毎週、覗きに来てくれている人がいるようだ。
嬉しいことだ。
夏コミに当選しました。
これの挿絵をたくさん描いています。
ルナと溝呂木から充分に距離を取り、ザギはバハメットを手放す。そして自分の内部にしまい込んでいたローズに声をかけた。
「─ローズ、起きているか─」
『はい、もう起きてます!』
「─山場は越えた。あとはこいつだ。こいつはメフィストではない、が、間違いなく俺達のメフィストはそこに居る。俺はこいつとは戦えない─」
『バトンタッチですね?』
「─話が早いな。奴が攻撃をしてくるのなら代わってくれ。貴様の入れるタイミングで構わん─」
『わかりました』
ローズとの作戦会議を切り上げ、ザギはバハメットへと目をやる。
「そういえば、貴様の名を聞いていなかったな。なんと言う?」
「誰がてめえなんかに教えるかよ」
「そうか。では貴様はこれからどうする。目的は達したろう?」
「いいや、まだ終わっちゃいねえぜ。俺様の目的は、てめえを殺すことだからなァ!!」
バハメットは叫び放ち、ザギへと向け闇エネルギーの斬撃を飛ばす。
『ッシャァ!!』
『ヌゥッ』
連続で放たれるそれをザギは両手で広げたバリアを用いて受け止める。バハメットは段々と距離を縮め遂に、バリアへと大刃を振り下ろした。バリアと刃とがギャリギャリと火花を散らす。バハメットは更に力をかける。バリアごとザギを真っ二つにするつもりらしい。
「このまま俺様にたたっ斬られちまえよダークザギ!!」
「悪いが、貴様程度のものに斬られるつもりはない」
「余裕ぶっこいてられんのも今のうち…………っ!?」
ザギの胸の、コアの中心から飛び出すようにして現れたローズがバハメットへ突っ込む。滅多に使うことのなかった両腕の武器─ローズスパイク─を展開した両拳を突き出したそれ。流石に串刺しは嫌だったのだろうバハメットは直前にローズの出現を察知し、ザギへの攻撃を中断して避けた。
ザギはローズの背を追い、その背の入口からネビュラムチェストへと潜り込んだ。
〜*〜*〜
ザギの中からもう一体の闇の巨人が出てきやがった。こいつは……あのクソガキだ。しかもそいつの中にザギは隠れやがった。
「逃げんのかよザギ!!」
「そうです! ザギ様はメフィストとは戦いません!!」
「俺様が用があるのはザギだけだ! ガキは引っ込んでろ!」
「引っ込みません!」
背中から黒い翼を生やし、俺様よりも上空を陣取って光弾を撃ってきやがる。ムカつくぜ。俺様はそれを躱しながら叫ぶ。
「ザギを出せっつってんだよ!」
「絶対出しません! ザギ様はメフィストとは戦わないって言ってるじゃないですか!!」
「だったらてめえを殺して引きずり出してやるよ!」
俺様は左腕の刃を盾にそいつへ突進する。そいつは翼を前に寄越して防御姿勢を取った。バカが。てめえでてめえの視界遮ってどうする。
そいつが防御へと移行し攻撃が止んだのは好都合だ。俺様は刃にエネルギーを集め、突進の威力を増大させてそのまま突っ込む。しかし、
「にぃ!?」
俺様がその翼へと突っ込むのと同時にそれが俺様を包むように広がった。視界が黒に奪われる。
『ラァァ……』
「!!」
背後にエネルギーを感じた。すかさず振り返るとそこにはあのクソガキが居て、俺様へと光線を放つ直前だった。
「ちぃっ!」
俺様も急ぎエネルギーを集め、応戦する。
─ダークレイ・シュトローム─
─ネビュラム光線─
『ナァァァアアア!!』
『ジャアアッ!!』
エネルギーの衝突により爆発が起こる。俺達は光線を撃ち止め、仕切り直す。
「その技……メフィストの!!」
「そうだ。これはメフィストの技だ。俺様とあいつは一緒なんだから、使えて当然だろ」
「……じゃあ、それもちゃんと使えるんですか」
そいつが俺様の右腕を指す。
「当たり前だろ?」
俺様はアームドメフィストから黒い鉤爪を展開してそいつに見せびらかす。しかしそいつは首を傾げて不思議そうにしやがった。
「半端ですね。まだあなたを許していないのか、それともまだあなたが知らないだけなのか……」
