TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話   作:XX(旧山川海のすけ)

71 / 116
第10章:反撃開始
第71話 天津神復活


 アレフと共闘を誓ってから数日、俺たちは――

 

 守護神の聖なる遺体の全て──右足、左足、胴体、両腕、首──を集め終えた。

 

 そして邪教の館の合体システムを使用し、遺体を1体のミイラへと戻し。

 六本木にて国津神ヒルコが保管していた守護神の魂を遺体に戻す儀式が始まった。

 

 ヒルコとは、日本神話の創造神たるイザナミとイザナギが最初に産んだ神で。

 その夫婦の営みの手順が間違っていたために、身体が不完全な状態で生まれてしまったという神。

 そのせいで、その外見は骨格が想像しにくい、ゴムのようなもの。

 

 そのためか、その外見で差別を経験して来たミュータントたちに信仰され、六本木で神として扱われていた。

 六本木はミュータントの住民が数多く住む街なんだ。

 

 

 

 そこには祈るヒルコがいて。

 周囲にはヒルコを支持するミュータント住民たちが集い、ヒルコと共に祈っていた。

 

 ヒルコは信者を従えて、一心不乱に呪文……ライドウ曰く「祝詞」というものを唱えていて。

 ヒルコが向き合っている東京の守護神の聖なる遺体を乗せた祭壇……それを囲むように俺、ライドウ、アレフ、ヒロコが立っている。

 

 ヒルコの祝詞は迷いが無く、強い意志が込められている。

 

 それがどれくらい続けられただろうか……

 

 遺体に変化が訪れた。

 

 長い、まるで獅子のような髪が頭部から湧きたつように生え、その顔に赤い文様……所謂、隈取というものが現れる。 

 そしてその身体を、白基調の立派な和服のようなものが覆っていく……

 

 東京の守護神の復活。

 それを今、俺は見届けた。

 

「……ぬぅ、まことに口惜しい限りだ。我が眠っている間に、我が守護せし土地で、かようなことが起きようとは……」

 

 ふわり、と祭壇から起き上がり、そのまま浮遊する東京の守護神。

 その手に一振りの太刀を出現させ、抜き放つ。

 

 東京の守護神は俺たちに視線を向け

 

「……我の復活に尽力してくれたようだな……感謝する」

 

 そう言って、その刀の切っ先を俺たちに向けた。

 

 ……なんだか、力が沸き上がってくる気がした。

 

「……これはその礼だ。受け取るがいい」

 

 おお……

 

「ありがとうございます!」

 

「感謝する!」

 

 俺とライドウ、東京の守護神に礼を言った。

 

 東京の守護神は隈取のため、表情が良く分からなかったけど。

 なんだか微笑んで貰った気がしたよ。

 

「公よ……復活早々申し訳ないが、早速にしてもらいたいことがある」

 

 そこに。

 ヒルコが言葉を向けて来た。

 

 東京の守護神はヒルコに顔を向け

 

「申すがいい」

 

「……岩戸に封印した、天津神を解放して貰いたい」

 

「……承知した」

 

 

 

 六本木を離れて。

 

 封印の岩戸という場所にやって来た。

 

 ここに天津神の中心存在たる神々が封印されているらしい。

 

 ここにその神々を封印したのは国津神だけど。

 その封印を解除不能に歪めたのは、この国にやって来た外の世界の悪魔たちで。

 

 もはや、正規の手段では封印の解除は不可能なんだと。

 

 

 だから……

 

 

「ふむ」

 

 

 東京の守護神は岩戸の前に立ち。

 その閉じている岩の端をその右手で掴み

 

「ぬうううううううううう!」

 

 気合。

 すると

 

 ゴゴゴッ、と岩が動いた。

 これまで誰も、動かすこと叶わなかった岩の扉を

 

 そしてその中から

 

「……ようやく、解放のときが来たか」

 

 光り輝く女神、優しい光の男神、逞しい武人の神2柱、巨大な脳の姿の神……

 合計5柱の神が解放された。

 

 光り輝く女神……天津神アマテラスが照らす場に、ヒルコが進み出て来た。

 そしてヒルコが膝をつき、深く頭を下げる。

 

「大局を無視し、この国を壊滅させたことをお詫びする」

 

 その声は重く、悔恨に満ちていた。

 ヒルコの姿からは、国津神としての誇りと、過去の過ちへの痛みが滲む。

 アマテラスは静かに、だが氷のような声で答えた。

 

「……もう、取り返しがつかぬな。ここでおぬしを糾弾したところで、何も戻ってはこぬのだ」

 

 彼女の言葉には、抑えた怒りが滲んでいた。

 黄金の瞳が一瞬揺れ、かつての東京の栄光を思い出したかのようだ。

 

 かつては神として存在していた土地を、ここまで荒廃した無惨な土地に変えられた。

 その無念……

 

 本音を言えば、きっと国津神を徹底的に打ち据えて、その罪を悔いさせたいんだろう。

 でも、それをすれば本質部分が何も変わらない。

 

 そもそもとして、国津神が下剋上を狙ったのは天津神が国津神の上の存在として位置づけられていたからなんだ。

 それが正しいとか、間違ってるとかは関係ない。

 原因になったことは確かなのだし。

 

 そこから目を逸らしていないから、アマテラスは何も言わないんだ。

 

 そこに東京の守護神が穏やかに、だが力強く口を挟んだ。

 

「心が虚無に引き込まれる気持ちは理解できる。だが、だからと言って後のことなど知らぬとは言えまいよ。神なのだから」

 

 アマテラスとヒルコは沈黙した。

 

 そして

 

「……この場所に日の光を取り戻さねばな」

 

 アマテラスがそう言葉を発し。

 

 俺たちに視線を向けたんだ。




次回、アマテラスの言葉。

本作を読んでいただき感謝です。
続きが気になる、面白かった。
その場合は評価、お気に入り、コメント等を頂けますと嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。