TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話 作:XX(旧山川海のすけ)
「サダハル……見たか?」
「ああ……ザインの放送だろ? 見たよ」
ライドウは俺の部屋に一方的に飛び込んできてそう言うと。
部屋の椅子を1つ勝手に引っ張って来て、俺の傍に腰を下ろした。
そうしてから
「……ノックを忘れていたな。すまない」
さっきの非礼を詫びる。
ライドウはそういうところはちゃんとしてるから、珍しい。
そのくらい動揺したってことだな……
彼の手が微かに震えてる。
そんな初めて見るライドウの動揺が、俺は苦しかった。
ライドウは沈黙していた。
今ライドウは何を考えているんだろうか……?
俺の中で、ライドウと過ごした日々が流れゆき。
そのとき
「私がしてきたことは何だったんだ……?」
ライドウが口を開き、血を吐くような声で。
「私のやってきたことは全て間違いだった」
……自分の人生を否定したんだ。
その、小さく響くライドウの呟きが。
俺の心を一気に熱くした。
いつも冷静で、俺を導いてくれたライドウ。
俺を助けてくれたライドウ。
そんなあいつが、今はただの人間みたいに弱々しく見えた。
支えなければいけないと思った。
俺は衝動的に立ち上がり、彼に近づいた。
「ライドウ……」
名前を呼んだ瞬間、何かが溢れて止まらなくなったんだ。
俺はライドウの肩を掴み、彼の顔を引き寄せて、唇を重ねた。
柔らかくて、少し冷たい感触。
自分でも理解できなくて頭が真っ白になって、心臓が跳ねた。
唇を離すと、俺は衝動的に叫んでいた。
「俺はお前が間違っているとは思わない! 俺、お前が好きだし!」
言い終わった瞬間、自分の言葉に驚いて顔が熱くなった。
男相手に何を言ってるんだ……?
俺は慌てて目を逸らし、手を離した。
ライドウはしばらく黙ってて、その沈黙が俺をさらに焦らせた。
やばい、とんでもないこと言っちまった。どうすりゃいいんだよ……!
でも
「……ありがとう」
返って来た言葉がそれで
俺は思わず彼を見た。
ライドウは目を伏せて、唇に微かな笑みを浮かべてる。
初めて見る表情に、ドキドキした。
「……これからどうすれば良いんだろうな?」
そんな彼の問いかけに、俺は動揺しながらも頭を必死に働かせた。
アリババの警告、ザインの暴露、センターの真実。
全部がぐちゃぐちゃで、どうしていいか分からない。
でも……ライドウがこんな状態なら、俺が何か言わなきゃ……!
「とりあえず、地下世界に行って、ガイア教徒の言い分を聞くのはどうだ? もし連中がアバドンを呼んで無いなんて言うなら、そのとき改めてどっちを信じるか決めよう」
声が少し震えたけど、なんとか言い切る。
ライドウは俺をじっと見て、ゆっくり頷いた。
「そうだな。まだ決めつけるには早すぎる。地下世界に行こう」
その言葉に、俺はホッと息をついた。
その後、双方準備を整え。
俺たちはテンプルナイトの宿舎を出た。
目指すはファクトリー……。
噂ではファクトリーの隅に、地下世界への入り口があり、そこを抜けると昔の東京の街に行けるらしい。
無論、勝手にそこを通って地下に行くのは犯罪で、下手すると処刑も射程に入るかもしれない。
でも……今の俺たちには必要な事だった。
「サダハル」
隣を歩くライドウが俺を呼んで、静かに言った。
「君がいてくれて良かった」
その一言に、俺の胸が熱くなった。
生きてて良かったと心底思い。
大嫌いだった、顔も知らない俺を産んだ母親に……
そのとき、本気で感謝した。
地下世界の上野を目指す。
本作を読んでいただき感謝です。
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