ある日の事。結ヶ丘高校の中庭にて。
「ねぇ、冬毬」
「なんでしょうか。マルガレーテ」
「おかしいと思わない?」
「主語がないと、何がおかしいかわかりませんが」
「何って、音羽とみんなの距離感よ!」
結ヶ丘のスクールアイドル『Liella!』のメンバーであるマルガレーテは弁当をつつきながら、同じくメンバーである冬毬にそう宣言する。
「音羽さんですか?」
「そうよっ。大体、みんな音羽にくっつきすぎなのよ」
「仲が良い事は円滑なコミュニケーションに繋がります。別に悪い事とは思えませんが」
彼女達が話題にしているのは、『Liella!』のサポーターにして同じ部の仲間でもある黒一点、東音羽についてだった。冬毬はマルガレーテの話題に大して興味がないのか、タコさんウインナーを口に運びながら、自分の言葉にマルガレーテがどう反応を示すか待っていた。
「だとしてもよ! 特にかのんなんて、『Liella!』に戻ってからずっと音羽にべったりじゃない」
「まぁ、そうでしょう。かのん先輩は音羽さんに好意を抱いていますから」
「聞くところによると、すみれ先輩と四季先輩もでしょ? 色恋にかまけて練習が疎かになったりしたら、『ラブライブ!』出場も危うくなっちゃうわ」
「あの方々に限ってそれはないでしょう。かのん先輩に関しては、離れていた分のOTHPを稼ぐのに躍起になるのは仕方がないと思いますが」
「OTHP?」
「『音羽さんポイント』の略称で、音羽さんとどれだけ一緒にいるかをその時間や距離に応じてわかりやすく数値化したものです。かのん先輩は私達とトマカノーテとして活動していた分、すみれ先輩と四季先輩にOTHPのスコアに遅れを取っていますからね」
「だとしたら、今言った3人以外のOTHPも高いわよ!」
「と、言いますと?」
冬毬が問いかけると、マルガレーテは待ってましたと言わんばかりに、『Liella!』メンバーの罪状をつらつらと読み上げていく。
「まず、可可先輩。普通に音羽に抱きつきすぎ!」
「可可先輩は音羽さんに懐いていますからね。抱きついた後は大抵かのん先輩達の誰かに引き剥がされていますが、ハグは1回当たりに得られるOTHPが高いので可可先輩のOTHPは中々のものでしょう」
「次に千砂都先輩。一緒にノートを見る時に顔を近づけすぎ!」
「一緒のノートを同時に見られる距離感というのも、1回当たりのOTHPに倍率がかかりますね。千砂都先輩と音羽さんは一緒にメンバーのダンスやステップを見る時間が多い分、時間的OTHPも高いです」
「そして恋先輩は……もう、とにかく音羽と一緒にいすぎ!」
「恋先輩と音羽さんは幼馴染ですからね。恋先輩のOTHPは桁違いでしょう。一緒のクラスですし、恋先輩もバリバリOTHPを稼いでいますね」
「きな子先輩も、買ってきたおやつを音羽と一緒に食べるのはまだいいわ。でも、あ~んして食べさせるのはやりすぎよ!」
「あ~んも気の知れた相手にしか出来ませんからね。きな子先輩の指と音羽さんの口内が偶発的に接触した際、上振れで加算されるOTHPも無視できないでしょう」
「メイ先輩も、最近音羽と一緒にいる時間が増えているじゃない?」
「音羽さんはメイ先輩からスクールアイドルを、メイ先輩は音羽さんから作曲のスキルを学んでいますからね。意見交換する時間が多い分、OTHPが増えていくのは当然でしょう」
「夏美先輩だって、音羽と一緒にパソコン弄ってる時間が増えてるわ」
「姉者の編集スキルを、音羽さんは『Liella!』のアドバタイズに活かしたいと考えていますからね。それに姉者は話し好きですから、聞き好きの音羽さんと相性がいいのでしょう。姉者のOTHPも右肩上がりの傾向にありますね」
「……と、まぁ。一通りこんな感じかしら」
「かのん先輩達に関しては言わずもがな、ですね。かのん先輩達に比べると姉者達のOTHPはまだまだでしょうが、それと同じ様に私達のOTHPも少ないですね」
「私はOTHPなんていらないわよ! ふんっ」
そっぽを向いて再び弁当を食べ始めたマルガレーテに、冬毬は再び問う。
「……ですが、このままでいいのでしょうか」
