TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話 作:XX(旧山川海のすけ)
アレフの「ガイア教徒とは組めない」という言葉が、俺の胸に突き刺さった。
守護神の右足を握る手が思わず強くなる。
ライドウが静かに俺を見守り、ヒロコが「アレフ……?」と戸惑いの視線を向けていた。
アレフの鋭い目は、まるで俺たちの信念を試すようだ。
俺は深呼吸して、問いかけた。
「アレフさん、なんでガイア教徒と組めないんだ? センターを倒したいのは同じだろ?」
アレフは一瞬、目を伏せ、ゆっくりと口を開いた。
「ガイア教徒は、ただ自分の欲が通らないから、動物の世界の弱肉強食を持ち出して好き勝手やってる連中だ。俺はそう思ってる」
その言葉に、俺は言葉を失った。
俺だってそう思ってたし、一部はその通りなんだろう。
アレフは続ける。
「現行のセンターの奴らは、確かに異常で醜悪だ。ベスのことで、俺はそれを確信した。あいつらはベスの死をお祭り騒ぎのシンボルにした。信者たちをまとめ上げるための材料に使ったんだ。そしてヴァルハラエリアも、もう用済みになった、という理由で消し去った。これが邪悪でないなら、何なんだ?」
アレフの声が低く震える。ベスの名前が出た瞬間、俺の胸にまたあの黒髪の聖女の高潔な生きざまが浮かんだ。
センターが彼女の死をそんな形で利用したなんて、許せない。俺は拳を握り、思わず言った。
「だったら、一緒に戦おう! センターの邪悪を潰すために、ガイア教団と手を組もうぜ!」
だが、アレフは首を横に振った。
ヒロコは黙って彼を見守っている。
彼は静かに、だが力強く答えた。
「……ガイア教徒にはヒトを統べることはできない。小さな範囲内で原始的な社会を作るのが精一杯だ。TOKYOミレニアムの人間を全部まとめ上げる社会なんて作れない」
「どういう意味だ?」
アレフのその言葉に俺が聞き返すと、アレフは目を上げ、自説の理由を言葉にする。
「弱肉強食は原始人の理屈だ……。明確な法律がない世の中では、あれだけの人数をまとめるのは無理がある。正義同士がぶつかったとき、力の比べ合い以外に解決策を持たない社会だぞ? 君らにこの意味が理解できるか?」
俺は一瞬、言葉に詰まった。
アレフの言うことは、どこかで聞いたことのある論理だった。
彼はさらに続ける。
「力比べで解決する社会の何が悪いか? ……それは『約束』ができないことだ。理詰めで『戦ったら大きな怪我をするから』『戦っても勝てないから』と仕方なく約束を結ぶ社会では、両者の力の均衡が崩れた瞬間、約束はあっさり反故にされる。そんな状況で、大規模な社会は作れない」
アレフの言葉は、まるで刃のように鋭く、俺の心に突き刺さった。
確かに「借金を10年後までに2倍にして返す」という約束が「それまでに貸主を殺してしまえば踏み倒せる」という手段が存在している社会。
結婚しても「相手が邪魔になってきたらいつでも離婚できるし、文句を言ってきたら殺せばチャラ」そんな社会。
そんなものに、メシア教が作り上げた以上の社会を作るのは不可能に思える。
弱肉強食の摂理が絶対の社会だと……
良く知らない相手と助け合えないし、深く人と結びつくことも難しい。
……確かに問題だ。
俺はライドウに視線を向けた。
彼は黙ってアレフの話を聞いているが、その目は何か考えているようだった。
「ライドウ、どう思う?」
俺はライドウにそう訊ねる。
彼は少し思案し、そして
「アレフ、私は君の言うことも理解できる。……しかし、組織で動かないと、組織には勝てないと思うぞ」
今度はアレフが顔を強張らせた。
ライドウは続けた。
「向こうは人海戦術も取れるし、複数同時に行動を起こしたり、情報共有して相談もできるんだ」
そう、組織であれば選択できる様々な手段について口に出し
そして
「それに、センターは最悪の未来に向けて既に行動を開始している。……グズグズしている時間は無いと思うよ?」
その、最大の問題点を突き出した。
アレフは沈黙する。
「ねえ、アレフ……私、彼らの言うことに一理あると思うんだけど」
ヒロコがそう口を挟んだ。
アレフの目が揺れ、ベスのことを思い出したのか、一瞬遠くを見る。
……やがて口を開いた。
「……俺はガイア教徒にはならない。だが、共闘ならしよう。まずはセンターの企みを叩き潰さないとどうしようもない」
その言葉に、俺の胸に熱いものが込み上げた。
ライドウが「それで十分だ」と小さく笑う。
ヒロコが「私もそれでいいわ」と頷く。
俺は守護神の右足をアレフに差し出した。
「これを……。残りの遺体の場所を教えてくれ。手伝うよ」
アレフは俺から遺体を受け取り、頷いた。
そして
「……もう残りは首だけだ。そちらの心当たりはあるから、さっさと済ませよう」
なぁに。これだけヒトがいれば、簡単に終わるさ。
アレフはそう言って、爽やかに笑った。
同盟関係構築!
これにて第9章は終了。
次回より第10章です。
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