だーいぶ参ってるわねぇ)
普段仕事で様々な書類を捌いているユイロは慣れたものだが、先生はまだここへ来て四日である。 まだまだ書類を捌き切れるほど慣れておらず、ユイロがいなかったら今頃もっとボロボロになっていただろう。
(・・・あら?)
そんな中、ユイロは書類の間に挟まっていた一枚の手紙を発見した。
(これは・・・アビドスからの手紙みたいね。 メインストーリーではアロナが反応してたからてっきり電子かと思ってたのだけれど、まさかアナログで送られてきたの?)
「はい先生、アナタ宛の手紙よ。 とりあえず読んどきなさいな」
先生はユイロに渡された手紙を開封して目を通すと、少し元気を取り戻したように立ち上がり一言宣言をする。
["・・・うん、よし。 ユイロ、これからアビドスに行くけど、ユイロは来る?"]
「えー・・・っと、ワタシは・・・・・・」
(・・・どうしましょう。 行くつもりではあったけど、いざ帰省となると心の準備が・・・)
《何を躊躇っているのですか。 後ろめたいのはわかりますが、元からこうなるとわかっていたのですから同行すべきですよ》
(・・・ま、そうね。 ホシノの様子も直接見てみたいし、この姿なら正体はバレないだろうし、居合わせた方が不測の事態にも対応できるでしょうし)
「・・・うん、そうね。 同行させてもらうわ」
["ありがとう。 ユイロがいると心強いよ"]
そんな風に脳内で言い訳を用意し、ケイの説得もありユイロは同行を選択した。
《“故郷が心配だから付いていく”で伝わります》
(ケイちゃん、お黙り)
《誰がケイちゃんですか。 ・・・私もユイロの故郷には興味があります》
(・・・アビドスには何度か一緒に行かなかったかしら?)
《ただその土地へ行くのと、特定の人と縁のある地へ行くのとでは違うんです》
(・・・そういうものかしら)
涼しい顔をしてお手製のコーヒーを飲むユイロの脳内ではそのような賑やかな会話が繰り広げられている一方、仕事の手を止めた先生もユイロが淹れたコーヒーを飲んで一休み。
["・・・あれ?"]
「どうかしたの?」
["ユイロってブラックコーヒー飲めるんだね"]
「あー、まぁ。 ・・・中々に珍しいでしょう?」
そう言うユイロの表情はどういうわけかあまり明るくない。 言葉にも自嘲が混ざっている。
先生がそれに対する疑問を抱くも、間髪入れずにユイロが口を開いた。
「それで、いつ向かうの? 救援の要請なら早い方がいいんじゃない?」
["そうだね・・・。 ユイロが書類をある程度片してくれたし、早速明日出発しよっか"]
「オッケー、道案内はワタシに任せて。 アビドスなら慣れてるわ。 水の用意だけは忘れずにね」
◁ 翌日 ▷
シャーレのビルにあるコンビニ、エンジェル24で大量の水を買い込んだ後、二人はアビドスへ向けて出発した。
そしてアビドス自治区へ到着した。
道中? そんなものは全カットである。
["・・・あ、暑い・・・・・・"]
「はいはい、次の水よ。 空のペットボトルは回収するからちょうだいねー」
そんなやり取りをしながら、しかし辿る道に迷いはなく。 先生もまたユイロを信頼してか何も言わずに追従するのみ。
["それにしても、本当に慣れてるんだね"]
「あら、もしかして信じてなかったのー?」
["そういうわけじゃないよ。 ただ、ここまで迷いなく進めるほどとは思ってなくて。 ほら、まるで目印もない砂漠の街でしょ?"]
振り向きながらいたずらっぽい笑みを浮かべるユイロの揶揄いを軽くあしらうと周囲を見回しながらそう言葉を続ける。
「ふふっ、まぁねぇ。 Memento moriの仕事柄、あちこち動き回ることになるのよ。 ・・・ほら、さっさと行きましょ」
(・・・昔に何度もホシノ達と三人で歩き回った道だもの。 そりゃ、よく覚えてるわよ)
ユイロは再び前を向くと、先生を先導して歩いていく。 ユイロがどこか哀しそうな、寂しそうな表情を浮かべたのは、誰の目にも写ることなく砂煙と共に消えていった。
先ほどのやり取りからさらに3時間が経過し、太陽の光が鬱陶しく感じるようになってきた頃。
(・・・ありゃりゃ、そろそろ限界っぽいわねー)
ユイロの後方を追従する先生がだいぶふらついてきた。 普段運動していないせいで体力切れを起こしているのだろう。
しかしユイロはそんな先生の様子を知ってるにも関わらず放置して歩を進める。
["ゆ、ユイロ・・・休憩を・・・・・・"]
「・・・・・・・・・・・・」
先生に休憩を提案されても薄く笑みを浮かべて進むのみ。
["もう・・・限界・・・・・・"]
「・・・・・・ま、思ったよりも持った方かしらね。 お疲れ様」
体力の限界が訪れぶっ倒れた先生を受け止めるとそのまま日陰で横にして上から水をかける。
["おぼっ・・・おぼぼ・・・・・・"]
「ほらほらちゃんと飲む」
["お、鬼・・・悪魔・・・"]
「ふふっ、よく言われるわ♪」
そんな悪ふざけをしていると(※一応先生は熱中症と体力切れだからあまりふざけてる場合ではない)、後方からロードバイクに乗った一人の少女が近付いてくる。
「・・・ん、何してるの・・・?」
「んー? 見りゃわかるでしょ? 干上がった草に水やりしてるの」
「・・・いや、どう見ても人間だけど」
["・・・おぼっ、いやそれが、おぼぼっ、体力の限界が来ちゃっおぼぼぼぼ"]
「・・・一回やめてあげたら?」
「何言ってるの? 水分補給は大事でしょ?」
「それはそうなんだけど・・・」
そう言いながら困惑した表情で目の前の二人組を見る少女。
「・・・ま、お遊びもほどほどにするとして」
["・・・ねぇ、やめたのペットボトルが空になったからだよね???"]
