「ラブライブ!シリーズカードゲーム?」
とある休日の昼下がり。幼馴染である葉月恋によって自宅に招かれた音羽は、やけにテンションの高い彼女からスクールアイドルを題材にしたというカードゲームについての説明を受けていた。
「はい。ラブライブを運営されている方々が、スクールアイドルという文化をより世界に広めるために考案されたカードゲーム、らしいのです!」
「これにLiella!も参加してるんだ?」
「そうなんです。参加と言ってもカードに使われるのは基本的に過去の写真なのであまり実感はないのですが……」
恋の話によると、少し前に理事長を通してラブライブの運営グループからLiella!に今回の企画についてのオファーが来ていたらしい。
今日招かれた理由というのも、そのカードゲームのサンプルが届いたことに起因しているようだ。
彼女からPRパンフレットを受け取った音羽はそれを読み込みながら感嘆する。
「へえ、一般的にカードゲームって言ったらモンスター同士を戦わせるようなものが主流なんだと思ってたけど、実在する人をカードにするっていうのはちょっと珍しいね! スポーツカードみたいな感覚なのかな?」
「確かに近いかもしれませんね。既に有名なスクールアイドルたちのカードも作られているようですので、正式に発売されればファン待望のカードゲームになることが予想できます!」
恋の興奮した様子から、このラブライブ!シリーズカードゲームとやらに相当に好奇心が刺激されていることが読み取れる。ゲーマーの血は幅広いコンテンツに反応するらしい。
「そういえば、恋ちゃんカードゲームもやってるんだ? てっきりデジタルゲーム専門なのかと思ってたよ。いろいろ得意なんだね、流石恋ちゃん」
「いいえ、私なんてまだまだです! たまたま少し詳しい程度なので。カードゲームはお金がかかりますし、興味よりも自制心が勝ってしまいますから……」
「ああ……でも大事な感覚だよ、それ!」
カードゲームは元が紙とは思えないほど1枚あたりの値段が鬼のように高い。人気のものならなおさら、数万円ほどの値がつくカードまで存在する。恋の感覚は人間的にとても大事なものだと音羽は感じた。
「ですが今回は私たちスクールアイドルが題材のカードゲームということもありますし、協力した特典として特別に開発中のスターターデッキをプレゼントされていますから……」
「それなら心置きなく遊べるね!」
「はい! 残念ながら他の皆さんはしばらく予定が空いていないようなので、一足先に2人で楽しみましょう!」
「うんうん! 僕も気になってきたよ!」
スクールアイドル、そしてなによりも自分が所属しているLiella!のカードが存在しているのなら興味も出てくるというものだ。PRパンフレットに付属していた、ゲームのスタートガイドを手に取った音羽は早速ルールを確認し始める。
「ふむふむ……まずメインデッキが60枚、そのうちの48枚がメンバーカードで、残りの12枚がライブカードか……」
「それに加えてエネルギーデッキが12枚ですね! デッキ構成に関しては渡された2種類のスターターデッキのどちらかを使うので一旦考慮しないとして……」
「勝利条件は先にライブを3回成功させること、だって……スクールアイドル同士が戦うような感じのゲームではないんだね。そうだ、デッキに収録されてるカードも見てみようか」
ガイドによれば、これは合計72枚のデッキを使った1対1のカードゲーム。場に出せるメンバーカードは3枚まで、お互いのターンが終了したときにライブフェイズに移行し、可能ならばライブを行う。強いメンバーカードを並べるほどライブで有利になり、先にライブを3回成功させたプレイヤーが勝利となるようだ。
「今回用意されてあるデッキはテスト段階のサンプルらしいですね。製品化された際には仕様が変更される場合がある、と書かれています。こちらが私たちLiella!のデッキで、そちらが虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の皆さんのデッキになります」
「虹ヶ咲……確かお台場の方で活躍してる人たちだよね? 配信でライブ見たことあるよ! 凄かったなぁ……」
「ソロでありながらグループ、仲間でありながらライバル。それぞれが求めるアイドル像のためにあえてラブライブに出場しないというスタンスが特徴ですね! 固定概念に囚われない自由なスクールアイドル、私としてもとても勉強になります!」
用意されたデッキは最初に発売される予定のスターターデッキであるLiella!と虹ヶ咲。正式発表後には追加でブースターパックも発売されるらしい。
雑談しながらデッキを開封した音羽は、実際にLiella!のメンバーがカードゲームになっている事実に少しの感動を覚える。
「本当にLiella!がカードになってる……皆すっかり有名人だなぁ……あ、恋ちゃんはどっちのデッキを使いたい?」
