TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第60話 センターから来た女

 俺たちは戦いの準備を整え、街に出撃した。

 

 トキの後を追い、俺とライドウは上野の街に飛び出す。

 

 街の空気は前と違っていた。

 怒号と悲鳴が遠くから響き、爆発音がし、血の匂いも漂ってくる。

 

 トキの表情は見えない。

 般若の面を被っているから。

 両手に鉈を持ち、その背後に自分の契約悪魔……つまり仲魔の地母神イナンナを連れている。

 トーナメントで戦った、あの無貌で異形の地母神だ。

 シュメール神話の豊穣の女神らしい。

 

 その実力はトーナメント決勝戦で味わっている。

 今となっては頼もしい限りだ。

 

 俺もアームターミナルを操作し、仲魔を呼び出す。

 俺が呼び出したのは、決勝戦でも選んだ面子。

 破壊神アレス、国津神オオヤマツミ。

 そして地母神タウエレト。

 

 ライドウは妖獣フェンリルと凶鳥フレスベルグ。

 

 戦闘準備を完全に整えて、駆け抜ける。

 

 街の住人は、非戦闘員は上野ビルに向けて走っている。

 そして武器を持ってる連中は、逆方向に走っていた。

 

 ……力を誇示して自分の存在価値を主張する人間だからな。

 この状態で逃げることは多分できないんだろうな……

 

 戦闘現場が近づくにつれて、怒号と悲鳴が大きくなる。

 

「何だこの男! メチャクチャ強いぞ!?」

 

「人が足りない! 増援来てくれ!」

 

 街の中央、初代ゴトウ像が立つ広場に着いた瞬間、俺は息を呑んだ。

 広場は戦場だった。

 

 軍帽を被り、軍服を着てマントを身に纏った仮面の男が、アシュラ数人と斬り合ってる。

 その仮面は顔の下半分を覆うもので、どこか機械を思わせた。

 そしてその目付きも……!

 

 こいつが20代目のライドウを名乗る敵……なのか……?

 

 この男に般若面とプロテクターで身を固めたアシュラたちが、刀を振り回して男に挑むが、あっけなく返り討ちにされていく。

 受けようとした刀ごと、プロテクターごと仮面の男の剣に切断されてしまうんだ。

 

 緑色に輝くオーラを纏った日本刀で……!

 

 周囲を見ると、武装したガイア教徒の死体が散乱していた。

 だが、それだけじゃなかったんだ。

 

 戦闘員じゃない、ボロ布を纏った最下級のガイア教徒たちの死体も転がってたんだ。

 

 労働奉仕を全て引き受ける代わりに、ガイア教の庇護を受けてたはずの人間……!

 

 血だまりの中で、目を見開いたまま動かないその姿に。

 俺は仮面の男への怒りを燃やした。

 

 トキが低く呟いた。

 

「……ほぼ全ての自由を捧げさせる代わりに、この世界での生存と最後の尊厳は保証する。それが最下級信者との約束なんだ」

 

 その声には、抑えきれない怒りが滲んでいる。

 トキの手が震え、鉈を握る手に力が入る。

 

 彼らに労働奉仕を指せたことの引き換えに、絶対に守らないといけない約束。

 それを守れなかった。

 

 トキの怒りは理解できる。

 ガイア教徒のような生き方をする人間は、面子を重要視するはずだ。

 

 気持ちは俺も同じだった。

 こんな無差別な殺し、許せるわけがない。

 

「20代目! この卑しい欠陥品どもをスピリット剣でさっさと皆殺しにするのです!」

 

 その仮面の男の傍に、長身の女が居た。

 長い黒髪で、顔立ちは知的で中性的な女。

 男装してもバレなさそうな、どこか冷たい美しさがある女だ。

 この戦場に場違いな女性用の白いパンツスーツを身に着けている。

 

 20代目が主体的に破壊活動を行っていると言われたけど

 実際はこの女が20代目に指示を出している……!

 

 そんな、現場の構図を俺たちが理解したとき。

 

 女が俺たちに気づいた。

 眉を片方動かし、ライドウを見ながら

 

「あら、ようやく来ましたか。40代目」

 

 つまらなさそうなその口調。

 ウンザリしたような感じだった。

 手間を掛けさせやがって、面倒にしやがって……!

 そんな気持ちに溢れている。

 

 それに対し

 

「お前誰だよ!?」

 

 俺は思わず問い質すために叫び声をあげた。

 その言葉に。

 

 女は冷たく微笑み、名乗ったんだ。

 

「私はヘット。センターのテンプルナイトです。……40代目葛葉ライドウ。あなたが欠陥品であることが分かったので、処分しに来ました」




ヘットはザインの次の数字なんですよね。
ヘブライ語で。

ここで第8章は終了。
次回から第9章です。

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