その名に宿るは嘘か未来か 作:アトランティスの観測者(自称)
Tips : カイザーコーポレーション
カイザーコーポレーションは定期的にユイロやアリスなどのMemento moriのメンバーによって、末端から中枢まであらゆる系列のビジネスを物理的に壊滅させられている。
カイザーはその度に立て直しをしているものの、人材や資金、本来得られるはずだった利益などに大打撃を負っている。
結論から話そうか。 ヘルメット団の包囲は大したことなく、アビドス一行はあっさりと邪魔者を壊滅させた。
たしかに数はいるし、武器も改造品だが、所詮大した腕のないシロウトの群れ。
キヴォトス随一の戦闘民族であるアビドスに敵うハズもなく、普段単騎であちこち荒らしてる俺が加わればなおのこと。
とは言え、改造された戦車はホシノ以外からすれば多少手こずる相手ではある。
せっかく先生が指揮してくれてるのに悪いが、アレは俺が独断で動いてスクラップにしよう。
「ざぁんねん、時間でーす!
DoomsWingは装弾数が1しかないため、NecroWingと違って空撃ちでのチャージができず一分に一度しか増幅弾を撃つことができない。
だが、そのぶん威力は折り紙付きだ。
元々の威力ですら、デザートイーグルさんも裸足で逃げ出す大砲なのだ。 その威力を増幅してるのだから、重戦車如きに防げるワケがない。
「うっわ~、容赦ないね~ユイロちゃん」
「・・・なんでショットガン持ちの前衛がスナイパーライフルの隣にいるの?」
「いや、それこっちのセリフなんだけど。 後衛装備なのに当然のように前衛で戦ってるユイロちゃんがおかしいだけだと思うよ~?」
「・・・あら?」
おっと、いかんいかん。 ついいつもの癖が出てしまった。
このミメシスボディは破壊消滅こそすれ俺自身が死ぬワケじゃないから、ダメージを無視して動く悪癖がすっかり身についてしまっている。
というか、だいたいスペック差でゴリ押せるから、わざわざ被弾を気にする必要性がないんだよな。
基本一人で戦うことしかないし。
「ま、邪魔な重戦車も木っ端微塵になったし帰ろっか。 もうあちらさんの包囲もガタガタだし」
「そうね、追撃に回せるだけの人員も足りないでしょう」
そんな一幕もありつつ、無事アビドスに帰還した。
人数に似つかわしくない大きな校舎に足を進める面々を最後尾から微笑ましく眺め、全員が入ったところで口を開く。
「これにて一件落着かしら。 ワタシはもう行くわね、また明日」
「・・・もう行くの? 早くない?」
「眠たくて仕方がないのよ。 不眠不休で走ってたからさ」
「ま、待ってユイロさん! まだお礼も言えてな───」
「じゃ、おやすみなさい!」
後ろから聞こえる声を聞こえていないことにして、逃げるようにその場から走り去る。
場に残された面々は、困惑しながらも追ってくることはなかった。
(これでよし、と)
《いいワケないでしょう》
(・・・なんでよ)
俺の行動を咎めるようにピシャリと否定をしてきたケイに、不服の意を示す。
《あれだけ大急ぎで助けに行ったのに、感謝の一言も受け取らず退散だなんて、不義理にも程があります》
(別にいいでしょ、感謝されるためにやったことじゃないし)
《・・・助けられたのにお礼を言えないというのは、間違いなくセリカが気にします。 今からでも戻るべきです》
(次会った時にできるでしょう? 今日でお別れってワケでもないのだし)
《・・・聞き方を変えましょうか。 “これでいい”と、本当に思っているのなら・・・何故、そんなにも
そう訪ねるケイからは、こちらへの最大限の配慮と、誤魔化しは許さないとでも言いたげな気迫を感じられる。
まぁ、そもそもこの仮面の中では隠し事なんてほぼできないようなものなのだがな。
感情の機微がダイレクトに伝わる上、表層心理は互いに筒抜け。
ルームシェアってヤツだ。
(・・・はぁ。 誰よりも、何よりも大切
《冗談めかして笑っても誤魔化せませんよ! そこまで明確にわかっているのなら───》
(だからこそ、よ。 情が移れば、必ず戻りたくなってしまう。 そうなったら、Memento moriは? ワタシがヒトの身を逸脱した意味は? ・・・それに、アリスも、あの二人も、帰る家がなくなるのよ?)
