ようこそ俺の実力至上主義のまちがった青春がある教室へ   作:ゆっくりblue1

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第12話


休日なのに面倒事は絶えないらしい。

蝉がミーン、ミーンと鳴く暑い季節。俺はその暑さで寝苦しさを感じて思わず休日にしては早い起床になった。汗が寝間着に引っ付いて気持ち悪い。俺は冷蔵庫を開けるとマッカン擬きを飲む。

 

「………あっつ、溶けるわ。エアコンの効き目ねえ……扇風機も買うか」

 

マッカン擬きを飲みながらそう呟くと、スマホにメールが届いた。確認すると椎名からである。内容は。

 

『おはようございます。今日は暑いですから熱中症にならない様にして下さいね。この騒動がなければ八幡君に冷たい物を用意出来たと思うと残念です…』

 

そんなしょんぼり感満載のメールに苦笑しつつ、おはよう。そっちも熱中症に気を付けろと送る。

 

昔の俺なら異性のメールにも一喜一憂していたから。大分マシになったな。小町には足りないと言われるだろうが。これでもマシになった方なんだよ?中学の折本に降られる前はメール届いただけで、どう返そうかめっちゃソワソワして、めっちゃ内容を考えて書いては書き直してをしてたからな。結局送った後で返ってきた言葉は寝てたわー。だった。しかも10時間ぐらい経った後。寝過ぎは早死にするぞ。降られた後は、クラスメイトからじゃなくて間違いのメールとか詐欺メールとかが家族以外は殆どだった。3年の時は誰とも交換しなかったし。されなかった訳じゃないよ?身を引いて遠慮しただけなんだからねっ。どうも卒業式の後の打ち上げで誘われなかった人です。

 

そんなことを考えながらもダラダラする、訳ではなく今日は予定がある。こんな暑さである中出掛けるのは億劫になるが、ダラダラ後回しにするのも面倒だ。

 

「……取り敢えずレンジに扇風機を買うか」

 

椎名と行く予定だった家電の購入である。レンジの調子が悪く、また付いている機能も少ないため、新しいのを購入するのである。扇風機はこの暑さでエアコンだけでは足りないからである。

 

適当に朝食を済ませて、しばらくダラダラして、良い時間になった所で俺は白いシャツと緑の短パンに着替えて最低限の荷物を持って家電量販店に向かうのだった。

 

 

 

 

カンカンと照りつける太陽で汗が流れる中、ショッピングモールに着くと空調がしっかりしているのでかなりの涼しい状態になった。まじで暑かった。……コンビニでアイスも買っておくか。

 

そう思いながらショッピングモールを歩いて家電量販店を探していると、声を掛けられる。

 

「……あれ?比企谷君」

 

「……松下か」

 

声をかけてきたのは松下だった。松下は白いインナーに黄緑色の短いコートと花柄のワンピースを着ていた。色違いのひまわりの柄があしらわれており、結構派手だ。松下は近づいてきて聞いてきた。

 

「ショッピングモールで1人で買い物なんて珍しい……何時もは引き篭もってるのに、明日は豪雨かな」

 

「あのな、俺だって買い物ぐらいしに外に出かけることはあるわ」

 

そんな俺は引き篭もってない。わりと本だって買いに行ってるし、食料品も1週間に1度は買いだめしている。断じて引き篭もってはない。専業主夫にはなりたいが引き籠りにはなる気はない。

 

「それは本屋とかスーパーぐらいでしょ?外に遊びに出かけることは殆どないじゃない」

 

「……そんなことよりもお前は何でいるの?グループの奴等とは一緒に居ないのか?」

 

無理矢理話を変えて何故松下が1人でいるのかを聞いた。見る限りは一緒に来ている奴はいなさそうだが、遂に俺のぼっちの影響を受けたのか?俺のヒキタニ菌バリア効かねえから効いちゃったか?そんな事を思っていると松下が言った。

 

