TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第56話 40代目

 トキに導かれて俺とライドウは上野ビルにたどり着いた。

 築100年以上経ってるであろう、古びた高層ビル。

 核戦争にも耐えたその建造物は、かつての東京の繁栄を想像できる。

 

 元々は何のビルだったのかは分からない。表示が一切無いんだ。

 ……ガイア教団の拠点として邪魔だから、撤去したのかもしれないな。

 ただ、そこにあるだけで堂々とした存在感を放つ建物。

 その入り口には武装したガイア教徒の男たちが立ち、鋭い目で俺たちを見据える。

 

 

 だけどトキが近づくと、笠を被り黒い装束を身に纏った彼らはすぐに道を開けた。

 

「お帰りですかトキ様。ご苦労様でした」

 

 男たちの言葉。

 トキの地位は高いのか。

 まぁ、予想はしてたけど。

 

 ビルの中は意外に活気があった。

 ロビーには悪魔と人間が混ざり合い、物資のやり取りや話をしている。

 

 上の世界のセンターみたいな冷たい秩序はないけど、雑然としたエネルギーが満ちてる。

 トキが受付の教団員に近づき、俺たちのことを告げた。

 

「トーナメントの覇者とその仲間だ。ガイア教団に迎えるために連れてきた」

 

 すると受付の黒装束の若い女がトキの報告を受け、驚くべきことを口にする。

 

「ちょうど今、ゴトウ様がいらっしゃいます。今すぐ謁見の手続きを進めますので」

 

「ゴトウ様?」

 

 俺が思わず呟く。

 ちょっと待てよ。

 ガイア教団の最高指導者だろ?

 

 そんな風に動揺……いや、混乱する俺に、トキが振り向いて短く言った。

 

「運が良いね、すぐに会えるなんて」

 

 ライドウが「確かに」と静かに言う。

 混乱が落ち着いて来て、今度は俺は少し緊張してきた。

 

 ガイア教のトップにいきなり会うなんて、想定していなかった。

 

 トキが「1時間後だそうだから」と言う。

 

 ……マジかよ。

 早すぎんだろ……!

 

 その1時間の間の待機部屋に案内される。

 

 綺麗な部屋だった。

 

 ソファとローテーブル。

 そして冷蔵庫。

 戸棚には酒まである。

 

 まぁ、さすがに酒は飲まんけどな。

 ……というか、飲む奴が居るんだろうか……?

 

「座るがいい。飲み物は自由にしていいぞ」

 

 トキの言葉に俺は冷蔵庫を恐る恐る開けてみる。

 そこには瓶詰めの炭酸飲料が入っていた。

 コーラだ。

 

 おお……!

 あるのか……!

 

 驚いていると

 

「それは地上から手に入れた品だよ」

 

 トキからのそんな言葉。

 確かに言われてみると。

 瓶に書かれている内容に見覚えがある。

 

 地上の飲料会社の製品っぽいな。

 

 俺はそれで興味を無くした。

 バタンと冷蔵庫を閉じて、ライドウの向かいのソファに腰を下ろした。

 

 そこでトキに

 

「……一応言っておくけど、今代のゴトウ様はあまり感情を出さない人だから」

 

 それを良いことに、無礼を働いたらダメだよ。

 

 そんな警告をされた。

 そんなことくらいわかってる!

 

 馬鹿にされてるのかと思いながら、訊ねる

 

「ゴトウ様って何代目?」

 

 襲名って言ってたし。

 なんとなくの感覚で聞いたんだ。

 

 すると

 

「……5代目だ」

 

 5代目……

 

 確か、初代が100年前の人なんだろ?

 

 それで5代目って……4回代わってるってことだから……

 

 多いと思った。

 

 25年に1回代わってるってことだろ?

 それはそれだけ、地下世界が乱れていたってことなんだろうか……?

 

 ……いや、案外こんなものなのか?

 

 良く分からないので俺は

 

「なぁライドウ……お前って何代目なんだ?」

 

 参考にしようと思ったので、訊いた。

 すると

 

「40代目だ」

 

 ……そんな答えが。

 

 40代目……。

 

 そして俺は

 

「ちなみにその名を継いで何年くらい経ってんの?」

 

 そう訊ねるとライドウは

 

「……3年くらいかな」

 

 えっ。

 

 想定していなかった答えが返って来たので。

 俺は

 

「……39代目は?」

 

「それは知らない」

 

 ライドウはセンターの教育施設で育ち、ある日突然「あなたは今日から40代目の葛葉ライドウです」と言われたんだそうだ。

 そう言われても全く問題が起きない教育を受けて来ていたので、混乱は無かったそうだけど……

 

 ……自分の先代がどういう人間か知らされず、名前だけ引き継がされる……

 

 俺はそのとき。

 そのセンターのやり方に、根拠不明の嫌悪感を抱いたんだ……!




大正時代のライドウは14代目なんだよ。
そして大破壊が起きたのは平成なんだよ。

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