《それは・・・っ》
何も、難しく考える必要はない。
前に進めば何かを失うが、別の何かを手に入れられる。 後ろへ戻れば、前へ進むことで得たモノを失ってしまう。
ヒトの手は小さく、どんなに強欲でも全てを手にすることはできない。
取捨選択の連続、至って単純な世界の理だ。
故郷を失い、居場所を作った。 そこはもはや俺だけの場所じゃない。 俺がいなければ、他に行く宛がない者は帰る場所を失う。
だから、失ったハズの故郷へ戻ることなどできない。 それは、今まで造り上げた“夜美月ユイロ”という役を崩す行いだからだ。
(時間と同じよ。 一度過ぎたモノは不可逆で、今更どうこうすることなんてできないの)
《どちらも取ることは───》
(ムリね。 前に言ったでしょう? “ワタシ達の道は分かたれた”って)
人の繋がりなんて、全ては偶然に過ぎない。 出会いと別れを繰り返し、その過程で結ばれた縁が最期に残る。
で、死者は死者らしく独りで終わるべきだと思ってるので、俺は特段誰かと縁を結ぶつもりはない。
だからリオとはビジネスパートナー止まりにしているし、アリスは一人立ちさせるつもりでゲーム開発部に送り出した。
とは言え、無責任なことをするつもりはないから、面倒を見るべきことはきちんとする。
ただし、“夜美月ユイロ”の役から逸脱しない範囲に限るが。
(・・・あ~、どうしましょ。 夜まで暇になっちゃったわね)
《・・・柴関にでも行ったらどうです?》
(イヤよ、大将鋭いから何か勘づかれそうだもの)
《なら私は知りません》
(あらら、冷たいわね~)
俺の行動を咎めるのも、それを無視してご機嫌ななめになるのも、全部俺を心配してのことだとわかってる。
そして、いくら心配されても、俺にはこの道しか残されていない。
・・・本当に、俺には過ぎた相棒だな。
願わくば、俺という牢から出れた暁には、自由に生を謳歌してほしいモノだ。
夜の静寂に、銃声が響く。
地に転がる数多の人影を踏みつけるように、ハードボイルドを気取った四人組が立つ。
「うぐ・・・お前等は・・・・・・」
「───便利屋68、なんでも屋よ」
おー、カッコい~。 普段の彼女を知らなければあまりのイケメンっぷりに惚れてたかもしれない。
まぁ普段のちょっとポンコツなところも可愛いワケだが。
さて、と。 便利屋が去ったのを確認すると姿を表し、アジトで死屍累々の様相を呈するヘルメット団に挨拶をする。
「おー、ずいぶんと手酷くやられたわねぇ」
「お前は・・・アビドスの・・・・・!」
「あら、覚えててくれたのね。 嬉しいわ~♪」
「何が用だ・・・、復讐か?」
「まさか、ワタシはアビドス関係ないわよ? さしずめ、アナタ達の雇い主の敵対勢力ってトコかしら」
「ッ・・・」
“敵対勢力”、その言葉にヘルメット団は恐怖にカラダを震わせる。 今しがた便利屋にやられたばかりだ、更に俺に追撃されればひとたまりもないだろう。
「今回ここに来たのは、アナタ達に雇い主であるカイザーから離反してもらおうとしていたのだけれど・・・その様子だと切り捨てられたみたいね」
「・・・黙れ!」
「ふふ、それでこれからどうするの? 違法行為で日銭を稼ぐ? また悪徳商人から割に合わない仕事を貰う? いずれにしても、ロクなことにならないわ。 アンタ達だって、そんなことがしたいワケじゃないでしょう?」
「うるさい、お前に何がわかる!!」
「わかるワケないでしょ」
「っ」
飄々とした態度から一変、冷たく突き放すような声で言葉を落とす。 驚きか、はたまた畏怖か、息を飲む音が聞こえた。
「当然よね、ワタシはアナタ達じゃないんだもの。 ワタシは理解者なんかじゃないし、アナタ達みたいな日々を凌ぐために違法行為をするような人間を理解しようとも思わない」
「・・・なら、何をしに来た! カイザーに見放され、路頭に迷ったアタシ達を笑いに来たのか?」
「いいえ? 今度は全うな方法で日々を送りなさいって言いに来たの」
「できるわけないだろ・・・! 今さらアタシ達みたいなのを雇ってくれる相手なんかいるわけない」
・・・ヘルメット団の言うことは正しい。 事実、正道を外れた者が元に戻ると言ったところで信用が根本的に足りないからな。
「えぇ、そうね。 その通りだわ」
そうため息をつくと、スマホを取り出しミメシスを伝って仮面と接続させる。
(・・・ほいっと。 ケイ、スマホと仮面をリンクしたわ。 コイツらの口座をハックできる?)
