TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第114話 未来への希望

 元老院を潰してセンター中央タワーを堕としたので、俺たちはセンターのテレビ放送局を乗っ取った。

 

 そこで俺たちは目加田博士の口からカメラの前で、センターで行われていた非道の数々、恐るべき粛清計画を話して貰ったんだ。

 

「センター市民たちよ、よく聞いてくれ! メシア教のセンター指導部は腐りきっていた! 神の意志をないがしろにしていた!」

 

 そして以前ザインが言っていたことが全て正しかったこと、センターは虚偽の事実を流していると言っていたが、それこそ虚偽だと訴えた。

 

 最初、市民の反応は厳しかった。

 

「嘘を言うな! 悪魔の使者め!」

 

「メシア教を侮辱するのか!」

 

 街頭のモニター前に集まった群衆から、怒号が飛んでいたよ。

 

 だけど、センターからの反論がない。

 元老院は壊滅したけど、センターの人間は全滅したわけじゃ無いのに。

 

 それに。

 ファクトリーやホーリータウンの市民たちはとうに地下に逃げたらしい。

 これは一体どういうことなんだ?

 

 そう思ったのか。

 

 時間が経つにつれ、群衆の声が変わり始めた。

 

「……今のファクトリーやホーリータウンがもぬけの殻なのは本当だ」

 

「じゃあ、センターの言うことは全部嘘だったってことか……?」

 

 疑問の声が広がり、やがて失望と怒りに変わる。

 大半の市民は、自分たちが騙されていた現実を受け入れた。

 そしてセンターの美しい街を捨てた。

 

 TOKYOミレニアムを全部打ちこわし、東京を本来の姿に戻すと言われたからだ。

 

 だが、一部の市民──メシア教の敬虔な信者たちは、絶対に認めなかった。

 

「悪魔の使者め! 地獄に堕ちろ!」

 

「メシア教は唯一絶対の宗教だ! 神の裁きが下るぞ!」

 

 青と白のメシア服を着た信者たちが、モニターに向かって叫び続けている。

 俺はそいつらを見て、胸の奥に冷たいものが広がった。

 

(こいつらは、メシア教の復活の種になるかもしれないな……)

 

 現に、かつてザ・ヒーローがメシア教をガイア教と一緒に完膚なきまでに叩き潰した後。

 メシア教は復活した。

 

 弱者を救う。

 有力者に理想の妻を提供して、味方に引き入れる。

 

 そんなことを地道に繰り返して。

 こいつらを生かしておくと、同じ結果になるかもしれない。

 

 だけど。

 

 かもしれない、で殺すのは違うだろ。

 

 それを許すと、究極地上の生命をメギド・アークで根絶しようとしていたセンター指導部・元老院の天使たちを認めることになる。

 あいつらの主張は「センターの人間以外は歪み切っててどうしようもないから消滅させる。いわば壊死した手足を切断してしまうようなものだ」だったはずだし。

 

 俺はガイア教徒だ。自由を重んじる人間だ。

 だけど、彼らを放置したら、また同じことが繰り返されるかもしれない。

 

 ……どうすればいいんだろう?

 

 上野に戻り、上野ビルの部屋でライドウと2人きりになった。

 椅子に腰かけ、アームターミナルを外してテーブルに置く。

 ライドウは2人分のお茶を淹れて、運んで来ながら。

 

 いつもの落ち着いた声で訊ねてきた。

 

「サダハル、どうした? さっきから難しい顔してる」

 

 俺はため息をつき、胸の内を吐き出した。

 

「メシア教の信者たちさ。センターで叫んでた奴ら。あいつら、絶対に俺たちの言うこと認めねえ。いつかまた、メシア教を復活させようとするかもしれない。殺せば終わりだけど……そんなの、俺たちのやってきたこと否定するみたいだよな?」

 

 ライドウは静かに頷き、俺の言葉を最後まで聞く。

 やがて、ゆっくりと口を開いた。

 

「自由だというのは、自分たちだけに適応されることじゃない。……君の考えは正しいと思う。奴らを殺せば、私たちはメシア教と同じになる。けど……」

 

 彼は一瞬言葉を切り、遠くを見るような目をした。

 

「……そもそもとしてメシア教が生まれなければ、こんなことを考える必要もなかったんだけどね」

 

 その呟きに、俺は同意した。

 メシア教が生まれなかった世界。

 

 ライドウがクローンとして作られず、20代目がマシン兵士にされず、兄貴やベスが死なず、ヴァルハラが消滅しなかった……いや、そもそも誕生しなかった世界。

 ……単純に、理想郷に思えた。

 

「過去に行けるなら、メシア教を作ったヤツを排除するんだけどな」

 

 叶わない願いだと分かってる。

 けど、口にせずにはいられなかった。

 ライドウが微かに笑う。

 

「過去は変えられないさ。けど、未来なら変えられる。サダハル、私たちが戦ったのは、そのためだろ?」

 

 ……その通りだな。

 ザ・ヒーローのときは、ガイア教が受け皿になることができなかったからこうなった。

 

 だからこれからは、そうならないようにすればいい。

 

「そうだな、ライドウ。大事なのはこれからだ」

 

 俺はライドウの手を握った。

 彼の手は温かくて、俺の心を落ち着かせてくれる。

 

「愛してる、ライドウ」

 

「私もだ、サダハル」

 

 そして俺たちは、そっと唇を合わせた。

 

 

 

 それから。

 2カ月経った。

 

 来月にはルシファーが九頭龍の頭を1つ目覚めさせ、TOKYOミレニアムをぶっ飛ばす。

 

 その前に、センターが抱えている技術を全て、そっくりそのまま運び出さなきゃならない。

 センターは悪だったけど、これまでTOKYOミレニアムをずっと運営して来た。それは事実だ。

 特に科学技術は、おそらく今の世界最高峰のものを持っている。

 

 それを運び出さずにフッ飛ばせば、そこに再び到達するまでにどれだけの時間が掛るか分からない。

 それは避けないと。

 

 技術に罪は無いんだ。

 

 ……だけど。

 

 このことについては正直予想はしていなかったよ。

 

 ある日、俺たち2人は目加田博士に呼び出されたんだ……




目加田博士の話とは?
次回、最終回です。

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