「何か失礼な事思われた気がするけど……私は暇だったから適当にその辺をぶらぶらしてただけ。比企谷君は……あ、そう言えばレンジを家電量販店で購入するって言ってたから、それ?」

 

松下は椎名との話し合いの時にその場に居たから分かったようだ。俺は頷いて言った。

 

「…そういうこった。……んじゃ、もう行くから。じゃあな」

 

「待った」

 

「ぐえっ」

 

俺は松下と別れようと身体の向きを変えて家電量販店に向かおうとすると、松下が後ろから襟首を掴んで呼び止めてきた。襟首を掴まれて進もうとした事で首が服で締まった。蛙みたいな声出ちゃったじゃねえか。俺は出鼻を挫かれたことに後ろに振り返って松下を睨む。

 

「……何だよ。用は済んだろ。店に行くんだから放して?後首も締まってるし」

 

「比企谷君。私は暇なの」

 

「いや、話聞いて?」

 

「暇なの」

 

俺の訴えを見事な程のスルーで流され、このままじゃ進まんと思った俺は早々に抵抗を諦めて溜息を吐くと、諦めた事を察知した松下は襟首を放す。放されたが逃げたら多分面倒くさいことになるから逃げない。

 

「……そうね。で?pptは家電しか買う予定無いからやれないぞ」

 

「良い加減に怒られたいのかな?」

 

「すいません真面目に聞くんで勘弁して下さい」

 

お巫山戯が過ぎたのか眼が笑ってない微笑みを見てすぐ降参する。するとその様子に松下は呆れたように言った。

 

「全く、そんなすぐに降参するんだったらやらなきゃ良いのに……まあ良いけど。それで本題なんだけど、家電量販店に私も暇だから付いて行って良い?」

 

「……何で?」

 

その言葉に俺は疑問を口にする。正直家電買ってラーメンでも食って、帰りにアイスを買って帰るだけだから松下の暇を潰せる要素がないと思うのだが。

 

「1人でぶらぶらしててもアレだし、比企谷君について行った方が暇は潰せそうだから」

 

「……つっても家電買って、外食してアイスを帰りに買って帰るぐらいだぞ?お前が暇を潰せる要素ねえと思うが…」

 

「それで別に構わないよ。外食は何食べるの?」

 

「…ラーメン」

 

そんな会話をしながら横1人分の間を保って、家電量販店に向かい始めた。そして家電量販店の前に行くと見覚えのある生徒が3人居た。松下が呟く。

 

「あれは……綾小路君に櫛田さんと、佐倉さん……珍しい組み合わせだね」

 

そんな呟きが聴こえたのか、綾小路達がこっちを向いた。そして櫛田が言った。

 

「あれ?比企谷君に松下さんだ。2人も家電見にきたの?」

 

そんな質問に松下は、私は暇だったから比企谷君に着いてきただけ。と言うと櫛田は急に何かニヤニヤして松下に耳打ちすると、松下は何か赤くなって何かを否定した。何言われたんだよ……と言っても聞いたら地雷の予感がするので放っておく。すると綾小路が聞いてきた。

 

「家電量販店に2人は何をしに来たんだ?デートの途中か?」

 

「……ちげえよ。俺は新しいレンジと扇風機を買いに来て、松下は暇だからつって着いて来ただけだよ」

 

松下とはそんな関係性ではない。俺みたいなぼっちが松下とは釣り合わんしな。これは松下の気紛れによって起こった偶然だ。今度はこっちが聞き返した。

 

「……で、お前らは3人で何しに来たんだ?」

 

「俺と櫛田は佐倉のカメラの修理の付き添いだ」

 

そう言った綾小路は佐倉の持っているカメラを見た。……ほーん、成る程な。カメラの修理に付き合ってそのついでに話し合いに出るよう説得するって感じだな。俺はそうか。と言って店に入って行くと松下と櫛田達も入った。

 

俺は家電コーナーに行って先ずレンジを見にいく。すると櫛田達と別れた松下が合流して聞いてきた。

 

「それで、どんなレンジを買うか決めてるの?」

 

