底無き闇に光差せ / ortRoLoDs   作:弐の字

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05 魔人、推察す

 

── 山中 明け方 ──

 

接敵したガルベロスを溝呂木に逃がされ、そのまま朝を迎えた。私達を襲った人間達は一年前私達が遭遇したものと同じ。人間の死体が操り人形にされたものだった。

 

気持ちを落ち着けるべく一人みんなの元を離れ、川辺へと下りた私の前に奴は姿を現した。

 

「よぉ、凪」

「!!」

 

この声は。私は銃に手をかけ、声の元へと振り向く。

 

「そう警戒するなよ。会いに来てやっただけなんだから」

 

そう言い、溝呂木は乾いた岩に腰かける。

 

攻撃の意思は感じられない。しかし相手は溝呂木眞也。ビーストに堕ちた男。奴に言われて解くような警戒心は私は持ち合わせていない。

 

けれど目の前の奴の傍に、清らかで純粋な者の気配を感じてしまい、私は少し戸惑っていた。

 

「なあ凪。お前もこっちに来いよ」

 

ふたりともが黙り込んだ静寂を破ろうと、溝呂木が口を開いた。

 

「そこにいればお前もいずれ死ぬ。だが闇となり、人智を超えた力を得れば、ビーストに喰われ死ぬなんてことはなくなる。逆に奴等を支配し、生命の頂点に立てるんだ」

 

手の上に出現させた光球を転がしながら溝呂木は言う。その様子と、声色も相まって、怖がりで幼い子供が目の前にいるように感じられた。

 

「随分と弱気ね。私に死んでほしくないみたい」

「そりゃあそうさ。お前は俺の見込んだ女。俺の隣に居るべき者だ。死んでほしくないに決まってるさ」

「あんたがビーストに堕ちたせいでそれは叶わなくなったわけだけれどね」

「ビーストじゃ……ないさ」

 

冷たく言い放てば露骨に落ち込んだ様子を見せる。なにかしっくり来ない。

 

「ビーストなんかじゃない。神の力さ。人間なんかより遥かに上位の神の力。俺はそれを得た。そして俺は、お前にもそれを与えたいと思っているのさ」

 

何故だろう。奴と目線が合わない。時折チラチラとこちらに向けてくる目に合わせて見返してやれば、奴は慌てて目を逸らす。バツが悪そうにといえば確かにそうなのだが、どこか私を恐れているような、私に対して罪悪感でもあるような様子にも見えた。

 

さらに私の方から近寄ろうとすれば奴は膝の上に置いた拳を握り、平常を保とうとする。

 

外見も、声も、全く同じだと言うのに、とてもこの男が溝呂木眞也だとは思えなかった。

 

また小狡い真似を。今度はあんたの偽物を寄越してくるなんて。

 

この場所を離れるべく私は奴に背中を向け、歩き始める。

 

「どこへ行くんだ、凪」

「決まってるでしょ。あんたに会いに、よ」

「っ……!」

 

振り向きざまに銃を向ければ奴はたじろいだ。ほら、やっぱり違うじゃない。あいつは私に、『撃たないで』なんて顔はしないわ。

 

私は奴を無視し、歩を進めた。

 

 

::

 

::

 

 

溝呂木に会いに行ってしまった副隊長を連れ戻すため、僕と隊長はチェスターを飛ばす。彼が接触してきたのは隊長から溝呂木のことを聴き終わった直後だった。

 

計器の僅かな異常。

 

「今のは……」

「孤門、大丈夫か」

「はいっ、問題ありません」

 

─ザザッ……─

 

「ん?」

 

隊長との無線が乱れる。

 

「孤門、聞こえてるか」

「聞こえてます。隊長は?」

「こちらも問題ない」

 

『─和倉英輔、孤門一輝─』

 

「「!!」」

 

『─お前達に話がある─』

 

この声は一度聞いたことがある。

 

── 『それを返してもらおうか』 ──

 

あのとき僕とファウストの間に割り込んできた真っ黒い闇の巨人。そのことを隊長に言うべきか迷う僕を他所に隊長は彼との会話を始めた。

 

「ナイトレイダーの回線に割り込むとは。君は何者だ」

『─星河鋒人(ほしかわ さきと)と名乗っておく。イラストレーターとは対話済みだが、俺がお前達に接触したということは内密に─』

「味方と判断していいのか」

『─ダメだ。お前達寄りの中立程度に留めておけ─』

 

僕たちの回線に割り込んだ彼はそう言って僕たちを突き放す。

 

「君の目的は何だ」

『─もうひとりのメフィスト─』

「「!!」」

『─溝呂木の行く先にそいつも居る─』

「ではなんだと言うんだ。引き返せと?」

『─そのまま進め。メフィストは必要に応じて俺達が惹き付け、押さえる。貴様等は貴様等のすべきことをしろ。以上だ─』

 

「待ってください!」

 

要件を伝えるだけ伝えて通信を即切りされそうな雰囲気だったので僕は慌てて口を挟んだ。

 

