TOKYOミレニアムから40代目が旅立つまでの話   作:XX(旧山川海のすけ)

94 / 116
第94話 大失敗

 嫌な予感がした。

 

 まぁ、冷静に考えたなら、この状況で俺たちに良いニュースが流れたりするわけが無いんだけど。

 テレビ画面の中で、さっきまでニュースを読んでいたキャスターが画面から消えて。

 

 代わりにメシア教の法衣を身に纏った初老男性……センター司教の姿が映し出される。

 センター司教は、様々な撮影機材に囲まれた部屋に居て。

 能面のような表情でこちらを見ていた。

 

 そして

 

『ザインにつぐ』

 

 司教が穏やかな調子で話し始めた。

 

『直ちにセンターへ出頭せよ』

 

 ただ、その内容は……

 

『本日中に出頭しない場合は、ホーリータウンへ空調から毒ガスを流す』

 

 ザインに向けての、脅迫だった。

 

『びらん性毒ガスだ。ホーリータウンは地獄と化すだろう』

 

 ホーリータウン内の空気は、外の汚れた空気を浄化装置で浄化したものを使用している。

 その浄化空気を流し込むのが空調なんだ。

 

 ……そこから毒ガスを流すだって……?

 

『それでホーリータウンにいる人間の命は、全て失われるだろうが、仕方がない』

 

 びらん性毒ガスって何だ?

 良く知らないが……

 

 センターの連中はホーリータウンの住人を人質にして、ザインを捕えようとしているのか……!

 ……汚い。汚過ぎるぞ……!

 

「びらん性の毒ガスというのは、皮膚や粘膜を攻める毒ガスだ。浴びると皮膚や粘膜がただれて、水膨れや潰瘍が出来て苦しみ抜いて死ぬことになる。……センターの奴ら、なんでもありか……!」

 

 ライドウが説明してくれた。

 その声には静かながらに激しい怒りがあった。

 

 そんなライドウの言葉で、センターの奴らが言ったことの内容は分かったが

 俺の評価は酷くなりこそすれ、良くなることなどあり得なかった。

 

『くり返す……ザインにつぐ。直ちにセンターへ出頭せよ……』

 

 クズどもがッ……!

 

 

 

 

「……どうする?」

 

 センターからの発表を最後まで見て。

 最初に、ザインがそう訊ねて来た。

 

 どうって……

 

「センターの奴らの思う通りにさせてはいけないだろ」

 

 そう俺が、当たり前の結論を口にする。

 だけど

 

「……どうやって?」

 

 ザインのその言葉に俺は

 

 ……返答できないことに気づいた。

 ここに毒ガスを散布する人間を派遣して来るなら、そいつらを倒せばいいだけの話だけど。

 空調経由だとどうしようもない。

 

 そこに気づいたんだ。

 

 ……どうする?

 

「僕は、センターに出頭しようと思う」

 

 答えに詰まる俺に、ザインはそう自分の覚悟を口にした。

 ホーリータウンの人々の命を守るために、センターの要求に従おうと。

 

 俺は

 

「そんなのは駄目だ!」

 

 そんなザインの言葉を、感情で否定した。

 センターの奴らの言うことにひれ伏すなんて、するべきじゃない!

 それだと、この正義からかけ離れた社会を存続させることになる。

 

 だけど

 

「……でも、そうしないと確実にこのホーリータウンの人々の命は……」

 

 ザインも悔しそうだった。

 彼だってそうなんだ。

 

 ……そもそも。

 センターのやり方に疑問を抱いて、最初に行動を起こしたのは彼なんだし。

 

 悔しくないわけが無い……

 

 そのとき

 

「ああ、ザイン。別にさぁ、やらなくていいぞ。自首」

 

 ……いつの間にか自マシンの前に移動していたアリババが、マシンを稼働させてすごい速度でタイピングしていた。

 そして

 

「……たった今、空調をロックして、空気の出入りを不可能にした。だからセンターの毒ガス作戦はもうできないな」

 

 そんなことを言ったんだ。

 驚き、絶句する俺たち。

 

 アリババは続ける。

 

「……ついでに、大教会にある地下世界への入り口のロックを外した」

 

 この状況で、地下世界に逃げることを躊躇う奴は居ないだろ。

 

 だって、そうしないと毒ガスで確実に死ぬんだから。

 

 ……センターの奴ら、大失敗だなー。

 これでもう、皆、何が何でも地下に逃げ出そうとするぞ。

 呼びかけて説得する手間が省かれたじゃないか。

 

 良かったな、サダハル、ザイン、ライドウ。

 

 ……そう言って。

 アリババはニヤリと不敵に笑った。




空気の出入りを止めても最終的には住民は全滅するんですが、毒ガスを流されるよりはマシ。
原作だとセンターは「空気を止める」で脅して来るんですよね。

本作を読んでいただき感謝です。
続きが気になる、面白かった。
その場合は評価、お気に入り、コメント等を頂けますと嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。