「私は……せっかくなので、ここはあえてこちらのデッキを選ばせていただきます!」
恋が選んだのは虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のデッキ。新鮮な気持ちでゲームに臨むために普段から関わっているLiella!のデッキではないものを選んだようだ。
「なら僕はLiella!のデッキを使わせてもらうね! どうする? まずは1回通しでやってみようか?」
「そうですね! 大まかなルールは覚えられましたし、ガイドを見ながらなら問題なくプレイできますから!」
◇
「スタート時の手札はお互い6枚、この手札はゲーム前なら何枚でもカードを入れ替えていいから……今回は全部入れ替えようかな」
「なかなか強気な入れ替え方をしますね。では私は3枚入れ替えます」
「先攻とかってどうやって決めるんだっけ?」
「本来はじゃんけんで決めますが……今回は交互でやりましょうか! 音羽くんからどうぞ!」
「そうだね。じゃあ、最初の先攻は僕が貰うよ!」
先攻は音羽に決定。手札も全て入れ替えた割には悪くない。気合は十分だ。ふと恋を見れば、彼女も待ち切れない様子であった。
「恋ちゃん、準備はいいかな?」
「もちろんです! それでは、ゲーム開始の掛け声は……」
「「ラブカ! ミュージックスタート!」」
2人の掛け声によって勢いよく戦いの火蓋は切られる。
ゲーム開始、音羽・ターン1
使用可能エネルギー・3
「とりあえずゲームに慣れるまではしっかりと手順を踏んでやろうか、まずはアクティブフェイズ。エネルギー3枚をアクティブに」
「このゲームではエネルギーカードを対価にメンバーカードを使用するようですね! 他のゲームでいうマナなどに該当するものでしょう、エネルギーカードの状態は使用前ならアクティブ、使用した後ならウェイド状態としてエネルギーカード置き場に置かれます」
「次にエネルギーフェイズ。エネルギーデッキからカードを1枚アクティブ状態でエネルギー置き場に」
「毎ターン1枚ずつ、エネルギーデッキから使用できるエネルギーを追加できます」
「そしてドローフェイズ。メインデッキから1枚ドローして手札に加える……っと」
恋の解説を挟みながら音羽は順調にゲームを進めていく。
「メインフェイズ。エネルギーを4枚使って、コスト4の恋ちゃんをセンターエリアに登場! 登場時効果で手札を1枚控え室に置いて、エネルギーデッキからカードを1枚、ウェイド状態でエネルギー置き場に置くよ」
「メンバーカードをフィールドにある3つのエリアのどこかに出すこと。俗に言う召喚になりますね。Liella!のデッキはエネルギー加速の効果を持ったカードが多いようですので、かなり手強そうな印象があります!」
「増やしたエネルギーで高コストのカードを展開、大量のブレードでライブを有利に進めるっていうのがこのデッキのコンセプトみたいだね! とりあえず僕はこれでターンエンド、次は恋ちゃんのターンだよ」
音羽・ターン1終了
使用可能エネルギー・3→5
メンバーカード・『PL!SP-sd1-016-SD 葉月恋』
恋・ターン1開始
使用可能エネルギー・3
「では私のターン! アクティブフェイズでエネルギーをアクティブに! 続いてエネルギーフェイズに移行、アクティブ状態のエネルギーカードを1枚追加します!」
意気揚々とターンを開始した恋は音羽に倣いフェイズを順に進行する。
「ドローフェイズでメインデッキから1枚ドローし、メインフェイズに! エネルギーを4枚使用し、コスト4の天王寺璃奈さんをセンターエリアに登場させます! 登場時の効果でカードを1枚ドロー、代わりに手札から1枚控え室に置きます!」
「収録されてるカードを見た感じ、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会さんのデッキは控え室を利用する効果を持ったカードが多く入ってるみたいだね」
同封されていたカードリストを見ながら、音羽は虹ヶ咲のスターターデッキの分析をする。試合が後半になればなるほど恋が利用できる控え室のカードは増えていく。2ターン目以降はなるべく多くのメンバーを展開し、彼女より早くライブを成功させるしかないだろう。
恋・ターン1終了
使用可能エネルギー・3→4
メンバーカード・『PL!N-sd1-021-SD 天王寺璃奈』
「私のターンはこれで終了したので……」
「うん。お互いのターンが終了すれば、ライブフェイズに突入だね」
「ライブフェイズは4つの段階からなるとルールブックに書かれていました。最初の段階であるライブカードセットフェイズでは先攻の方から順番に、最大3枚までのカードを手札からライブカード置き場に、裏向きで置くことができます」
このゲームの真骨頂であるライブフェイズに突入。音羽たちはスタートガイドを読みながら手探りでライブカードをセットする。
「僕からか……なら僕はカードを1枚セットするよ!」
