ようこそ俺の実力至上主義のまちがった青春がある教室へ 作:ゆっくりblue1
図書館にて坂柳に呼び出された俺は、付き添いの神室と読書をしに来た椎名とも合流して中間テストについて話すこととなった。坂柳が俺の意見について聞いた。
「それで、比企谷君。貴方は中間テストのことについて気になることはありますか?ああ、もちろん言いたくないことがあれば言わなくて結構ですから」
その言葉に俺はどうするべきかを考える。気になることは1つあるが、言うべきか言わないべきか。俺個人は言っても全く構わないが自分のクラスの生徒にこの事がスパイ活動と思われても面倒だ。そうして出した結論は。
「……気になることはあるにはあるが、話すことは辞めとく。他のクラス生徒に情報を与えたって疑われる可能性があるからな」
「…そうですか。では今回は辞めておきましょう。椎名さんは大丈夫ですか?」
坂柳の問いに椎名は微笑んで頷く。無理矢理情報を引き出そうとしない気遣いに感謝していると、坂柳が話題を変えてきた。
「呼び出した要件のうちの1つ目は終わりました。ですから2つ目に入りましょうか」
ええー……要件は1つじゃないのん?俺はそろそろ帰りたいんだけど。思わず面倒くさいという態度を隠さずに出したが華麗にスルーされる形で神室が坂柳に言った。
「……私、そろそろ帰りたいんだけど」
気怠そうな態度を神室が坂柳に向けるが、それに気を悪くした様子はなく、坂柳は微笑みながら言った。
「分かりました。では荷物を私の部屋に持って行っておいて下さい」
「……はぁ、はいはい。持って行っておくわ」
そう溜息を吐きながら神室は坂柳の荷物と自身の荷物を持って、席を立つ。もう完全に主従の関係にしか見えないな。俺は神室に同情の視線を向ける。そして坂柳は見送ると、続ける。
「それで2つ目ですが、チェスで遊びませんか?」
「……何で?」
突然なチェスの誘いに疑問を言う。ていうか要件ってそれかよ。俺の問いに坂柳は答えた。
「いえ、比企谷君とのコミュニケーションでチェスをしてみたいのですよ。もしも遊び方をご存知でないのならお教えしましょう」
「いや、一通りは知ってるが……絶対それが理由じゃないだろ。何が目的だ?」
警戒を露わにしながら言うが、坂柳は微笑むだけで俺の問いには答えない。
「椎名さんもご一緒に如何ですか?」
「お誘いは嬉しいです。でも事情がありまして今回はお付き合いは難しいので、次の機会にして頂けると嬉しいです」
「分かりました。では次の機会に」
椎名が断ったので俺もそれに乗じて断ろうとする。
「俺も忙しいから無理「仕方ありません、明日の休み時間に比企谷君のクラスにお迎えに上がりますので」すいません、一緒に遊びますからそれは勘弁して下さい」
思わず頭を下げて懇願する。此奴にDクラスに来られたら目立つ上に何をしでかすか分からない。そして何より俺の平穏な学校生活が更に崩れる。それは困るので誘いに乗るしかない。学校生活を盾にしてくるとか退路ないしな。
「ふふ、そういう潔さは好きですよ。ただ、普通にチェスをするだけでは物足りないので賭けをしましょう」
ーーーーー
コツ、コツ……と軽快な物音が響く。途切れることなく響き続けたその音は、白のポーンが黒いナイトを退けた時に初めて途切れた。向かい合わせの2人、チェス盤に向き合って駒を進めていたが、そのうちの1人が長考することで試合の流動が一時止まった。
長考させる要因となった坂柳のポーンに俺の駒の動きが制限されていく。長考しながらも分の悪いチェス盤の状況は打てる手も確実に少なくなってきた。内心舌打ちを1つ、試合の流れの読み合いで組み立てた工程を頭の中で途中から組み直す。その様子を愉しそうに目を細めて見てきた坂柳を俺は睨むようにして口を開く。
「……何だよ?」