「・・・もう一本飲みたいなら素直にそう言いなさい?(ニッコリ)」
["ナンデモナイデス…"]
さすがにこれ以上は話が進まないと判断したのか水が空になったところで水やりを止め、口を挟もうとした先生を笑顔で黙らせると現地民と思われる生徒に向き直る。
「ま、見ての通り、コレが体力切れでダウンしちゃったのよ。 アビドス高校に用があるんだけど、こんな有り様じゃ進めないでしょ?」
「ん、お客様だったんだ。 もしかして連邦生徒会の人?」
「端的に言えばそうなるわね。 というわけでおぶってやってくれない? ロードバイクくらいなら転がしてけるわよ」
「・・・そういうことなら」
道端で会ったアビドススナオオカミに先生をおぶってもらってアビドスに到着した。 久々の故郷に懐かしさを覚えながらシロコちゃんに案内してもらいアビドス廃校対策委員会の部室を訪れる。
あ、道中はカットだ。 先生がシロコちゃんのうなじに顔を埋めていい匂いとか言ってたが原作と変わりないし。
ちなみにそれを聞いた
ケイちゃんはもっと引いてた。
「ただいま」
シロコちゃんが対策委員会の部室の扉を開けると、懐かしい顔ぶれと初めて会う後輩ちゃん達が温かく迎え入れ───
「おかえり、シロコ先、輩・・・って、その人達誰!?」
───てくれることはなく、セリカちゃんの驚きの声を頂いた。 そして部屋には後輩ちゃん達しかいない、ホシノとユメ先輩はいずこへ・・・。
まぁいい、ひとまず挨拶から済ませよう。
「どうも、お邪魔しま~す♪ 連邦捜査部のガサ入れで~す」
「が、ガサ入れ!? 私たち何も悪いことなんてやってないわ!」
「それはどうかしら? なにやら怪しい効果を持つアクセサリーを買ったコがいるって聴いたのだけど」
「えっ、」
心当たりがあるのか、セリカちゃんが言葉を詰まらせながら何かを後ろ手に隠した。
「はい、アナタね。 ブツは押収させてもらうわ」
「あっ、ちょっと返しなさいよ!」
「ふむふむ・・・ブレスレットが二つ。 ってコレ、何の変哲もない詐欺商品じゃない。 わざわざ取り上げて損したわ・・・。 はい、お望み通り返すわね」
「さ、詐欺商品・・・? せっかくお小遣い貯めて買ったのに・・・・・・」
そう言うと膝から崩れ落ちるセリカちゃん。 心なしか負のオーラのようなものを纏っている。 実に哀れなり。
「ま、おふざけは置いておいて。 こっちの大人はシャーレの先生。 そしてワタシはそのお手伝いとして来た夜美月ユイロよ、よろしくね」
そうして簡単な自己紹介をしたタイミングで、校門の方から物々しい音が聞こえてきた。
「わわっ!? 武装集団が学校に接近しています! カタカタヘルメット団のようです!」
「あいつら・・・! 性懲りもなく!」
「ホシノ先輩とユメ先輩を呼んできますね~!」
「セリカちゃん! 正気に戻って!」
「ふふっ、賑やかね~」
さて、それじゃあ後輩ちゃん達のお手並み拝見といきましょうか。
《そういえば、ユイロはどう戦うつもりですか? ユイロから聞いた限りだと、下手に戦えば戦闘スタイルからホシノに正体を結びつけられる可能性もあるのでは?》
(それについてはご心配なく。 こんなこともあろうかと、
《いつの間にそんなもの作ってたんですか》
ということで、リボルバーはホルスターにしまったまま一本のライフルを取り出す。
とはいえ、俺は元の持ち主と違いクイックショットはあまり得意ではないから、基本後衛として戦うことになるだろう。
「ホシノ先輩達を連れてきました! ほら先輩、起きてくださ~い!」
「ホシノ先輩、ユメ先輩! ヘルメット団が再び襲撃を!」
「むにゃ、まだ起きる時間じゃないよー」
「違うよホシノちゃん、襲撃だって」
「うへぇ、そりゃ大変だ~。 ってありゃ? この人たちは?」
そう言ってこちらを見るホシノは、一見してぽわぽわしてるものの完全に警戒されている。
とはいえ、思ってたよりマイルドだな。 おそらくユメ先輩がご存命だからだろう。
「こちらはシャーレの先生と、そのお手伝いで来たユイロさんです!」
「よろしく~♪」
「あ~、アヤネちゃんが救援要請を送ってたアレかぁ~」
「よかった~! アヤネちゃんもありがとうね」
「い、いえ! これもアビドスのためですので・・・! それよりも皆さん、ヘルメット団を」
「ん、すぐに出るよ。 先生のおかげで弾薬も補給品も十分。 ユイロもいるし、あのくらいなら余裕」
(・・・おっと?)
