TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話 作:XX(旧山川海のすけ)
東京ドームの客席へ足を踏み入れると、俺とライドウは一瞬で異様な空気に包まれた。
上の世界とはまるで違う。
観客席には荒んだ衣服を纏った人々がひしめき合い、ワーワーと叫びながら何かに熱狂していた。
客席の前で、2人の男が戦ってた。
見たところ果し合いだ。
「やれ! デスクロウ! 俺はお前に300マッカ掛けてんだ! 2日分の夕飯代だぞ!」
「ツインヘッドマジシャン! お前の同時魔法に期待してんだからな!」
観客たちは大興奮だ。
慣れ親しんだ光景。
かつてのヴァルハラエリアでも、俺はこういう場所にいた。
どうもここでは、コロシアムと同じようなことをしてるみたいだ。
俺は目を凝らして、その戦いを確認した。
そしてギョッとする。
片方の男は腕が4本ある。筋肉が異様に膨張してて、4つの手に鉤爪を嵌めて相手と戦っている。
対戦相手はその4つの鋼鉄の爪を見事な体捌きで回避しつつ。
両手から魔法を放った。
「燃えろ!」「凍てつけ!」
……左右の手、別の魔法を同時に。
火炎弾と氷の矢を撃ち出す。
それが出来るのは簡単。
その男の頭が2つあるからだ。
撃ち出された魔法が4本腕の男を襲う。
四腕男はその2つの魔法を躱すために大きく跳躍した。
双頭の男の左右の頭が別々に動き、男の行方を追い、見張りながらまた別の魔法のために集中を開始する。
異様すぎる姿に、俺は思わず後ずさりした。
ライドウも眉を寄せて、「これは……」と呟く。
「何だよ、あいつら……」
俺が呆然と呟くと、近くにいた女が近づいてきた。
ダボダボのローブみたいな服で、顔を見ると目が3つあった。
額に赤い目がひとつ追加されてて、こっちをじっと見てるんだ。
女がニヤッと笑って口を開いた。
「びっくりしたんだろ? あいつらは悪魔との混血種、ミュータントだよ。上の世界じゃもし発覚したら即殺処分だけど、ここじゃ厳しいけど一応生きていける。上の世界と比べたら天国だよ」
その言葉に、俺は驚く。
ミュータントか……。
俺はそんなもの、存在すら知らなかった。
多分、俺が見えないところで、彼らは迫害されてきたんだろう。
ここに来て、驚きの連続だ。
「ここは後楽園闘技場って呼ばれてる。賭けが行われてて、腕自慢同士が戦うんだ。勝てば金が手に入るし、負けても生きてりゃ次がある。見ての通り、賑わってるだろ?」
確かに、観客席では客と思しき連中が叫びながら何か札を振り回してる。
聞くと勝つ方を予想して買う札で、賭け札と呼ぶらしい。
そして四腕男が双頭の男に上段蹴りを頭の1つに決め、片方の頭が失神したことで勝負が決まった。
「……降参する」
「分かった」
降参が認められ、戦いが決着。
それを受けて、観客席から大きな歓声が上がる。
……俺は降参が認められたことに少し驚いていた。
ヴァルハラコロシアムじゃ、相手を殺して決着がほとんどで、降参なんて認められなかったのに。
「……降参が認められるのか」
俺が呟くと、あの3つ目の女は
「そりゃね。降参云々で騙し討ちをしたら、後で他の闘技者に寄ってたかって殺されるからね」
……そこで俺は
(ああ、そっか。そこで嘘を吐くと、降参という選択肢が危なくなるから……)
だから誰も、そこで嘘を吐かないのか。
当たり前だよな……
でも、ヴァルハラエリアではそうじゃなかった……
なんというか、俺は。
何だか負けた気がした。
この後楽園闘技場の在り方に。
倫理の面で。
何でもありでも最低限守らないといけないことがあるんだよねぇ。
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