ムカついた。なんだかわからねえが心底ムカついた。
俺様は吼え、その鉤爪をそいつに突き出す。そいつはそれを両腕の針で逸らし受け流そうとする。それに対し俺様が連続で突くと、そいつの構えは簡単に崩れた。最後にそいつのコアのある胸部を貫くべく大きく振りかぶる。だが、
『ギニャッ!?』
突き出そうとした右腕を斜めに貫かれる。めちゃくちゃな勢いで槍が飛んできやがった。体勢を崩されるだけじゃなく、勢いを緩めずに飛び続ける槍に引きずられる形で俺様は撃墜された。
地面に俺様を括り付ける槍を抜こうと、左腕の触手を絡ませるがビクともしやがらねえ。この状態の俺様をバカにでもする気か、クソガキがゆっくり近付いてくる。そしてしゃがんで俺様の顔を覗き込んできた。
「メフィスト、こっちを見てください」
「なんだよ。俺様はメ……」
──バチッ
「にっ!?」
俺の目の前でそいつの目が光った。クソほどに眩しかった。俺様はそこに居るであろうクソガキに向けて刃を伸ばして薙ぐ。手当たりは無え。
「目眩しなんて卑怯だ! にぃぃ……ッ!」
「メフィスト、眩しいだけですか?」
「クソほど眩しいっつーの!! 頭も痛え……ッ」
「それだけですか。わかりました」
「いっ……痛ってーな!! 今度はなんだよ!!」
槍が抜かれた。立ち上がれるようにはなったが、まだ視界も頭もグラグラしやがる。
「あなたは本当に、ザギ様を殺す気がありますか?」
「ったりめーだろうが。ザギは……てめえらは……俺様の邪魔を……、邪魔を……?」
答えなんか決まりきってるはずなのに。こいつらは俺様の邪魔をしたってのに。なんでだ? なんで俺様、こんな奴らを殺すのを躊躇してんだ……?
ザギは俺様の邪魔をしたよ。けどさっきはシナリオを戻すのに協力してくれて……。なんで……? ……わからねえ。
そいつは俺様がこうしている間に攻撃してくるなんてことはなくて、俺様は余計わけ分からなくなっちまった。
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光を取り戻し、ウルトラマンルナ─姫矢─は溝呂木と向かい合う。
「貴様の光はとっくに消えていてもおかしくなかったのに……!」
「俺を助けようとする孤門の声が聴こえた。そして、彼女の心を救ってくれと、あの青年に頼まれた。だから俺はまだ、戦う……!」
姫矢は胸のエナジーコアに手を添え、光の力を込める。そしてそれを握った拳を力強く天へと伸ばした。その光は腕から全身へと広がり、ルナの体が内側からの光によって輝きだす。
「その力は他者を圧し支配する闇の力だ! 貴様よりも俺が持つのに相応しい!!」
「いいや、この力は人々を支配するための力じゃない。心を救う。人々を想う光の力だ」
姫矢がその手を大きく開くと、ルナの体は一段と輝き、全身から集められた力が光背を生み出した。その氷輪のような光を背に、姫矢は溝呂木へと構え直す。
「心を救う、だと? 笑わせるな」
溝呂木が姫矢へむけ闇の光弾を連続で放つ。姫矢はそれを左手の篭手で受け止め続け、光エネルギーへと変換していく。充分なまでにエネルギーを集めたその手を開き前へとかざすと、リィン……、と鈴を鳴らしたような音と共に溝呂木へと衝撃波が返された。
「ぐうっ……!」
「これは闇の中に在る貴様へも手を伸ばすための力だ。目を覚ませ溝呂木眞也!!」
「戯れ言を!! 俺はダークメフィスト。全てを支配する闇の化身だ!!」
溝呂木は飛び上がり、上空から姫矢を見下ろす。
「ぬぅアアアアア…………っはああッ!!」
解放した闇エネルギーで空を覆い、無数の闇手を伸ばして地上への攻撃を始める。姫矢やナイトレイダーだけでなく、地上で姫矢の勝利を祈るサクタのことさえも巻き添えにしようと。
「ッ!!」
姫矢は天を見上げ、中空へと飛び立つ。そして地上のサクタをその背に庇うように留まる。
──リィン……リィン……
二度目、三度目。あの音と共に光背が大きく展開されていく。そして、
──リィン……!
