「くらえ! 2億ボルト!」
当たった瞬間に全身から焼け焦げる臭いがし、目の前のバッタの怪人はプスプスと黒い煙を上げてぶっ倒れた。
「いえーい! ピースピース!」
観客やカメラに向かってアピールして会場を後にして、皆と泊まっているホテルのソファーに寝転ぶ。
「かぁぁ! S級でも雷の2倍の電力を数秒浴びればダメだね。多少耐電能力があっても突き抜けるから」
「お疲れイエロー、飲み物飲むっすか?」
「あ、超。試合は?」
「今日は無いっすよ。お陰で街で全身エステ受けてきたっすよ。見て欲しいっす! この毛並み! 青く輝いてるっすよ!」
「めっちゃ光沢あるじゃん。触って良い?」
「いいっすよ〜。存分にモフるっすよ」
「わーい!」
私と超がモフモフパラダイスをしていると、レグがシャワールームから出てきた。
「あ、イエロー試合終わったの?」
「高電圧で焼いてきた。ギリギリ生きてたからペナルティも無し」
「今イエローランキングどれくらい?」
「76位。レグが70位だっけ」
「そうそう。で超が10位と」
「あれは相性が良すぎたっすね。あれから2週間……存分に稼がせてもらったっす」
「何億稼いだのよ〜」
「あょ、レグこぼれるっす! ……少なくとも200億円は稼いだんじゃないっすかね? 10位になったから試合のファイトマネーもでかくなっていたっすから」
「良いなぁ〜。私2戦しかしてないから30億しか稼げなかったよ」
「十分じゃないっすか? というかイエローは1週間で1戦しかしてないからっすよ。もっと戦えばよかったのに」
「あまり手の内を見せたくないから……万が一敵対組織に対策されたら嫌じゃん」
「まぁそれは確かに」
「見せ札のレールガンも昇格戦で使ったから警戒はされると思うけど……私の場合環境とサポートアイテムで化けるタイプだし……これ以上順位上げるのも無理そうだから選手登録をさっき解除してきたし」
「確かに、もう十分じゃない? 超も十分血肉食べたでしょ」
「まぁそうっすね」
そんな事を喋っているとテレキさんが何かを買ってきた。
「今日もお疲れさん。バニーさんから北樺太基地が今日から稼働したらしいが、お前らどうする? 一応期間は1ヶ月だったからまだ数日は滞在出来るが」
「いや、十分ブラックカンパニーの宣伝もできたし、もう良いかなって私は思うけど、レグと超はどう?」
「僕ももう良いと思うっす」
「私も〜」
「OK、じゃあ明日選手登録を解除してきて夕方には帰るぞ」
「「「はーい」」っす!」
「ブラックカンパニーか……随分と下のランクが荒れていたな」
怪人マッチの性質上いつでも辞める事が出来るため、その月毎に1位がコロコロ変わっていることがある。
しかしその1位の座を定期的に守っている4人の怪人マッチの王が存在した。
四天王と呼ばれる怪人達である。
ちなみに四天王は全て同じ会社に属しており、インド最大の巨大悪の組織の大幹部という顔も併せ持つ。
その会社はヴェーダと呼ばれており、幹部はインド神話の神々に近かったり、特徴が合致している怪人が名前を拝命する仕組みになっていた。
で、偉そうに喋っているのは四天王の1人であるガルダという男であった。
怪鳥の怪人であり、プロレスラーみたいな格好を好むが、実力は本物である。
「日本の中小企業か……まぁ順位は妥当という感じか。今後力を付ける新興企業になるか……成り上がること無く没落するか……」
「中小企業でS級を3人抱えるのは純粋に凄いな。それだけ怪人を育成する仕組みが出来上がっているのか……怪人化薬の質が良いのか……」
「ともかく、世界征服をするのは我らがヴェーダだ。インドの人口と怪人マッチで世界中から落とされる富、そして効率よく悪の組織に流入する環境と怪人化の育成ノウハウ……我らヴェーダに世界は及ばぬ。まぁアメリカの技術力には現状敵わないが、それもインドのパワーがあれば追い抜くことも夢ではない!」
「……もっとも中小企業レベルでS級怪人を輩出出来る日本企業の底力も気をつけねばなるまい……日本は企業が多すぎる。なぜ数十万も悪の組織関連の企業があって、世界と戦える大企業もあるのに、戦国時代の様相になっているのか……というかヒーロー側と拮抗しているのかがわからんな」
ガルダだけでなく多くの外国の怪人達は日本を不思議の国扱いしていた。
全国民が義務教育で最低限の教養があり、多くの者が幼少期から超人化薬を薄めたドリンクを日常的に飲んでいるため、大陸系の一般人に比べて肉体が数倍強靭だったり力が強かったりするし、ヒーローを育成する機関も整っている。
にも関わらず悪の組織が十二分に活動できる余地があり、しかもそれが表裏のどちらかわからない組織ばかり。
一般人が外国人から見たら皆戦闘員並に強く、それを戦闘員にするため外国から見ると日本の悪の組織の戦闘員は質が高い。
そして、そんな戦闘員を怪人にするので更に質は高くなる。
そしてそんな怪人と戦うヒーローの質もヒーロー大国の韓国や超大国のアメリカを除けば高い部類になる。
それでいて経済規模が世界3位なのだからよくわからない国であることには変わらない。
というか普通S級怪人って各国を代表する様な大企業がバックアップをしている怪人がようやく成れるランクなので、日本の中小企業は世界の大企業に匹敵する……という構図になってしまうのだ。
事実ブラックカンパニー以外の日本の企業でもS級怪人は50人近く居るし、日本のことなので怪人マッチに参加させないで秘匿しているS級クラスの怪人だとこれの5倍から10倍は居ると見ないといけない……と外国の企業は思っている。
まぁ事実なのではあるが……。
「恐ろしい国だな日本は……」
そんな日本のヒーロー達が人造ヒーローの製造に手を出していると知ったら、外国の怪人達はますます日本に進出することができなくなるのだが……。
ともかく、中小企業のブラックカンパニーが今回のイエロー、レグレス、超の活躍で、外国から注目を受けることになり、3人娘の卵子を数百万ドルで売ってくれないかとか言う馬鹿みたいな依頼が普通に入ってきたりする様になるのだった。