『─なんだ─』

「ファウストに伝えてもらえませんか。『ありがとう』って」

『─………………。いいだろう─』

 

彼は短く答え、通信は途絶えた。

 

 

::

 

 

一年前溝呂木が消えた現場へと私は足を踏み入れる。探す間もなく奴は私の前に現れた。

 

「河原であった時ぶりだな、凪。再開の証を返しに来てくれたんだろ?」

「偽物を寄越しておいてよく言えたわね」

「クク、ハハハハッ!! やっぱりお前は俺の理解者だ、凪」

 

「そうさ、お前が河原で会った俺は俺じゃない。今、お前の後ろにいる奴さ」

「!!」

 

溝呂木に言われ振り返ろうとしたが、物凄い力で両腕を後ろに絡め取られ、そこから全身へと這うように滑った力により私は拘束されてしまった。

 

力を振り絞って無理やり振り返るとそこには、溝呂木の変貌した悪魔と同じ姿の悪魔が、開いた左手を突き出した姿勢で立っていた。その手から伸ばされた蛇のような触手が私に絡み付いていたのだった。

 

「放しなさ……っああ!!」

 

拘束から逃れようと私がもがけば、それは骨が折れんばかりの力で私を締め付けてきた。

 

「暴れるな! 俺が加減を間違えばお前の体はへし折れる」

「そうだぞ凪。そいつはその力の扱いがまだ分かっていないんだ。大人しくしておけ」

 

溝呂木が近付いてきては目の高さを合わせ、私をあやす様に笑った。そして私の後ろの悪魔へと目を向ける。

 

「間違っても殺すなよ、五十木。こいつは俺の元へ来るべき存在なんだからな」

「わかっている……」

 

「溝呂木、一つ教えて。あの夜、この先の闇で何があったの」

「……本当の俺を知ったのさ」

 

溝呂木がまた私に視線を戻す。

 

「俺はここで、闇の存在と出会った」

 

────

『ビーストも人間も何も変わらない』

『力を以て互いを殺し合う、弱肉強食の関係』

『勝ったほうが相手の全てを飲み込む』

『だがそれは箱の中で完結しちまってる』

『箱の中で殺し合う、哀れでちっぽけな存在』

『箱の外のことなんか何も見えちゃいねえ』

────

 

「あいつは言った。俺の力はこんなものでは決してないと」

 

────

『どうしてお前はそんな所にいる。メフィスト?』

『お前はビーストに蹂躙される人間じゃない。全てを支配する神の側の存在だ』

『お前はダークメフィスト』

『その力で全てを支配する、闇の力の化身だ』

『人間の殻は窮屈だろ?』

『俺が手を貸してやる。思う存分、その闇を曝け出せ』

────

 

「そうして俺は神の側へと足を踏み入れたのさ」

 

「………………っ、」

 

私を締め付けている触手が僅かに震えた。隙を見て後ろへと目を向ければやはりあの悪魔の顔が目に入るのだが、その悪魔からは少しの戸惑いの表情が読み取れた。

 

「(どうしてあんたが動揺してんのよ!)」

 

「受け入れろよ凪。お前もこちら側の存在だ」

 

溝呂木が私へ手を伸ばしてくる。が、

 

「っ!!」

 

銃声。溝呂木と、後ろの悪魔へも放たれたらしく、そいつがよろけたために私は床へ引き倒された。

 

 

::

 

 

「副隊長!」

「凪を放せ!!」

 

メフィストの左手から伸ばされた触手に副隊長が絡み付かれていた。それを解かせるべく僕達は奴らを撃ったのだけれど、そいつは副隊長を放そうとはしなかった。

 

メフィストが僕達へと振り返る。

 

「こいつらは殺すか?」

「そうだな……、殺れ」

 

溝呂木の指示でメフィストが僕達へ右手を向ける。こちらへ向けて光弾が放たれる……かに思われたのだが……。

 

「はあっ!!」

「っ!?」

 

突如割り込んできたファウストがメフィストの右手をはたき落とし、次撃で奴の左手首を捻り上げる。そしてそのままメフィストの左腕を、それを掴んだ左手から放つ真っ白い炎で焼いた。

 

「っぐ、ああぁぁぁぁあっ!!??」

 

炎は触手を伝ってそれを焼き尽くし、副隊長が解放される。

 

しかしファウストはまだそいつを放さず、白い炎でその左腕を焼き続ける。

 

「放せッ! ファウスト!! くそっ、放せぇッ!!」

 

メフィストが激痛に悶え暴れている。

 

「…………ふんっ」

 

もう充分と判断したのか、ファウストはそいつを振り捨てた。

 

「っく、あっ……ぐ…………くぅぅぅっ……はあっ……はぁぁっ……」

 

メフィストは直前まで掴まれていた左手首を押さえて蹲り、恨めしそうにファウストを睨み上げる。

 

「ファウストォ…………何故……そんな力を……。何故……光の力なんかを……。それを使えばお前の体とて無事では……済まないというのに……」

 