《お安いご用ですが・・・本気でやるつもりですか? 彼女達は貴方の故郷に仇なした相手ですよ? いつも貴方が手を差し伸べている生徒とは明確に違います》
(それはそうなのだけれどねぇ・・・。 確かにアビドスへの加害者ではあるけど、結局この子達だってカイザーに言われてやっただけ。 ある意味では被害者とも言えるのよ)
《まぁ、理屈はわかりますけど・・・》
(血も涙もないことを言うと、この子達のストーリーでの役割は終了。 出番を終えた役は舞台から退場するのが筋であり、誰も降りた役者を気に留めることはない。 それって、とってもザンコクなことよね)
《だから、故郷の敵であった者にすら救済を与える、と?》
(そ。 ワタシの仕事は
《・・・ユイロらしいですね。 わかりました》
と、いうことで。 スマホをポチポチと操作し、ヘルメット団の口座に送金。
「はい、今アナタ達の口座にざっと500万円ほど送金したわ。 確認なさい」
「は?」
ヘルメット団のリーダーは間の抜けた声を出すと、恐る恐るスマホを取り出し操作する。
少しその様子を見ていると、最初は訝しむように操作していたのが、突然驚愕に染まりワナワナと震えだした。
「マジじゃねぇか!? は? なんで!? 何が目的だ!!?」
そう叫ぶと、今までのダメージや怯えは何処へやら立ち上がり、俺の肩を掴んでぐわんぐわんと揺らしてくる。
「物資の購入、食料の確保、住居の家賃みたいな生活費として使いなさい。 あくまでもちゃんとした稼ぎを得るまでの繋ぎとして使うこと、そしていつか必ず返しに来ること。 いいわね?」
「いや待て待て待て! アンタ、アタシ達がこれを使って悪さをしたりとか考えないのか!?」
「別に考えないワケじゃないわよ? でも、アナタ達だって、そうしたらどうなるか想像できないほど愚かじゃないでしょう?」
「・・・・・・!」
俺の言葉にリーダーは少し考え、そして言葉の意味を理解したようだ。
「確かに500万は大金よ。 でも、ヘルメット団の人数で豪遊なんてすれば一瞬で消える。 ワタシは無責任だから、アナタ達がこれを使い果たして路頭に迷うことになろうが知ったことじゃないし」
「・・・そうなったら、今度こそ誰にも頼ることができなくなる・・・・・・ってことか」
「そゆこと♪」
「・・・アタシらはどうすりゃいいんだ? アンタならわかるんじゃ───」
「知らないわよ、そんなこと。 それはアナタ達が見つけなきゃ。 ま、何かよさげな仕事があったら紹介するわね」
そう告げると、怪我が少し大きい生徒に簡単な応急手当を施してこの場を去る。
「ま、待ってくれ! アンタは、何者だ?」
「ただのお節介な通行人よー。 もしこれから何か困ったことがあったら、頼ってくれていいからね」
去り際に聞こえたその問いに、振り返ることも、立ち止まることもせず答える。
・・・さて、口座がすっからかんになってしまった。 いつだって、金が返ってきた試しがない。
なにせ返すための連絡先を教えてないんだ、返せるはずがない。 というか返ってきたら怖い。
もし俺の言葉を無視して好き勝手に使ったのなら知ったことではないし、しっかりと使って明日の今日を生きているのならそれでいい。
その過程でお節介な通行人がいたことなど、今を生きているのなら些末なことだ。
《そんな利他的な考え方してるから、Memento moriはいつも金欠なんですよ?》
(うぐ、痛いところを突いてくるわね・・・。 結局、明日を生きたくてもそのための元手がなければ生きられないから。 望まずに手を汚すような生き方をするのは、決していいことではないもの)