「いえ、随分と真剣そうに次の一手をお考えになっている比企谷君が珍しく思えたので、余程この勝負に勝利したいのですねぇ……?」
微笑みを携えて言う坂柳に嘆息する。勝負に余り感心の無い俺が真面目にやる事を強制させられるようになり、尚且つ如何しても勝利しなければならない理由。
「勝者に敗者が何でも1つ望みを叶える勝負の賭けに乗った俺もアレだけどな……お前の望みって何言われるか分からん上に怖いから負けたくないんだよ」
図書館で話した中間テストの事の後に坂柳がチェスを挑んできた。最初は面倒臭い上に天才の此奴が挑んできたと言うことは得意分野だということで勝てないと思って賭けについては断ったが、次の言葉に惑わされたのである。
『其方が勝った場合、ハンデの事を考慮せずに比企谷君の望みを叶えることで良いです。例えばpptを全額払えと言うのならば払いますし、恋人として付き合って欲しいのならば付き合います。性の相手が良いなら比企谷君の部屋を借りることになりますが相手をしましょう』
と、普段なら絶対に乗らないリスクヘッジに自信のある俺はこの言葉と思春期の健全な男子ということで鬩ぎ合っていた理性と本能の狭間で闘っていた最中で、妖艶と言って良い程の坂柳の眼に吸い寄せられるようにして首肯してしまっていた。
そして今、坂柳の部屋でチェスをしているのである。意識をしないようにしているが女子特有の良い匂いがするので集中が途切れそうになる。
俺は中学の時に暇潰しでチェスをして、それなりに嵌まり込み、AIの相手とスマホアプリのオンライン対戦のどっち共に100回を超えているのでそれなりに腕はあると思っていた。
しかし、坂柳の駒に悉く俺の駒は削られていく。こっちは最大でも十手先は読んだ動きをしているが、坂柳に未だ3秒以上動きを止めさせられない。最初から仕組まれているように一手を返される。そしてその一手一つ一つにチェック級の危険度がある。序盤の10分程度は何とかくらいついていたが、こっちのナイトが取られた後に畳み掛けられるようにして、攻められてもう一つのナイトも奪われて、ルークも逃げ場が消える。
……やばいなこれ。動かせる駒がキングぐらいしかない。ポーンの駒がプロモーション出来れば……
そう次の一手をチェス盤を見ながら考える。キング以外に残っているのはルーク一体にビショップ二体、クイーン一体にポーン五体か。坂柳はポーン七体、ポーンとビショップ一体が減っただけでそれ以外は無傷。この盤面で動けるのはキングぐらい。だがそれはサクリファイスを出さなかった場合だ。ルークを棄てるのは少し痛いが、次の一手でポーンをプロモーションすれば攻撃手段が増えて攻めやすくなる。
しかし坂柳もそれを読んでいる筈だ。取れる手が………ふと坂柳を見てみると俺の考える様子を見て、愉快そうに笑っている。すると一瞬だけだが、視線がチェス盤に移った。何だ……?ほんの少しだが余裕以外に何かがあるように見える。
坂柳の視線に沿うようにチェス盤を見る。先ほどと変わらない。しかし坂柳には懸念する要素が存在する。それはつまり俺の知らない穴があると言う事。その時、俺の中で何か靄がかったものが生じた。少しその事が引っ掛かったが、今は対局に集中する。
なら、考えの転換をする方が良いな。坂柳にとっての最大有効打を先ほどまでは考えていたが此処からは逆に俺にとっての最大有効打から坂柳の打つ手を考えていくか。そうするといくつかの手順と打つ駒が何かが思い付く。そこから逆算して、現時点で今坂柳が打たれたくない手は。
俺は思考を動かしながら思い付いた一手を打った。すると坂柳の視線がほんの少し鋭くなった。ビンゴか。それでも1秒もかけずに次の一手を返される。その手は予想内の一手だったので先ほどと同じように打つ。