「最新の機能は別にいらんから。ま、前の奴より温めやすい奴だな」

 

「結構アバウトだね……あ、そう言えばさ」

 

松下の言葉を聞き取りつつもレンジを見る。……機能が多くて使い道無いもんは要らんしな。……お、これ短時間で結構温められんじゃん。これにしよ。これなら椎名もやり易いだろうし。

 

「佐倉さんの顔って何処かで見たことあるんだよね。それで考えてて気付いたんだけどブログのアイドルにそっくりだったんだよね」

 

「ほーん、ブログのアイドルね…」

 

そう曖昧な反応を見せると、松下はスマホを操作して、そのブログを見せてきた。別に見せてくれって言ってないけどな。と思いながらも見てみると、"雫"というブログネームで佐倉とは違った快活そうな印象の女性が写っていた。似ていると言えば似ていると思うが、あの弱々しい様子とは真逆の印象だ。するとブログのコメントである事に気づく。

 

「……ん?何だこれ。気持ち悪いコメントがあるが」

 

何か雫は僕の運命の人とか書いてある。一番最新のコメントにはもう直ぐだよとか書いてある。………めっちゃ気持ち悪い。ストーカーだな完全に。松下もこのコメントに対しては顔を顰めて言った。

 

「何かこのコメントこのブログが一時停止しても届いてるんだよね。ストーカーとか本当に気持ち悪い。ファンがアイドルに手を出したら終わりって事が分からないのかな……」

 

そんな松下の言葉を聞いて俺はブログのアイドル本人である佐倉を見る。すると佐倉は会計の方へ行っていた。佐倉の前の店員に視線を移したその時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーゾクッッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店員の視線を見た瞬間、悪寒という悪寒が背筋を走り抜けた。店員のその眼はまるで粘着質で何処か恍惚とした佐倉を舐め回す様な視線。大した観察眼が無くても分かる。あの店員はヤバい。

 

恐らく震えている佐倉を店員の視線を切る様に綾小路が立つ。綾小路の様子は分からないが店員の異常さに気付いた様だ。俺は松下に向き直ると言った。

 

「…松下、この店を出るぞ」

 

「…え、如何して?」

 

俺はあの店員の方を小さく指し示して説明する。あの店員がどんなシフトかは知らんが、今日に限って椎名を連れて来なかったのは正解と言える。

 

「あの店員は、何かヤバい。綾小路も気付いたみたいだ。佐倉の事を見る視線が普通じゃない」

 

「……確かに、何かおかしいね。綾小路君を見る視線が険しいし、仮にもお客に対してする視線じゃない」

 

松下もあの店員の異常性を感じ取った様で、綾小路が本来の持ち主である佐倉のカメラの修理の引き取りを変わった様だ。その時の店員の視線は綾小路に対する憎しみに溢れていた。

 

そして俺は結局何も買う事なく家電量販店を出た。松下と綾小路達も出て、息を吐いた。そして綾小路が言った。

 

「……あの店員についてどう思った?」

 

その質問には櫛田が少し疲れた様子で苦笑して答えた。

 

「うーん、あの店員さん、私を見てかなり話しかけてきたよ。結構テンション高めで、メールアドレスも聞かれたから少し困っちゃった(訳:あのキモい男、視線キモ過ぎんだよ!何鼻息荒くしてんの!?メールアドレス聞かれた時は本気で通報しようかと思ったわ!うー、キモい気持ち悪い。夢に出そう)」

 

……ヤバい、何と無くだが櫛田の仮面の内側が洩れてるな。裏声翻訳に自動で再生されたわ。しかし、その強化外骨格持ちの櫛田でも参るほどって相当だな。俺も頷く。

 

「……櫛田もそうだろうが、特に佐倉に対しての視線が尋常じゃないぞアレ」

 

「それに佐倉さんを庇った綾小路君に対しての視線もね」

 

俺の言葉に松下が追随すると、佐倉はあの視線が恐ろしいのか震えていた。それをケアする櫛田と綾小路。俺は隣に立っている松下に綾小路達に、特に佐倉には聞こえない様に言った。

