その名に宿るは嘘か未来か 作:アトランティスの観測者(自称)
Tips : 特殊警棒
とあるヴァルキューレの
所有者権限で改造され、リボルバーと同様、ユイロ特製の翼型アタッチメントが装着されている。 ただし、リボルバーのモノとは違い羽の部分が刃になっている。
アビドスへ戻り、改めて双方共に自己紹介を行う。
とは言え、俺はその内容を知っているので適当に聞き流していたが。
「夜美月ユイロ、Memento moriっていう店の店長をしているわ。 今回はシャーレのお手伝いで来たけど、何か個人的な依頼とかあったら言ってちょうだい」
と、俺自身のことを軽く話し、あとはアヤネの紹介を流し聞きする。
さすがに全て聞き流すワケじゃないぞ? 必要な情報はちゃんと抜粋しているからな?
「こちら、三年生のお二人です。 委員長のユメ先輩と、副委員長のホシノ先輩」
「よろしく~」
「よろしくっ! 先生、ユイロちゃん!」
「・・・待って、二人とも三年生なの? ホシノが戦闘中に“ユメ先輩”って呼んでいた覚えがあるのだけれど」
ということで、前々から気になっていた疑問を早速ぶち込んでみる。
一応の仮定として、先生が来てからのこの世界はいわゆるサザエさん時空のようなモノだと考えているのだが、それ以前は過去があり時の進みがある。
そうなれば、本来ユメ先輩は今頃アビドスを卒業しているハズなワケで・・・。 どういう経緯でここにまだ残っているのかは本人の口から聞いておきたい。
「あ~、それねぇ・・・」
そう言い淀むホシノには、まだ来たばかりの俺達への疑心が感じ取れる。
ま、向こうからすれば、俺達を信用できるかまだ判断しかねているだろうからな。
「えっとね、私は昔死にそうになったの」
["死に・・・!?"]
あ、言うんだ。 皆すごい驚いてるな。 特にホシノなんか目を見開いてユメ先輩をガン見してる。
「それが原因で半年くらい入院してて、それで留年することになっちゃったんだ」
「・・・詳しく聞かせてもらえる?」
実を言うと、俺自身はその場に立ち会っていたものの、そこから先のことはなにも知らない。
あくまで、俺ができたのはユメ先輩を救助してホシノに預ける所までだった。
「えーっとね・・・───」
そうして、ユメ先輩は事の顛末を話してくれた。
一人で砂漠へ行き、砂嵐に巻き込まれて遭難したと。
・・・あぁ、そうだな。 俺もあの日のことは鮮明に思い出せる。
「あーもう、どこ行ったんだあのほんわかゆるふわ先輩は!」
広大な砂漠を、焦燥感に駆られて走り回る。 理由は単純、ユメ先輩がいなくなった。
(チッ、ここもハズレか!)
備えはしていた、止めれるなら止めたかった、だが失敗した。
まるでそれが決められた運命であるかのように、既に確定された脚本であるかのように、ユメ先輩とホシノは喧嘩し、そして・・・・・・。
いや、今はよそう。 事態は一刻を争う。
彼女たちの喧嘩からもう七日、睡眠を削っているから俺自身も体力の損耗が激しい。 水と食料はできる限り持っていたが、人一人が携行できる量なんてたかが知れている。
あと四日分持てば関の山、それでもかなり節約しなければならない。
量を減らせば消耗が加速し、一度に多く摂れば捜索に割ける時間が減る。
キヴォトス人は外部からのダメージには強いが、その実生命力は年齢相応だ。 なんなら、神秘とかいう摩訶不思議なチカラがあるからか、世間一般的な人間に比べればむしろ補充の効率は悪いと言える。
俺はその分野には詳しくないし、そんな限界状況に陥っての耐久テストなんてしたこともないから、あくまで自身の感覚としての話だが。
だから実際はめちゃくちゃ燃費がいいですなんて可能性もあるが、都合のいい方向に考えても状況は好転しない。
(ここにはマガジンだけか、次の反応は・・・!)
あぁ、ちゃんと備えていたさ。 ユメ先輩が持つであろう荷物に用意できるだけの発信器を予め可能な限り設置してた。
それでなおこのザマだ、砂嵐で砂漠のあちこちに散らばり、反応のある場所をしらみ潰しに捜すしかない。
反応は全て止まっていた。
もしユメ先輩にまだ意識があるのなら、間違いなくアビドスへ戻ろうと彷徨っているはずなのだが、それはあくまで“もしも”にすぎない。
食料も水もないだろう状況で七日も経っていると考えれば、既に意識が混濁している可能性の方が高い。
もし動いている反応があれば、それは風か何かで飛ばされているだけだろうと考える方が自然だ。
・・・ホシノは家に籠ってる。 ユメ先輩がいなくなったと伝えたら自責からか塞ぎ込んでしまったようだ。
悠長に説得してられるほどの時間はなかった。 一応発破はかけておいたから、あとは信じるしかないな・・・。
(ここが最後の反応だが・・・これは盾か。 重い物ほど飛びづらいと考えれば、近づいてる証拠、か?)
