底無き闇に光差せ / ortRoLoDs   作:弐の字

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ねえしってる?

どっかの破壊神が子供の首を刎ねたんだって。

ねえしってる?

子供は牙の長い怪獣の頭をつけられたんだって。

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前回から時間と場所が大幅に飛びます。
光の国から旅立ち、彼らはいろんな場所へ行った。ローズの中で力を回復させていたザギも完全復活が近付き……。

ザギと大喧嘩をする話です。



闇より出しは命無きもの

 

四人で宇宙を(ローズに連れ回される形で)旅をして随分遠いところまで来た。今は小惑星に着陸し休憩中なのだった。

ローズとファウストはヒカリから与えられた記録端末を眺め、メフィストは向こうで体を伸ばしている。ザギは他のものに興味が無いのか基本ローズの中なのだが、今回は珍しく外へ出ていた。

 

外に出たザギは煩わしそうに胸の装甲を引っ掻いている。修復中のザギのエナジーコアを破損させない為にローズが無理やり着けさせた鎧─ネビュラメイル─。ここ最近のザギは何度かそれを破壊しようとしていたのだった。

確かに以前に比べて鎧から透けて見えるV字型の光は強くなっている。完全復活が近いということでもあった。

 

『ハアァァァァ…………』

 

ザギはエネルギーを溜めていく。いつも通りならば手応えはないはずだった。だが今回は違った。内側からの圧にピシリと鎧にヒビが入るような感覚を覚えたザギはほくそ笑み、更に力を加えた。

 

『アアッ!!』

 

─カシャン……

 

鎧が崩れ去る。歓喜するザギの咆哮に三人はそちらを向いた。

「ザギ様……!」

「完全に復活なされたのですね……!」

メフィストとファウストが駆け寄る。

「……いや、まだだ。まだ足りん」

ザギが突如ファウストの顔面を掴んだ。

「ザギ様、何をっ……、っぐ、あぁぁぁぁ!?」

もう片方の手をファウストのコアに添え、ザギはファウストのエネルギーを吸収していく。

「おやめ下さい! それではファウストが!」

「次は貴様だメフィスト。黙っていろ」

メフィストが止めに入ろうとしたが一蹴。ザギの言葉は死刑宣告に等しかった。

 

ザギにエネルギーを奪われ、ファウストの体が指先……足先から塵と化していく……。メフィストは片割れが消滅する様子を見せ付けられていた。

それはメフィストの内にある記憶のひとつを刺激した。大切な片割れを目の前で失ったあの少年の記憶。酷い悲しみと、怒りと……。

しかしその光景は同時にもうひとつの記憶をも刺激した。それ故に、メフィストは動けなかった。

 

ファウストがその形を失い、ザギの手がメフィストへと向けられる。

「はっ……ぁ…………、、」

メフィストの顔面を掴んだザギが怪訝そうな様子を見せる。

「俺は貴様をここまで弱く作った覚えは無いぞ」

 

「ザギ……様……、私は……」

「なんだ」

「ッ……、口答え……、申し訳……ございませ…………ッ、、がぁぁぁぁッ!!」

メフィストもファウスト同様にエネルギーを奪われ、塵と化した。

 

ザギは自身の手を見詰める。そこに問題なく力が籠ることを確認すると喉の奥で笑って宙を見上げた。

「言っただろう。お前達はこのザギの道具だと……」

「それがなんだ、このザマは。なあ? メフィスト、ファウスト」

虚空に呼びかけるがふたりが答えることはない。

 

「余計な物をこのザギに渡しおって」

ザギはふたりから奪い返したエネルギーを自身に馴染むように変換し直し、増幅する。それを全身に行き渡らせ、再び咆哮。

「ノア……、俺は直ぐそちらへ到着する。姿を現して待っていろよ……」

 

「私のことも連れて行ってください!」

飛び立とうと両足に力を入れたザギの手をローズが掴んで止めた。

「断る。邪魔だ」

ザギは振り返ることなく答える。

 

