底無き闇に光差せ / ortRoLoDs   作:弐の字

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深く、深く、潜れよ鳥よ

たとえ光 失えども

強く、強く、放てよ鳥よ

たとえ体 失えども

伸ばせ、伸ばせ、伸ばせよ人よ

動かぬ鳥に その手差し出せ



深い海と闇の底

 

「すごい。ここまで広い海は初めてですよね」

ローズの希望の元、一行は深い海のある星を訪れていた。現在は陸地を探して飛行中である。

 

「あ! あっちになにか居ます!!」

ローズは方向転換し、興味の向くままにそちらへと向かう。

ローズの指し向かう方向では、海洋怪獣の群れが水面を飛び跳ね泳いでいた。しかし彼らはまるでなにかから逃げているように見える。この気配は……、まずい。

「ローズ待て!!」ザギはローズの内より静止をかける。

「えっ、、」

 

海中から巨大な怪獣がザバリと姿を現しローズの足に食らいついた。

 

『ジャアァッ、ウアァァァッ!!』

 

突然襲われたことへの恐怖でパニックになり、ローズは怪獣の口元を殴ったり槍状に形を変えたネビュラウイングで刺したりと暴れた。しかし怪獣がローズの足を放そうとする様子はない。

 

怪獣が腕部を水上へと伸ばす。ピタリと閉じられそうな甲殻の内側にいくつもの鉤爪が牙のように並び蠢いていた。捕食というよりも、獲物をズタズタに引き裂き痛め付けるためのような……。

 

閉じられてしまう……。体を縮込めて怯えるローズ。しかしそれがローズの身を襲うことは無かった。

 

─シャアァァァァ!?─

 

怪獣がローズの足を咥えた僅かな隙間、そこを狙って矢のような光が撃ち込まれたのだ。宙へ放り出されたローズの体を狙撃手が抱え、一旦この場は撤退となった。

 

 

〜*〜*〜

 

 

「あなたは……?」

ローズは自身を抱えている光を見上げ、問いかける。

「疑問、君、一人。疑問、ザギ、場所」

「えっと……?」

先日のニアにも似た口調にローズは戸惑う。彼の時ほどではないが、この喋り口の言葉の処理をまだローズは受け付けていないのだ。

「言語、不確実。謝罪」

その光は、自分の言語能力が不安定であることを謝罪し、同じ言葉を繰り返す。

 

「疑問、ザギ、場所」

「ザ……ギ……? あっ、ザギ様!」

思い出したようにローズはネビュラムチェストの出入口である背中を解放する。先程の恐怖で無意識的に閉鎖してしまっていたのだ。

「ローズ貴様ァ!! あのままでは俺達も巻き添えになる所だったぞ!!」

待ってましたとばかりにその中から飛び出してきたザギが、ゲンコツ両手にローズの頭をグリグリ……グリグリ……。

 

「いたた、ザギ様ぁ、自分の手が硬いのわかってやってますよね?? いっ、ううぅ」

「助けが入ったようだから無事だったがなぁ! あの程度のビースト、このザギならば近寄らせもせすに消しておるわ!!」

そう言い放ってローズの頭をぺいっとはたいたザギは、今度はローズを抱えている光を睨み付ける。睨み付けるというか、凄く近い。額が当たっている。

「久しぶりだなァネクサスゥゥ……。貴様は人間か? 化身か? それともノアか?? どれだ」

ローズを助けた光の者はネクサス。つまりは先程放たれた光はアローレイ・シュトロームとなる。

 

だがネクサスはザギにメンチを切られようがどこ吹く風である。

「仮定、君、過去、相対、私、相違、ノア、結論、私、化身」

「……本人か、言葉が回りくどい」

彼がノア本人であると分かり、ザギはため息をつくとネクサスからはなれた。

「その割には随分と力を抑えているな。遠隔操作だとしてもここまではないだろう。わざとか」

「正答」

 

「力を抑えてまで何の用だ。まさか思念を飛ばしてまで後をつけてきたのか?」

「否定。ビースト、気配、確認、希望、殲滅」

「ああ、先程の……。ふっ、どうしたネクサス、討ち漏らしているではないか」

「疑問、可不可、ローズ、傷害。推測、君達、同様、傷害」

らしくもない、とザギはネクサスを嘲笑したが、ビシィッと音が聞こえそうな程の正論を返され、ザギはぎぃ……と鳴くと口を閉ざした。

 