とはいえ、あまり鵜呑みにすることもできないが。
ひとまず、発信器の反応はこれで全て。 あとは今までの反応の場所から砂嵐によって拡散された範囲を予測し、更にコンパスのないユメ先輩の行動範囲からどこまで移動できるかを・・・。
(だぁ~~~メンドくせぇ!!!)
多い、考慮すべき事象が多い。
だが、だからと言って投げ出すことはできない。 今ユメ先輩を見つけられる可能性があるのは俺だけなのである。
(帰りの分とユメ先輩のための物資を考えると、残り二日と半日がリミットか・・・。 それ以上は最悪共倒れのリスクがあるな、今はホシノをアテにできない。 黒服を頼るのは・・・最終手段だな、何を要求されるかわからない)
(・・・っ、見つけた!)
結局、ユメ先輩が見つかったのは物資が尽きる寸前だった。
崩落したビルが数多ある、かつて都市であったろう場所。 偶然にも、俺がユメ先輩に命を救われた日と似たシチュエーションだ。
(・・・息はあるな。 ひとまず水を飲ませよう、最後の一本だが、優先度というものがある。 そしたらホシノにも見つかったって伝えておくか。 電話に出るかはわからんが)
ユメ先輩の口に水を流しつつ、スマホを取り出してホシノに電話をかけてみる。 数コールが鳴った所で、大地が揺れた。
「・・・は?」
後ろから大きな音が鳴り響き、巨大な影を形成する。 太陽を遮るソイツに目を向ければ、蛇のような、鯨のような金属の塊が顕現していた。
「オイオイオイ、嘘だろ・・・!」
デカグラマトン第三の預言者 ビナー
「なんでよりによって今お前が来るんだよ、ッ危な!」
こちらの問答など聞く気がないとでも言うように照射されたレーザーを、咄嗟にユメ先輩を背負い間一髪で回避する。
(地面は燃えてないか・・・? なら全力じゃないんだろうな、どうにか突破口を開ければいいが・・・)
「次はミサイル・・・! 行動パターンとかもう覚えてないっての!」
右に左に跳び回り、ミサイル同士を衝突させて数を減らす。 それでも全てを消すことはできず、何発か喰らい爆風で吹き飛ばされる。
(あー面倒だなぁホントさぁ!)
退路は、ない。 捕食者がみすみすと獲物を逃がすハズがないからだ。
時間はない。 自身の肉体もそうだが、ユメ先輩の状態がかなりマズい。 急がないと手遅れになりかねん。
ただでさえ無事に帰れるかかなり怪しいラインだと言うのに・・・。
となれば、残された道は───
「叩き潰すしかない、か」
『───イ? ・・・ライ?』
「アツィルトの光で地面が燃えないなら、お前は最大で
ユメ先輩をビルの日陰に寝かせ、獲物を取る。
右手に一本のリボルバー、左手には扱いやすいサイズに加工したビルの鉄筋だったものを構え、ユメ先輩に余波が届かないよう走り出す。
誘導しつつ、まずは挨拶代わりにリボルバーを撃ってみる。 当然と言うべきか、ビナーの装甲に弾かれロクなダメージを与えられない。
(・・・
コレは範囲が決まっている、防ぐのは困難だが、範囲外に移動すれば回避は容易だ。
最悪多少なら喰らっても強行突破できる。
(・・・
速度は速いが、見切れない程ではない。 集中して威力を込めたリボルバーで撃ち抜けば破壊できる。
もっとも、爆発はビナーの装甲に大した損傷は与えられないが。
(と、いうことで・・・!)
「結局、
アツィルトの光はチャージの時間が長く、照射時間も長いので隙が大きい。 範囲外に待避し、ミネ団長のEXスキルを参考に大ジャンプ。
ビナーに肉薄し、鉄筋でぶん殴り装甲を破砕する。 すかさずぶち抜いた穴に弾丸をお見舞いしてやると、ビナーが苦しむように身を捩る。
「暴れんなッ・・・!」
どうにかリロードをして四発撃ち込んだところで、ビナーが大きく体を振ったことで振り落とされる。
俺を振り落とした勢いのままビナーは砂に潜り、
「チッ・・・」
地面へ逆さまに落ちながら、鉄筋を振り払うことで衝撃波を発生させ、空気の壁で砂を防ぐ───\prrrrrr/
(・・・電話?)