「ふたりのことも、邪魔だったと言うんですか」

「ああ。過去こいつらはこのザギの目の前で無様な戦いをした。出しておくだけエネルギーの無駄でしかない」

 

「では私のこともザギ様の力の糧として吸収してしまってください。ファウストやメフィストにそうしたように」

「貴様の力など要らん。このザギが貴様のエネルギーを使って復活した時、どんな影響を及ぼしたか忘れたか」

 

「私があなたをノアの元までお連れすると言っ……」

「ノアの落し子の分際でしつこいぞ!!」

ザギが振り返りファウスト達にしたようにローズの顔面を掴む。力で押されはしたものの動転する様子の無かったローズにザギは呆れた。

 

「恐怖はしない、か……。貴様は考えが甘い子供だがここまでとはな。このザギが貴様を殺さないとでも思っているのか」

「私は、ザギ様が私に行う全てを受け入れます」

ザギの指の隙間からローズは闇の瞳で鋭く見詰め返し、静かに答える。

 

「狂っているな」

「嫌なことは嫌って言って暴れますよ」

「このザギに殺されることは嫌ではないのか。命あるものは皆、死を恐れ生を望むものだぞ」

「嫌もなにもありませんよ。だって、ザギ様は私を殺せませんから」

 

ローズは言い切ってみせた。『殺さない』ではなく『殺せない』と。さすがのザギもこれには笑うしかない。

「ほう……? ではこのまま貴様の首を刎ねてくれようぞ?」

「どうぞ」

「ッ……!?」

一切の抵抗無くその首を差し出したローズに驚いたザギだったが、手刀の形にし闇を纏わせた手を ローズの首にあてがった。

「勿体ぶりますね」

「直ぐ刎ねてしまうのはつまらんと思わないか」

「なにを。そうしたほうが心が楽ですよ」

 

心などと。笑わせる。

自身を見詰めるローズの首を、ザギはその手刀でゆっくりと押し切った。その間ローズは身をよじることも、声を上げることすらもしなかった。

 

「お前は……本当につまらんな」

 

体と切り離した頭部をザギは暫く眺め、ため息をつく。

 

「つまらんな……、本当に……」

 

ザギは思い詰めるように暫く見ていたその頭部を手放すと、立ったままの姿のローズの体に背を向け飛び立った。

そのローズの体が、飛び立ったザギを見上げるような角度に変わっていたことなど知りもしない。

 

::::

 

::::

 

ザギはテレポートを挟みながらノアの待つ惑星バベルへと飛行していた。思えば随分と遠くまで来たものだ。四人で……。

「ちっ」

ザギの中になにかがつかえる。それは責めも咎めも怨みもせずにずっとこちらを、見ている。

まるでローズの最期の眼に呪いでもかけられたかのようだった。やはりローズの言うようにひと思いに刎ね飛ばしてしまったほうが良かったのかもしれない。

 

テレポートを続けるザギの背に突如何者かが襲いかかった。それはザギの体を鷲掴みにするとザギ以上のスピードで飛行を始める。

ザギはそれの軌道をエネルギー放射によって狂わせ、近場の小惑星へと叩き付けた。

「貴様いったい何者…………、!?」

ザギは驚愕する。

 

砂煙の晴れた場所にいたのは、頭部の無いローズだった。よろよろとと立ち上がり、翼をノアと同じ形に納めるとザギの方へ体を向けた。

 

「貴様何故生きている」

『 ⠐⠱⠐⠣⠱⠵⠥⠄⠕⠳⠔⠪⠚⠻⠅⠃(ザギ様は私を殺せない) 』

脳内に直接言葉を叩き込まれる感覚にザギは思わず片目に手をやる。ローズのこれはテレパシーとはまた勝手が違う。普段あまり使ってこないためザギとて慣れてはいないのだ。

 

「邪魔だと言ったはずだ」

だがこれは目を覆ってしまえば向こうの言葉を遮断できる。ザギは目を隠し顔を背ける。それに対してローズが地団駄を踏む音が聞こえた。

 

─バチッ

 