そいつの言葉にハッとしてファウストのほうを見遣れば確かに、先程白い炎を放っていた左腕の、腕輪から手先までの所に火傷痕が見られた。

 

「そうか……、ザギ……、ザギがお前にそう命令したんだろ……。俺を動揺させる為に!! そうだろ……ファウスト!!」

 

そいつはずりずりとその体を持ち上げて立て直し、ファウストへ詰め寄っていく。しかしファウストはそれに淡々と返す。

 

「なわけあるか。私は勝手な判断でこの身を犠牲にした。これからザギ様にお叱りを食らう立場だぞ」

「そんなはずない!! そんな……、光の奴等がする真似みたいなこと……そんな……、そんなことをお前が……自らなんて…………」

 

そいつがファウストへ掴みかかろうとしたが、ファウストはその腕を掴み反対側へと投げ去った。

 

「ぐっ……。ファウストォ…………!」

 

左腕にバチバチと闇のオーラを纏わせながらも、どうしてか攻撃という攻撃をメフィストはしない。

 

そいつへと向けられていたファウストの厳しい顔が、ふと僕の方を見る。涙を流したような模様の入ったその顔が、僕に優しく微笑んだ気がした。

 

彼女はメフィストへと向き直ると、再び立ち上がりかけたそいつへ突撃し、テレポートでそいつを連れ去ってしまった。

 

「つまらねえ芝居だったな」

 

ファウストに連れ去られたメフィストを見て溝呂木が呆れたように呟いたのが聞こえた。

 

 

::

 

::

 

 

私は彼らから遠く離れた場所へメフィストを連れ去ろうとしたのだが、その途中でメフィストの左腕の闇から生み出される触手が私を攻撃してきた。私はそれを捌きつつ飛行する。

 

建物の外へと出、自分達本来のサイズに戻ることは叶った。しかしメフィストと絡み合っている最中に壁を超えてしまったらしく、急な位置転換の結果私は墜落し、メフィストを放さざるを得なくなった。

 

「はあっ!」

「ぐ、あっ……」

 

着地直後、私に向かって伸ばされた触手に首を絞め上げられる。再び燃やしてやるべくそれを掴もうとしたのだが、左腕をメフィストの残り片方の手で掴まれ、とめられてしまった。

 

「火遊びはいけねえな、ファウスト。火傷がもっと酷くなっちまうぜ?」

「放…せ……ッ!」

先程までの様子と違う。何故。あの狂い様は私をあの場から連れ出すための芝居だったのか!?

「さっきまで、の、は……演技か、メフィスト!!」

「そんな訳ねえよ。焼かれた腕は痛えし、お前の自己犠牲も許せねえ……」

 

「ファウスト……、俺の元に来てくれよ」

「断る……と、何度も、そう言ったはずだ!!」

「残念だなァ……ファウスト……」

「ぐあァァァァァァァァァっ!!」

 

私が奴を拒絶すると、私の全身を雷撃が貫いた。何……が、あぁぁぁッ!?

 

「お前から来てくれないのなら、俺が力尽くでお前を引きずっていくしかねえんだ。頼むから早く折れてくれ。な?」

 

メフィストは何度も何度も、触手から伝わせて私に雷撃を浴びせる。全身が痛い。だが、こうして引き付けておけば……彼らの元にこいつは行けなくなる。私は意識を強く持とうとしたのだが。

 

「ぐああっ!?」

「何!?」

 

横からの突然の攻撃に私は倒れた。そちらを見遣ると獣のツラをしながら硬い甲殻を全身に纏ったビーストが居た。メフィストが使役したのかと思ったが、あいつ自身も動揺していたので恐らく溝呂木の仕業だ。

 

─グルルオォン!!

 

それは私に狙いを定め突進してくる。私はそれを受け止めようとしたのだが、なんてパワーだ。跳ね飛ばされてしまった。

 

空中で立て直し、そいつの背に向けダークフェザーを放つが、奴の甲殻の表面で火花を散らすのみだった。硬すぎるだろ。

 

着地した私へ向けまたビーストが突進してくる。私はそれを横に跳んで躱す。が、

 

「がっ」

 

私に合わせ方向転換をしたビーストの長い尾が私の背に打ち付けられ、私は再び地面に倒された。そして、

 

「ぐああああぁぁあっ!!」

 

背中から激痛が走る。ビーストは私を何度も踏み躙ってくる。逃れようと手足に力を入れるが、ビーストがあまりにも重くビクともしない。

 

─グガァ……

 

私の顔の傍に、ビーストの涎がしたる。まずい……喰われ…………。

 

 

「待て、レベネメア」

 

 

メフィストの一声によりビーストの動きが止まり、私の上から退いた。私は痛む体に鞭を打ち、メフィストを視界に入れる。

 

ビーストを制したメフィストがこちらへ歩いてくる……。その左手が……手の形を捨て……ビーストの触手のように蠢きだす。それは先程私の首を絞めたものよりも細かく分かれていて……。

 

仰向けに蹴って返される。私が別の姿勢へと逃げようとすれば、メフィストは即座に私に馬乗りになり右手で私の肩を押さえつけてきた。

 

「逃げんなよ、ファウスト。苦しくなんかねえ。直ぐに馴染むからよ」

 

メフィストが掲げた左手が、ゆっくりと私の胸の中央─コア─へと降りてくる。やめろ……それを私に向けるな……!!