着地に備えて空中で体勢を整えつつスマホを取り出し着信相手を見ると、黒服と表示されていた。
(なんでアイツから・・・今電話出れる状況じゃねぇってのに・・・。 いや、アイツならそのくらいわかってるハズよな。 つまりその上で俺に伝えたいことがあるってことか?)\pi/
『クックックッ、どうやら苦戦しているようですね』
イヤホンを装着して着地し、渋々電話を取ると、開口一番にそう問うてくる。
「いや、そうでもないけど」
『マジですか???』
砂煙越しに聴こえてくる音から次の攻撃がミサイルであると判断し、音源へ向けてリボルバーの引き金を引く。 あ、弾切れした。
「あー、痛い痛い痛~い」
破壊できなかったミサイルがモロに命中し、そこそこにダメージが入った。
『微塵も痛そうに聞こえないのですが・・・』
「痛いのはホントだよ。 ダメージを回復するアテもないし、俺の自己回復能力はあまり高くないし、コイツの火力も高いし。 でも、所詮いんさね以下ならビナーくんはビナーくんだから」
『いんさねってなn待って今ビナーくんって言いました????』
ミサイルによる砂煙が晴れると、ビナーがレーザーのチャージを完了させていた。
回避・・・は今からじゃ間に合わないか。 よし、斬ろう。 ホシノは盾で防いでノーダメージだったんだ、俺にできない道理はねぇ。
構え、レーザー照射。
見切り、一閃。
手を緩めるな、防御を続けろ。
『すみませんライさん、私の目に狂いがなければ今貴方はビナーのレーザーを鉄筋で斬り続けているように見えるのですが』
「今忙しいから少し黙っててくれ」
『アッハイ』
少しでもタイミングをミスれば熱線に灼かれる。 今黒服との話に脳のリソースを割ける余裕はない。
(・・・ここ!)
アツィルトの光が撃ち終わるタイミングに合わせ、下から大きく斬り上げ、無防備になったビナーに衝撃波を浴びせる。
カウンターを予想していなかった・・・いや、そもそも俺がほぼノーダメージで立っているとすら思っていなかったんだろう、ビナーが怯んだ。
「悪いが、人を待たせてるんでな」
跳躍、鉄筋を上段に構え。
「あまりお前に構ってやれる時間はないんだ」
ビナーは、慌てたようにミサイルを発射しようと側門を開く。 が、もう既に遅すぎる。
「幕引きの、時間だ!!」
そうして全力を込めた鉄筋を、ビナーの頭部に叩きつける。
空気が揺れ、大地が震え、砂が巻き起こる。
手に持った鉄筋は粉々に砕け散り、武器としての役目を終えた。
・・・だが、衝撃はビナーの装甲を大きく砕いたものの、その威力はビナーの装甲を貫くことはなく。
結果としてビナーは大きな痛手を負うことなく、悠々とアツィルトの光をチャージし始めた。
(・・・ははっ、やっぱ無謀か)
宙をただよい落下する中、目前に迫る数多のミサイルが視界に入る。
(・・・あー、そういや側門開いてたな、もう発射されてたのか)
だが、それでも最後まで足掻いてやろうとリボルバーを構える。
ミサイルの隙間を縫うように放たれた弾丸は、レーザーをチャージするビナーの口を貫きダメージを与えた。
(ハッ、窮鼠猫を噛みってのは恐ろしいだろ。 ・・・次があったら、その時はスクラップにしてやr───)
「・・・うぐ、痛たたた。 やべ~~死にそう、単騎で戦う相手じゃないよやっぱ」
どうやら少し気絶していたらしい。 全身を走る痛みに耐え立ち上がると、既にビナーの姿はなかった。
ダメージから撤退したのだろう、今はそう信じるしかない。
「ユメ先輩は・・・」
ミサイルを全て喰らい満身創痍の中、体を引き摺ってユメ先輩を安置した日陰まで移動し、戦闘の余波に巻き込まれてないか確認する。
(無事か・・・よかった)
「あの、なんで生きてるんですか???」
「会って早々失礼なヤツだな」
背後から声がしたかと思えば、いつの間にやら黒服が立っていた。
・・・コイツが現場に来たのなら、もうビナーは帰ったんだろうな。 コイツがわざわざ危険な場所に足を踏み入れるとは思えない。
「いや・・・大道の劫火を全て受け、無防備な状態でアツィルトの光を浴びたんですよ? 普通の生徒ならとっくに消し炭になっています」
そう言う黒服は一つの手鏡をこちらに差し出してきた。 その鏡を覗き見ると、全身が痛々しい火傷を負っているのがわかる。