背けていたザギの横顔にローズの光弾が当てられる。威力こそないものの、ザギを逆ギレさせるのには充分。

「ッ、……ローズ!!」

『 ⠄⠕⠳⠥⠞⠟⠾⠊⠪⠂⠟⠃⠙(私はとても怒っている) 』

「鬱陶しいぞ!!」

ザギは重力波動をローズに向けて発射する。ローズはそれを翼で受けるが、堪えきれずに後方へと弾き飛ばされ、岩石に背中を打ち付けた。

ぐったりと項垂れるローズを見もせずにザギは飛び立った。

 

::

 

ローズは自分の体の上に乗っている瓦礫を退かして立ち上がる。ローズを構成しているネビュラムがバチバチと弾けている。先程受けたザギのエネルギーを閉じ込めて吸収し、その力を増していたのだ。

 

─バチッ、バチッ……、ゴフッ

 

それはローズの形状を変えていく。ダークダイブを3(ドライ)のその先へと深める。

ネビュラムは不定形ながらにも新たな頭部を形成した。額には空洞ではなく滑らかに伸びる一本角のシルエット。しかし表皮はまだ治しきれないのか、ネビュラムが剥き出しで揺らいでいた。

 

「ザギ様、私、本気で怒ってますからね」

 

ローズ翼を広げ、飛び立った。

 

::::

 

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後方からの攻撃に気付き、ザギは体を逸らす。先程まで飛んでいたルートを光線が通り過ぎていった。

光線の元を辿ると、自分と同じような真っ黒い姿の人型がそこに居た。その波動からかろうじてローズだとはわかったが、怪獣のような装甲を纏い、またネビュラムが結晶化し、これまでに見た事のない姿であった。

 

「なんだその姿は」

「ダークダイブ・4(フィア)。ここから先は潜って行くのみです」

 

ローズは短く答え、鋭い爪をザギへ振り翳す。その一瞬、ローズのスピードはザギを超えていた。

 

「ちいっ!」

 

それを両腕で守るが、ザギの装甲は火花を散らして抉られた。

ローズは続け様に頭突きを食らわす。しかしこちらは頭部を掴まれたことにより阻止され、その勢いを殺さぬまま放り投げられる。

 

だが咄嗟にネビュラウイングがザギを捕えた。捕らえたザギへ向け、ローズが両手の拳を真っ直ぐ向ける。その腕をネビュラムが覆い、砲台を形成していく。

 

『Loaaaaaaaa……』

 

砲台へエネルギーが集中する。

ザギは感知した。あの攻撃はマズい。下手すれば自分やノア以上の威力の光線が飛んでくる。それを撃つ本人の制御も効かないほどの。こんな至近距離で、無防備でくらっていいものでははい。

 

『DA!!!!』

 

 

しかし、暴発。

経験の無さか、精神のブレか、それが光線として放たれることはなく、周囲を激しい爆発に巻き込んだ。

 

 

「ちっ……」

発射の瞬間をザギはテレポートで逃れていた。反撃にライトニング・ザギを撃つべく溜めをし、爆発の中にローズを探す。

 

 

「そこか!!」

 

 

ライトニング・ザギが放たれる。が、

 

光線の発射に気付き振り返ったローズに両腕が無かったのが見え、ザギは光線の発射をその一瞬で止めた。

 

しかし既に放たれた分の光線はローズに直撃する。自分で起こした爆発と、ザギの光線による爆発とに呑まれ、ローズは完全に姿を消した。

 

 

 

 

 

「…………!!」

ザギはその光景を呆然と眺める。

声は出なかった。

暫く立ちすくんだのち、本来の目的を思い出したザギはその方向へと向き直る。

トサカを引かれたような気がして振り返るがそこには何も無かった。

 

::::

 

::::

 

ローズを振り切ってザギは惑星バベルへと到着した。ザギの降り立った傍にはノアがひとりで立っていた。

 

「きちんと姿を現して待っていたか、ノア」

「ローズはどうした。喧嘩でもしたのか」

「知らんな。奴なら道中捨ててきたさ」

「捨ててきた……か」

ノアはザギの後ろを指差す。ザギは思わず振り返った。

 