 

「やめろ、メフィスト!! 私はそんなもの……ッ、嫌だ! 嫌ッ!!」

 

コアの表面を触手がまさぐる。私の波長が探られている。

 

「っ!?」

 

胸を貫かれるような感覚。

 

「ああ、これか……」

 

─ずぶり

 

「ぐああぁぁぁぁぁぁぁああッ!!」

 

同調された。

 

 

触手の先端が私の内側の世界にふれた。

 

 

それは植物が根を張るように、私の体の深くまで入り込んでくる。

 

 

「ア゙ッ!! ……ぐぁ、っは……、、っ、ぐうぅっ!」

 

 

異物感。

 

 

気持ち悪い。

 

 

嫌だ。

 

 

出ていけ。

 

 

嫌だ、嫌だ。

 

 

 

嫌だ嫌だ嫌だ!!!!

 

 

 

「嫌……ぐあぁぁぁあっ!?」

 

メフィストの雷撃が再び私の体を襲った。

 

「暴れんじゃねえよ。間違えて完全に喰っちまったらどうすんだよ」

 

メフィストの姿に別の存在の影が重なる。

 

胴体を縦に、割って開かれた口が……。

 

それは私を喰らおうとするように。

 

 

開く……、開い、て………………。

 

 

闇……が………………。

 

 

私、を……。

 

 

 

助けてくださいっ……、ザギ様あッ!!!!

 

 

 

「!!」

 

メフィストの手が止まる。征服心が占めていたメフィストのオーラがどんどん怯えへと変換されていく。メフィストは触手の何本かを切り離し、左手を元の形へと戻した。

 

「ぐううっ……」

 

切り離された触手は私の中に滑り込んでしまった。噎せ返る胸を押さえ、私は体を丸める。

 

「ファウスト……お前、今……、誰を呼んだ……?」

「はぁっ……はぁっ…………」

「誰を! 呼びやがった!!??」

 

肩を掴まれ、揺さぶられる。私は息だえだえに笑ってやった。

 

「さ…あ……? お前……の、想像通り……かも、な……」

 

「くそっ……」

 

メフィストは苛立たしげに立ち上がると私へ背を向け、ビーストを連れてこの場を去っていった。溝呂木の下に戻ったのかもしれない。追いかけねば。しかし……体がまともに動かない。力及ばず……か……。

 

私は朧な意識を残したまま、大地へと体を投げ出した。

 

 

::

 

::

 

 

ダークフィールド内でガルベロスとルナが戦う。その姿を眺める溝呂木の後ろに、五十木(メフィスト)が現れた。

 

「せっかくザギが来そうだったのに。逃げてきたのか、五十木?」

「………………」

 

五十木は無言で溝呂木を睨む。

 

「なんだ。随分と機嫌が悪いじゃねえか」

「ファウストに手を出したな」

「お前が生ぬるいことばっかしてるからだ。そうだ、俺がさっきお前の所に送ったビースト、レベネメアを今ここで使ってみろよ。向こうをほったらかしてザギがこっちに来るかもしれねえぜ?」

「…………」

 

五十木はまだ何も言わない。

 

「あいつが気にしてるのはローズのことだけじゃねえ。恐らくウルトラマンやナイトレイダーのこともだ。下手に戦力が偏った時、あいつは介入してくる。お前が連れ去られてから今までやけに気配が静かだった」

「っ…………」

 

話しながら溝呂木は五十木の観察をする。仮面のように固定されたツラでもよくわかる。五十木の目が泳いでいる。

 

「…………、なに怯えてんだ。お前はあいつを殺してえんだろ? 誘き出さないでどうする。お前は奴を殺せる。簡単さ」

「あのビーストを呼び出せ。お前の手で」

 

精神が不安定になっているこの男を操るのは容易。溝呂木は五十木と鏡合わせになるように立ち、腕をゆっくりと上げる。それに合わせ、五十木の手も上がっていく。

 

「やれ」

「ぬぁっ!」

 

五十木が手を振り上げ、ルナへ向け振り下ろす。

 

─グルルオォォォン!!

