戦闘員K!強すぎる!   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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物語の始まり

 俺が戦闘員Kになって5年の年月が経過していた。

 

『三玉市で起こった銀行強盗事件に対し、警察及びヒーロー協会は誠に遺憾とし、犯人逮捕に臨む所存であり……』

 

「Kお疲れ」

 

 俺が事務所のソファーで寝そべっていると、ピタっと冷たい缶コーヒーを副統領のバニーさんから渡された。

 

「あ~、ありがとうございますバニーさん」

 

「しかし……事務所も大きくなったね。弱小だった悪の組織も中堅くらいには事業拡大できたし」

 

「そうっすね。怪人も10人抱える中堅事務所っすね〜、懐かしいな。バニーさん、先代統領の娘さんなのにチラシ配りしていたし」

 

「そうねぇ……あの頃は若かったなー」

 

「今でも十分に若いでしょ……この長乳にメロメロの人は多いんですよ」

 

「エッチ! Kじゃなかったら殴ってたからね」

 

「はいはい……でも戦闘員が足りないからって娘を戦闘員にする親ってどうなのよ」

 

「あの頃は組織が潰れるかどうかの瀬戸際だったから……」

 

 5年で色々な事が起こった。

 

 今では副総領と呼ばれる兎の怪人バニーさんは、俺がここに入るきっかけになったチラシ配りのお姉さんで、戦闘員の集まりがあまりに悪かったので総領と呼ばれていたバニーさんの親父(面接で怖い感じのおっさん)がバニーさんを戦闘員に配置転換させて、実戦で働く羽目になっていた。

 

 現場ではバニーさん……当時は戦闘員Bを死なせたら総領に殺されると思った俺達下っ端は命がけでバニーさんを守り、何とか会社が潰れるのを回避した。

 

 そして今の総領になったバニーさんのお兄さん……俺達は若って呼んでいるが、組織改革と技術者を引っこ抜いてきて組織内で怪人化できる薬品を開発。

 

 実績ナンバー1になっていた俺や親族のバニーさんが怪人化を試み、俺は怪人になる適性が無かったのか、幾ら怪人化薬を飲んでも効果は無かったが、他の先輩やバニーさんが次々に怪人になり今に至る。

 

 まぁ怪人になった先輩達含めても俺が業績1位なんだが……。

 

「あの頃はドタバタだったわね」

 

「あぁ……ようやく組織もデカくなって俺も毎日戦わないでいられるようになったがな」

 

「そんなKに悪いけど仕事よ。ペココ総帥から」

 

「まったく、あのおっちゃんも自前の兵隊を抱えてるのにこっちに業務委託を続けてさ」

 

 封筒を受け取り、中身を見る。

 

 すると敵対組織の下請け会社の従業員を攫ってくる内容が書かれていた。

 

「この襲う会社、前にうちとも契約したことがあったよな」

 

「契約金を理由をつけて踏み倒そうとしているのよ。だからこっちの見せしめも兼ねて潰すわ」

 

「人員は?」

 

「Kの他にも10名ほど」

 

「あー、新人達か? 殺されないように頑張りますか」

 

「じゃあ行ってらっしゃーい」

 

 

 

 

 

 

 

 俺はスーツに着替えて戦闘員に号令をかける。

 

「あー、戦闘員諸君、今日も仕事の時間だ。今日はよく行くペココのおやっさんの所からの依頼。ま〜いつも通り人攫って死なないようにしてろ。ヒーローが来たら屋上からワープで脱出して逃げる。逃げ遅れた奴は知らん」

 

「Kさん屋上ロック掛かってた用に工具持っていっていいっすか? アンロックガンあれば直ぐに逃げれると思うんですけど」

 

「あー、そうだな。悪いがZ1持っていってくれ」

 

「はいはーい」

 

 俺がばばっと襲撃する会社の見取り図を戦闘員達に渡していく。

 

「5分で階段の位置だけでも頭に叩き込め。エレベーターは使うな。非常ボタン押されたら閉じ込められるかもしれねぇからな」

 