::

 

::

 

上手いこと見付けた浮島に三人は降り立つ。足に体重が乗った途端にローズが崩れ混みそうになったため、ネクサスが慌ててローズを支え、地面に座らせた。

 

「ローズ、足、負傷、要請、安静」

「大丈夫で…………、痛っ……うぅ」

「痛いのか」

「そりゃあ痛いですよ。さっきの怪獣の歯型がこんなにくっきり」

怪我をした箇所をほらほらと指し示すローズにザギは怪訝そうな顔をする。

 

「このザギに刃向かった時は痛がる素振りなどなかっただろう。当時のほうが余程重症だぞ」

「ザギ様が特別なんです。前にも言ったでしょう? ザギ様は私を殺せないって」

ふふん、とローズは胸を張る。

「俺以外ならば貴様を殺せる、と」

「あっ……、えっと、ええ…………、嫌です、死にたくないです。ザギ様以外にも殺されたくないです、今決めました、はい。ザギ様と離れたくないです。もう大丈夫です、痛くないです」

ぷるぷると震え、血の気でも引いたような様子のローズ。ネクサスはザギへとじっとりした視線を渡す。

 

「要請、治療」

「この程度、自己修復能力だけで充分だ」

すっかり忘れられているとは思うが、以前ザギはローズに自己修復能力を与えている。極めて弱いものだが。

「要請、要請、要請」

「あぁぁもう五月蝿いぞネクサス!!」

根負けしたザギはローズの傍にどっかりと座った。

 

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〜*〜*〜

 

「疑問、君達、飛来、此処、理由」

ザギがローズを治療するのを見守っていたネクサスが口を開く。

「こいつが、深い海のある星に行きたいと言うから来た」

「海に潜りたかったんですけど、凶暴な怪獣が居るなら難しいですよね……」

「そいつはこれから倒す。そうだろう、ネクサス?」

「苦悩。不足、威力」

ザギは思った。それは貴様が自分で力を抑えてるからだろうが、と。

「……このザギに倒せと?」

ネクサスはこくりと頷く。

 

「……いや、ローズ。貴様がもう一度戦え」

「えっ」

「ここに来たいと言い出したのは貴様だからな。あぁ……、メフィスト、手伝ってやれ。この小僧の補助はお前で充分だ」

ザギはメフィストを顕現させる。突然呼び出され戸惑った様子のメフィストだったが、状況を把握するとすぐさまひざまづいた。

「俺以外であればこいつを殺せるらしい。くれぐれも死なせるなよ、メフィスト」

「はっ」

 

::::

 

::::

 

死なせるなとは言われたが、この小僧の行動全てが危なっかしくてだめだ。メイン目標はローズの戦闘訓練なのだろうとは思う。ザギ様相手に生存したと言うが、本当に簡単に死にそうでならない。

ローズは先程から海上をあちらこちら飛び回っている。これまでの長距離飛行からも分かる通り、エネルギーはほぼ無尽蔵と思われるが……。

 

「ビーストの気配はわかるのか?」

「ネクサスも言ってましたけどビーストって何ですか? 普通の怪獣とは違う……?」

そうか……そこからなのか……。説明してやったほうが早いかもしれない。メフィストはビーストについての簡単な説明を始める。

 

「スペースビースト。知的生命体の恐怖を糧として進化する捕食生物だ」

「えっじゃあ私さっき食べられてたってことに」

「なるな。もしかするとさっきより進化しているかもしれないな」

脅すようにメフィストが笑うとローズは身体を震わせた。

 

「そしてその波動は光の者より俺達に近い。ビースト振動波と呼ばれる。これは感じているか?」

「はい。海の中に。私をずっと着けてきてる存在があります」

そう言ってローズは空中でしゃがむ姿勢をとると海の中へと顔を向ける。

「そうやって呑気に止まっているのも危険だということは分かっているか?」

「……へ?」

 

──ザバァッ

 

突然海中よりふたりめがけて触手が伸びる。メフィストはそれを躱し、光弾も交えつつ捌いていった。ローズはというと触手のうちの一本に足を掴まれ、あっという間にぐるぐる巻きである。幸い、ネビュラウイングが不定形であり掴めないためか飛行高度は保てている。

 

「何をしている! 打ち払え!」

「そんな余裕、無いっ! です!!」

「ちっ」

メフィストはローズを捕らえている触手をダークレイ・シュトロームで薙ぎ払って救出し、それを小脇に抱えてより高い位置に留まった。

 

