TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第9話 急がば回れ

 俺は青一色の空間の中で。

 目の前の植物の悪魔と長剣を構えて対峙する。

 

 

 ここは電脳空間で。

 ヴァーチャル・トレーナーっていうマシーンのコンピューターの中だ。

 マダムの館にはトレーニングルームがあり、そこに備え付けられている。

 

 俺は殺し殺される実戦経験が足りて無さ過ぎるので、まずこれで経験を積めと言われた。

 ライドウにはレベル1から順繰りに慣れていけって言われたけど……

 

 レベル10まである難易度のうち、3レベルから開始した。

 

 ライドウは

 

「無茶するな。ヴァーチャル・トレーナーでは死んだりはしないけど、殺されるだけでは訓練にならないぞ」

 

 そう言ったけどさ。

 厳しい訓練でないと強くなれないだろ。

 

 兄貴のトレーニングはいつも辛そうだった。

 兄貴以上に頑張らないと、俺の望む強さは手に入らないだろ。

 

 俺はレベル3の相手妖樹オードリーと戦っていた。

 

 妖樹オードリーは3メートル近い、チューリップに似た薄橙色の花を持つ植物の悪魔だ。

 根っこの部分が触手のような足になってて、それで移動する。

 そして花には口がついていて、それで仕留めた獲物に齧りつき、獲物からマグネタイトを摂取するんだ。

 ヴァルハラエリアの外の無法エリアにたまに発生する悪魔で、これはその悪魔のシミュレーション。

 

 俺は武器として選択していた剣を構え、斬りかかる。

 

「でやああああ!」

 

 

 

「ぐえ」

 

 ……そして。

 俺は一太刀も浴びせられずにアッサリオードリーの触手に捕まり、グルグル巻きにされて。

 首をへし折られてゲームオーバーになった。

 

「クソッ! もう1回だッ! 頼むッ!」

 

 覚醒し、ヴァーチャル・トレーナーの狭いカプセルの中で。

 ヘルメットをつけたまま外で機械操作をしてくれているライドウにリトライを頼んだ。

 

 だけど

 

「……いい加減にするんだ。モニタで見てたけど、これは駄目だろ。勝負になってないじゃないか」

 

 ライドウからの厳しい言葉。

 俺はウッと詰まる。

 

 その通りだったから。

 さっきの俺はただ、オードリーに殺されに行っただけだった。

 自分でそれは理解してる。

 

 でも……オードリー程度に勝てないで、ホークに勝てるとは思えない……

 

 そう、食い下がろうとする俺に

 

「……焦ってもダメだ。強くなるには強い相手と戦わないといけないのはその通りだけど、物事には段階がある」

 

 ライドウは穏やかに、諭す口調で言ってくる。

 

「まずレベル1で余裕で勝てるようになって、そこから2、そして3とレベルを上げていく……君は急いでるみたいだけど、結局はそれが一番の近道だよ」

 

 そう言えば……

 

 兄貴は

 

 強さは地道な努力と自分を信じる心の強さにしかついてこない。

 

 ……こう言っていた。

 だったら……

 

 やっぱり、ライドウが言う通りにした方が良いのかな……

 

「……分かった。レベルを下げてくれ。1に」

 

 反省する。

 手っ取り早く強くなろうなんて考えてちゃダメだよな。

 兄貴だってそう言ってたんだ。

 

 俺の言葉にライドウは

 

「……それがいい。こんなところで躓いている場合じゃ無いんだよ? この後、身体能力を上げる訓練もあるんだし」

 

 ヴァーチャル・トレーナーでは戦闘センスしか磨かれないんだから。

 

 やること山積み。

 そこを指摘されたけど……

 

 そのときのライドウは、何か嬉しそうだった。




ゲームだと身体も強くなるんですけどね。
何故か。

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