 

「……松下、頼みがある」

 

「…何?」

 

小声で聞き返してくる松下。俺の雰囲気を察したのか真剣な表情を浮かべている。俺は一瞬佐倉を見て言った。

 

「明日から1週間、学校内で佐倉の事を見といてくれ。上手くは言えないが、何と無く嫌な予感がする」

 

「…分かったよ。学校内で良いの?」

 

「取り敢えずそれで頼みたい。依頼料は……」

 

「1万で良いよ」

 

その言葉に俺は頷く。1週間佐倉の事を見ておくだけであれば、それくらいが妥当だな。後で払う。と言って会話をそこで終了する。そして綾小路達とは別れて、家電量販店を離れる。すると松下が言った。

 

「……それにしても殆ど関係性の無い佐倉さんのことを頼むなんてよっぽどなんだね」

 

「………ああ、俺も予想外だったけどな。だがそれくらいあの店員はヤバい気がする。椎名にも取り敢えず言っておいて、学校側にも報告しておいたほうがいいかもしれん」

 

自分でも此処まで積極に動くなんてと思うが、正直この学校に異常性のある人物がいる中で安心して外に出られない生徒も出てくるだろう。つーか、俺が嫌だ。今は特に何の行動も取っていないが、何かあってからでは遅い。リスク管理はしっかりとしておくのが俺クオリティ。断じてヘタレとかそんなんじゃないよ?

 

「比企谷君がそんな積極的に動くとか本当にしばらくは雨が降りそうだね〜。話し合いも参加するし」

 

「……うっせ。話し合いは別に参加したい訳じゃねえよ」

 

松下の揶揄いにそう言い返しながらモール内の服屋の前を通ったところで、見憶えのある生徒が服屋から出てきて俺達を認識すると驚いた顔で呟く。

 

「……八幡君に、松下さん?」

 

「椎名か」

 

俺と松下は立ち止まる。椎名は涼しげなオフショルダーの服に水色と白のチェック柄の長さが膝丈辺りまであるスカートだった。手には服屋で買った物だろうか、大きな手下げ袋と小さな手下げ袋を左右に一つずつ抱えていた。椎名は俺と松下に視線を向けて言いにくそうにして口を開く。

 

「……その、お二人は……」

 

躊躇する様に言いかけた事を察して俺は言う。

 

「…椎名が思っている様なことはしてないぞ。俺が家電量販店に行くのに偶然会った松下が着いてきただけだ」

 

「…そうだったんですね」

 

俺の言葉に椎名はホッとした表情を浮かべた。普通なら勘違いと言い聞かせるのだが、椎名には好意を伝えられているので誤魔化せない。…椎名からすれば余り良いものじゃないな。しかし、松下と会ったのも偶然であるのでそう言うのが最善だ。

 

「……椎名さんは服屋で買い物?」

 

そう松下が聞くと頷いた椎名。俺は丁度良いと思ってさっきの家電量販店の事を言った。

 

「そうなんですか。分かりました。それにしても怖いですね、その店員の人」

 

「ああ、一応学校側にこの事を伝えるつもりだ。しばらく家電量販店には行かん方が良い」

 

そう言って、一度会話が区切りがつき、次の話題に切り替わる。

 

「そういえば、八幡君はこの後は如何する予定なのですか?」

 

「…取り敢えず、帰って飯作んのも面倒だし、適当に外で食おうと思ってる」

 

此処にサイゼとかあればそれを選ぶんだが、調べたら何故かあの学生のオアシスは無かったんだよな。本気で何でないの?あれ程安くて美味しい学生の味方が無いなんて千葉県民として驚きだ。何を食べるのかを聞かれてラーメンと答えると、椎名は少し考えるそぶりを見せた後に言った。

 

「…外食するのでしたら、私も付いて行って良いでしょうか?」

 