「このままって、何がよ」
「私達のOTHPですよ」
「はぁ? 何も問題はないでしょ」
「そうとも限りません。先程も言いましたが、仲が良いことは円滑なコミュニケーションに繋がります」
「それで?」
「音羽さんと円滑なコミュニケーションが取れれば、ステージで必要な技術のインプットもしやすくなるでしょう。つまり、私達もレベルアップがしやすくなるという事です」
「……ふぅん。続けなさいよ」
技術、レベルアップという単語が冬毬の口からでた途端に、マルガレーテは食いつき始めた。
「OTHPとスキルレベルの向上率は、比例関係にあると見られます。音羽さんとの仲を深めれば深める程、スクールアイドルとしてより高みに行けると考えられます」
「成る程……そういう事なら話は早いわ。冬毬」
「はい」
「私達も、かのん達みたいにOTHPを上げていくわよ!」
「アグリーです。では、今日の練習から早速実践していきましょう」
マルガレーテと冬毬は互いの顔を見て、頷きあうのであった。
***
マルガレーテと冬毬の密談から数時間後、今日もLiella!はラブライブ!二連覇の為に練習を開始しようとしていた。
「音羽、今日は私とストレッチしなさい」
「マルちゃん。うん、いいよっ」
屋上に全員が集合してすぐ、マルガレーテは音羽に声をかける。音羽は日替わりでメンバーの誰かとストレッチをするのが習慣になっていた。今日はそれがマルガレーテの番であるというだけ、そう見えたが……。
「流石マルガレーテ。迅速なOTHPの獲得ですね」
「OTHP? なんですのそれ」
「『音羽さんポイント』の略称で、どれだけ音羽さんと一緒にいるかを可視化したポイントです」
「ふ~ん、そうなんですのね」
「いや、夏美。わかったように言うな。何もわからないだろ」
「音ちゃんポイント……私も欲しい」
冬毬の一言で、各々でストレッチをしていたメンバーが賑わい始める。当然、それは音羽達にも聞こえていたのだった。聞き覚えのない単語の連続に、音羽は首を傾げている。
「ねぇ、マルちゃん。みんな何を話してるの?」
「音羽が気にする事じゃないわ。ほら、背筋伸ばしなさいっ!」
「ひぃ、急にはやめて~!」
音羽の視界が青一色に染まった。今この瞬間にも、マルガレーテはOTHPを稼いでいるのだ、という事を音羽はもう少し後で知る事になる。
***
「……このように、私達はOTHPとスクールアイドルとしてのレベルの向上には密接な関係があると考えたのです」
練習を終えた後、部室に集まったメンバーは冬毬のプレゼンを受けていた。
「冬毬。色々とツッコみたい事ばかりなんだけど」
「なんでしょうか、すみれ先輩」
「まず、始めに……なんで音羽と腕を組みながら話しているの!?」
そう。すみれの指摘通り、冬毬はプレゼンの間ずっと音羽と腕を組んでいた。当然、隣の音羽は終始タジタジであった。
「私は先輩方に比べてOTHPが少ないので。少しでも多く音羽さんと触れ合っていた方が良いと考えたからです」
「いや、冬毬。貴女達の言いたい事はわかるわよ? 要は普段から音羽と仲良くしていれば、練習の時もスムーズにコミュニケーションが取れるからいいよねって話がしたいのよね?」
「そのような認識で構いません」
「だからと言って、音羽とくっついてるだけで仲良くなれるわけじゃないと思うわよ? そのOTHPってのも、もっと効率のいい上げ方があるんじゃないかしら」
「ふむ。確かにそのご指摘は最もですね。では、音羽さん。どうすれば音羽さんともっと仲良くなれますか?」
効率、という単語がすみれの口から出た瞬間冬毬の顔色が変わる。冬毬はその体勢のまま、音羽へと顔を向けて問う。音羽は眼前に迫った美少女の顔に余計に頬を染めながらも、その問いに答えた。
「え、えっと……僕は冬毬ちゃんともう充分仲が良いって思ってたけど」
「ふぁっ……」
音羽がそう言った瞬間、先程まで冷静だった冬毬の顔が真っ赤になった。
「あーあ。またおとくんが人垂らしてる」
「音羽センパイにウチの冬毬はやらん、ですの」
「二人とも!? 別に僕そんなつもりで言ったんじゃ……」
