TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話 作:XX(旧山川海のすけ)
マダムの館に戻って来て。
ライドウが俺の腕に回復魔法を掛けてくれるのかと思ったんだけど
「少し酷いかもしれないけど、初陣の傷には回復魔法を使わないのがテンプルナイトの習わしだ」
……なんでも。
傷を負うことの苦しさを味わい、今後怪我をしないようにするため。
負傷することを噛み締める。
まぁ、1日だけの話なんだけどな。
明日になったら回復魔法を使ってくれるみたい。
……結構ズキズキしてきたから辛いんだけど、それが習わしならしょうがないな。
「まぁ、今日はご苦労だった。ちゃんと戦えていたし。君はまだまだ伸びる」
回復魔法は使ってくれないけど。
ライドウの言葉は優しくて
今日はもう、入浴して食事が終わったら寝てしまうと良い。
そう言われて
……そうしよう。
かなり疲れたし。
身体よりも、心が。
別に修羅場は初めてでは無いけど、他人から与えられた使命を背負って誰かと戦ったのははじめてで。
平たく言うと、逃げる選択肢を自分で決められない戦いは初めてだった。
……すげえプレッシャーだったよ。
マダムの館の風呂はかなり広い。
まぁ、使用人が沢山居るから当たり前なんだけどさ。
湯船はタイル張り。
カビは一切生えてない。
脱衣所で服を脱ぎ、浴場に入ると。
……俺以外誰も居ない。
貸し切りか。
気分いいな。
……しかし。
ガイア教徒に蹴りを入れられた右腕は、痛い痛いと思っていたが……
デカイ痣が出来てる。
やっぱ骨イってんじゃ無いのかね……?
でも、動かせないほどじゃないから、折れてはいないと思うんだけど……
とりあえず洗い場で身体洗って、湯船に浸かるか……
浴場の隅に積んである桶と椅子を1つずつ持ち出して、水道からお湯を出して体を洗う。
……今では当たり前になったけど、昔はシャワーだけだったんだよなぁ。
しかし、腕が痛い。
そう思いつつ身体を洗っていると
浴室の引き戸がガララと開かれ。
……誰か入って来た。
誰かな、と思ったら。
ライドウだった。
「サダハル、君が先に入っていたのか」
ライドウはそう言って来たけど
俺は思わず視線を逸らしてしまう。
ライドウはなんか……
異様に綺麗だったんだ。
身体は鍛えてるはずだけど。
筋肉でゴツゴツしてるわけじゃなく。
スラッとしてて。
なんだか、直視するのに躊躇いがあった。
長い髪をタオルでまとめて、俺の隣で身体を洗い始めた。
そして
「その腕の傷、なかなか酷いな」
ボソリ、と。
俺の腕の傷に言葉で触れた。
俺は
「油断したよ。次はこうはならねぇ」
この程度でピーピーで言ってたら、復讐なんて夢のまた夢だ。
痛いは痛いが、泣き言は言えない。
そんな俺の態度に
「……良いガッツだ。明日まで待ってくれ。明日になれば回復魔法を使うから」
……印象良かったのか。
ライドウは俺の方を向いて優しく微笑んでくれた。
何か透明感のある笑顔で。
俺は思わず目を逸らしていた。
何でか分からん……
ライドウは男なのに。
ここで第2章終了です。
次回から第3章。
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