かつて魔王討伐に単身挑んだ勇者、オルテガ。
しかし彼が旅立ってから数年後、彼の故郷アリアハンに届いたのは、オルテガは魔王との戦いで消息不明となった、という連絡のみであった。
それからさらに数年後…この国から一人の少女が魔王討伐のために旅立つことになった。
少女の名はアイリーン。世間ではすでに故人とされているオルテガの一人娘であり、彼の遺志を継ぐ唯一の後継者でもある。
そして…勇者が旅立つと聞き、『ルイーダの酒場』には冒険者達が集っていた。
「一人娘なんだろ?どんなに可愛い子なんだろうなぁ…へへへ」
「嫌ねぇ…フケツよ」
オルテガの一人娘と聞いているので、どんな風に可愛いだろうかとニヤニヤする男武闘家を女魔法使いが冷たい目で睨む
浮かれる男達と絶対零度の眼差しを向ける女達で酒場の空気が二分される中、一人の男魔法使いは椅子にもたれながら、天井を見ていた。
「…選ばれなかったら素直に帰れるんだけどなぁ」
この男魔法使いは、魔法の才があったのと『とある理由』で村の人々によって無理矢理にアリアハンまで連れて来られた。
もし勇者の仲間に選ばれなければ、死に物狂いで覚えた【ルーラ】で即帰宅するつもりである。
そんな事を考えていると、ルイーダの酒場の扉が開き、一人の少女がやって来る。
オルテガの一人娘、アイリーンだ。
「うひょー!可愛…なんか色っぽくねぇか?」
「…確かに」
男冒険者達アイリーンの放つ謎の色気にピタリと動きを止め、女冒険者達は少しでもアイリーンに男が近寄ったらいつでも攻撃出来る様に構えている。
そんな様子を見たアイリーンは、不思議そうに首を少し傾げながら、ルイーダの元へ行く。
それを見て、男冒険者達はしっかりと椅子に座り直し、自分が呼ばれても良い様にと武器や衣服を整える
それを見た女冒険者達は呆れ顔で椅子に座り、静かに待っている。
そのまま、アイリーンがルイーダと暫く話していると
「そうね…それじゃあ、私から紹介するわね」
(呼ばれません様に…)
男魔法使いは、心の中でそう願った
〜〜〜〜〜〜
「この子が今度からあなたたちの仲間になる、勇者のアイリーンよ。さあ、あなたたちも自己紹介して」
カウンターにいるルイーダは三人に自己紹介を促した。
一名、テンションがダダ下がりな者が居るが
「はじめまして、アイリーンさん。わたしは魔物使いのリリスと申します。ムチの扱いは大得意です、うふふ」
野生みのある服装とは裏腹に、お淑やかに笑う。
クスクスと笑う度にリリスの大きな胸が細かく揺れる。
それを見て、呼ばれなかった男冒険者達がうぉぉぉ!と騒ぐも、同じく呼ばれなかった女魔法使いによって凍り漬けにされた。
「よ、よろしくお願いしますね」
リリスの色気に当てられ、少し頬を染めながらアイリーンは返した。
「私は盗賊のルビー、魔物からアイテムを盗めるから、役に立つよ」
口元を布で覆い、黒い全身タイツで身を包んだ女性は、そう言って軽く会釈をする
「よろしくお願いしますね」
アイリーンも、つられて会釈する。
「…魔法使いのルイン…よろしく」
テンションダダ下がりなのを隠さずに、男魔法使いのルインは会釈する
「よ…よろしくお願いします……あの、大丈夫ですか?」
「…大丈夫ですよ、腹括るのに少し時間がかかるだけなので」
「そ、そうですか…」
そして、少し経った後。
リリスとルビーは、女冒険者達からがんばれー!と明るい声援と笑顔で送り出され
ルインは男冒険者達からの嫉妬と殺意の籠った視線を向けられつつ、睨まれながら
アイリーンと共にルイーダの酒場を出た。
〜〜〜〜〜〜〜
ルイーダの酒場を出て、少し
「皆さん強いですね〜」
ニコニコと笑いながらもこんぼうでスライムを野球の様に打ち出すリリス。
「ナイス…」
リリスに飛ばされたスライムを、ルビーがひのきのぼうで一刀両断し、スライムは消え去ってゴールドが残る。
「せい!」
そんな二人を見て、アイリーンもどうのつるぎをおおがらすに振り下ろす。
「ギャァ!?」
斬りつけられたおおがらすは、一撃で倒されてはおらず、何とか逃げようとするも
「…ドンマイ」
ルインのひのきのぼうで脳天を叩かれ、おおがらすは消え去り、ゴールドが残った。
「ピ、ピギー!」
残ったスライムは大慌てで逃げ出して行った。
「初めての戦闘だったけど、何とかなったね」
胸に手を当ててふぅ…と息を整えながら、アイリーンは呟く
「こんぼうは初めて使うけれど、何故か手に馴染みますね…うふふ…」
こんぼうを見つめながら、リリスは妖艶に笑う
「…ひのきのぼう、振りやすい…ナイフの方がいいけど、これで我慢」
ひのきのぼうを軽く振りながら、ルビーは呟く
「…まぁ、初心者が使うものだから使い易くはあるだろうね」
あー疲れた…とひのきのぼうを支えにして、ルインはその場に座り込む。
そして、自分以外の三人を見ながら考える
(勇者は色っぽさがあったから、多分セクシーギャルって言う性格だな…リリスも……セクシーギャルだな……ルビーは……どうなんだろう?)
村の書物にあった【性格と成長】という本の内容を思い出しながらルインはどうだったかと思い出す。
(確か、セクシーギャルというのは女性の中でバランス良く成長するって性格なはずだ……自分はずのうめいせきだしなぁ…)
そうやって考えていると
「…ルインさん?大丈夫ですか?」
「うおっ!?」
いつの間にか、自分の目の前に、アイリーンの顔があった。
アイリーンから漂う甘い香りに、ルインは即座に距離を取って答える
「大丈夫だ、少し考え事をしていただけだよ」
「そうですか…じゃあ、ドンドン行きましょう!」
おー!と拳を挙げるアイリーンにリリスとルビーも乗って拳を突き上げる。
拳を突き上げた後、まだ座ったままのルインの方を向いて手を差し出したアイリーンに、ルインは苦笑してその手を掴んだ
リリス、ルビー、メシア、ルインはゲーム内の街や村の出身です。
リリスとルビーは目的を持ってアリアハンに来ました。
ルインは一番分かりやすいかも…?
メシアは後々に登場します。だいぶ先になりますが