TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話 作:XX(旧山川海のすけ)
「残ったのは彼だけか」
アレフは自分の剣を構えつつ、厳しい視線を20代目に向ける。
ここに居るのはアレフの仲魔2体と、アレフとヒロコ。
そして俺の仲魔たち。
圧倒的有利な状況。
だけど俺は
「なぁアレフさんよ」
眼を合わせずに隣に立つ救世主にそう呼びかけた。
アレフはそんな俺に
「何かな? 手短に」
そんな言葉を返す。
その返しに
俺は一瞬考えたが。
言うことにした。
「……あの男……20代目の逃亡を全力で防いでくれ。そして」
この言葉を口にするとき。
俺の頭と心が冷めていくのを感じた。
「倒すのは俺に任せて欲しい」
「……本気なのか?」
アレフは剣を合わせていないけど。
あの20代目のヤバさは肌で分かってしまったのか。
俺の意志を訊ねて来た。
俺は頷く。
「……あの20代目を解放するのは……ライドウか……もしくは俺でないといけないんだ」
20代目の遺伝子で創り出されたライドウ本人か。
もしくはライドウを心から愛する俺でないと。
許されない。
俺のそんな内心は口に出さなかったけど
「……分かった。思う存分やればいい」
アレフは認めてくれたんだ。
俺と対峙する20代目。
そのマスクで隠されていない目には
意志の光が無かった。
あのときと……上野の街で出会ったときと同じだった。
「今からアンタを解放する」
俺は自分を鼓舞するために、そう宣言した。
20代目は俺の言葉には何も返さず。
無言で斬りかかって来た。
スピリット剣の緑色の光。
その剣の切れ味は、上野で嫌というほど見せられた。
一太刀でも受けたら終わりだ。
助からない。
そして受けもおそらく通用しない。
あのとき、彼に立ち向かったアシュラたちは、受けようとした刀ごと一刀両断にされていたから。
俺は唾を呑み込む。
何が何でも勝つならば。
腕の1つも犠牲にする覚悟は要るよな……
冷静に輝く緑色の刃を見つめつつ。
俺は全力で回避に意識を割いた。
20代目の剣を躱しつつ。
俺は思い出していた。
俺とライドウが出会って、ヴァーチャルトレーナーの訓練を終えた後。
マダムの館の訓練室でライドウと木刀で打ち合ったときのことを。
「サダハル。君は身を躱すときに左側に動くことが多いな」
「そうなのか?」
訓練終わり。
純白のリノリウム床の訓練室で。
あのとき俺は汗をタオルで拭きながら聞いていた。
自分でも気づかなかった自分の癖。
それを指摘するライドウの言葉を
理由は分からない。
何で俺は左に動く癖があるのか。
でもライドウが言うならそうなんだろう。
「ああ」
ライドウは頷きながら
「……見抜かれてしまうと、きみに対する対策を立てるという概念が発生してしまう。敵対者を1人も生かして返さないなら問題は少ないが……意識はしておいた方が良い」
ライドウにその指摘をされたとき。
俺は俺で、ライドウ自身の回避の癖を見るようになった。
敵を分析することに意識が向くようになったんだ。
……ライドウは……
上体を振って回避するパターンが多かった。
なるべく立ち位置を変えないで、一撃を避け、カウンターをぶち込む。
そう言うパターンが多かったと思う。
この20代目はそのライドウのオリジナル……
ひょっとしたら……
俺は20代目の上段斬りを避けた後。
剣先の下がった20代目の斜め横から
風神剣を突き出した。
20代目を刺突する勢いで。
20代目は……
上半身を逸らす動きでそれを躱し
そこからカウンターで斬り上げて来た。
そこで俺は
風神剣を手放し
カウンターの斬撃をギリギリで躱す。
そして躱しつつ
身を沈めて20代目の足を蹴りで刈り取った。
回避行動で姿勢が崩れていた20代目は転倒する。
そこで身を起こそうとする20代目に俺は
両手両足を使用して下段蹴りを出した体勢から素早くタックルに切り替え
馬乗りになった瞬間。
万一の予備武器として腰に携帯していたアタックナイフを引き抜いて、躊躇わずにその喉に突き刺したんだ。
……スラムに居たときに使っていた、俺の最初の武器を。
(……ありがとう)
その瞬間。
ライドウに似た声でそんな声が聞こえた気がした。
20代目、決着。
本作を読んでいただき感謝です。
続きが気になる、面白かった。
その場合は評価、お気に入り、コメント等を頂けますと嬉しいです。