TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話 作:XX(旧山川海のすけ)
グラウンドに足を踏み入れると、観客席が沸騰した。
バトルフィールドの一方から俺が入場し、もう一方からトキが現れる。
般若の面みたいなものを装着したまま、両手に鉈を握り、仲魔としてあの無貌の女悪魔を引き連れてる。
腹部が膨れたその姿は、相変わらず不気味だった。
観客が「トキ! トキ!」と叫ぶ中、俺はアームターミナルを起動させる。
俺は何回かガイア教徒との交戦経験あるけどさ。
俺の知ってるガイア教徒の女って、正面からの戦闘じゃなくて暗殺とか策略で動くイメージだった。
鬼女郎って呼ばれてたんだけど。
あの女たちは戦えないわけじゃないけど、あくまで補助の役割だったんだ。
だけどこのトキという女。
どうみても前線で戦う人間だろ。
戦闘服の黒いボディースーツも様になってるし。
鉈捌きは言うまでもない。
そしてアナウンサーの選手発表時のネタからすると……色々確認しておきたいことがある。
俺はトキに声をかけた。
「なぁ、アンタなんでガイア教にいるんだ?」
トキは般若の面をしたまま。
「私はガイア教に育てられた」
その言葉に、俺は少し驚いた。
育てられたってことは、生まれたときからガイア教徒ってことか?
俺はさらに踏み込んで聞く。
「このトーナメントに参加したの、強者をスカウトするためって本当か?」
トキは一瞬黙り、それから短く答える。
「そうだよ」
その答えに、俺の中で閃くものがあった。
ガイア教徒に認められるチャンスだ。
俺は一気に決意して、トキに提案した。
「じゃあさ、アンタに勝てたら、俺をスカウトしてくれ」
トキが面の下でどんな表情をしてるかは分からない。
しかし、彼女は静かに頷く。
「いいよ」
その瞬間、アナウンサーの声がドームを震わせた。
「ここまで快進撃を続けたガイア教徒トキ! そして対するは地上からの挑戦者サダハル!」
大迫力のマイク芸。
前説でいいのかね?
「この戦いはどうなるのか!? 強い者は美しい! ストロングイズビューティフル!」
そのアナウンサーの言葉に、観客の熱狂が最強になる。
爆発寸前まで高まっていくテンション。
――そして
「はじめッ!」
号令と同時に、トキが俺に突っ込んできた。
2本の鉈が踊り、俺に鋭い刃が迫る。
俺はその前に素早くアームターミナルを操作し、仲魔を召喚。
破壊神アレス、国津神オオヤマツミ、地母神タウエレトが地面に描かれた魔法陣の上に一気に現れる。
そして俺も剣を抜き、トキに応戦。
ライドウの話じゃ、フェンリルのファイアブレスもフレスベルグのアイスブレスもトキの女悪魔には効かなかった。
だったら物理だろ。
オオヤマツミは火炎攻撃に弱いけど、氷結と雷撃には耐性がある。
火炎だけアレスで庇えばいい。
俺は指示を出す。
「アレス、オオヤマツミ、突っ込め! タウエレト、支援頼む!」
アレスが雄叫びを上げて突進し、剣気を伴った斬撃を放った。
それに合わせてオオヤマツミが岩の巨体で地面を揺らし、別方向から殴り掛かった。
タウエレトが「我が加護を」と防御魔法で援護する。
トキの女悪魔が火炎、氷結、雷撃、衝撃波を次々と放ってくるが、俺の仲魔たちは3体協力し、耐え抜く。
オオヤマツミが氷結と雷撃に耐性があり、火炎が弱点。
そこでアレスが火炎を引き受け耐え抜いた。
そのダメージはタウエレトの回復魔法でカバーして……
俺の仲魔たちの連携が、女悪魔を徐々に追い詰めていく。
一方、俺とトキとの剣の戦いは熾烈だった。
2本の鉈が二刀流で襲いかかり、俺は一刀で迎え撃つ。
刃が打ち合わされ、それが嵐を思わせた。
トキの動きはとても速い。
だが俺も、伊達に訓練を続けてきたわけじゃ無いんだ。
ヴァーチャルトレーナーで対人の実戦訓練は模擬戦ではあるけど、何度も重ねてきている。
俺は剣の一撃を大振りにし、トキの鉈で受け流させる。
鉈の1本がそれで塞がり、トキはもう1本の右手の鉈で斬りかかってきた。
俺はそこを狙った。
その一撃を蹴りで防ぐ。
鉈の斬撃の起こりを見逃さず、蹴りを叩き込んでトキの右腕を蹴りつけ、その鉈を地面に落とさせた。
「よし!」
俺が叫ぶと、観客がどよめいた。
鉈を1本失ったトキは動じずに、残った鉈で反撃してくる。
俺は剣を構え直し、その軌道を見切る。
二刀流で厄介なのは防御能力。
それが一刀に減ったのだから、油断はできないが勝機は前より全然あるはず。
俺は冷静に彼女の動きを読んだ。
その頃、トキの女悪魔が苦境に立っていた。
アレスとオオヤマツミの物理攻撃が直撃し
「アアアッ!」
……口も無いのに悲鳴。
どうやら物理が弱点だったらしい。
タウエレトの回復で俺たちの勢いは止まらず、女悪魔の動きが鈍っていく。
トキが一瞬、女悪魔の方を見た。
……そして。
トキが突然動きを止めたんだ。
「……オマエの勝ちでいい」
そうトキは静かに言い、残った鉈を手放す。
そして。
「……私の負けだ!」
大声。
敗北宣言。
それが轟いたとき。
「勝負ありです!」
アナウンサーの声がドームに響き、観客が一気に沸いた。
俺は息を切らしながら剣を下ろす。
……勝った!
ライドウを破った相手を、この俺が!
決着がついた後。
速やかに賞金10万マッカの金貨袋と、黄金のメダルが運ばれてくる。
この闘技場がそのまま表彰の場になる形だ。
「感動したぞ!」
「素晴らしい戦いだった!」
観客たちの祝福の声。
その中で俺は、メダルを運んで来た女性に首に掛けて貰い
そしてトキが般若の面を外した。
初めて見る彼女の素顔は……所謂和風美少女に見えた。
眉毛は剃っており、描いている。髪は綺麗な黒髪で、手入れが行き届いていて。
前髪が綺麗にぱっつん切られている。
……日本人形って奴じゃ無いのかこの髪型。
素顔の彼女は俺に言う。
「……なかなかの強さだったぞ。望み通りにしてやる」
これで上野への道筋が出来た。
俺はトキのその言葉に
「……俺の他にもう1人、同行させていいか?」
一応、それを確認した。
……ライドウも込みで無いと意味が無いし。
ここで第7章は終了です。
次回から第8章。
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