『ジェアアァッ!!』
四度目の音が鳴り響くと、糸のように細い無数の光が溝呂木へと放たれた。光は溝呂木の闇手を次々に穿ち、相殺していく。
「っ、馬鹿な!! っ、ぬぅァアアアア!!」
溝呂木は対抗し、更に更にと闇を強めていくが……、
「ぐあっ!?」
闇手のひとつが溝呂木の背後から胴を貫いた。いや、溝呂木の胴、その前面から手が生えてきていた。
「なん、だ、これ……は。……ぐふっ」
もうひとつ、胴から手が生える。ふたつ揃ったその手は徐々にシルエットを整え、黄金の鉤爪を持った両手が形を成した。
その両手の主は自身の宿主たる溝呂木の体から抜け出そうともがく。内側から表皮を引き裂き、溝呂木の体に縦の亀裂を広げていく。
「グゥあああァァアアアアア!!」
溝呂木が反動で仰け反る。そして、亀裂から羽化するように手の主が顔を見せた。黒い闇が徐々に、徐々に、その身体を宿主の外へと引き出していく。
「はは、は……。そう、か。俺、は、ここで一度死に、この闇、に、生まれ、変わるんだ……。俺、が……ははっ……、キハハハハハッ!!」
闇の上半身が完全に現れ、溝呂木のものだった上半身はぐたりと力を失った。溝呂木の意識までもがそちらに移動したように闇が高笑いした瞬間、
『ジェアアッ!!』
黒い闇の顔面を姫矢が鷲掴む。そして
──リィン……!!
五度目の音が鳴り響く。音が闇を伝いその体を震わせ、ガラスのように粉々に砕いた。砕けた闇の一部は亀裂の中へと還っていく。
『フンッ、ォォォ……』
姫矢が亀裂に手をかざしなぞる。すると光背から生まれる光の糸が彼の胴体を縫い合わせていき、亀裂は完全に塞がれた。
意識がまだ戻らず、自由落下寸前の溝呂木の体を姫矢は支えてやった。
「………………っはあ!!」
少しすると溝呂木の意識が戻り、状況を理解すべく彼は頭をフル回転させる。自分の身に何があったのか、自分が何をされたのか、それを理解した彼は姫矢の手を振り払って睨み上げる。
「仕留め損ねたな……姫矢……。貴様の手で俺を葬る最後のチャンスだったぞ……」
先程の攻撃でその力の殆どを失ったと思われる。しかし溝呂木は虫の息ながらも姫矢を挑発する。
「もうやめにしよう溝呂木。お前はこれから罪を償うんだ」
「くくくっ」
姫矢の返しに溝呂木は嗤った。
「何がおかしい」
「この地で死ぬ俺に、なんの罪を償わせようというのだ」
「まだお前の命は消えていない。救いようならいくらでもあるはずだ」
姫矢の言葉は溝呂木にはもう響かない。
「あぁ、あぁ! 未来を知らぬというだけで、人間はここまで愚かになれるのか!!」
「なんだと?」
「俺はここで死ぬのが
溝呂木は後ずさって姫矢から距離をとると両手を広げ、自身に残された闇エネルギーを体の中心に集める。さらに、砕かれ粉々になったバハメットの闇を凝縮し両手の中にそれを生んだ。
「待て溝呂木、なにを……!」
「ここで死ぬというのなら、貴様もろとも
『ウオオオオオオオオオオオオ!!!!』
溝呂木は絶叫すると、両手の闇を自身の胸中央、コアへと押し付けた。溝呂木を中心に大規模なエネルギー爆発が巻き起こる。
「溝呂木……!」
姫矢は自身へと迫る爆炎を前に一瞬、呆然とした。とめられなかった。いや、まだ、この力にはできることがあるはずだ。一瞬。本当に一瞬。姫矢が覚悟を決めるのに時間など必要なかった。
姫矢はサクタへと、ナイトレイダーへと、別れを告げるように振り返る。そして爆炎の中へと飛び立ち、消えた。
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漸くハッキリしてきた俺様の視界を今度は爆発の光が包む。俺達はふたりの戦っていたほうを向いた。その爆発と共に溝呂木とレヴィーサの気配は消えた。
「あれでいい……んですよね?」
中に仕舞ったザギへ問うようにガキが呟く。その答えは是だったんだろう。ガキが今度は俺様を見詰める。黒い眼差しが俺様を射抜く。その目は、俺様の迷いを見抜いているかのようだった。
「あなたは、これからどうするんですか」
目だけでなく言葉でも問われた。
視線を外せない。やっぱりこいつ、怖い……。
『…………』
無意識に後ずさっていた俺様の前にメフィストの幻覚が現れる。そいつは俺様を庇うように片手を広げ、俺様とガキの間に立つ。するとこの幻覚が見えているみてえにガキの視線が動いた。
「メフィスト。それでいいんですか?」
『…………』
その問いに幻覚が答えるなんてことはねえことを察し、ガキは漸く視線を切った。
そうこうしてるうちにナイトレイダーの機体がこっちに向かってきやがった。ここであいつらと戦う理由はない。俺様はこの場からの逃走を選択した。奴らは、追ってこなかった。