「「「うっす!」」」

 

 俺はスーツのボタンを押して密着させ、顔をマスクで覆う。

 

 うちの技術班が作ったガスマスクの代わりにもなる衝撃吸収マスクだ。

 

 着けている側は違和感がほとんど無くなるし、特殊な膜のお陰で視野が広がるおまけつき。

 

 前までは拳銃しか守れなかったが、最新バージョンは対物ライフルでも防げるように強化されたらしい。

 

「これでも中堅悪の組織なんだよなぁ……大手の悪の組織はどれだけ凄い装備をしているんだか……」

 

「Kさん準備できました!」

 

「よっしゃ、今回も死者ゼロで行くぞお前ら! 帰ったら事務所で焼肉だ」

 

「「「おお!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペココ総帥と挨拶して契約書にサインしてもらい、久しぶりに魚の怪人ボニート(カツオ)さんと仕事だ。

 

「よぉK今回は頼むズラよ」

 

「ボニートさんも頼みますよ……そう言えば結婚おめでとうございます。これお祝いの品で」

 

「品ってか現生ズラか」

 

「その方が良いでしょ」

 

「ほほーう11万も良いズラか?」

 

「まぁこっちも十分に貰えるようになりましたし、ボニートさんとは長い付き合いですからね」

 

「じゃあ今回も頼むズラよ」

 

「ちゃっちゃと終わらせますよ」

 

 ワープベルトを起動させて会社への攻撃を開始する。

 

「うわぁ! 怪人だ!」

 

「警備部門を呼べ!」

 

 俺達戦闘員が捕縛銃で社員達を捕縛していくと、社内に警報が鳴り響き、警備員と思われる人達が出てきた。

 

「流石悪の組織と結びついている会社だ。自前の怪人を用意していたか」

 

「じゃあKやっちゃって欲しいズラ」

 

「あいよ」

 

 俺はボニートさんに言われて前に出る。

 

 相手は警棒を握った熊の怪人達。

 

「特殊警備員だ!」

 

「やっちゃえ!」

 

 今まで逃げ回っていた社員達が警備員達に声援を送る。

 

「なんだよ敵の怪人1人かよ」

 

「熊岳さん俺達3人で殺っちまいましょうぜ」

 

「そうだぜ熊田の言う通り」

 

「よっしゃあ熊田! 熊本! 怪人倒して戦闘員を殺しまくれ!」

 

「「おう!」」

 

 熊の怪人達も襲い掛ってきたが、俺はデスクを踏み台にして跳躍し、先頭で突っ込んできた熊の怪人に踵落としを食らわせる。

 

「こべぇ!!」

 

 頭が陥没した熊の怪人をよそにその後ろに居た熊の怪人には回し蹴り、首がポーンとサッカーボールの様に吹き飛ぶ。

 

 そのまま倒れる熊怪人の背中を踏んで、一番後ろに居た熊の怪人にジャンピングパンチ。

 

 バシュー

 

 俺の拳が熊の怪人の胴体を貫通し、心臓を体外に押し出していた。

 

「あばばばば」

 

 体にでっかい穴が空いた最後の熊の怪人は口から大量の血液をばらまいてぶっ倒れた。

 

「キャー!」

 

「うわぁ!」

 

 さっきまで警備員に声援を送っていた社員達はパニックに陥り、次々に捕獲銃の餌食になって捕獲されていく。

 

「鮮やかズラな」

 

「この程度なら一撃っすよ……どうします金庫でも狙います?」

 

「怪人を警備員に雇ってるならヒーローを呼ばれる心配もないズラ。お前一人残らず捕獲するズラ。一応避難通路を確保もしておけズラ」

 

「「「うっす!」」」

 

 それから俺とボニートさんは社長室に向かい、社長室を襲撃する。

 

「……逃げられたか」

 

「社員を見捨てて逃げる社長の下には付きたくないズラね……金庫発見。K頼むズラ」

 

「あいよ」

 

 メキメキと金庫のダイヤルを掴むと思いっきり引き抜き、爪を使って開錠した。

 