いやはや、野生の勘というのは恐ろしいな。 さすが戦闘民族、この短期間で早くも俺の戦闘能力の高さに勘づいているとは。
とりあえず、適当にはぐらかしておこう。
「あら~? ワタシはそんな前線でガンガン戦うようなタイプじゃないわよ?」
["え? この前思いっきりリボルバーでインファイtむぐぐ"]
余計なことを言おうとした先生の口を塞ぎ、扉に目線を向けて対策委員会に現場へ向かうよう促す。
「ほら、ワタシのことは気にせずさっさと行きなさいな。 先生はここで戦闘のサポートを、ワタシは狙撃でアシストするからさ」
「・・・りょうか~い。 それじゃ、ちゃちゃっと片付けちゃおっか」
先生が指揮を執るにあたり、全員の名前と戦闘スタイルを簡単に共有し戦闘に臨んだ。
結論から言おう、楽勝超えて圧勝だった。
特段危なくなるような場面もなく、せっかく用意したライフルの出番もなし。
『カタカタヘルメット団残党、校外エリアへ撤退中。 皆さんお疲れ様でした、学校へ帰還しましょう!』
あんなにイキイキとしてたヘルメット団が見る影もない。 哀れ哀れ。
・・・少し魔が差した、去り際に一発。
「痛ったぁ!!?」
・・・ま、てきとーにこさえた劣化版じゃこんなもんか。
さて、それじゃあ戦闘を終えての感想だが・・・。
《随分、聞いてた話と違ってますね。 かつてのユイロが縁を持つ二人の戦い方が》
(えぇ、そうね)
まずはユメ先輩。 装備は変わってない、小型の拳銃と盾がそれぞれ一つ。
だが、盾に生じる防御力が異常だ。 とにかく守りに特化しており、移動速度も速い。 盾を自在に操り、一人でほぼ全ての弾丸を弾いていた。
タンクという次元を越えている。 アレはもう難攻不落の城壁だ。
全力の俺が崩せるかどうか・・・。
《ユイロの全力なら流石に行けるでしょう。 デカグラマトンの預言者を単騎でおもちゃにしてるんですから》
(そうかな・・・そうかも・・・)
で、問題はホシノ。 こっちは余りにも別人だった。
まさか、ショットガンとリボルバーで戦っているとは。
俺の形見のつもりだろうか? らしいと言えばらしいが・・・。
それより、アレは脅威だな。 ただでさえキヴォトスの最強が、防御を捨ててフルアタックだなんて、考えたくもない。
いや盾持ちでも硬すぎて相手したくないんだが。
ただ、ショットガンの有効射程外から単発高火力を叩き出せるリボルバーはホシノに合っているといえる。 リボルバーの火力は身を持って知っているしな。
「ほら、ユイロちゃんも帰るよ~ってアレ? なんだか考え込んでるみたいだけどどしたの~?」
「・・・あぁ、いえね。 アナタ達の腕前を見て、なんであんなのに今まで苦戦してたのか疑問に思っただけよ」
「いやぁ~、おじさんも昔はぶいぶい言わせてたんだけどねぇ~。 今じゃすっかり衰えちゃって」
・・・でまかせ言いやがって。 お前みたいな老いぼれがいてたまるか。
「それに、私たちけっこー物資が厳しくてさぁ。 定期的にどこかから救援物資が届くんだけど、ここ最近は少し量が減っててねぇ~」
あーそれ俺のせいだな。 ここ最近はシャーレオフィスの防衛にリソースを割いてたからお小遣い稼ぎができてなかったんだ、悪かった。
「・・・ふゥん? こんな辺境にモノを送りつけるなんて、物好きなヤツね」
「いや、ホントホント。 ま、助かってるのは事実だから、感謝してるよ。 さ、帰ろっか~」
「そうね、そうしましょ」
横に並び、歩調を揃えてアビドスへの帰路を辿る。 たったそれだけのことに懐かしい感覚を覚えるのは、きっと俺だけなんだろうな。
ちなみに先に言っておくと、ユイロが持ち込んだSRの持ち主であるMemento moriのメンバーはオリキャラです。
あ、この作品はストックがあるうちは4日に一度のペースで更新していく所存。 この前みたくイレギュラーが発生したらノリと勢いで更新するかも。