8人の旅人と、赤い髪の娘たち   作:遠野ハネ

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【もうひとつの9話⑤】「いいのっ!! わたしの妹が寝たいって言ってんの!! テメノスには絶対に拒否させない!!」

【一方その頃、妹(自称)と姉(自称)とパルテティオは】

 

 

 テメノス達を元気に見送った後、わたしの妹はすぐに各家を訪問した。

 家主の男性がベッドの中で高熱に伏せっている。

 

「こんばんは。元気になるブドウを持ってきました。ミントさんが言ってたんですけど、お熱ある時は果物を食べるのがとっても良いんです。どうぞ!」

「あ、あら……こんばんは。ありがとうお嬢さん、ひとつ頂きますね。お代は……」

「いりません。テメノス様が言ってました。『困ってる方は助けるんですよ』と。どうぞどうぞ」

「あ……ありがとうございます! 主人が目を覚ましたら食べさせますね……!」

「薬師から聞いてると思うが、白湯を飲ませるんだぜ。しっかり沸騰させて。お大事にな!」

「何かあったら宿屋の主人に声をかけてね」

「ありがとうございます!」

 

 そんなやり取りを各病人宅で続け、ブドウやプラムを配りながら、3軒目が終わったところだった。

 妹は外に出た瞬間、近くの階段を下りて水路がよく見える場所に走っていった。

 

「ど、どこ行くの!?」

「おいおい、ゆっくり歩いていけよな!」

 

 慌てて追いかける。

 ベンチのあるところだ。晴れた日に町人や旅人がくつろいで景色を楽しむ場所。

 妹は水路と灯りから離れたところで、ベンチに座ることなく、夜の暗さに紛れる場所にしゃがみ込んで……

 

「ええん! えん! えん!  さびしいよぉ!! テメノスさまといっしょに行きたかったぁ!! ひぃいいいいん!! いん!! いん!! さびしい!! さびしいです!!」

 

 ……大泣きしてる。

 リュックからハンカチを出して、顔を覆ってさらに泣く。

 

「うぇえええん! うう、ええん! えん! さびし、さびしいよぉ!! さびしい!! でもテメノス様たちがんばってるからがんばります!! がんば、がんばるんです!! うぇ……ええん!!」

 

 わたしの目からもドバッと涙が溢れた。

 

「わたしの妹が頑張ってる……!!(ものすごく小声)」

「落ち着いたら……よしよし、してやりてぇな……(ものすごく小声)」

 

 妹は顔をハンカチでぐしぐし拭う。

 ああ、そんな拭き方! お姉ちゃんが優しく拭いてあげるのに!!

 泣き止んだ妹はスッと立ち上がり、リュックにハンカチを片付ける。

 泣き腫らした顔で、すっきりした表情で戻ってきた。

 

「お姉ちゃんパルテティオさん、ごめんなさい。休憩終わりました。熱で苦しんでる人のお家に行きましょう!」

 

 キリッとした顔つきで、妹は先頭をまた歩く。『大丈夫?』なんて軽々と聞けない。

 わたしは隣を歩き、白い頭巾を優しくポンポンする。

 

「テメノス“様”が帰ってきたら……ミルフィーユは何をしたい?」

「『おかえりなさい』を言いたいです」

「みんなの休憩が終わったら?」

「温かくしたお布団で寝てもらいます。『おやすみなさい』を言いたいです」

「その後は?」

「テメノス様のお布団でテメノス様とごろんしたいです」

「いいよっ!! テメノスと一緒に寝ていい!!」

「わ~い!!」

「い、いいのか……? 男と同じベッドで……(小声)」

「いいのっ!! わたしの妹が寝たいって言ってんの!! テメノスには絶対に拒否させない!!」

 

 わたしの瞳はやる気の炎でボッと燃え上がる、そんな気持ちになった。

 パルテティオは「お、おう……」と呟き、気まずそうな顔でわたし達の後ろを歩いた。

 

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