その言葉に俺は少し考える。此処で一緒に行けば目立つ、が。正直学校の奴等には同居している事を知られたくないだけで、もうこの騒動が起こる前から椎名と行動をしている事は同居以外ではもう結構知られているって松下が言ってたしな、本意じゃないが。まあ松下とも仲が良いし、偶然会って一緒に食事に行ったってことでも筋は通る、かもしれない、多分。……問題は男が俺一人だけだということ。松下も付いてくるっぽいし、この状態は嫌でも目立つ。そう思いながら椎名を見る。

 

「……」

 

……正直、告白の返事を待たせてしまっている分、椎名の事になると強くは断れないし、なるべく要望は叶えてやりたいとは思っている。俺は結論を言った。

 

「……分かった。つってもラーメンだけど、いけるか?」

 

最近は女性向けのラーメンとかヘルシーラーメンとかもあるが、基本的に女性が食べる様なイメージは持ちにくい。すると椎名は微笑んで言った。

 

「大丈夫です。余り食べる機会が無かったので食べてみたい気持ちも有りましたから」

 

「……なら良いんだけどな」

 

「どんなラーメンがお勧めとかある?」

 

すると松下が聞いてきたので俺は少し考えると言った。

 

「…まぁ、基本的には店によってクオリティが違うんだが、此処になりたけとか、あ、俺が好きな店の名前な。はないから、店に行ってからじゃないとなんともな。勧めるならあんまり濃い奴は初めてなら止めといた方が良い。[[rb:靠>もた]]れるかもしれんからな。ラーメンの美味しいやつって濃くなりやすいしな。さっぱりした奴も美味しい奴は有ると思うけど」

 

そう言いながら、ラーメン屋を探して歩き始める俺達。俺は椎名を松下と挟んで右側の位置の数歩後ろを歩く。こうすればまだマシだ。後ついでに椎名の荷物を持った状態で歩いている。これでただの冴えない荷物持ちの完成だ。ちなみに言うと買った物の中身は見てないからな。個人的な買い物だろうし。

 

 

そして椎名と松下の会話を聞きつつ、たまに話しを振られると答えるを繰り返し、歩いているとラーメン屋は丁度、天下◯品が有ったのでそこで食べた。俺は濃い奴を、椎名と松下はさっぱり系を2人も一応美味しいって言って食ってたからまあ、悪くない結果だろう。

 

 

そして店を出て、寮に向かおうとすると、面倒くさい奴に遭遇してしまった。

 

「腐り目にひよりか。……ククッ、相変わらずお熱いようで」

 

「………龍園か」

 

前から歩いてきたのはCクラスのリーダーである龍園だった。……はぁ、面倒な奴に見つかった。そうげんなりしていると、その様子を察したのかニヤニヤと笑いながら龍園は言った。

 

「おいおい、そんな嫌そうな顔すんなよ。契約までした仲じゃねえか。で?ひよりの隣にいるのは愛人か?」

 

そう松下を見ながら言う龍園に松下が眉を顰めて言い返す。

 

「初めて会って随分な挨拶だね?Cクラスのリーダーさん」

 

「……クク、威勢がいいじゃねえか。俺を前にして肝も座ってるようで案外いい女かもな。お前、名前は?」

 

「……松下千秋」

 

「ほう、千秋って名前か「名前で呼ばないでくれるかな?」…クハッ、そう邪険にすんなよ。まあ良い、腐り目は楽しんでるみてえだが、それはいつまで続くんだろうなぁ。来週を楽しみにしとけよ」

 

松下の威圧も笑って愉しそうに受け流してそう言うだけ言って去って行った。……彼奴の相手は本気で面倒だ。来週と言っていたってことはやはりこの騒動は龍園によって仕組まれたもの。彼奴の読みが何処までかは知らんが、注意しなきゃな。……はぁ、早速話し合いに行きたくなくなってきた。働きたくねえなぁ……そんなテンションを椎名に心配されつつも、寮に向かっていく。

 

その道中、スマホが震えたので見てみると、非通知から着信が来ていた。それを見て俺は溜息を吐きつつも気付かなかった事にした。

 

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