「うっわ、こりゃヒドいな。 ・・・というか、お前どこで見てたのさ。近くにいたなら助け船くらい出して欲しかったんだけど」
「そのために電話をかけたんですけどね? ・・・その大怪我は命に関わります。 私のラボで適切な治療を施しますので、着いてきてください」
「・・・断る、って言ったら?」
「貴方に死なれると困りますので、無理矢理にでもと言いたいですが・・・それでは動かないでしょう。 何が望みか言ってください、できうる限りの手は尽くします」
「へぇ、思ってたより
そう言いながら一冊のメモ帳を取り出し、見せびらかすように顔の横で軽く振る。 表紙に記される題目は───
「“世界観測録”。 読んで字の如く、かつて俺が
「・・・さすがにそこまでの無粋はいたしません。 ソレを要求しようものなら、貴方はソレを消し去り、貴方自身もここで朽ちようとすることでしょう」
ははっ、よくわかってるじゃん。
「別にこのまま放置して俺の死体から回収すればいいだろうに、なんで俺を生かそうとする? 目的が読めないと信用できないぜ~?」
「・・・ソレはあくまでも貴方の付加価値です。 真に私の興味を惹いたのは、貴方自身の神秘。 思うに、貴方の神秘はこの世界のモノではない。 歪み、捻れ、そして在り方すらも特殊でイビツな神秘を持つ。 そんな貴方自身に研究の価値があります」
そう言うと黒服は楽しそうに"クックックッ"と笑う。
今まで自覚なかったが、そんな感じなんだな俺って。
転生者だからこの世界のモノじゃないってのはなんとなく理解できるが、特殊な在り方ってのは・・・・・・“先生”、か?
思えば、今この時間に先生はいないのだから“ゲマトリア”がそれを知っている道理もない。
俺自身、“先生”として世界の筋書きに楯突く権限は残ってそうだしな。
キヴォトスの生徒でありながらヘイローの形を識別できるのが何よりの証拠。 それにこうしてユメ先輩を救ける希望だって掴めたんだ。
「・・・なるほどねぇ、よ~くわかった。 じゃ、コレはどうしよっか?」
「今後の長期的な契約の条件といたしましょうか。 私が貴方からソレに記される未来を聞き、対価としてその情報に足るだけの要望、要求に応える」
「ま、その条件ならいいか。 詳細はしっかり詰めるがとりあえず聞きたい、今回から適用か?」
「いえ、今回は貴方の生存に私の利がありますので、次回以降からですね」
「そっかそっか。 それじゃ、ユメ先輩を安全な病院に───」
「・・・ラ、イ・・・・・・?」
「「・・・・・・!?」」
驚くべきことに俺と黒服の動きがシンクロし、同時に声のした音源へと振り向く。
そこには、まるで信じられない物を見たとでも言いたげな顔をしたホシノが呆然と立っていた。
「なんで、ホシノがここに・・・」
「ライ、なんでソイツと・・・いやっ、それよりもその怪我は・・・!」
「あー、悪い。 悠長に説明してられる時間はないんだ。 俺もユメ先輩もかなり状態が危うい」
ユメ先輩は砂漠遭難の脱水に栄養不足。 俺はビナーのミサイルによる多量のダメージ。 どちらもいつ死んだっておかしくない。
というか、正直意識を保つのもかなりしんどい。 黒服に軽口を叩いてるのも強がりだ。
「黒服、どうせさっきの戦いのログ録ってるだろ? コピーでいいから、あとでアビドスに郵送しといてくれ」
「わかりました。 彼女たちはどうしますか?」
「ユメ先輩は正式な病院に搬送して適切な治療を受けさせて欲しい。 もし死なせたらコレは破壊する」
「承知いたしました、暁のホルスは」
「・・・少し、時間をくれ。 別れの挨拶はちゃんとしたいんだ」
「・・・・・・少しだけですよ、あまり長居して死なれるワケにはいかないので」
「・・・ありがとう」
やれやれといった様子で黒服が頷いたのを見て、まだ混乱しているホシノに歩み寄る。
「ホシノ───」
───と、そうして俺はホシノに別れの挨拶を済ませ、一つの約束を取り付け、"アビドスとユメ先輩を頼んだ"と言い残し黒服と共にアビドスを去ったってワケ。
いやはや懐かしいな。
《いや、なんでそこで回想切るんですか!?》
(あまり長く尺取っても間延びしちゃうでしょう?)