「やっぱり溜め込んでいたズラか」

 

「利権の書類は要らないんで、とりあえず金と金の延べ棒だけ持っていきますか……ちょっとまってくださいね」

 

 俺はポケットから技術班が作った袋を取り出すと中に札束と金の延べ棒を入れていった。

 

「亜空間袋だったズラか? 便利な物を作るズラねぇ……」

 

「捕獲銃の技術の応用らしいですよ。とりあえず奪える物は奪ったんで帰りますか」

 

「そうズラな」

 

 俺はマイクをオンにして撤収の指示をし、屋上から堂々と脱出。

 

 捕獲した人員と奪った金や札束の半分をペココ総帥に渡し、依頼完了のサインをしてもらって再びワープして会社に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「乾杯!」

 

「「「カンパーイ!」」」

 

 ブラックカンパニーの食堂では仕事の成功を祝して焼肉パーティーが開かれた。

 

「仕事終わりの焼肉に酒はうめぇ~」

 

「格別だなマジで!」

 

 戦闘員達が飯を飯を食べ始める。

 

「いやぁ流石Kさん、熊の怪人を瞬殺で! 滅茶苦茶カッコ良すぎるぜ!」

 

「Z1も退路の確保助かった。お疲れだったな」

 

 俺はZ1の空いたグラスに酒を注ぐ

 

「あぁKさん悪いですよ」

 

「まあまあ飲め飲めこの業界長生き出来るか分かんねぇんだから」

 

 そう言われてZ1は俺が注いだグラスから酒を飲んでいく。

 

「ぷはぁ! でもKさん何で怪人じゃないんすか? 知ってる人だったらKさんの凄さは分かってますが、知らない人達は戦闘員って最初見くびって見られますから」

 

「さーな、俺は怪人になれる才能が無かったらしい……強くなれる才能はあったがな」

 

「何したらそんなに強くなれるんすか?」

 

「日々の鍛錬……かな」

 

「またまた……マジっすか」

 

「マジマジ。まぁ戦闘の才能はあったんだろうがな」

 

 俺は焼いた肉をZ1の皿に盛る。

 

「でも毎回Kさんの下で戦えれば最高なんだけどなぁ。死ぬリスクが減るし」

 

「そう言うZ1に朗報だ。お前もう少しで2年間生き残れたし、アシストの評価高いから怪人化薬の投与を受けられるぞ」

 

「おお! マジっすか! やった! 叩き上げから怪人になるの辛いんすよね」

 

 うちの会社では人員の補充が漸くまともになり、怪人への適性が高ければ数ヶ月の研修後に怪人化薬が投与されるが、そうでない下っ端戦闘員から怪人になるには戦闘服から漏れ出る強化薬に体を馴染ませる必要がある。

 

 それがだいたい2年で体に馴染むので、そこから怪人化薬の投与となる。

 

 勿論それは真面目だったり会社への貢献度で投与の順番が決まるので、遅いと3年目に延びたりもする。

 

 戦闘員Z1は組織に従順だし、細かい事にも気が付いて積極的に提案するため、俺含めた上層部からの評価が高かった。

 

 まぁ現場で一番見ることが多い俺が戦闘員達の人事権を握っていたりもする。

 

「祝い酒だZ1、飲め飲め」

 

「ありがとうございますKさん!」




用語解説

·ブラックカンパニー製戦闘員スーツ

全身を覆う黒いラバースーツで体のボディラインがくっきり見えてしまう為女性達からは不評。

ただ技術班の頑張りのお陰で初期の市販されている戦闘員スーツより性能は向上しており、ヒーローの攻撃を幾度か受けても体が破裂したり、貫通したりする危険性はだいぶ低くなった。

防弾、防刃、防寒、防暑、防塵、防水と多様の機能を持つが、裸でこれを着ないといけないのと、収納スペースがほぼ無い為に亜空間袋の開発をしなければならなくなったり……。

まだまだ改善の余地ありである。

ちなみにデザインは黒の亀甲模様である。
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