TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話   作:XX(旧山川海のすけ)

35 / 116
第35話 民間のヴァーチャルトレーナーにて

「たまには気分を変えるか……」

 

 その日俺は。

 そう呟いて、1人で宿舎から出かけた。

 

 テンプルナイトの訓練施設の方がさ、レベルは高いんだよ。

 間違いなくね。

 

 でも、そういう問題じゃ無いんだな。

 俺は民間用のヴァーチャルトレーナーをやりに行った。

 

 民間人が挑戦するやつだから、難易度は大したことないけどさ。

 

 もう一回言うけど、そういう問題じゃないんだよ。

 

 気分を変えるのが目的だから。

 

 ヴァーチャルトレーナーの店に行き、会員登録をサッと済ませ。

 俺はカプセルに入り込んでフルダイブのためのヘッドセットを装着する。

 

『ではお客様。手に汗を握る熱いバトルをお楽しみください』

 

 電子音声の後。

 スイッチが入り、俺の意識は……

 

 電脳世界にフルダイブした。

 

 

 

 ライドウには何も言わずに出てきた。

 

 電脳世界にダイブしてから、俺はそこに思い当たった。

 けどまぁ、別に良いだろ。

 

 こんなの、人によっては面倒なだけで息抜きにはならないし。

 そんなもんに他人を誘うのは迷惑だよな。

 

 

 

 民間用のヴァーチャルトレーナーの空間は、テンプルナイトを対象にした奴とは違ってて。

 キチンと背景があった。

 

 そこは荒野だった。

 そこで、俺は1体の悪魔と対峙させられる。

 

 その悪魔は雄叫びをあげた。

 

 それは巨大な影で。

 3メートルを超える巨大さ。

 

 このトレーナーでの最高レベルの相手「邪鬼サイクロプス」だ。

 単眼1本角の怪物が、棍棒を手に俺を睨んでる。

 俺は最低レベルの武器である「鉄の剣」を構え、深呼吸した。

 

 ……民間だからレベル低いだろうし。

 有料で選べる「エクスカリバー」だとか「銀の剣」は選ばなかった。

 一番攻撃力が低い「鉄の剣」だ。

 まぁ、でも大丈夫だろ。

 

 だから俺は

 

「よし、行くぞ」

 

 そう言い

 

 サイクロプスに向かって突っ込んでいく。

 サイクロプスの棍棒が振り下ろされるのをギリギリで避け、横に飛びながら剣を振り上げる。

 刃がその分厚い皮膚を切り裂くと、仮想とはいえリアルな感触が手に伝わってくる。

 

 サイクロプスが咆哮を上げて反撃してくるけど、まるで相手にならない。

 俺は訓練で鍛えた動きで躱し続けた。

 

「フッ、その程度かよ」

 

 余裕があるので、イキる遊びもできる。

 

 頭の中のモヤモヤが、少しずつ消えていく気がした。

 

 最後に、サイクロプスが大きく隙を見せた瞬間、俺は鉄の剣の切っ先をその首に突き刺した。

 標的が断末魔の叫びを上げて消滅し、アナウンスで『討伐成功おめでとうございます』という声が流れた。

 女の声だ。

 

 声は続けて

 

『最低レベルの鉄の剣での最高レベル攻略の偉業を讃えまして……』

 

 そこまで言って

 

 急に止まった。

 

「ん?」

 

 不自然に言葉が止まり、その先が無い。

 ひょっとして、コンピューターがフリーズしたのだろうか?

 

 それを想像し、背筋が寒くなる。

 

 良く知らないけど、フルダイブ中にフリーズってさ……

 中に居る俺の精神どうなるの?

 

 そう、焦りそうになったとき

 

 聞き覚えのある声が響いてきた。

 

「久しぶりー、サダハル!」

 

「……え!?」

 

 俺は思わず声を上げて周りを見回した。

 するとすぐ傍に、オレンジ色の髪の、眼鏡少女の姿のアバターが出現した。

 

 ……アリババだ。

 

 本当に久々だった。

 ヴァーチャルトレーナーをヴァルハラエリアで使ってたときは、よく電脳空間で雑談してた相手。

 

 マダムの屋敷にあったヴァーチャルトレーナーの仮想敵が、雑魚としか言えなくなった後。

 会わなくなっていたんだよ。




久々のアリババ。
何のために来たの?

本作を読んでいただき感謝です。
続きが気になる、面白かった。
その場合は評価、お気に入り、コメント等を頂けますと嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。