俺は、こういう方法でしか明日への希望を与えられない。 明日の意味を説けないからだ。
俺はこの世界の虚しさと残酷さを知っている。 そして、それゆえに明日の意味を見出だせない。
そんなヤツが説く薄っぺらな道理など、何の気休めにもならない。 そんな言葉で、希望なんて与えられるワケがないんだ。
《・・・それにしても、今回は随分と羽振りがいいですね。 いつも多くて100万くらいだというのに》
(ま、そうね。 ヘルメット団は人数が多いから。 かなりの余裕を持てるだけの額を渡してるつもりよ?)
アイツらに限った話じゃないが、ああいうことに手を染めることになるようはヤツらは、今まで散々苦労してきたんだ。
少しくらい好きに遊べないと、明日を生きる希望すら持てないからな。 だから多めに渡してる。
とはいえ、そのためにこっちの資金がなくなったら本末転倒なのだが。 ・・・ということで、またカイザーを使って稼ごう。
《またですか? そろそろカイザーも貴方を出禁にしてきそうですけど》
(え~? わざわざ懸賞金出してるヤツらが指名手配犯を追い返すなんて、聞いたことないわよ? ・・・エリドゥの予算に資金が吸われてるから、ケセド君から鹵獲できる物資じゃまかないきれないのよね)
《はぁ、リオにも困ったモノですね》
(エリドゥは大規模プロジェクトだからねー・・・。 ワタシ達がカイザーの懸賞金を悪用して稼いだお金なら、セミナーの予算を横領するより予後がいいでしょ。 欲を言うならもっと懸賞金上げてほしいのだけれど)
さて、ここで少しMemento moriとカイザーコーポレーションの関係を話すことにする。
カイザーはMemento mori・・・というか、俺からかなりの不興を買っているため、定期的にカイザー関係のビジネスやプロジェクトは俺達が武力でボロボロにしている。
そして、これにより多くの不利益を被ったカイザーは、俺を筆頭としたMemento moriのメンバーに多額の懸賞金をかけている。
この手配書はブラックマーケットを中心に広まっており、ブラックマーケットに行くとあちこちから襲撃される。
《もう懸賞金が上がることはないでしょうね。 なにせ、その懸賞金が丸々Memento moriの資金として巻き上げられているのですから》
(ま、そうよね~。 もうちょい上がってからやるべきだったかしらね)
どういうことか説明しよう。 まず、お金が足りなくなったら信用できる人物と共にカイザーに向かう。
そのまま賞金首として突き出され、その人物は懸賞金を得る。
協力者が懸賞金を受け取ったら、さっさとカイザーから脱獄する。
最後に、協力してくれたお礼として少し分け前を渡し、残りは全てMemento moriの資金にする。 といった具合だ。
ちなみに懸賞金が取り下げられることはない。 取り下げる前に脱獄してるし、一度取り下げられた時はそれはもう大暴れし、カイザーにとんでもない大損害を叩き出した。
それ以降、この懸賞金で俺の機嫌を保てるのならと渋々払ってくれている。
《・・・とはいえ、私達が痛手を与えてるにも関わらずカイザーコーポレーションの勢力はあまり衰えていません。 再起不能に陥らないよう加減しているとはいえ、向こうも躍起になっているのでしょう。 つまり、その分だけ被害者は増えていることになります》
(それはこっちでなんとかするしかないわね。 ただ、アイツらもグレーゾーンのギリギリまでしか使えないから、あまり大暴れはできないわ。 ワタシ達でも十分に対処できる)