「そ、そうです! あまりからかわないでください!」
「冬毬も冬毬ですの。そんな腕の組み方、恋人同士でしかしませんの」
夏美がそう指摘した瞬間、冬毬は気が付いたかのようにパッと腕を放す。
「こ、これは……その……」
そのままモジモジとし始めた冬毬を余所に、次は反対側からマルガレーテが腕を組み始めた。
「ふふ。冬毬はこんな調子だし、その間に私がOTHPを稼いじゃおうかしら。言っておくけど、私はあんな風にアンタに靡いたりしないから」
「マ、マルちゃんまで……もしかして、今日ストレッチしようって言ったのも?」
「えぇ、そうよ」
「僕は……僕は、そういうポイントとか抜きでも、マルちゃんと仲良くしたいよ?」
「は……きゅ、急に何言ってるのよアンタ!」
音羽がそう言うと、先程までの発言は何だったのか、次はマルガレーテの頬が一気に朱を帯びる。
「いくらなんでもチョロすぎるだろ」
「チョロいっす」
「そこ! チョロチョロうるさいわよ!」
きな子とメイの指摘に余計に顔を真っ赤にさせるマルガレーテ。
「……とにかく、音羽! 私達のOTHPを上げるのに協力しなさい!」
「う、うん。それは勿論なんだけど……要は、仲良くしたいんだよね?」
「えぇ、そうよ」
「だったら、今日マルちゃんと冬毬ちゃんと僕の三人で一緒に帰ろうよ」
音羽は、二人に笑顔で告げる。
「わかったわ。冬毬もいいわよね?」
「こほん……アグリーです」
調子を取り戻した冬毬も、音羽の提案に承諾した。
「ふふっ。楽しみだなぁ」
「なんであんたがそんな事言うのよ」
「だって、僕もマルちゃんと冬毬ちゃんともっと仲良くなりたいもん」
音羽がそう言った瞬間、再びマルガレーテと冬毬の顔が同時に赤くなったのだった。
「あ、あんた今日はもうそういうクサい台詞吐くの禁止!」
「み、右に同じです。音羽さんが口を開く度に調子が崩れてしまいます……」
「僕はそんなつもりないよ!?」
「そんなつもりがなくてもよ!」
「ま、まぁまぁマルガレーテさん! 音羽くんにも悪気はないみたいですし」
「ふんっ。ほら、音羽、冬毬。行くならさっさと行くわよ!」
「アグリーです。さぁ、音羽さん」
「ちょ、二人とも待ってぇ!」
ぷりぷりとしたマルガレーテに続いて、2人も部室を後にした。あっという間に出て行ってしまった3人の背中を、後のメンバーは見守るしかなかった。
「……かのん、よかったの?」
「ん~……おとちゃんがマルガレーテちゃんと冬毬ちゃんと仲良くなるのは嬉しいし、それに、あの2人を止める権利なんてまだないでしょ」
「あくまでも、“まだ”なのね。まぁ、その“まだ”を言うのは私なんだけど」
「……私だもん」
***
さて、学校を後にした音羽達一行。一緒に帰る、とは言ったもののただ通学路を並んで歩くだけで仲良くなれるという事はないであろう。
「と、いうわけで。音羽さん、どこかへ寄り道をしながら帰ろうと思うのですが」
「どういうわけで?」
「ただ帰るよりも、色んな事をしながら帰った方がより多くのOTHPが手に入るってわけね。流石冬毬」
「なので、音羽さん。どこか行きたい所などありますか?」
「うーん……」
音羽はしばし考え、そして1つの結論を出した。
「ゲームセンターとか行ってみない?」
「ゲームセンターですか。私はあまり行った事がありませんが」
「私も。音羽は結構行くの?」
「うん、放課後にみんなと。マルちゃん達とはまだ行った事ないでしょ?」
「どうする、冬毬」
「私は構いません。では、向かいましょうか」
こうして、ゲームセンターに行く事が決まった一行は、早速目的地に向かって歩みを進めるのであった。
***
しばらくして、ゲームセンターについた3人。施設の入り口をくぐると、騒がしい電子音と共に人々の喧噪が彼等を出迎えた。
「賑やかなのですね」
「うん。ここにいる人達みんなから楽しそうな音がするのが伝わってくるから、何か好きなんだよね」
「で、何をするのよ」
「うーん……ここはクレーンゲームがいっぱいあるし、僕が二人の欲しいモノ取ってあげる!」
「いいの?」
「うんっ! なんでも欲しいモノ、言ってみて」