すると坂柳はほんの僅か眼を見開いて驚くようにこっちに視線を向けるが、それも一瞬でまたも次の一手を打ってきた。そこから試合の流れが再開した。
コツ、コツと俺も坂柳も話すこともなく手を止めない。しかし試合の流れでは坂柳が有利になっていく。やはり坂柳の方が実力は数段上で着実に俺にはチェックが掛るのを紙一重で回避している状態だ。坂柳のやり方はとことんな攻撃型で、最善手を差し向けてくる。
不味いな、逃げ場が消える……守備に専念し過ぎた所為か、攻撃に出ようとしても二手は遅れる。使える手は……俺はクイーンの駒を見て、ポーンの駒を動かす。すると坂柳が此処で初めて駒を動かす手を止めた。
罠と思って攻撃するか迷っているな。だが坂柳の此処までの打ち方は攻撃は最大の防御と表しても良いくらい攻めが多い。主導権を奪われてしまうと判断するような守る手は打たない筈だ。それは坂柳との短い交流の中で性格を俺が結論付けた事。そう思って坂柳が打った手は予想通りの攻めの手だった。
俺も打ち返すと坂柳が10秒以上の長考に入る。そしてニヤリと笑うと、嫌な予感が俺の頭を過ぎった。そして坂柳が打った手はある意味予想通りであり、またある意味では予想外の一手を打ってきた。
嘘だろ……そこでその駒を動かすのか。俺の組み立てた行程をひっくり返される一手だった。そしてそこから取れる手を打つが、悪足掻きにもならずに非常な程に淡々とした宣言が坂柳の微笑みと共になされた。
「…これでチェック、いや、チェックメイトですね」
「……はぁ、負けたか」
静かに溜め息をついて項垂れる。此奴の腕は俺では相手にならないな。今まで対戦してきた相手では月と鼈と言っても良いくらいの差があった。そして坂柳が軽く言った。
「途中から比企谷君の打ち方が変わったように思えました。推測ですが、私の打ち方をトレースして逆算しましたね?」
……マジかよ。其処まで分かってんのか、俺の打ち方をこの一回で見切って言うとは思わなかった。普通見切るにしても数回の勝負を重ねて分かる事の筈だ。俺は坂柳の思考能力に改めて戦慄していると、坂柳が称賛してきた。
「最初の10分間は攻守バランス良く打っていましたが、ムラがありました。しかしあの長考の後に貴方は守りの手……否、逃げの手と私の攻めの妨害する手を打っていた時にはムラは無くて攻め難かった。そして先程のサクリファイスヒットを狙った罠は見事でした」
「つまり逃げる方がやり難いってことかよ……」
確かに逃げるのは誰にも負けない自信はあるが、まさか勝負事で言われるとはな。俺は溜め息を吐くと坂柳に聞く。
「それにしても、機械みたいに最善手を打ってきたが何手先まで読んでたんだ?」
正直、アプリのAIの最高レベルよりも遥かに強いと思った。すると坂柳はあっけらかんと驚愕の一言を言ってくる。
「10の120乗のチェスのパターンがある中で、私が今まで相手してきた中に貴方のような打ち方をしてきた人がいるのを思い出しまして、最初の数手後からはある程度予想はつけてましたよ」
おいおい、10の120乗って……無量大数でも10の63乗なのに。流石に全部覚えきってるとかは無いよな?スパコンか何かか。俺は思わず呆れてしまう。そして坂柳がチェス盤と駒を片付けるので俺もそのまま退散しようと椅子から立ち上がり、足を動かそうとした時に、坂柳が言った。
「さりげなく有耶無耶にして賭けの事を無しにはしませんよ?」
デスヨネー……はぁ、このまま話題逸らして逃げられると思ったのに。坂柳は俺を見る。逃げることも許されない状況に座右の銘である"押して駄目なら諦めろ"通り、諦めて言った。
「……出来る事なら叶えるが、あんまり無茶振りは勘弁してくれよ。俺の出来る事なんざ限られてるし」