「私は2枚セットさせていただきます! これによって次の段階である先攻パフォーマンスフェイズに移行しますね」
「うん、セットしたカードを表向きにして公開すればいいんだよね? 僕がセットしていたカードはメンバーカード!ライブカードはないからこのカードは控え室に置くよ」
「音羽くんのフェイズはこれで終了になりますから……次は私のパフォーマンスフェイズですね! 私もセットしていたカードはメンバーカードなので、これは全て控え室に送ります」
1ターン目のあとではお互い強いメンバーを展開できていないため、動きは少ない。
「僕も恋ちゃんもライブをできてないから、この場合は勝利者はいない判定だよね?」
「はい! 音羽くんのターンからどうぞ!」
今までのターンは未だ前座である。ゲームの流れにも慣れてきた。勝負はこれからだ。
音羽・ターン2開始
使用可能エネルギー・5
メンバーカード・『PL!SP-sd1-016-SD 葉月恋』
「一通りのフェイズは通過したし、少し手早くやろうか。僕のターン! まずはエネルギーをアクティブにして1枚追加、ドロー。エネルギーを3枚使用したうえで、センターエリアの恋ちゃんを控え室に置いてバトンタッチ。恋ちゃんのコスト分の4を足して、コスト7の冬毬ちゃんを登場させるよ。そして冬毬ちゃんの能力を発動。ターンに1回、エネルギーを2枚使用してエネルギーデッキからカードを1枚、ウェイド状態でエネルギーカード置き場に追加することができる」
「これで音羽くんの使用可能エネルギーは7枚、早いですね……」
「このターンはこれ以上できることがないからターンエンド!」
音羽・ターン2終了
使用可能エネルギー・5→7
メンバーカード・『PL!SP-sd1-011-SD 鬼塚冬毬』
恋・ターン2開始
使用可能エネルギー・4
メンバーカード・『PL!N-sd1-021-SD 天王寺璃奈』
音羽が冬毬を召喚するために行ったのはバトンタッチ。既にフィールドに登場しているメンバーを控え室に置くことで、そのメンバーのコストの数と自身が使用可能なエネルギーを足して、別のメンバーを登場させることができる。
「私のターン! エネルギーをアクティブ状態にして1枚追加、続けてドロー! エネルギーを5枚使用し、私もバトンタッチします! 天王寺璃奈さんを控え室に置き、コスト9の桜坂しずくさんを登場!」
「9コストのカードか……いきなり強力なカードを出されちゃったな……」
「先手必勝、ですから! 登場時効果を発動! 手札を1枚控え室に置き、デッキの上から3枚を見ます! そのうち1枚を手札に加え、残りは全て控え室へ送り、ターンエンド! このままライブフェイズに移行します!」
恋・ターン2終了
使用可能エネルギー・4→5
メンバーカード・『PL!N-sd1-003-SD 桜坂しずく』
「ライブフェイズ……僕がセットするのは1枚!」
「私は2枚です!」
「パフォーマンスフェイズに移行して、カードを表向きに、僕がセットしていたのはライブカード『WE WILL!!』。場にあるカードは冬毬ちゃん1枚、冬毬ちゃんのブレードは1つだからデッキの上から1枚を表向きに! 引いたカードはコスト2の四季ちゃん! ライブ成功条件を達成! 僕のフェイズはこれで終了だよ!」
ライブの状況はフィールドに置かれているメンバーガードに書かれているマークによって左右される。メンバーが持つブレードの数によってライブ時にデッキから捲ることができるカードの枚数が変わり、引いたカードに書かれたブレードハートと既に場にあるメンバーが持つハートを合計し、ライブカードに記された条件を達成していた場合にのみライブ成功となる。
「成功されてしまいましたか……ではこちらの番です! 私がセットしていたのはライブカード『夢が僕らの太陽さ』。場にある桜坂しずくさんのブレードは3つ! デッキの上から3枚を公開します! 引いたカードはコスト11の三船栞子さん、コスト4の宮下愛さん、ライブカード『Dream with You』です! こちらもライブ成功条件を達成し、公開した『Dream with You』の効果で1枚ドローします! そして……」
「お互いのライブが成功したときは、成功したライブカードのスコアを比較して高い方が勝利になるから……恋ちゃんの勝利だね!」
音羽が成功させた『WE WILL!!』のスコアは1。対して恋が成功させた『夢が僕らの太陽さ』のスコアは2。ライブに勝利したのは恋ということになる。
「セットしていたもう1枚のカードはメンバーカードなので控え室に送ります! ふふふ……これで私がカウントを1つ先行ですね!」
「うん。そしてライブに勝利した人が1人だった場合、その人が先攻になってゲームを再開する」
「では私のターンから再開します!」
恋・ターン3開始
使用可能エネルギー・5
メンバーカード・『PL!N-sd1-003-SD 桜坂しずく』
2人のカードゲーマーの戦いは、より苛烈なものへと変わっていく。