TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話 作:XX(旧山川海のすけ)
ベスはまだ息があった。
誰か、回復魔法を使える奴は……?
そう思って見回したが、誰も居ない。
ライドウも同様だ。
ライドウ自身は魔法を使えないし。
魔法を使えるのは仲魔で。
そして今、ライドウは仲魔を連れて来てはいないんだ。
警護では無く、立会人としてこの場に居るから。
俺たちは……
動けなかった。
立会人だから、戦いの決着がつくまで動けない。
ダレスは負けを認めていないし、アレフも戦いを放棄していない。
この状況ではこの場に介入できないんだ。
もどかしいものがあった。
……俺はアレフは嫌いだったが、ベスという女性は別に嫌いじゃ無かったし。
むしろ、彼女の発するオーラに博愛の精神を感じて、メシアのパートナーとして育てられたという彼女の生い立ちに説得力を感じていた。
そんな素晴らしい人間を、救うことができないなんて。
辛かった。
「ベス。俺はヒトを殺すことは好まない。だが、コイツだけは許せない……」
アレフの言葉。
その声は怒りに震えている。
俺にはその怒りが少しだけ分かったけど、このときはそれを言語化できなかった。
あとから考えて、おそらくだけど……
ベスを殺されたと思ったことと。
そして……彼女の献身を「盾にした」と侮辱されたこと。
これが許せなかったんじゃないかと思う。
アレフの怒りは、別に自分の手持ちの女を殺されたから沸き上がった怒りじゃ無い。
いや、そういう面もあったかもしれないけど、それだけじゃないんだ。
だけどベスは
震える身体を必死で起こし、首を左右に振った。
「……私もそれは同じ……ヒトが死ぬのは嫌……」
そして震えてはいたけど、強い声で
「そのヒトを殺しても何も変わらない……死ぬ人が1人増えるだけよ……だから許してあげて……」
「ベス! もう喋るな!」
待ってろ!
天使か女神を召喚して君を助ける!
言ってアレフはアームターミナルに指を走らせて
この場に女神と思しきヒラヒラした羽衣を身に纏った女悪魔を召喚し。
「アメノウズメ! ベスを……」
そう言いかけたとき。
「さようならアレフ……私、あなたのパートナーになれて……」
幸せだったよ……
そう言い残し
ベスはそこで横倒しになって、動かなくなった……
呆然とするアレフ。
そして……
「クッ! この屈辱は忘れんぞ!」
この隙に身を起こし、逃亡していくダレス。
誰もそれを阻まない。
何故って、アレフが何も言わないからだ。
だから俺たちも動けなかった。
「
……そこに
観客から沸き上がった。
万歳! 万歳! 万歳! 万歳!
割れんばかりの歓声。
そこに
「おお……ここに真の
この闘技場に正装で身を固めたメシア教の司教が現れた。
棺桶を持った信徒を伴って。
「アンチメシアを打ち倒し、悪を滅ぼし正義を示す真の救世主が!」
声高く宣言する司教。
その横で
信徒たちは息絶えたベスを棺桶に入れ、聖印が刺繍された聖布を被せて運び出していく。
そのベスの亡骸に駆け寄ろうとするアレフに、司教が立ち塞がり
他の信徒を動かして、この場から動くことを阻んだ。
アレフの顔には動揺と困惑、悲しみがあり。
立場があるのか、何なのか。
彼も動かなくなった。
「さあメシア教の同胞たちよ! 神の遣わされた真のメシアを讃えましょう!」
司教の言葉に、その場が更に大きく湧く。
俺は……
その様子に何故か、吐き気を覚えてしまった。
ここのところの台詞はあえて原作ゲームから外してます。
参考にはなりません。
ここで第3章は終了。
次から第4章です。
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