本当相変わらず容赦無いよな……チェスも攻めの手ばっかり打ってきて守りの手を打たないし。其処まで考えて、ふと気付く。
……待て、相変わらず?坂柳との対局は今回が初めての筈だ。なのに何で俺は相変わらずと思った?そう考えていると、先程感じた靄がかったものが更に大きくなった気がする。焦れた感覚に戸惑いと苛立ちを感じながらその正体を考える。
「比企谷君、賭けのお願いのことですが……」
坂柳の声にハッと我に返ると、思考の渦から引きずり出された。そして賭けのお願いの内容に意識を向ける。
「貴方には私たち、Aクラスを一度負かして欲しいのですよ」
「……はい?」
……え、Aクラスを負かして欲しい?何でそんな事をわざわざ敵のクラスである俺に頼む?驚く俺の様子に坂柳は事も無く話し始める。
「驚くのは無理も無いでしょう。少し事情がありまして、そこから説明します。今時点でのAクラスは1枚岩ではないのですよ」
1枚岩ではない、つまりはリーダーがいないのか、もしくは複数のリーダーが派閥争いをしているのか。坂柳の言葉にそう思考しながら、続きを聞いた。
「Aクラスを纏めようと2つの派閥が出来ています。1つは私のグループ、もう1つは葛城派グループです」
「……厄介なのか?その葛城派は」
俺が質問すると、坂柳は微笑みながら首を横に振って余裕そうに言う。
「いえ、特に警戒するほどでは無いです。葛城派の人間を取り入れるのも出来るのですが、私では同じクラス故に時間がかかるのですよ。なので外部……つまりは違うクラスの第三者である貴方の力を借りたいということです」
葛城と言う奴がどんな人物なのかは知らんが坂柳の言葉からして、坂柳よりもスペックは低いのだろう。しかしAクラスである時点ではポテンシャルは高い筈だ。俺は思った事を聞いた。
「話しは理解した。けど何でわざわざ俺に頼む?俺以外にも違うクラスで、俺よりも優秀な奴はいる筈だろ」
友達が居ない事と、目が腐っていることを抜いて考えたら基本スペックは高いし、今は関係無いがそれなりに顔も整っている自信はある。小町にも、目が腐って無かったらなぁ〜。と言われるくらいだし。何、其処まで俺の目って強烈なの?
しかし俺以上にスペックが高い奴は学年でも少なくないだろう。坂柳ならそういう奴とギブアンドテイクの関係も出来るだろうに。そう思考していると、坂柳は急に真剣そうな表情で言った。
「……比企谷君、貴方は予想以上に自己評価が低いのですね」
「あん?別に普通だと思うが?」
その返しに坂柳は小さく溜め息を吐いた。
ーーー
まさかとは思いましたが此処までとは予想外です。
この学校に来て初めての知り合いが目の前にいる比企谷八幡君。彼と出会い、今まで出会った人の中では一味違うと感じた。彼の捻くれた人間性、その中に潜む子供の様な怯えと言って良い猜疑心とそれを覆う何重もの理性。話して感じる確かな知性と、行動から出る不器用な気遣い。
能力的には優秀であるが、学力では彼よりも優秀な者もいる。身体能力は身体は鍛えられているが如何なのかは不明だ。これだけであるならば彼に注目することはない。
しかし、私が彼に注目する理由。それは頭一つ抜けた観察力、そして今回のチェスで分かったが、他人の心理を巧みに見抜く思考能力だった。入学初日に『Sシステム』の真相を完璧に見抜いたのはAクラスでは私だけだった。クラスメイトもある程度予想をついていたが、満点ではない、むしろ50点と言ったところだ。
それを比企谷君は完璧とはいえないが、私の結論に近い所に至っていた。これだけでもAクラスの平均的能力を大きく超えている。それも二週間後には私と同じ結論に自力で至ったらしい。私は感心した。『彼』以外にも此処まで優秀な人材がいるのかと。