《どう考えても一番大事なトコロでしょう!》
(まぁね。 けれど、もうワタシが“ライ”として戻ってくることはない。 だから、最期の別れは思い出として大事に取っておきたいのよ。 コレはワタシのエゴにすぎないけど、たった一つ残された故郷との繋がりだから)
「───と言っても、私はホシノちゃんから聞いただけなんだ。 砂漠で砂嵐に巻き込まれて遭難して、気が付いたら病院のベッドで目を覚ましたの」
と、ユメ先輩は語った。
そうすれば、必然とより詳細を知っているだろうホシノへと視線が集まる。
「うへ、あの時は大変だったな~。 ユメ先輩がいなくなって、
「「「「ライ・・・?」」」」
ホシノのその発言に、対策委員会の後輩組が皆頭に疑問符を浮かべる。
「あ、ライっていうのは当時のおじさんの同級生ね。 皆の先輩だよ、今はいないけど」
「へ~。 そのライ先輩って、なんでいなくなっちゃったの? まさか、他の生徒と同じで砂漠化に耐えかねて逃げたんじゃないでしょうね?」
「違うよ、セリカちゃん。 ホシノちゃんが言うには、私の入院費を稼ぐために出稼ぎに行ったんだって」
《・・・なるほど、それが“約束”なのですね、ユイロ》
(えぇ、自分を庇って後輩が死にかけた~だなんて、バカ正直に言うワケにはいかないもの。 ま、それでもいなくなったことには変わりないから、気に病まないことはないでしょうけど)
「・・・ライはね、"ユメ先輩は正直かなりのポンコツだから、お前がちゃんと支えてやるんだぞ"って言「待ってライちゃんそんなこと言ってたの!?」・・・って言って、ユメ先輩の入院費を一人で賄ってくれたんだ。 でも、ずっと消息は掴めなくて、今どこにいるのかも・・・ううん、生きてるのかすら分からない」
「「「「["・・・・・・・・・・"]」」」」
《目の前にいますけどね、本人》
(ま、見た目も声も何もかも違うからね~。 これで気付けって方が無理あるわよ)
どこか昔を懐かしむようなホシノの言葉には、後悔と無念の混ざった感情が宿っている。
・・・あぁ、正体を明かしてここに帰れたら、どれほどよかっただろう。
けれど、そうすることはないし、するつもりもない。
・・・・・・日の当たる世界へ戻るには、虚無へ染まりすぎた。 後ろを振り返ったところで、そこにもう道はない。
["・・・ライって、どんな子だったの? どんな生徒か分かれば、“シャーレ”で探せるかも"]
「すごく強い子でさぁ~、リボルバーで敵を殲滅しつつ、鉄筋を使って銃弾を弾いたり殴って相手を気絶させたり、衝撃波を起こして地面を粉々にしたこともあったっけ」
何故だろう、先生の視線がこちらを向いているような気がするのは気のせいだろうか。
「中性的な声と見た目で男口調だったから、一見して男の子みたいだったよね~。 昔のホシノちゃんとライちゃんは、戦闘だといつも息ピッタリで」
先生の視線がこちらから外れた。 全く、ビビらせおって。
「うんうん、昔のおじさんより強かったかも。 模擬戦とかだと勝率は五分五分だったかな?」
その言葉を聞いた対策委員会の面々は、信じられないものを見る目でホシノに注目する。
うん、その反応が正しい。 そして実際俺の方がフツーに弱い。
大体、昔も今も、俺がホシノより強いワケないだろ。 今なら全力を出せば可能性はあるけど、素の実力じゃ敵わん。
戦績だって五分五分じゃないし。 七割方負け越してたっての。
「ところでホシノちゃん! ホントにライちゃんそんなこと言ってたの!? 私ってそんなポンコツかなぁ~!?」
ユメ先輩がホシノの肩をがっしり掴んでぐわんぐわんと前後に揺すりながらそう聞いている。
その問いかけを聞いた対策委員会の面々は、皆一様に視線を逸らした。
「ちょっとみんな!? せめて何か言ってよ~!!」
ユメ先輩の魂の叫びに反応する者はいなかった。 諸行無常である。
先生の内心(リボルバーに近接武器・・・? なんか最近見た覚えがあるな。 ・・・・・・中性的な声と見た目で男口調? ほなユイロとちゃうかぁ)
投稿時間は4d6で決めてます。