「なっ…………、貴様……」

その指のさす先には黒い影が揺らめいていた。急いで飛んできでもしたのか、肩で息をするように動いている。

 

「先にそちらの片をつけることだ。安心しろ、私はどちらの手助けもしない」

「ノア! 貴様逃げる気か」

「そんな状況で私と決闘などできないだろう」

ノアがザギに背を向けたのを確認してか、黒い影はザギに突進をし、そのままザギを連れ飛び立った。

 

空中を移動する中で影が剥がれ、ローズの実体が見えてくる。それはウルトラマン的な造形ではなく、細身な怪獣、もしくは星人にしかみえなかった。

 

「ローズ貴様、しつこいぞ!」

「ザギ様は私を殺せない。私はそう言いました」

ローズは突き出した右手でザギの体を押し、その腕を支えるように左手を垂直に添えている。この構えは、

 

─ネビュラム光線─

 

先刻暴発させた超威力光線─カノン─ではなく、撃ち慣れたそれをゼロ距離でザギに放った。

 

「甘い!!」

ローズの肘を折るように拳を叩き付け光線を上へ逸らすと、お返しと言わんばかりにローズの顔面へ光弾を食らわせた。

『ザッ!? ……ッダ!?』

怯んでスピードの緩んだローズを、ザギは両手を握った拳で叩き落とし後を追った。

 

『ンラッ! ア!!』

 

ローズは落ちる中で体勢を直し、自身の体表で結晶化したネビュラムをザギへ向けて次々と放つ。

 

四方八方、方向も距離も無視して飛来するトゲをザギは躱していく。理不尽な動きをしてきた幾つかのトゲが体に当たるが、ザギの装甲を完全に穿つほどの威力が無いことがわかると、ザギは上空からローズへと突進し、重力波動を放つ。

 

星の重力とザギの重力波動とに負け、ローズは惑星の表面へ墜ちた。

 

『ラァウゥゥゥ……』

 

立ち上がろうとするローズの傍にザギが降り立つ。地面から浮きかけたローズの背を、その背に生える結晶ごと踏み付けた。

 

「まったく貴様は……! 力など無いくせにこのザギの手を煩わせおって!!」

ザギはローズの背の結晶をバキバキと割りながら何度も踏み付ける。

 

「私はッ、怒って……いるんですよ!! ザギ様が……ザギ様がッ……!!」

ローズはめげずに起き上がろうとするが……、

 

 

 

──キィンッ…………キィンッ…………

 

 

 

ローズの背鰭。本来ならば腰の位置にあったはずの赤い光が、背中の結晶の中央で音を立てて点滅し始めた。

その音を聞き、ローズは戦意を手放した。

「あぁ……ダメです。私の負けでいいです。これ以上は、私は戦えない。この先はまだ望まない」

そのまま地面に大人しく伏す。

 

「言ったでしょう? ザギ様は私を殺せない、って」

「死にかけのようなものだろう」

苦しそうな様子で笑うローズをザギは見下す。

「ザギ様、行っていいですよ……。けれど、終わったら戻ってきてくださいね……。また、いろんなところに行きましょうね……」

ローズはエネルギーの流れを留めて休みだした。

 

::::

 

ザギはノアの元へと戻る。

「喧嘩は済んだのか」

「貴様には関係ないだろう」

「では、その喧嘩の続きをしようか」

 

初撃はノア。振り向きざまにザギへと突進した。

ザギはその拳を受け止めて笑う。

「貴様から掛かってくるとは。珍しいな」

「あまりにも君が隙だらけだったものでな」

 

ノアは掴まれた右の拳に熱を集め振り払った。

ザギは後退するが直ぐに同じように熱を込めた拳を返し、鍔迫り合いとなる。

「喧嘩の続きと言ったな。なぜ貴様がアレの喧嘩を拾って食う?」

「君が、君自身を、彼らを、見て見ぬふりをしているからだ」

「なに?」

ふたりはそれぞれの両手を掴み合い硬直状態となる。

 