「ひぃん……」

「クローがあればもっと簡単に切り落とせたが、これは随分前にお前がこうしたままだからな」

メフィストは右手の甲を返して腕を掲げ、アームドメフィストをローズに見せる。メフィストクローは根元から折れ、代わりにとでも言うようにネビュラムの黒がそれを覆っている。

メフィストが光の戦士相手に模擬戦をした際、メフィストの殺意を察知したローズが破壊したのである。ザギがメフィストを復活させてもその黒は変わらずに存在した。

 

ローズはそれを覗き込み、不可解そうに首を傾げる。

「本当に必要とすれば応えてくれるはずなんですけど……」

「何?」

「そうお願いしたはずなんです。機嫌でも悪いんですかね……」

 

覗き込まれるのを煩わしそうにしてメフィストは右手を払う。

「まあいい。どうやって奴を叩く? 相手は水中、こちらは空中。奴はこちらを狙いたい放題だ」

「あの触手を掴んで釣り上げれないですかね」

「さっき掴まれてみて、相手の引きの強さはどうだった」

「重かったです」

「ならやめておけ」

 

ローズは一生懸命に考える。そしてなにやらいいことを思い付いたようで、目を煌めかせる。

「ぐぬぬ……じゃあ、じゃあ! こっちも水中で戦えばいいんです!」

「相手有利だが、勝算は?」

「水中起動なら負けないと思います。メフィストを背負っても行けます」

ローズはそう言い、背中から出したローズネビュラで水生生物のような外殻を作ってみせた。

 

「機動は確保できたとして、攻撃はどうする」

メフィストは続けて問う。ただ動けるだけでは敵を倒せないのだ。

「ふたりで頭から突っ込めばいいと思います」

「はぁ!?」ローズの馬鹿げた発言にメフィストもついつい叫んだ。

 

「あのビースト、上下の顎の中が弱点なのかもしれません。ネクサスもそこを狙いました」

「でも、横の顎もありました。横の顎は凄く嫌な感じです。なので、メフィストが上下の顎を押さえてください。横の顎は私が翼で押さえます。そして私が顎の中にカノンを撃ち込みます!」

 

ぐっとガッツポーズで意気込み、メフィストを見詰めるローズ。完全にいけると思っているらしい。

「俺はザギ様にお前を死なせるなと言われているから補助はする。だが巻き添えで死ぬのは御免だ。いいな」

「わかりました」

 

ローズはメフィストを背負い、メフィストごとローズネビュラで作り出した外殻を被る。その姿はさながら潜水艦か水棲怪獣か。

「ローズ、行きます!」

「(地球産のアニメでも観たのか。いや、こいつの場合は聴く、か)」

ふざけたノリはここまで。ローズ達は海中へと飛び込んだ。

 

〜*〜*〜

 

まるで見えているかのようにローズはサメのようなビーストへと猛スピードで真っ直ぐに泳ぐ。ビーストは獲物が突然向かってきたことに驚いたのか、距離を取るべくローズ達に背中を向け泳ぎ出した。

 

「逃げるなぁぁ!!」

 

いつの間に生成したのか、外殻の表面にある砲口からローズは光弾を連射する。

 

─ネビュラムバルカン─

 

「撃ちすぎるな。エネルギー切れは敗因の一つだ」

「でもメフィスト、あのビースト、逃げてばっかりで全然噛み付いて来ようとしないんです!」

「頭を使え頭を。機動に自信があるなら体当たりでも回り込むでもやってみろ。あとお前、距離無視の無慈悲な攻撃あっただろ。なぜ使わない?」

「あっ、そういえばそうですね。じゃあ……はいっ! 壁!!」

 

──ゴイ〜〜〜ン

 

─ギシャァァン!?

 

なにやら固いもの同士がぶつかった音とビーストの悲鳴が水中に響いた。

「うわ痛そ」

メフィストはローズの背中で身震いした。

 

─ギシャア!!

 

ふたりへと振り返ったビーストは触手を伸ばしてくるが、

「全部切り落とせぇ!!」

ローズの放った三日月型のネビュラムによりそれは尽く切り刻まれた。

 

─ギュルルル……ッシャア!!