そして今回のチェスの対局。彼の打ち方が変わったことを知った時、なるべく平静を装って彼の取った手段を推測して指摘したが、正直内心では興奮が抑えられなかった。彼が取った相手の思考をトレースすること。これはコールドリーディングに似ている。比企谷君の怯えと言って良いほどの猜疑心と天性の観察力があって初めて成立するものだ。それを無意識化で行っているという俄かには信じがたい事実。前に遊んだ時よりもずっと強くなっている。
そして何か……他にも彼には潜んでいる気がするのだ。そういう諸々で私は彼に興味を寄せている。その興味の帰結が知的好奇心を満たしたいが為なのか、それとも………まぁ、其処はじっくりと彼と接していけば自ずと答えは出てくる筈だ。
ーーー
坂柳の言葉に戸惑いを感じていると、そのまま続けて言われる。
「貴方、比企谷君のことを私は高く評価をしています。貴方レベルの観察眼を持った人材はAクラスでも片手で数えるほどしかいないですよ。貴方の真相へ自力で至れる思考能力も比企谷君が思っているほど多くないのです」
……そこまで過大評価を受けるようなことをした覚えはないのだが。俺は静かに言い返す。
「それこそ過大評価だ。俺は唯のボッチだ、期待されても困る」
「……だが約束してしまった時点で拒否権はないだろうし、期待には添える努力はする」
短くとも関わりを持った中で抵抗するだけ無駄な上、此奴に狙いを付けられた時点で逃げ道は無いと感じている為、諦めた様に溜息を付きながらそう言うと坂柳は俺の言葉に満足気に微笑み、こう言ってきた。
「今回の中間テストでは何もしなくても大丈夫ですよ。他に、クラスが対立するイベントがあるときに葛城君のことを出し抜いて下されば良いので。もちろん手伝って欲しい場面があれば協力を要請して下されば人員を送ったりすることや成功報酬も惜しみなく出すつもりです」
「…分かった。じゃあ帰るわ」
どうやら只働きをしないで済むようだ。坂柳の提示する待遇に意外に思いながらも契約を成立させた。そして坂柳の部屋から出るときに見送られると、玄関で言われた。
「また、チェスで一緒に遊んで下さい。比企谷君との勝負は想像以上に楽しめましたので」
『…楽しかったわ。また』
その言葉に答えようとした時、一瞬記憶が揺さぶられた。場面は目の前に黒髪の少女が向かい合うように座っていて、チェス盤を机に置いているところだった。何故か少女の表情は見えず、服装は白装束で、周りは真っ白だった。そして他にも向かい合っている同じような格好をした複数の子供達の姿。目の前の向かい合う少女の声と思われる落ち着いた声が聞こえた。
何だ……?これは、一体……
俺は一瞬だけ映った謎の光景に困惑して、思わず右手で頭を触れる。すると、その様子を怪訝に思った坂柳に心配されたが、何でもない。と取り繕って部屋から出る。
さっきの映像は何だ?チェスをしている時の坂柳には何処か懐かしさを感じた。しかし坂柳に声を掛けられた時のさっきの映像とは別のものだ。俺は一体何処で見た?
そう考えながら自分の部屋へと向かう途中、エレベーターが点検中で止まっているので階段を下ることになる。俺は溜息を吐きながらも下って行くと下から上がってきた女子生徒とすれ違う直前、不意に視線が合う。
赤寄り茶色の肩まで伸びたセミロングに、眼はツリ眼で向けられると思わず畏縮しそうな程の冷たく感情が見えない深海の底の様な深い青の右眼、そして左眼は右眼の色より色素が少し薄い。そして坂柳とはまた違った種類の恐ろしい程の端麗な無表情の顔。健全である男子には魅惑的に映るであろうバランスの良い身体。
俺は両眼の色が違うことに驚きつつも女子の様子にビビって急いで顔を逸らして離れるように階段を駆け下りた。
怖ぇ……何だ今の、無表情で見られるとか怖過ぎる。つーかオッドアイって実際にいるんだなぁ。そう思いながら自分の部屋に向かうのだった。