人造人間達のロールアウトが目前と迫った頃、博士に呼ばれたホワイトは怪人化薬を飲まされていた。
「バニーはホワイトを怪人化させるのは渋っていたけどねぇ〜」
「あはは、でしょうね」
「前に楯突いたんだってね。意見を通すならもっと根回ししないといけないねぇ」
「いえ、意見を具申しましたが、バニーさんがどれだけ私を警戒しているのか探りを入れるためと宣戦布告の意味合いが強かったので意見が通るとは思ってませんよ」
「粛清が怖くないのかい?」
「出来ないでしょあの人じゃ……博士やKお父様が絶対に止めに入るし、バニーさんの命令で社員の暗殺を請け負うような人……ブラックカンパニーには居ないでしょ」
「それもそうだ。どうするんだい? 怪人になったら直ぐにクーデターでも起こすのかい?」
「それをやると下が付いてきませんよ。それこそもっと根回しして穏便な形で権力を譲ってもらいますよ」
「ふーん、私やKは多く干渉はしないよ。お手並み拝見としよう」
ホワイトはぐいっと怪人化薬を飲み込むと体に変化が現れた。
氷柱の様な羽根が生え、頭に氷で出来たティアラが出現し、瞳には氷の結晶の様な模様が入り、胸が更に大きくなった。
「羽根以外は大きな変化は無かったねぇ……どうだい? 新しい体は」
「全身から力が漲ります」
ベッドから降りると一瞬で美しいドレスと透明な靴を産み出し、身に付ける。
「様になっているじゃないか……氷の女王って感じだねぇ」
「……新しいこの力をお父様の手合わせに使ってみたい」
「そう言うと思ってKに伝えているよ。外で待っていると思うよ」
「博士ありがとうございます」
「礼には及ばないさ……新しい強さでKにどこまで迫れるか試してみてくれ……」
博士的にはKに勝てるとは微塵も思ってないが、傷をつけることが出来れば、ホワイトの支持率も上がるだろうし、Kとホワイトの戦闘の様子を全体に流すことで、ブラックカンパニーの上層部はこれだけの強さがあることを新しく戦闘員になった人々に分からせるのに都合が良かった。
そしてホワイトはKの待つ戦闘訓練室に入室するのだった。
「見るからに強くなったな。発するオーラが別物だ」
「強くなってもお父様に強者の雰囲気が全くしないのが恐怖です。強くなっても底が見えない」
「まぁそれだけ鍛えているからな……始めようか」
「はい!」
戦闘開始のブザーが鳴る。
ホワイトはすぐさま氷の槍を大量に生み出すと、雨の様に氷の槍が降り注いだ。
しかし、Kはそんな氷の槍が降ろうと動くことをしない。
氷の槍は当たるが、全く効いていないからである。
氷の槍には触れた相手を凍らせる効果を付与していたが、Kが凍る様子は無く、降り注いだ床が凍り付いていた。
「この程度か?」
Kは一気にホワイトとの距離を詰めると音速の10倍の速度のパンチを繰り出す。
Kの右フックに合わせて、ホワイトも拳を合わせる。
バスン
両者の拳が当たった瞬間に氷の粉が舞う。
ホワイトはモロに当たれば腕に深刻なダメージが入ると、氷のグローブを瞬時に作り、当たった瞬間にグローブだけが壊れるようにしていた。
おかけで腕は無事である。
ただKが1発で止まるはずも無く、両者インファイトを開始。
ホワイトは体に触れそうな部分を氷で守り、ダメージを軽減し、逆にKの体に当てる時はナックルダスター(通称メリケンサック)を氷で作り、ダメージを増加するような工夫を凝らした。
しかし、Kに一切ダメージが入っている様子は無く、体に触れる前にホワイトの拳は手で防がれてしまう。
素のスピードが違いすぎる。
明らかに手加減しているのが伝わるが、ホワイトは次の手に移行するために天候を吹雪に変える。
積もりだした雪から新たにホワイトの分身が現れ、攻撃に参加。
ホワイトの分身がどんどん増えていく。
Kは1発で雪の分身を破壊していくが、作られる速度の方が早く、しかも触れれば触れるほど体温を奪っていくように作られていた。
……が、Kの体温は一向に低下せず、体が動いたおかげがどんどん体温は上がっていっている。
ホワイトの本体は雪に溶け込み、次の策を考えていたが、Kが地面を殴ると、積もっていた雪が吹き飛ばされ、分身達も消えてしまった。
本体が露呈したことで、Kはホワイト本体に殴りかかる。
氷柱を地面から生やして空中に逃げることで回避するが、氷柱を叩き折られて地面に落下し、倒れ込むが、天候を吹雪にしている間に仕込んでいた攻撃を繰り出す。
ゴロゴロと天井から音がし、雷がKに直撃する。
温度を操作して雲を作り、雲の中で氷塊を高速でぶつけ合う事で静電気を発生させて雷を生み出す。
イエロー等の直接電気を発生させられる人達より手間はかかるが確実にダメージを入れるならこの方法である。
「まぁ効いてないよね」
ホワイトが予想した通りKには雷すらも効いていなかった。
しかし、雷を使った事で着実に次の攻撃への布石は出来ていた。
「もう終わりか?」
「まだまだ!」
時間を稼ぐために雷を落としながら接近戦に持ち込む。
ホワイトにも雷が降り注ぐが、ダメージは想定の範囲内。
注意を逸らすことに意味がある。
Kは近接戦を挑んできたホワイトに少し落胆しつつ、攻撃を加える。
前よりも威力が増し、氷でのガードも普通に貫通してダメージを入れてくる。
「が!?」
「終わりだ」
ホワイトは首を掴まれて万事休すかと思われた瞬間にホワイトとKの頭上に雷が落ちるが大爆発が起きる。
雷の電気を使って水素を一気に充満させていき、空中の水素を集め、雷で着火したのである。
言うのは容易いがやるのは高度な技術が山盛りで普通はやれない。
ただ爆破の威力は絶大で、Kがふらつく程度の威力となっていた。
ホワイトはここでたたみかけたかったが、自身も爆破の影響で三半規管にダメージを負ってしまい、倒れてしまった。
立ち上がることが出来ずに、今回の訓練もKの勝ちで幕を下ろした。