 

先程ファウストを襲ったビースト─レベネメア─が現れ、今度は彼へ攻撃を始めた。

 

「やればできるじゃねえか」

 

 

::

 

 

なんなのこの二人。

 

協力関係なのかと思って見ていたけれど、溝呂木がこいつの怯えに付け込んで一方的に利用しているようにも見える。

 

これが、闇の力による支配だって言うの? ふざけないでよ。

 

ここで私が溝呂木を撃ったとして、果たしてこいつは私に向かってくるのだろうか。

 

私が考えていると、こいつは私を視界から外すように私の前へと歩み出た。

 

「溝呂木。ザギは今ファウストの所だ。本当にこっちに来るだろうか」

「奴だって盤面の操作はしたいだろう。来るさ」

「なんだったらお前もあそこに混ざるか? ザギも焦るだろうなぁ」

「しかし……」

 

溝呂木の言葉にそいつが迷う様子をみせていると、

 

「ラァァァッ!!」

─ギャオォン!?

 

少し色の明るい闇の巨人が現れ、レベネメアと呼ばれたビーストにドロップキックをかまして転ばせた。

 

「ローズ!!」

「あ〜あ。先にガキの方が来ちまったな」

 

彼はローズというらしい。彼はレベネメアを惹き付け、ウルトラマンがガルベロスとの戦闘に集中できるように仕向ける。

 

「へぇ、案外上手いじゃねえか。ありゃあザギの指示か?」

「…………」

 

溝呂木の偽物が崖の端へと足を向ける。

 

「行くのか? 五十木。……まあ、頑張ってくりゃあいいんじゃねえの」

 

溝呂木がもう一人の悪魔の背に手を添えると、そいつは苦しむ。その最中一瞬だけ彼は私の方を向き、それを最後にぐらりと脱力した。

 

「……あぁ。行っ……て、くる」

 

::

 

私はザギ様から、もしルナがガルベロス以外と戦闘を始めたら割り込んでターゲットを奪うように言われていました。こっちの丸い方がそれなんだと判断し、私は攻撃を仕掛けました。

 

ザギ様はファウストを助けたら直ぐに戻ると言っていました。最悪倒さなくてもいい。俺が戻るまで、それまで耐えろ、と。

 

私はビーストと向かい合う。ビーストは起き上がるなり私に突進してきました。私はビーストのほうへ光弾を放つ。当たったはずなのにビーストは私のほうへどんどん近づいてくる。

 

「ルゥゥゥ……ラッ!」

 

横に避けて知覚範囲から外すよりは背中を向けて逃げた方がまだ位置は把握しやすい。私は向きを変え走り出した。

 

─グルルアッ!! ガア!!

 

背後から数発の熱球が飛んでくる。私はそれをなんとか躱し、そのうちのひとつをネビュラウイングで呑み込む。そしてビーストへと振り返り、

 

「ダアッ!!」

 

ウイングを作りあげるネビュラをビーストに向け、呑み込んだ熱球のエネルギーをそのまま球にして撃ち返した。

 

─ガオン!?

 

当たった。ビーストの足が止まったのを感じる。私も足を止めて構え直す。体の中が少し熱い。ヒリヒリします。今ので内側が焼けてしまったかもしれません。

 

─グルィ……フルルルィ……

 

ビーストの声のような振動は感じますが、色んなものが飛び散っていて探知波動が上手く返ってこない。このせいで私は気付けなかったのかもしれません。

 

『動くな』

「ジャ!?」

 

メフィストが私の頭を後ろから掴んできました。

 

『動くなと言った。ローズウイングも仕舞え。背中の入口も閉じろ』

 

言われた通りにネビュラムチェストの入口を閉じれば、頭を押えていた手が背中へと降りてきた。地響き─ビーストの足音─の震源も近付いてきます。ここから……どうすれば……。

 

「……ラ? デ、アアェ!?」

『暴れるな。大人しくしろ』

 

背中にガチャりと鍵を掛けられたような違和感に驚いて振り向こうとした私は、足掛けで倒されて地面に押し付けられてしまいました。

抵抗するためネビュラを出そうとしたのですが、どういうわけか出せません……。

 

─  ⠐⠪⠿⠴(ごめん) ─

 

「!!」

 

声無き者の言葉。思えばメフィストが私の背に当てていたのは、ネビュラム結晶の付いている側である右手でした。それが、私の(ちから)に干渉してきた。それくらいに強い力を今あの結晶は持っている。いや、違う。私の力が使われた……!?

 

『メフィッ…』

 

私はメフィストへ顔を向けようとし……

 

『その目で俺を見るな!!!!』

「ラゥ……」

 

怒鳴られた。けれどネビュラムチェストが閉じられたことで知覚が封じられてて、メフィストに何を言われたのかがわかりません。私は俯き震える。怖い……。

 

『メフィスト……なんで……』

 

─  ⠅⠇⠾⠀⠣⠡⠅⠃⠐⠟(なにも きかないで) ─

 

また声無き者の言葉。メフィスト、なんでですか。なんでこんなこと……。

 

『お前の目が怖いんだよ。俺の奥底を覗き込むその目が!!』

『それのせいで私の中はぐちゃぐちゃだ。人間どもの記憶が出しゃばってきて五月蝿えんだよ!』

『あいつは俺の行動にいちいち口出してきやがる。私は道具だ。ザギ様の道具。人間どもを蹂躙し、光の者共の力を奪い尽くし抹殺するための! 俺達はそう作られたのだ!』

『それがなんだ。こんなガキひとりが止めに入っただけで動けなくなって! あいつの声に抑え続けられて! 死の恐怖に怯え続けて!! ザギに怯え続けて!!』

『笑えるだろ、なァ!!』

 

