TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話 作:XX(旧山川海のすけ)
「なっ、何者だッ!?」
ガイア教司祭は動揺していた。
悪魔はあまり詳しくないから分からないけど……
相当高位の悪魔なんだろう。
この少年に従っている2体の悪魔は
「……最近、ヴァルハラエリアで行方不明になる少年少女が多いという通報があった。お前たちがその犯人か……覚悟するがいい。私が来た……」
少年は煽る調子も無く。
ただ淡々とそう告げて
「フェンリル」
オオオオ!
狼が吠える。
「フレスベルグ」
クエエエ!
鷲が鳴いた。
「……殺れ」
2体は少年の言葉に人語を発して従い。
白い狼と鷲は、ドウマンとガイア教司祭に襲い掛かる。
その2名は必死で抵抗をしようとしたみたいだけど……
ただの殺戮で終わった。
慌てふためている2人が、フレスベルグの叫び声を聞いて金縛りにされた挙句……
2人ともフェンリルに順番に頭を食い千切られ
それで勝負ありだった。
「……これで完了。楽な仕事だ」
ガイア教司祭の死体は消えなかったけど。
ドウマンの死体は死ぬと消えた……
やっぱあいつ、悪魔だったのか……
って、そういうことじゃなしに
「……お前、何者だよ……?」
俺はさっきのフレスベルグと呼ばれた大鷲の叫び声を聞いて、巻き添えで金縛りになり。
動けなかったけど。
何故か口はきけたので、それだけ訊いたんだ。
金髪の少年は俺の方を見て
「私はテンプルナイトだよ……センター管理局に所属してる」
テンプルナイト……
この少年、テンプルナイトなのか……!
このTOKYOミレニアムの治安を維持するために働いている人間……!
一般のテンプルナイトは見たことはある。
青い帽子を被ってて、白い制服を着てて。
機械仕掛けの槍や剣を持ってて……
この少年はそれとはあまりにも違う。
だけど……
少年の言葉は、説得力があった。
そしてそれは……
(俺、死刑かも)
俺は自分のために、ガイア教徒を告発せずに取引をしようとした。
これは重罪だろ。
……メシア教で最も重い罪……神を冒涜する罪……「
斬首で済めばいいけど、腰斬、火刑、車裂き、凌遅刑……
考えられる刑罰が頭に浮かんでくる。
怖かった。
……だけど
今更命乞いをしても、無駄だ。
もし、斬首以上の刑罰に処されそうなら、舌を噛み切ろう。
俺は覚悟を決めた。
「君はどうしてここに来たの?」
覚悟を決めた俺に、少年は話し掛けて来る。
俺は……
「ギャングになりたくて、ここに届け物に来たんだ」
嘘は吐かなかった。
ここで嘘を吐くのは違う気がしたんだ。
少年は……
「どうして?」
その理由を訊ねてくる。
意味が分からなかった……。
そんなことを聞いて、何の意味が……?
「ギャングの情報網を活用できる立場になりたかったんだ……復讐のために」
俺の方も隠す意味がないから、ありのままを答える。
見苦しく嘘を吐いて生き延びようとする男にはなりたくない。
……そんなの、兄貴に呆れられてしまう。
「……復讐か」
少年は俺の言葉を聞いて
「それを成し遂げたら、君はどうなるんだ……? そして成し遂げられないと……君はどうなるんだ?」
そんなことを言って来たんだ。
えっ、と思う。
「……復讐の内容を訊かないのか?」
あまりに意外だったらからそう返すと
「君は弱い者のために献身できる人間だ。……そんな人間が、道ならない復讐に身を焦がすわけが無いだろ」
冷めた調子で、そんなことを。
俺はその言葉を聞いたとき、心が温かくなった。
俺をまともに見てくれたのは、兄貴しか居なかったのに……
「まあ、金縛りはいずれ時間で解ける。そしたら1人で帰ったら良いさ」
少年はそう言って、この部屋のドアをフェンリルに命じて破壊させ
去って行こうとする。
去って行ってしまう……
俺は
「待ってくれ!」
……動いていた。
少年が、驚愕の表情で振り返る。
多分、よほど意外だったんだろう。
金縛り、今は解けないだろう、って。
だけど俺は動いて、彼の肩を掴んで、言ったんだ。
「恩返しをさせてくれ!」
……ヴァルハラスラム街育ちの俺如きが何を言ってる。
普通ならそう言われるかもしれない。
だけど、思わず言ってしまった。
……理由は良く分からない。
目の前で、悪魔を急に呼び出して、ガイア教徒を抹殺した少年に学びたかったんだろうか?
それとも、本当に身の程知らずにも恩返しをしたくてたまらなかったのか。
少年は
「……君、すごいね。あと1時間はそのままのはずだったのに」
俺を感心したような目で見て
「私は葛葉ライドウ……君が望むなら……一緒に来るかい?」
そう言ってくれたんだ。
ここで第1章終了です。
次回から第2章。
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