TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第8話 マダムの館にて

「そうか。嬉しいよ。誘ったのは私だから、基礎的なことは私が教える。安心してくれ」

 

 ニコリ、と微笑むライドウ。

 その微笑みも綺麗だった。

 

 ああ……これが完成された人間って奴なのかな。

 このヴァルハラエリアには居ない人種……

 

 もしセンターに行けたら、センターはきっとこういう人間ばかりなんだろう。

 ライドウについていくなら、彼に恥を掻かせないようにしっかりしないとな……

 

 そう漠然と考えて

 

「えっと、俺はサダハル」

 

 名乗って無かったので名乗った。

 だけど……

 

(名字が無いことを知られるのは嫌だな)

 

 そんなことを思った。

 とはいえ、名字が無いのはどうしようもないしな。

 

 ……売春婦が産んだ子は名字が無い場合が多いんだ。

 

 理由は、売春婦は子供を産んで捨てるケースが多いからだ。

 メシア教教会前に捨てればメシア教団が拾ってくれるので、罪悪感も特になく。

 

 なので名字が無い。

 教団の方もそんな子供の数が多いから、いちいち名字を考えるのが面倒だし、継承する家も存在しないから特に意味も無いと言って、つけない。

 

 名前の方も、適当に決めてるらしい。

 

 一応、くじ引きで神の意志を介在させているという体裁だけどさ。

 

 だけどライドウは

 

「よろしくサダハル。仲良くやろう」

 

 俺の生まれに気づいているはずなのに、変わらない笑顔で右手を差し出してくれた。

 俺は名字を訊ねないライドウの気遣いに。

 

「ああ、よろしく。俺、頑張るから」

 

 内心感激しつつ、その手を握り返した。

 

 ライドウの手は固かったけど……

 その感触は、サラサラとしていた。

 

 

 

 そして最初に連れて来られたのは……

 

「ここって……」

 

「マダムの館だよ。今はここに間借りさせて貰ってる」

 

 マダム。

 ヴァルハラエリアの統治者。

 

 確か未亡人。

 元々は旦那が統治者だったらしいけど、夫亡き後にその地位を引き継いでる。

 

 統治者の屋敷らしく、超馬鹿デカイ。

 

 屋敷の敷地、ヴァルハラコロシアムと同じくらいあるし。

 おとぎ話に出て来る、お城みたいな屋敷だ。

 

 俺たちはそのお屋敷の鉄の門の前に居て

 

 ライドウは門の横にあるボタン……インターホンか? それを押し

 

『……どなたでしょうか?』

 

 即座に返って来た声に。

 ライドウは

 

「葛葉ライドウ。任務より帰還致しました」

 

 落ち着いた様子で返し。

 インターホンの声は

 

『ご苦労様ですライドウ様。ただいま門を開錠致します』

 

 丁寧な調子でそう応え。

 

 同時に

 

 ギィィィ

 

 と音を立てて。

 その巨大な鉄の門が開く。

 

 おお……

 

 当然だけど俺は、マダムの屋敷に入ったことは無いので。

 かなり興奮していた。

 

 俺の住んでた場所の統治者の家に入れて貰えるなんて……!

 感激の連続だ。

 

 門が開き、マダムの屋敷の敷地が見えた。

 

 想像通り……

 

 広くて、立派だ。

 

 良く分からない石像が立ち並んでいるし。

 噴水もある。

 

 観葉植物も植わってて

 

 そして……

 

「よぉ、ご苦労だったナ」

 

 そこに

 

 3メートルを超える、青白い魔獣が現れた。

 犬に似てるけど(たてがみ)を生やしてて、尻尾が蜥蜴か蛇みたいで……

 

 悪魔を見るのは今日はこれで2回目だが、これが高位悪魔なのはすぐ分かった。

 

 震えそうになる。

 すげえプレッシャー。

 

「やぁケルベロス。マダムはどうしてる?」

 

 ライドウはその高位悪魔……ケルベロスにそう気安い感じで話し掛け

 

「マダムは今、チャンピオンと面会中ダ」

 

 チャンピオン……

 

 ケルベロスの言葉に。

 俺の中で思い浮かぶのは、コロシアムトーナメントの優勝者しか無かった。

 

 ……つまり

 

(ホークか)

 

 あのときの。

 鴨志田の兄貴がやられたときの記憶が蘇った。

 

 ……悔しさが蘇り、同時に今の俺はアイツに近づけているのかと思った。

 

 ライドウの薦めに従って、テンプルナイトを目指すことにはしたけど……

 悪魔召喚のワザを手に入れるアテは、まだ無い。

 

 ライドウを除いて……

 

 まだどうやって呼ぶのかは分からないけど。

 ライドウは悪魔を使役していた。

 

 だからライドウはそのワザを持っている。

 

 聞きたい……

 だけど

 

 ライドウが不愉快に感じるかもしれない。

 悪魔召喚が危ない力なのは間違いないし。

 そんなものに興味を持ってるヤツなんて……良い顔しないだろ。

 オマエは力に寄って来るハエかよ、みたいな感じで。

 

 そう思うと……

 

 何故か、どうしてもそれを訊ねる気にならなかったんだ。




まぁ、訊きづらいよな。
好意を持ってる相手なら。

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