TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話 作:XX(旧山川海のすけ)
俺とライドウは、鉱山の奥から這うようにして引き返して来た。
足元の焦げた残骸を踏み越えながら、俺の頭の中はさっきの戦いとレギオンの言葉でぐちゃぐちゃだった。
プラズマソードを腰に引っ掛け、息を整えながら、俺たちは黙って歩き続ける。
鉱山の中から出て、遠くに停めておいたバイクのシルエットが見えてきたとき、ライドウが口を開いた。
「サダハル。さっきのことは……さっきも言ったけれどくれぐれも他言しないように。センターには私から報告する。それでいいね?」
その声はいつも通り冷静だったけど、どこか重い響きがあった。
俺は足を止めて、ライドウの背中を見た。
ライドウは振り返らず、ただバイクに向かって歩き続けている。
「他言するなって、黙ってろってことか……?どういう意味だよ?」
俺の声に、ライドウは一瞬だけ肩を小さく動かした。
でも、答えは返ってこなかった。
俺は少し苛立つ。
ライドウはテンプルナイトだ。
メシア教が支配するセンター指導部に忠実で、その命令に従って動いてきた。
でも、俺が初めて会ったときのことを思い出す。
あのとき、俺はヴァルハラエリアで目的のためにガイア教徒の手伝いをしていた。
だけどライドウは俺を涜神の罪で処刑しようとせず、見逃そうとしてくれた。
「君は弱い者のために献身できる人間だ」
そう言ってくれたライドウの顔が、今でも頭に残ってる。
アレフの件だってそうだ。
俺が不用意に口にしたまずい話を、ライドウは聞かなかったふりをしてくれた。
ライドウは盲目的にメシア教に従ってるだけのやつじゃない。
それなのに、今、「余計なことを言うな」と俺に釘を刺した。
そこで俺は
「……気遣ってくれてるのか?」
小さく呟いた。
もし俺の自由な発言を許したら、この任務で知ったことを我慢できなくて、センターに歯向かうような真似をしてたかもしれない。
スレイブの真実、人間の成れの果て、レギオンの叫び……それが頭から離れなくて、怒りが込み上げてくる。
でも、ライドウはそれを分かってて、俺を止めてくれたんじゃないのか?
そう考えると、胸の奥が急に熱くなった。
何だか分からないけど、ライドウの背中を見てるだけで、心がざわつく。
男なのに。こんな気持ち、初めてだ。
俺は慌てて目を逸らし、自分の鼓動を落ち着けようとした。
気持ちがぐちゃぐちゃで、どうしていいか分からない。
「サダハル、行くよ」
ライドウの声にハッとして、俺は急いでバイクに近づいた。
ライドウはもうバイクに跨がっていて、ヘルメットを手に持ってる。
俺もその後ろに乗りながら、頭を振って変な考えを振り払おうとした。
そのとき、テンプルナイトに配布されてる共通端末が急に鳴り出した。
ライドウが素早くそれを取り出し、画面を確認する。
俺も自分の端末を手に持って、同じメッセージを見た。
そこには
『緊急連絡:ヴァルハラエリア、魔王アバドンにより消滅。直ちにホーリータウン大教会にて待機命令に従え』
「……何!?」
俺は思わず声を上げた。
ヴァルハラエリアが?
魔王アバドンに飲み込まれた?
一瞬、頭が真っ白になる。
あそこは俺たちがずっと住んでた場所だ。
仲間や知り合い、恩人がいた。
なのに、壊滅したなんて……信じられない。
ケルベロス……マダム……!
そして屋敷の使用人の皆……!
ライドウの顔を見ると、あのライドウが……
顔色を蒼白にしていたんだ。
ライドウも動揺している……!
「ライドウ、これって……マダムたちが……」
俺のそんな言葉に
「その可能性は高いな」
ライドウは短く答えて、端末をポケットにしまった。
そして、ヘルメットを被りながら俺を見る。
「サダハル。今はホーリータウンに移動する。おそらく今後の拠点はそこになるだろう」
その言葉は事務口調だけど、冷たい感じがしなかった。
そこに、大切な人間を無くした人間の悲しい響きがあったから。
俺はヘルメットを被り、ライドウに掴まる。
ライドウがバイクを出して走り出す。
風が流れていく。
頭の中が冷えていく。
でも、心の中の熱は消えなかった。
ヴァルハラエリアがなくなった衝撃と、ライドウに対する気持ちが何なのか、自分でも分からないまま、俺たちは暗闇の中をホーリータウン目指して走り続ける。
……何かが、大きく変わり出している気がした。
ようやっとちょっとBLらしくなったかなあ?
これにて第4章終了。
次回から第5章です。
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