「君の眷族ふたりが最期に君に向けた感情を君はわかっているんじゃないのか」

「……」

「何故ローズが君に怒ったのか。君は薄々気付いているんじゃないのか」

「うるさい」

「自分で刎ねた彼の首を見て君は何かを思ったんじゃないのか」

「何度も追いかけてくる彼を壊すことに破壊の愉悦など無かったんじゃないのか」

 

 

「全てを見てきたように言うな!」

 

 

ザギは叫び、ノアの手を振り払う。

「何故、全て見ないふりをする」

距離を取らされたノアが続けて疑問を投げかける。

 

「五月蝿いぞ、ノア。このザギにはそんなもの不要だ。俺一人でいいと言うのに」

ザギはノアの言葉を遮るように光弾を放つ。それを捌いてノアは続ける。

「彼らとの旅は随分と、楽しそうだったが」

 

「……あんなもの唯の戯れに過ぎん」

 

「君は、君と同じ時を過ごした者をまた見捨てるのか」

 

「そこまで言うのなら何故、貴様が奴を助けない。奴なら今向こうで弱りきっているぞ」

ローズを置いてきた方向をザギは顎で示してやる。

「私は彼に手を出せない。だからこそ君が彼をあの状態のままにしておくことに疑問と怒りを覚えている。彼に必要なのは君の助けだ」

 

「……他人の助けを必要とする弱者の相手をするつもりはない」

 

ノアがザギの胴を蹴り、先程ザギの示した方向へと飛ばす。ザギは途中で踏みとどまり、ノアを睨み返した。

 

「今、また見ないフリをしたな。彼が強いことは君が一番知っているだろうに」

「振り返って彼の元へいくといい。私は君の背中を狙うような真似はしない」

ノアはまたザギに背を向けようとする。

 

「そう言ってまたこのザギとの戦いから逃げるのか」

「では私も共にそちらへ行こうか?」

ザギの言葉にノアは顔だけをザギへ向ける。

 

「貴様もそろそろその口を閉じたらどうだ」

「何を言ってもダメか……。また、力づくなのだな」

 

ノアが言い切った次の瞬間、ザギの顔面にはノアの強烈なパンチが決まっていた。

 

::::

 

 

 

 

::::

 

ふたりの戦闘の結果はと言うと、見事なまでのコテンパン。決してザギが弱いわけではなく、ローズの状態が危険だと判断したノアが決着を急ぎ、情け容赦無い攻撃をし尽くしたのだった。

紫の発光体にまで戻されたザギは抵抗虚しくノアの両手に包まれていた。

 

触れているノアの手から感情を読み取ったザギは疑問を覚える。

『貴様、何故悲しんでいる』

「なぜだろうな」

『答える気などないということか』

「君がこれを解る時はいずれ来る」

 

手の中に包んだザギから自身の顔が見えないように、ノアは両手をしっかりと閉じ、そこから顔を逸らした。

 

::::

 

ザギをその手に包んだままのノアがローズの元へ降り立つ。

ローズは怪獣のように蹲っていた。ノアが呼びかけるが返答は無い。

 

『死んだのか……?』

「いや、彼は生きている」

ノアは手を開きザギを解放してやる。

 

ザギはローズの周りを飛び回り、全身を観察する。ローズの中に戻ろうにも、主な出入口となっていた背中は結晶化したネビュラムによって塞がれていた。頭部からも入れなくはなかったが、その頭部は自分が刎ねてしまったためか別の形のものが据えられていた。

 

─またいろんなところに行きましょうね─

 

自分を送り出したローズの言葉を思い出す。どれだけ酷い目に遭わせても追いかけてきた子供。ザギの中につかえていたものが僅かに痛んだ。

 

『ローズ、聴こえるか』

 

返答は無い。

ザギは発光体となった体でローズの胸にふれる。ローズが身じろいだ。

 

「ザギ様……、戻ってきてくれたんですね……。けれどすみません……、動けなくなってしまいました……。なにも……見えないんです……」

「暗い…………。あの時と一緒ですね。あのとき、あそこにはあなたと……ノアもいました」

 

