私が過去を振り返る度
君達の励ましの声がする
深い海の星の、数少ない浮島にザギは腰掛け、その膝を枕にローズを寝かせた。座ったザギと背中合わせになるようにネクサスが座る。
「話とはなんだ、ザギ?」
「なんだ貴様、普通に喋れるではないか」
「ローズが眠りについただろう。外界が全て遮断されるのなら、力を少しこの器に戻したとしても彼を傷付けることはないだろうからな」
ふんと鼻を鳴らし、ザギは話し始める。
「今回の旅の中、貴様と似た波動を持った奴に会った。貴様ではない、と俺は判断したが、本当に貴様ではない……のか?」
「君がニアと呼んだ彼のことなら、紛れもなく別人だ。私は君達の水入らずの旅を邪魔するつもりはないからな。今回はたまたま出会してしまったが」
「なにが水入らずだ。奴が勝手にこのザギを連れて飛び回っているに過ぎん」
「いい加減認めたらどうだ。こんな時間も悪くないと」
「なんだと?」
少々ピリつくザギをネクサスは宥め、話を続ける。
「それで、その彼はどうしていた?」
「……どうせ見ていただろうに」
何故わざわざ俺に聞く? ザギはじっとりした視線でネクサスへと振り返る。
「君の言葉で聞きたい」
舌打ちののち、不機嫌たらたらにザギはニアと行動した記憶を語り始めた。
「……奴は酷く衰弱していた。討ち逃した闇を追っていると言っていた。それをローズが手助けすると言ってエネルギーを分け与え、そして奴の目的地まで送ってやった」
「いや、目的地まで送ったというのは語弊があるな。道半ばだ。次元の穴を前に、奴とはそこで別れた。ローズがその先へ行くことを拒んだのだ」
「……いったい何故だ? このザギに歯向かうほどに意地の強い頑固者が、何故自らの意志を曲げた?」
「…………」ザギの疑問に、ネクサスは無言で返した。
「その様子、貴様には何故ローズが引き返したかわかったのか」
「そうだな……。ウルトラマンヒカリにも言われただろう。ローズは君のことがどうしようもなく好きなのだ、と」
「それとこれとどう関係があるのだ」
「充分なヒントだったと思うが……。一から教わりたいか?」
知らねばと思う気持ちと自身のプライドとの間でザギはぎぃぃと唸り込んでしまう。
「言葉にしなければ伝わらないぞ。答えを私に求めるも求めぬも、それは君の自由。私は君の選択に応えるつもりだ」
「……………………、知りたい」
微かに聞こえたザギの声。ネクサスはそれをきちんと聞き遂げた。そしてザギの心まで届くように、丁寧に答えを口にする。
「君の身を案じた」
ザギにはまだ意味の分からぬ答えに、言葉を失うこととなった。なぜ? しかしその前に、
「俺はこいつに案じられるほど弱くはないが?」
「ふっ」
「なぜ笑う」
「確かに君は強い。だが、そこではない。どうする? この先も聞くか?」
「先程から勿体ぶってばかり。貴様このザギをおちょくっているつもりか?」
「いいや、君とのやり取りに『対話』というものが加わったのが嬉しいのだ」
「勘違いするなよ。今の貴様はいつでも倒せる。俺の目的の為に泳がせているだけだ」
ザギがネクサスの背に手を伸ばし殺気を放つが、このネクサスはノア本人である。この程度で怯みなどしない。
「君と喧嘩をできるような意地の強くて頑固者な彼が、自分のしたいことよりも君の身を優先した。これが重要だ」
「……わからない。なぜ……そんなことができる」
「君のことが大切だからだ」
わからない、理解できない、ザギは頭を抱える。こんなとき、ローズのフラッシュサインでも食らっていれば無理矢理にでも思考を回せたのだろうが、生憎彼は今眠っている。
「時間はある。彼の心と君の心にしっかり向き合ってみるといい。そうすればいつか君にもわかる日が来るはずだから」
「それに彼のことだ。君が『行きたい』とでも言えば連れて行ってくれるだろうな」
〜*〜*〜
「しかし少々不可解だな。ニアには私の過去をなぞられているような気がしてならない」
ザギから聞いたニアの様子を反芻し、ノアは考え込む。
「貴様もそう思うか」
「まるでもうひとり、私が作られたかのようだ」
「冗談のつもりか? 貴様のようなものが何人も居てたまるか」
「君が言うと説得力が凄いな」
「貴様もこのザギに手を焼いている身だろう。他人ごとでは済まないのは貴様のほうだ」
「それはそうだな」
「……私もついていこうか?」
「……貴様の助けなど要らん。邪魔をしないと言ったのは貴様の方だろうに」
本気か冗談か、次元の穴のあった座標へと視線を伸ばすネクサスをザギは静止した。
「そうだったな」
ネクサスは視線を前へと戻すと少し微笑んだ。
─Result─
実績『君のことが大切だから』を解除した。
実績『ニアは私ではない』を解除した。