私の背中に二本の平行な直線状の切り込みが入る。メフィストが喋り続ける中、その切り込みはどんどん増えていきます。

 

『それだけじゃない。俺はいつからか、ファウストを失うことも、わけがわからないくらいに怖くなりやがった! あいつだって俺と同じ、ただの道具なのに!! 死んでも必要になった時にまた作り直されるだけだってのに!!』

『そもそもだ、どうしてファウストは死ぬかもしれない場所にいるんだ。俺と一緒に自由になろうって言ったのに。それなのに』

『それなのにどうしてファウストは俺と一緒に来ない? そんなの、決まってるじゃねえか。お前らがいるからだよ。お前らがファウストを縛り付けてるんだよ!』

 

ずっとメフィストが何か言ってるんですが、何も聞き取れないんです。何も……。

 

私はうつ伏せになったまま動けなくなっていました。

 

『お前らさえ居なくなれば……。てめえらさえ消しちまえば……』

『だから死ねよウルトラマン!!』

『まずはちょこまかとうぜぇてめえを殺してやる。そしてファウストを飲み込み、ザギを滅ぼす……』

『てめえがこいつに殺されたとわかったら、あの野郎はどんな顔するだろうなァ!? キハハハッ…………、ハ?』

 

メフィストの声の振動が止みました。どうしたんでしょうか……。

 

『くはあっ!! はぁ……はぁ…………、このっ……誰が……渡すか……』

 

─  ⠾⠉⠃⠃⠜(もういいよ) ─

 

その言葉と同時に、ネビュラムチェストの施錠が解除されました。少しずつ、知覚が戻ってきます……。どこかへフラフラと歩いて行こうとするメフィストの後ろ姿が視えました。

 

『溝呂木……』

 

メフィストが離れていきます。

 

『メフィスト……、どこに……いくんですか』

『溝呂木が退いた……』

 

それだけを言い残してメフィストは姿を消してしまいました。

 

居なくなる直前、メフィストが崖の上を見上げていたような気がします。あそこに誰か居たんでしょうか……。

 

─グルルォ……

 

ビーストが、俺を忘れるなと言いたげに唸る。切り裂かれたはずの私の体は既に繋げ直されていて、私は体をゆっくり起こす。

 

空気が揺れる。向こうでルナが決着を付けたようです。私はこのビーストに対して構え直す。けれど、まだ調子がもどりません。足が震えて動きません……。また……、動けない、怖い…………。

 

─グルルアァッ!!

 

ビーストが突進してきます。足が……動きません……。

 

「シェアァァッ!!」

─グルャオン!?

 

さっき私がやったようにルナがビーストを蹴り飛ばしました。地面に着地したルナが私を見つめる。復讐の闇を宿しながらも光であろうとするその瞳は、それでも尚私の(あかり)とするには充分でした。

 

「ンラ」

 

私は震える足を叩いてしっかり立つと、闇深度を深める。

 

─ DD3(ダークダイブ・ドライ) ─

 

そうしてルナとふたりでビーストへと構えた。

 

 

::

 

::

 

 

「ファウスト!」

 

俺が駆け付けるとファウストは地面に蹲り苦しんでいた。

 

「ザギ…様……、申し訳ありま……せん。メフィストを……」

 

「一旦奴はいい。ファウスト、何があった」

「ザギ……様……、私の……中…に……」

 

ファウストの波動を観察すると、その中にこいつのものではない波動が感じ取れた。

 

「ファウスト。そいつを引きずり出す。お前の中に手を入れるぞ」

「はい……ザギ様…………」

 

ファウストの胸に手を当て、その波動と俺の波動の波長を合わせる。俺たちの波動がピッタリと重なった時、俺の手はファウストの中へとぷりと沈み込んだ。

 

「んっ……ぅぅ……」

「暫し耐えよ」

 

ファウストの中を探る。何かがファウストの中を駆けずり回り、俺の手から逃げる。

 

「!」

 

捕まえた。俺はそれを掴んだままファウストから手を引き抜く。

 

「こいつが、そう、か」

 

俺に鷲掴みにされビャアビャアと奇声を上げる闇の人形(ひとがた)を観察する。

 

それは腕を変形させた触手で俺の手にふれ、波長を様々に変えてくる。俺の中に入り込もうとしているのだろうが、俺が波動を隠蔽したためにそれが適わず、今度は嫌がらせのようにぢくぢくとその触手で刺してきた。

 

こいつの情報が欲しい。俺はこいつの胴体─口のようにも見える─に爪を突き立てる。そこから俺の意識を流し込み、内側から食い破るように融合を始めればこいつは苦しみその身をよじった。

 

見えた。こいつの本体。石堀光彦で間違いない。そして俺に対する強い殺意。邪魔をするなどでも言いたげな。そしてそいつは、やはり俺─ザギ─ではない。それなのに何故、俺達の歴史をなぞる……、いや、何故なぞれる? まさか知っている、のか?