「ザギ様……、手を、握ってくれませんか」

発光体となってしまったザギには手などない。ザギは戸惑うようにノアを見上げる。

「貸そうか?」

『…………………………、頼む……』

ザギはローズの手に納まり、ノアはその手に自身の手をかざした。

 

「ザギ様……、ノアも……?」

「…………、光を。光をもう少しください……、そう……、ふふ、とても明るいです」

結晶化したネビュラムがだんだんと融解していく。それと同様に、ローズの体を覆っていた怪獣のような装甲も融けていく。

 

融けたネビュラムが元のローズの形を形成しはじめた。受け取ったノアの光がネビュラムの中で乱反射している。この現象をザギは知っている。過去、ローズの中はこれのせいで傷だらけになっていたのだ。光を弱めるよう、ザギはノアに伝えた。

 

胸部の空洞─ネビュラムチェスト─の入口である背中に吸い上げられるようにネビュラムが引いていき、中からはローズのグレーの体色が現れた。ノアはそっとその手を放す。

 

「ザギ様、ノア、ありがとうございます……! お陰で戻ってこれました……!」

ローズがゆっくりと起き上がる。

 

「ザギ様……、あれ? どこですか?」

自身の手の中に納まっている紫の発光体、それがザギとは知らずローズはそれを握りしめ、周囲を見渡す。

「ローズ、ローズ」

ノアがローズの手の中を指す。発光体はギーギーと鳴き、ローズの手から逃れようともがいていた。

 

「えっ……ザギ……さま…………? あ痛」

ローズの手から解放されたザギは不満を申し立てるようにローズの額へ体当たりを繰り出していた。

「痛いですってザギ様ぁ」

 

ザギはローズの開いた両手に降り立つと、ふんぞり返るようにそこに納まった。

 

『行くぞ』

しかしローズはその両手を力いっぱい閉じた。

『ノ゙ア゙ァァァァァァ!!!?』

『ローズ!! ギッ……貴様ァ!!!』

 

「……ザギ様、メフィストとファウストのこと私まだ怒ってますからね」

『グウゥゥゥ……』

「ちゃんと謝ってください!!」

『……ギィィ………………』

「謝って」

ローズサインがバチバチと点滅している。この状態でフラッシュサインを焚かれてしまえば、さすがのザギでもダメージは免れない。

 

『…………、すまん』ザギは仕方なくボソリと呟いた。

 

「私だけじゃなくてふたりに!!」

『アァ!?』

しかしそれではダメだったようだ。ローズの怒りは収まらない。

 

「ふたりのこと出せるでしょ!! 出して!!」

『…………エネルギーが足りない』

「嘘つかないでください」

『嘘では……っ、……ゥ、ウゥゥゥ……』

 

「ローズ、ザギをあまり虐めてやるな」

「怒れる時にちゃんと怒らないとダメです」

ノアの助け舟も今のローズには通用しないようだ。

 

『早いうちに……ふたりを治す。それでいいか……?』

今のザギにできる最大限の約束。仕方ないなとローズはため息をついた。

「そしてちゃんと謝ってください」

『あぁ…………』

「よし、じゃあ行きますよ。ノア、お騒がせしました! また来ますね」

ローズは発光体となったザギをネビュラムチェストへと仕舞うとノアに別れを告げ、飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ローズ、あのとき君は気に病むなと私に言ったが……。どうして君はあそこまでされてもザギのことを追い掛けられたんだ……」

 





─Result─
【闇より出しは命無きもの】
実績『胸につかえる記憶』を解除した。
実績『音なき言葉』を解除した。
実績『この先はまだ望まない』を解除した。
実績『その手から伝う悲しみ』を解除した。
実績『溶けゆく結晶』を解除した。

==========

ローズのダークダイブ、4以降のデザインがまだ朧なので、描き次第挿絵にしたいところ。
点字変換はこちらのサイトお世話になっています。→ https://uhyo.github.io/tenji-web/
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