TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第82話 監視塔の番人

 俺たちはザインを仲間に引き入れるため、ファクトリーの解放の助力をするために地上に上がって来た。

 だから、当然このことも訊ねた。

 

「ザインの行方は分からないか?」

 

 アリババなら知ってるかもしれない。

 すると、アリババの声が即座に返ってきた。

 

『ザインっていうと、センターにテンプルナイトを裏切った背教者と認定されたあの男だな?』

 

 当然かもしれないけど、アリババもザインを知っていた。

 話が早い。

 

 そして

 

『あの男なら、今、監視塔にいるな。最上階のセイレーンの部屋を目指してるみたいだぞ』

 

 そう続けて。

 そのとき、声のトーンが変わり

 

『……急いだ方がいいんじゃないか? ザインが最上階に辿り着いたら、多分セイレーンを殺すと思うぞ』

 

 そう言った。

 

 ……確かに。

 

 テンプルナイトを裏切ったとはいえ、ザインが悪魔を見逃すとは思えない。

 ザインはセンターを見限っただけであって、悪魔の味方になったわけじゃないんだ。

 

 だったら急がないと。

 

 俺がライドウに急ごうと言うと、ライドウは目を細め頷く。

 

「そうしよう。急いだ方が良い」

 

 そう低く呟く。アリババが続ける。

 

『監視塔の場所は理解してるか? ナビしてやるぞ』

 

 

 

 労働者が農作業に精を出している横を、なるべく目立たないように駆け抜ける。

 俺たちがテンプルナイトだった頃は、別に何も思わなかったが、今はこの私服で農園を抜けることに精神的負担があった。

 

 一応ファクトリーにも他のエリアからの見学ツアーというシステムはあったけど、その数は少なかったし。

 思えば、2日がかり、つまりファクトリーに宿泊するプランって無かった気がする。

 

 今思えば、ツアー客がこのエリアのセイレーンの歌声の呪縛の影響下に入らないための対応だったんだろうな。

 

 そして監視塔に辿り着いたとき、俺は異様な光景に目を疑った。

 

 警備が1人もいないんだ。

 高い鉄塔の入り口は、無人のまま静まり返っている。

 

「機械警備を絶対視してるってことか? だったら、ザインはそれをどうやって……?」

 

 俺がそう呟くと、アリババの声がターミナルから響いた。

 

『ここの労働者はセイレーンの歌で従順だから、団結して蜂起したりしない。センターも無駄な人員を割かないんだ。ただ、監視塔の中は悪魔が徘徊してて、セイレーンの部屋の前には最後の番人がいる』

 

「番人?」

 

『……魔王ベルフェゴールだ』

 

 ライドウが顔を顰めた。「魔王を番人に置いているのか」

 

 魔王といえば、メシア教が不浄な存在として敵視する悪魔の代表格だ。

 それが何故、番人に……?

 

 俺が「どういうことだ?」と訊ねると、アリババが説明してくれる。

 

『魔王の位階にいる悪魔は、大抵が元々はかつての神なんだよ』

 

 アリババは言う。

 魔王と呼ばれている悪魔は、元々はどっかの部族に神様として崇められていた存在なんだと。

 そして

 

「それがメシア教が崇める神との争いに負けて邪悪な存在として貶められたんだ」

 

 そうなのか……

 その話を聞いたとき。

 

 俺が思ったのは

 

 どういう経緯でそうなったのか知らないが、可哀想だな、という感情だったのだけど

 

 続く言葉で

 

 

『ベルフェゴールもその辺を餌にされたんじゃないか? メシア教のために働けば、元のように神の一員に加えてやるとか、そんな話だと思うぞ』

 

 憤りが胸を突き上げた。

 

「……神の意志を自己都合で捻じ曲げているのか、あいつらは……!」

 

 センターの偽善が、ベスの死を祭りのシンボルにした非道と重なる。

 あいつらは自分の王国が完成するなら、本当の正義なんてどうでも良いんだ。

 

 俺の声が震えると、ライドウが静かに言った。

 

「サダハル、君のそういう純粋さは、私も好ましいと思ってる」

 

 その言葉に、俺の心が一瞬温かくなった。ライドウの落ち着いた目が、俺を包む。

 彼は続ける。

 

「だが、冷静になれ。仕事は落ち着いてするものだろう?」

 

「分かった……」

 

 俺は深呼吸し、ライドウの言葉に頷いた。

 ライドウがそういうのなら。

 

「アリババ、ベルフェゴールの情報はあるか?」

 

 俺がそう訊ねると、アリババが答えた。

 

『旧世界で設定されていた七つの大罪というもので、怠惰を司ると考えられていた魔王だ』

 

 ……怠惰。

 

 怠け者ってことか?

 なんとなくだけど……

 

 素早く動きそうにないイメージがあるな……




次回、監視塔。

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