 

怒ったビーストが突進をしかけてくる。

「受け止めるぞ!」

「はい!」

ふたりの眼前でビーストが大口を開けたのを確認するとメフィストがローズの外殻の内より飛び出す。ビーストの上顎を両手で、下顎に足を掛け押さえた。どうやらこの大顎の中に本当の頭部があったらしい。そりゃあ弱点にもなるか。メフィストは納得した。

メフィストを挟み込もうとビーストの横顎が開いたため、今度は遅れて飛び込んだローズが翼で押さえた。そして両手の拳をビーストの顔面へと真っ直ぐ向けると両腕をローズネビュラで覆い、砲身を作り上げた。

 

『Laaaaaaaaaa……』

 

ローズはそこへエネルギーを集中させる。

 

─ギシャアッ!? シャア!!

 

命の危険を感じたビーストが逃げようと体を動かすが、横顎を掴んでいたネビュラウイングがビーストの胴体までを侵食し押さえ込んでいた。

 

「そう簡単に逃がしてやるつもりは無いようだぜ。お前は大人しく…………ん?」

 

ローズの作り出した砲身がエネルギー過多により暴発しそうな予兆を感じ取り、メフィストはその砲身へと右手を伸ばしローズへと叫ぶ。

「暴発するなんて聞いてねえぞ!」

「まだちゃんと撃てないって言ってないですもん!!」

「味方への情報共有の有無は生死を分ける! 覚えておけクソガキ!!」

「わかりました!!!!」

 

「これをたおしたいですか」

ローズのエネルギーを抑えようとするメフィストを不思議な感覚が襲った。何者かの言葉が頭に響く。

 

─ ⠪⠛⠔⠕⠊⠳⠕⠃⠐⠟⠹⠡(これを倒したいですか) ─

 

「(なんだ……、誰だ……!)」

 

─ ⠪⠛⠔⠕⠊⠳⠕⠃⠐⠟⠹⠡(これを倒したいですか) ─

 

「(誰だか知らんが、なんとかできるならしてみろよ!)」

 

─ ⠄⠡⠓⠵⠳⠕(わかりました) ─

 

右腕からぞわりとエネルギーが通う感覚をメフィストが味わった直後、アームドメフィストを覆っていたネビュラムが滲み出すように水中へと流れ出た。そのネビュラムがローズの砲身を保護するように形を変えると、爆発寸前だったエネルギーが抑え込まれ、安定していった。

 

これでいける。メフィストは確信した。

 

「溜めれるだけ溜めてぶちかませ!!」

『LAッ…………DAAAAAAAAAッ!!!!』

 

限界まで溜められたエネルギーが遂に放たれる。闇という闇を凝縮したような真っ黒い光線がビーストの顔面から尾の先までを貫通し、海中の闇へと消えていった。

ビーストの残骸は光線が貫通した傷口からネビュラムと同じ黒に侵食され、結晶となった後に粉々に砕け散った。

 

オーバーキルじゃないか? メフィストは思った。しかしほとんど消耗していないビーストを一撃であるから妥当か……いやそれでもオーバーキルである。 

 

「必死になって顎こじ開ける必要あったか?」

「ありました。たぶん……」

 

::::

 

::::

 

ビーストを倒し、ふたりはザギとネクサスの待つ浮島へと戻った。

 

「ほう、生きて戻ったか」

「こいつの技で散々な目に遭いかけました」

「…………アレか」

ザギは以前ローズが暴発させたあの技の威力を思い出す。

「メフィストのおかげでちゃんと撃てましたよ!」

「アレをただのスペースビーストに、か……」

ザギも思った。オーバーキルでは? と。

 

「もう戻っても良いぞ、メフィスト」

「お言葉に甘えて。そうさせていただきます」

ザギに言われ、メフィストはザギと同化する形でザギの中へと戻った。

 

「ローズ。海に潜りたいのだと言ったな。邪魔は片付いたろう。潜ってきたらどうだ」

「ザギ様も一緒にです。ザギ様に聞いてもらいたいことがあります」

「……仕方ない。ついていってやる」

ザギの返答を聞くとローズはネクサスの方へ顔を向ける。

「ネクサス、あなたにもお願いしたいことが……」

 

〜*〜*〜

 

海の中ローズ達は潜り続ける。ネクサスにお願いしたいことというのは、海上で命綱を持ち続けてもらうことであった。命綱はネビュラムチェストの中から伸びるローズネビュラでできた綱である。

 

随分と長いこと潜り続けている。海上の光などはとっくのとうに届かないところまで来てしまった。

 