結局のところ、一度目を付けられた以上簡単には逃げられない。 カイザーは目を付けた相手から金を搾取し、俺は懸賞金としてそれを回収し、できる範囲で被害者にばら蒔いて返している。
こうして永久機関が完成し、経済が回るってワケ。 ちなみに、一番得してるのはこの大金を私用に使える俺で、一番損してるのはビジネスを壊滅させられてるカイザー。
これでカイザーに怨まれるのは仕方ないことではあるが、アイツらだって自分の利益のために他者を踏みつけているのだからおあいこだろう。
俺も逆怨みでやってることだから、それに文句を言える立場ではないし。
今日の活動を終えようと、ラボのある廃墟の方へ戻る。
そのまま何分も歩き続け、やがて目的地への入口があるビルに入る。
そうしてラボへの通風口の前で立ち止まり、仮面を外そうとしてふと動きを止めた。
「この辺はとっくの昔に放棄された廃ビルの立ち並ぶ寂れた場所。 こんなところに用があるなんて、そこに未練がある地縛霊か、よっぽどの暇人くらいよね。 ワタシの見立てだと、アナタは前者かしら」
その言葉に答える者はいない。 だが、微かに場の空気が変わった。
「・・・ね、バレてるんだし出てきたらどう? 寝床までついてこられたら困るのよね」
俺がこのビルに入ったのを見て、背後を尾けてきているヤツがいる。
誰かわかっているので放置しようかとも思ったが、さすがにカラダが消える決定的瞬間を目撃されるワケにはいかない。
「・・・それとも、たまたま偶然、こんなところに用があって来たとでも? もしそうなら、こんな夜遅くに出歩くのはやめて、大人しく大事な先輩と後輩のいる母校かお家に帰った方がいいわよ」
「うへ、手厳しいねぇ~。 ただのパトロールだよ~」
ビルの物陰から現れたピンクの人影が、白々しいセリフを口にする。
小鳥遊ホシノ、かつての友人であり、俺に残る唯一の後悔。
「ユイロちゃんこそ、なんでこんなとこを寝床にしてるの~? ここからアビドスまで行くの、けっこー疲れるんじゃない?」
「言ったでしょう? よっぽどの暇人って。 ワタシは時間を持て余してるから、ついでに土地勘でも鍛えてみようかとここで暮らしてるの」
「ふーん、そっかそっか。 この辺はたまにパトロールに来るけど、ユイロちゃんが寝床にしてるなんて知らなかったな~」
「・・・“たまに”? ワタシの記憶違いでなければ、週に五回は来てなかったかしろ?」
その言葉に、ホシノの目つきが変わる。 こちらを探るような視線から、明らかな警戒の色が滲んだ目に変わった。
発言の矛盾に気付いたんだろう。 まだ俺と先生がアビドスに来てから数日しか経ってないというのに、何故週五も来ていると知っているのかと。
「・・・へぇ、よく知ってるんだね。 おじさんびっくりだよ、ユイロちゃんが私のことを前から知ってたなんて」
「ね、どうして未練がましくここを何度も訪れてるの? そんなにあの人との約束が忘れられないのかしら」
刹那、ビルの静寂を破る金属音が木霊する。 ホシノがこちらに向けたショットガンの銃身を、俺が特殊警棒で横に抑えた音だ。
「すぐに手が出るのは、アナタの悪い癖よ、昔から変わらないわね。 一つ忠告してあげるけど、舞台を降りた役者に思いを馳せたところで帰ってくることなんてない。 失ったモノなんて数えても、何も変わらないわよ?」
「どこでそのことを聞いたのか話して。 話さないなら撃つ」
「あはっ、わざわざ言ってやる義理もないんだけどな~。 ・・・本人から聞いたって言ったら、アナタは信じるかしら?」
Tips : 五感
この作中において、