TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話 作:XX(旧山川海のすけ)
元老院を潰してセンター中央タワーを堕としたので、俺たちはセンターのテレビ放送局を乗っ取った。
そこで俺たちは目加田博士の口からカメラの前で、センターで行われていた非道の数々、恐るべき粛清計画を話して貰ったんだ。
「センター市民たちよ、よく聞いてくれ! メシア教のセンター指導部は腐りきっていた! 神の意志をないがしろにしていた!」
そして以前ザインが言っていたことが全て正しかったこと、センターは虚偽の事実を流していると言っていたが、それこそ虚偽だと訴えた。
最初、市民の反応は厳しかった。
「嘘を言うな! 悪魔の使者め!」
「メシア教を侮辱するのか!」
街頭のモニター前に集まった群衆から、怒号が飛んでいたよ。
だけど、センターからの反論がない。
元老院は壊滅したけど、センターの人間は全滅したわけじゃ無いのに。
それに。
ファクトリーやホーリータウンの市民たちはとうに地下に逃げたらしい。
これは一体どういうことなんだ?
そう思ったのか。
時間が経つにつれ、群衆の声が変わり始めた。
「……今のファクトリーやホーリータウンがもぬけの殻なのは本当だ」
「じゃあ、センターの言うことは全部嘘だったってことか……?」
疑問の声が広がり、やがて失望と怒りに変わる。
大半の市民は、自分たちが騙されていた現実を受け入れた。
そしてセンターの美しい街を捨てた。
TOKYOミレニアムを全部打ちこわし、東京を本来の姿に戻すと言われたからだ。
だが、一部の市民──メシア教の敬虔な信者たちは、絶対に認めなかった。
「悪魔の使者め! 地獄に堕ちろ!」
「メシア教は唯一絶対の宗教だ! 神の裁きが下るぞ!」
青と白のメシア服を着た信者たちが、モニターに向かって叫び続けている。
俺はそいつらを見て、胸の奥に冷たいものが広がった。
(こいつらは、メシア教の復活の種になるかもしれないな……)
現に、かつてザ・ヒーローがメシア教をガイア教と一緒に完膚なきまでに叩き潰した後。
メシア教は復活した。
弱者を救う。
有力者に理想の妻を提供して、味方に引き入れる。
そんなことを地道に繰り返して。
こいつらを生かしておくと、同じ結果になるかもしれない。
だけど。
かもしれない、で殺すのは違うだろ。
それを許すと、究極地上の生命をメギド・アークで根絶しようとしていたセンター指導部・元老院の天使たちを認めることになる。
あいつらの主張は「センターの人間以外は歪み切っててどうしようもないから消滅させる。いわば壊死した手足を切断してしまうようなものだ」だったはずだし。
俺はガイア教徒だ。自由を重んじる人間だ。
だけど、彼らを放置したら、また同じことが繰り返されるかもしれない。
……どうすればいいんだろう?
上野に戻り、上野ビルの部屋でライドウと2人きりになった。
椅子に腰かけ、アームターミナルを外してテーブルに置く。
ライドウは2人分のお茶を淹れて、運んで来ながら。
いつもの落ち着いた声で訊ねてきた。
「サダハル、どうした? さっきから難しい顔してる」
俺はため息をつき、胸の内を吐き出した。
「メシア教の信者たちさ。センターで叫んでた奴ら。あいつら、絶対に俺たちの言うこと認めねえ。いつかまた、メシア教を復活させようとするかもしれない。殺せば終わりだけど……そんなの、俺たちのやってきたこと否定するみたいだよな?」
ライドウは静かに頷き、俺の言葉を最後まで聞く。
やがて、ゆっくりと口を開いた。
「自由だというのは、自分たちだけに適応されることじゃない。……君の考えは正しいと思う。奴らを殺せば、私たちはメシア教と同じになる。けど……」
彼は一瞬言葉を切り、遠くを見るような目をした。
「……そもそもとしてメシア教が生まれなければ、こんなことを考える必要もなかったんだけどね」
その呟きに、俺は同意した。
メシア教が生まれなかった世界。
ライドウがクローンとして作られず、20代目がマシン兵士にされず、兄貴やベスが死なず、ヴァルハラが消滅しなかった……いや、そもそも誕生しなかった世界。
……単純に、理想郷に思えた。
「過去に行けるなら、メシア教を作ったヤツを排除するんだけどな」
叶わない願いだと分かってる。
けど、口にせずにはいられなかった。
ライドウが微かに笑う。
「過去は変えられないさ。けど、未来なら変えられる。サダハル、私たちが戦ったのは、そのためだろ?」
……その通りだな。
ザ・ヒーローのときは、ガイア教が受け皿になることができなかったからこうなった。
だからこれからは、そうならないようにすればいい。
「そうだな、ライドウ。大事なのはこれからだ」
俺はライドウの手を握った。
彼の手は温かくて、俺の心を落ち着かせてくれる。
「愛してる、ライドウ」
「私もだ、サダハル」
そして俺たちは、そっと唇を合わせた。
それから。
2カ月経った。
来月にはルシファーが九頭龍の頭を1つ目覚めさせ、TOKYOミレニアムをぶっ飛ばす。
その前に、センターが抱えている技術を全て、そっくりそのまま運び出さなきゃならない。
センターは悪だったけど、これまでTOKYOミレニアムをずっと運営して来た。それは事実だ。
特に科学技術は、おそらく今の世界最高峰のものを持っている。
それを運び出さずにフッ飛ばせば、そこに再び到達するまでにどれだけの時間が掛るか分からない。
それは避けないと。
技術に罪は無いんだ。
……だけど。
このことについては正直予想はしていなかったよ。
ある日、俺たち2人は目加田博士に呼び出されたんだ……
目加田博士の話とは?
次回、最終回です。
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