「どこまで潜る気だ、ローズ」

「潜れるところまで。気の済むまでです」

 

自分を抱え、黙って潜り続けるローズのことが得体の知れないもののように思えて、ザギは少し恐ろしくもあった。

 

「ローズ、貴様はいったい何者だ……? 何故このザギについて回る?」

「私は闇ですよ。ただひとりの闇。まだこれくらいしかわかりません」

「どうしてザギ様に着いていくのかは……あれ? 前に言いませんでしたっけ」

「知らん。…………いや、もう一度聞きたい」

 

「ザギ様と一緒にいたいからです。私がこの道をあるくためにはザギ様と手を繋いでいないとダメなんです」

「なぜ……俺なんだ。闇の者など他にいくらでもいるだろうに」

「うーん、それは初めて考えます。でも、私はザギ様を待っていたし、ザギ様は私に手を伸ばしてくれました」

それでいいじゃないですか。

 

 

〜*〜*〜

 

 

「ねえザギ様。私の話を聞いてくれませんか」

「そのために来たのだろうに」

ザギの返答にくすりと笑うとローズは語り始める。

 

「私の能力。ダークダイブについてです。ダークダイブは、海に潜ることと似ていると思います」

 

「まず、深く潜るほど、光は届かなくなる。受け取る光を制限する目的で私がこれをよく使ってますよね」

「ネクサスの光ももう視えないところまで来ちゃったじゃないですか。私達はもう、この綱の先に彼が居ることを信じることしかできない」

「右も左も、上も下もわからないあの闇の孤独の中、あなたに出会えたことがどんなに私の心の支えになったことか」

 

「次に、一定の深さを超えると何もしなくても自然と沈んでしまう。ザギ様、私達はずっと潜り続けてますが、私はもうなにもしていないんですよ。それなのにどんどん沈んでいく。ふしぎですね」

「これに抗って留まることはできる。けれども、それだけなんですよ。今の私がコントロールできる深度は3まで。それ以降に進んでしまえば、あとは潜っていくのみです」

 

「そして、潜りすぎると自力で浮上できなくなって、限界を迎えた時その物体は…………」

「うーん、ここは少し違ったかもしれませんね。戻って来れなくなる、と読み替えればなんとか通じますが……」

 

最後の最後に格好つかなくなっちゃったなぁとローズは苦笑した。

 

「もし……。もし、戻れなくなったら、どうなる。貴様が望まなかったあの先の姿があるのだろう」

以前ふたりがした大喧嘩の際、ダークダイブの限界まで潜ってしまったローズの様子を思い出し、ザギは問う。

「戻れなくなったら、ですか……。戻れなくなったら、私は……待ちます。私の闇の底まで届く光を待つ事しかできなくなります。これでも待つのは慣れっこなんですよ」

「光……。また、ノアなのか」

「どうでしょう。ノアなら届くのかもしれないし、ノアでも届かないのかもしれない。だってまだ限界まで潜ったことなんてありませんもの。わからないですよ。けれど私は……」

 

 

 

「ザギ様からまた手を伸ばして貰えたらとても嬉しいです」

 

 

 

「……このザギはノアではないが?」

「そりゃあそうですよ! ザギ様はザギ様ですもの。そんなこともわからない私じゃないです! ぷんっ!」

ローズはポカスカとザギをたたく。

「(……………………、我、謝)」

「ふふ、いいですよ。私怒ってないです。そういえばザギ様のテレパシーすごく久しぶりに聞きましたね。懐かしいです」

 

「思えば随分と長いこと旅をしてたんですね。まだまだ行ったことのない場所があるはずです。休んだらまた……旅を…………」

「ローズ? ローズ寝るなせめて浮上してからに……」

エネルギー切れだろうか。海の底だというのにローズが寝付いてしまった。ネクサスのようにコアが点滅するわけではないため解りづらい。だが……。

 

ザギはローズの背ビレにある赤い光が腰ではなく背中の中央部で緩やかな明滅をしていることに気付いた。これがなにかしらのサインなのかもしれない。ザギにはこれが、助けを必要としている様子のように思えた。

 

まあ、ネクサスと話したいこともあったのだ、寝てくれたほうが都合がいい。ザギは考えることをやめ、ローズを抱えると綱を辿って浮上し始めた。

 

 





─Result─
実績『カノンをぶちかませ』を解除した。
実績『あなたの手を望む』を解除した。
実績『天へ赤を掲げる』を解除した。
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