 

ダメだ。こいつからはこれ以上の情報が出てこない。

 

人形の胴体から指を引き抜き、俺の爪に付着しそれを汚している闇を見て再度考える。メフィストにも同じものが取り付いていることがほぼ確定。どうにかして取り除いてやらねばならん。しかし今の段階ではメフィストにまともに接触できない。どうすればいい……。

 

俺はこの人形を怒りに任せ握りしめる。それは断末魔を上げ俺の手の中でべチャリと潰れた。

 

「ザギ……様……、怒りをお鎮めください……。このファウストは、ザギ様のお陰で無事でございます……」

「…………」

「このままメフィストを追えば、メフィストをまた不用意に追い込んでしまうでしょう……」

「…………、はぁ………………」

 

俺は握った拳を下ろし、怒りの感情を切り捨てた。

 

「ザギ様……、これは私の推測に過ぎませんが……、離反の意思はメフィスト自身のものではありません」

「どういうことだ?」

 

そのメフィストは今お前に危害を加えただろうが。俺は聞き返した。

 

「確かに、ザギ様の前から逃亡してしまったのは奴自身だったでしょう。しかし、今の奴の中には、別の闇の存在が確認できました。ザギ様が握り潰したそれと同一と思われます。それがメフィストに取り憑き……、奴を呑み込もうとしているのです」

 

こいつが取り付いているだろうことは今の解析でわかっていた。だが……。俺はファウストに続きを促す。

 

「メフィストの言動は紛れもなく奴と、そして奴と同化した人間のもので間違いありませんでした。その闇はメフィストの心の都合のいい部分を極端に引き出して遊んでいる。奴の言動の全てが本物であるから、我々もこうして引き回されている。そうは、思いませんか」

 

これは……、実際にメフィストと接敵したこいつでなければ分析しえない情報だ。

 

「これは奴自身のザギ様への忠誠心の高さを加味した推測なのですが……。奴自身の心はまだ我々の陣営に居ります」

「こうして私一人を誘い出し取り入ろうとしたのも、我々に手がかりを残すため、と受け取ることができると思うのです……」

 

しかしここで疑問。

 

「自分の身を犠牲にして、か? 奴の最も嫌っていた行動だろうが」

「そうでございます。しかし、それでもやらねばならなくなってしまった。ザギ様への忠誠心故に。メフィスト自身もあの闇と自身の記憶、心に抗い耐えているのでしょう」

 

ファウストが俺の目を真っ直ぐ見詰めてくる。

 

「どうかメフィストの覚悟を汲み、最後まで泳がせてやってください……」

 

俺は考える。あの闇は俺ではない。俺がそれに劣っているつもりはないが、そいつがどれ程頭の回る奴かもわからない。

 

「確かに今のメフィストは俺達の情報源にはなるだろう。しかしあの闇にとってメフィストが不要となった際にそいつが何をするか。力を奪うだけでは済まぬやもしれんぞ」

「メフィストが完全に敵に支配されたら、とお考えですか」

 

ファウストの言葉に俺は頷く。

 

「メフィストからすればそれは、敵が読み合いを放棄し実力行使に出たこと、我々の勝利を指すはずです」

「だが途中でメフィストが折れ、敵にこちらの情報が全て渡れば俺達の敗北を指す」

「いいえ。メフィストのことです。あの闇に完全に呑まれる直前に自らの自我と記憶を鎖すことも容易いはず。メフィストもこの世界の記憶は持っているのでしょう? 引き際は弁えている。私はそう思います」

 

ファウストはもう一度俺の目を真っ直ぐ見る。

 

「ザギ様、奴への引導は私めが渡します。片割れの手で滅されるのであれば奴も本望のはず。どうか、メフィストの覚悟を信じてやってはいただけないでしょうか」

 

「………………、俺は……」

 

しかし、答えに迷う俺の頭を劈く一報が入る。

 

『─ザギ様、ビーストが増えました! 硬いやつです。今、私とルナで一緒に戦ってます!!─』

ローズからのテレパシー。これは……まずい。

「─そのまま戦闘していて構わん。入口は開けておけ! 今から戻る─」

『─はい!─』

俺はファウストに目配せをし、俺の中に戻ってもらうとこの場を飛び立った。

 

 

::

 

::

 

 

俺がローズの元へ戻ると、ローズはルナと共に俺の記憶にない種類のビーストと戦闘を繰り広げていた。

 

『─ローズ!─』

「はい!」

 

俺はその胸部の空間─ネビュラムチェスト─へ潜り込み、ローズに情報共有を求める。

 

『─戦いながらで構わん。これからする俺の質問に簡潔に答えろ!─』

『はい!』

 

『─ガルベロスはどうした!─』

『ルナが倒しました!』

 

『─溝呂木はどうなった!─』

『退いたってメフィストが言ってました! メフィストも居なくなりましたけど……』

『─そうか─』

 

『─あのビーストの様子は!─』

『硬いです! 凄く! 突進も尻尾も怖いです!  火の玉も吐きます!』

『─ザギ様、そいつの突進は受け止めようとすべきではありません。凄まじいパワーです─』

 

ファウストもこれに襲われていたようだ。

 

─グルォン!

