【一方その頃、妹(自称)と姉(自称)とパルテティオは】
テメノス達を元気に見送った後、わたしの妹はすぐに各家を訪問した。
家主の男性がベッドの中で高熱に伏せっている。
「こんばんは。元気になるブドウを持ってきました。ミントさんが言ってたんですけど、お熱ある時は果物を食べるのがとっても良いんです。どうぞ!」
「あ、あら……こんばんは。ありがとうお嬢さん、ひとつ頂きますね。お代は……」
「いりません。テメノス様が言ってました。『困ってる方は助けるんですよ』と。どうぞどうぞ」
「あ……ありがとうございます! 主人が目を覚ましたら食べさせますね……!」
「薬師から聞いてると思うが、白湯を飲ませるんだぜ。しっかり沸騰させて。お大事にな!」
「何かあったら宿屋の主人に声をかけてね」
「ありがとうございます!」
そんなやり取りを各病人宅で続け、ブドウやプラムを配りながら、3軒目が終わったところだった。
妹は外に出た瞬間、近くの階段を下りて水路がよく見える場所に走っていった。
「ど、どこ行くの!?」
「おいおい、ゆっくり歩いていけよな!」
慌てて追いかける。
ベンチのあるところだ。晴れた日に町人や旅人がくつろいで景色を楽しむ場所。
妹は水路と灯りから離れたところで、ベンチに座ることなく、夜の暗さに紛れる場所にしゃがみ込んで……
「ええん! えん! えん! さびしいよぉ!! テメノスさまといっしょに行きたかったぁ!! ひぃいいいいん!! いん!! いん!! さびしい!! さびしいです!!」
……大泣きしてる。
リュックからハンカチを出して、顔を覆ってさらに泣く。
「うぇえええん! うう、ええん! えん! さびし、さびしいよぉ!! さびしい!! でもテメノス様たちがんばってるからがんばります!! がんば、がんばるんです!! うぇ……ええん!!」
わたしの目からもドバッと涙が溢れた。
「わたしの妹が頑張ってる……!!(ものすごく小声)」
「落ち着いたら……よしよし、してやりてぇな……(ものすごく小声)」
妹は顔をハンカチでぐしぐし拭う。
ああ、そんな拭き方! お姉ちゃんが優しく拭いてあげるのに!!
泣き止んだ妹はスッと立ち上がり、リュックにハンカチを片付ける。
泣き腫らした顔で、すっきりした表情で戻ってきた。
「お姉ちゃんパルテティオさん、ごめんなさい。休憩終わりました。熱で苦しんでる人のお家に行きましょう!」
キリッとした顔つきで、妹は先頭をまた歩く。『大丈夫?』なんて軽々と聞けない。
わたしは隣を歩き、白い頭巾を優しくポンポンする。
「テメノス“様”が帰ってきたら……ミルフィーユは何をしたい?」
「『おかえりなさい』を言いたいです」
「みんなの休憩が終わったら?」
「温かくしたお布団で寝てもらいます。『おやすみなさい』を言いたいです」
「その後は?」
「テメノス様のお布団でテメノス様とごろんしたいです」
「いいよっ!! テメノスと一緒に寝ていい!!」
「わ~い!!」
「い、いいのか……? 男と同じベッドで……(小声)」
「いいのっ!! わたしの妹が寝たいって言ってんの!! テメノスには絶対に拒否させない!!」
わたしの瞳はやる気の炎でボッと燃え上がる、そんな気持ちになった。
パルテティオは「お、おう……」と呟き、気まずそうな顔でわたし達の後ろを歩いた。