TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第55話 上野の街

 坑道を抜け、地上に近いエリアに出る。

 

 階段を上がるとそこはまた、別の街で。

 多分ここが上野なんだろう。

 

「ここからしばらく歩くことになる」

 

 トキが歩き出した。

 そこに付いて行きながら俺は上野の街を見回した。

 

 ビルがあり、店があり。

 

 ……人も居ることは居るけど……

 悪魔も居て。

 

 たまに死体が転がっている。

 

 ……弱肉強食……。

 その4文字が頭に浮かんだ。

 

 突然けたたましいエンジン音が響いた。

 俺たちが振り返ると、般若面を被ったライダー数人が悪魔と揉めていた。

 

「てめえら! この間俺たちのダチを喰いやがっただろ!?」

 

「あのトきはマグネタイトが足りなカッタだけダ」

 

 プロテクターを身に着けて、刀を引っ提げた男たちが、蝙蝠の翼を持った悪魔相手に殺気立ってる。

 

 ……そこら中に見受けられる争い、もしくは争いの後……

 

「なぁ」

 

 俺は先を歩くトキに訊く。

 振り返るトキに

 

「あいつらガイア教徒だろ?」

 

 般若面のライダー集団を指してそう訊ねる。

 あれは確か「アシュラ」と呼ばれているガイア教徒の一団だ

 

 仲間だろ?

 

 トキは

 

「そうだが?」

 

 普通にそう返して来る。

 俺は

 

「……助けなくて良いのか?」

 

 俺のそんな問いに

 

「アイツらの自己責任だな。私は知らん」

 

 全く意に介さず、前に進んだ。

 

 

 

 街の中を進んでいくと、通行人が3種類いることに気づいた。

 ひとつは武装した人間。

 もうひとつは悪魔。

 

 最後のひとつはきびきび働いている人間だった。

 

 武装している奴はガイア教徒だろうけど……

 

 働いている人間は……?

 

「なぁ、トキ」

 

 気になったから確認したかった。

 トキは

 

「何だ?」

 

 振り返らず、歩きながら

 

「あの荷物を運んだり、掃除してる人は何なんだ?」

 

「……最下級のガイア教徒だ」

 

 ……あれもガイア教徒なのか。

 イメージと違った。

 

 ガイア教徒は地上で騙されて殺されかけた記憶が強い。

 なので野獣みたいな奴らばかりと思っていたけど……

 

 しかし、続く言葉で

 

「我々の保護を受ける代わりに、雑用や重労働を全部引き受ける。そう言う立場の人間だ」

 

 それって……奴隷じゃ無いのか……?

 俺のそんな思い。

 

 それが顔に出ていたのか。

 

 トキは

 

「……お前が思ってるようなものでは無いぞ、言っておくが」

 

 語り始めた。

 ここがどう言う場所なのか。

 

「ここは確かに厳しいよ。弱い者は生き辛い。……だけども、自分の能力を笠に着た好き勝手な行いは上の人間に嫌われるんだ。かつてメシア教を叩き潰してガイア教の世界にするチャンスを目の前にしていたのに、最終的にメシア教に世界の主導権を奪われた原因はそこにあると上は考えてる」

 

「……理不尽はダメってことか?」

 

 確か完全な自由を謳い文句にしてなかったか?

 強い者は美しく、美しく優れた者が世界を統べる。

 これこそが真理である、って。

 

 言ってることと違って無いか?

 

 そう思い、俺が聞き返すと、トキは頷く。

 

「弱い者の立場は低いけど、だからって好き勝手やっていいわけじゃない。粛清されるよ」

 

 例えば「単に苦しめてみたいから」って理由で弱い奴に大怪我させたり。

 ムラムラしたからという理由で、路上でいきなり女を犯したりしたことが上の人間の耳に入ると、ただじゃすまない……らしい。

 

 そう言う行為は「美しくない」ので「ルシファー様も嫌悪される」から。

 そう言う理屈だとか。

 

 なるほど……

 

 アリババにだいぶ前に聞いた「メシア教が勝ったのは弱者に優しいからだ」ということ。

 そこでの失敗から学んだのか。ガイア教は。

 

 そこを改善する理屈を組み立てないと、自分たちが再び日の目を見るときはこない、と。

 

「つまり、最低限のルールはあるんだな」

 

「うん。そうだよ」

 

 トキの返事はそっけなかったが。

 俺はこれから軍門に下る相手が、完全な無法者の集団ではないことを知り、少しだけ安心した。

 

 そして

 

「ここが上野ビルだよ」

 

 ……トキの言葉通り。

 

 今、俺たちの目の前に、とても大きなビルがあったんだ。




こっちの上野の街にはある程度ルールがあります。

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