「シュッ!」「ラャッ!」

 

ビーストが回転し振りつけた尾をふたりは跳んで回避する。

 

ローズとの受け答えをしながらルナの様子を見ていたが、やはり相手をするビーストが増えたせいで本来よりダメージが酷い。俺はルナにテレパシーを送る。

 

『─ルナ、先に退け─』

 

しかし返答はない。

 

『─退かぬというのなら、せめて死ぬな─』

 

一刻も早くあのビーストを片付ける。それができるのは……。

 

『─ローズ。アレを撃てるか。貴様がメフィストと撃ったアレだ─』

『……カノンですね。一人では撃てないです。また爆発します。けれど、ザギ様が手伝ってくれたら撃てると思います!』

『……なにをすればいい』

『エネルギーの調整です。私の内側からで構いません』

『わかった。一度ビーストから離れ、発射の体制を整えろ』

『はい! ルナ! すみませんが少しの間、ビーストのことをよろしくお願いします。ちゃんと倒せるよう、準備します』

 

ローズの呼びかけにルナはこちらを一瞥し、ビーストへと向き直った。

 

 

::

 

 

ローズはレベネメアから距離をとると、胸の前で拳を二度付き合わせる。そしてその拳を、右足の踏み込みと共に前へ突き出した。

 

「LAaaaaaaaa……」

 

突き出した拳から肩までをローズネビュラが覆い、砲身を形成していく。が、そこへ充填されていくエネルギーがあまりにも多く、砲身はバチバチと星を散らし、形が揺らめいでいた。

 

そのエネルギーを調整すべく、ザギは高速で分析を始める。メフィストは以前、この砲身を保護し、エネルギーを抑え込む形でカノンを撃たせた。だが、最適解はそれではない。ザギは結論を出した。

 

『成程。そういうことか』

 

ローズがカノンを撃てなかったのは莫大なエネルギーをコントロールできないという理由からではない。

 

この技は、ふたつの波動を干渉し合わせて爆発させ、生み出されたエネルギーを光線として放つ技のようだ。そもそもの大元となる波動の出力も半端ではなく、そのバランスの調整、そして生み出されたエネルギーの制御の両方を同時に行う行為は至難の業である。そのどちらか、もしくは両方を俺が引き受ければ……。

 

ローズの背中側の出口から、ザギは自身の紫黒の闇でできた管を砲身に繋げる。

 

ザギはふたつの波動の出力を拮抗させた。そしてそのバランスを保ったままじわじわと出力を上げてやる。すると今度は発生したエネルギーの制御が効かなくなり、ローズネビュラでできた砲身から弾ける星が、自らを閉じこめる砲身を砕かんと数を増やし、ローズの体が震えだした。

 

「LAuッ……uuuuuu……」

 

急がねば。ザギがローズネビュラへ干渉し、砲身の中のエネルギーに流れを作ってやると、黒い砲身にザギと同じような赤い模様が現れた。

 

『ザギ達ッ! もう撃てます!』

『貴様のタイミングで撃て!』

『わかりました、ルナ! 避けてくださいッ!!』

「シュウッ」

 

超エネルギーに気付きこちらへ来ようとしていたレベネメア。それを押さえ込んでいたルナがその手を放す。

 

─グルルアアアアアアァァッ!!

 

「DAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!」

 

 

─ カノン・オブ・ザギ ─

 

 

ローズに向け突進してくるレベネメアへと超威力光線が放たれる。レベネメアは顔面から尾先までその全身を黒い光線に呑まれ、圧倒的な防御力を誇った鬣も意味を成さずに消滅することとなった。

 

 

::

 

 

「ラアゥ……フゥッ……フゥゥ…………」

『よくやった、ローズ』

 

光線を撃ち切り、地面へとへたり込んだローズを労う。ふとルナの方を見るとそちらも緊張の糸が切れてしまったようで、片膝をつき、消失してしまった。

 

『……ちっ、先に消えたか』

『追いますか?』

『いや、今は退け』

『わかりました』

 

俺は引き際に、溝呂木の作り出したダークフィールドを解除し、ナイトレイダーを元の世界に返してやった。

 

ローズの中で俺は考える。

 

次は……ゴルゴレム。幸い溝呂木が直接手を下してこない相手だが……。やはり本来より姫矢のダメージが大きい。回復させてやらねばならなかったというのに。ここより後、記憶の流れを乱さずに接触できる箇所となるとあそこだろう。

 

『ローズ、俺の示す座標へ飛べ』

『わかりました』

 

俺は次の戦場の傍で待機することにした。

 

 

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