音羽に促され、2人はしばし考える。そうしているうちに、ふと冬毬があるものを見つけた。
「あ、クラゲ……」
「ん?」
「あのクラゲのキーホルダー、可愛いです。あれでもいいですか?」
「クラゲ……そっか、冬毬ちゃんクラゲ好きだったもんね」
「覚えてるんですか?」
「勿論。みんなの好きなモノは、大体把握してるつもり」
「その言い方はちょっと怖いわね」
「うっ。そうだよね……」
「わ、悪かったわよ……ねぇ、冬毬。OTHPって減らないわよね」
「どうでしょう……? データがありません」
「だ、大丈夫! 僕が絶対減らさないから」
「んん……音羽さん、そういう台詞を言うのは禁止とマルガレーテに言われたではないですか!」
「そもそもOTHPって音羽の一存で決まるモノなの……?」
「ほ、ほら2人とも! クラゲ取りに行こう?」
2人の背中を押して、クレーンゲームの前に誘導する音羽。色取り取りのクラゲがディスプレイされている箱を前にして、音羽が冬毬に問う。
「冬毬ちゃん、何色がいい?」
「えっと、水色のが好きです」
「ふふっ。おっけー」
音羽は財布から小銭を取り出し、クレーンゲームに投入する。早速電子音と共に、筐体に備え付けられたボタンが光り出す。音羽が押したボタンの矢印に従って、クレーンが動き出した。
「……大体この辺かな」
音羽の手によって位置を調整されたクレーンは、冬毬が欲しがっていたクラゲのキーホルダーに向けて降下する。やがて、アームに包まれたキーホルダーは、クレーンと共に持ち上がった。
「やった! やりましたよ、音羽さん!」
と、冬毬が喜んだのも束の間、キーホルダーはクレーンの元を離れ、落下してしまった。
「あぁ、そんな……」
「何よ、あれだけ豪語してた割にはって感じね」
「まぁまぁ……クレーンゲームって、実は2人が思ってるよりアームの力が弱いんだ。だから、コツコツ移動させながらやるのがセオリーなんだよ」
「ふ~ん。そうなの」
「マルちゃんもやってみる?」
「私が? ふふっ、いいわよ。音羽の代わりに、私が冬毬にプレゼントしちゃうだから」
音羽に代わって、マルガレーテが筐体の前に立つ。意気揚々とアームを動かすも、結局は音羽とほぼ同じ様な結果になってしまい、冬毬のお目当ての品は少し横に動いただけであった。
「なんでよ! アームが弱すぎるんじゃないの?」
「それさっき僕が言ったよ」
「あ、あの。音羽さん。あまり音羽さんのマニーを消費してしまうのは私としても……」
「ううん。お金の事は気にしないで。僕が冬毬ちゃんにプレゼントしたいって思ったからしてるだけだし」
音羽は止めようとする冬毬を制止し、追加投資をする。その後も何度か同じ様に繰り返し、そして。
「音羽さん、あともう少しです!」
「次で決めなさい、音羽!」
2人の祈りが通じたのか、クレーンはキーホルダーを掴んだまま穴の真上まで移動し、そのままアームを開いた。
「やった……冬毬ちゃん! 獲れたよ!」
「わぁ……ありがとうございます、音羽さん!」
音羽の手からキーホルダーを受け取った冬毬は、その目をキラキラと輝かせていた。
「ふふっ。冬毬ちゃんが喜んでくれて、僕も嬉しい」
音羽の笑顔に、冬毬が顔を赤く染める。そんな冬毬と音羽の間に、マルガレーテが割って入ってきた。
「何良い雰囲気になってるのよ」
「マ、マルガレーテ。茶化さないでください……」
「あ、マルちゃんも何か欲しいモノある?」
「ん、私は別に……」
マルガレーテはそういいつつも、クラゲのキーホルダー達のすぐ横……サメのキーホルダーに視線が釘付けであった。
「……これがいいの?」
「はっ!? べ、別にいいって言ってるでしょ!」
「ふふっ。ね、マルちゃん。折角だしプレゼントさせて?」
「む~っ……勝手にしたら!」
音羽の無垢な笑顔に負けたマルガレーテは、誤魔化すようにプイッとそっぽを向いた。音羽はそのまま、隣の筐体に小銭を投入してクレーンを動かし始めた。
「……マルガレーテは、サメが好きなのですか?」
「そうよ、何か悪い?」
「マルガレーテも、海の生き物が好きなのですね」
「言われて見ればそうね」
「……お揃い、なんですね」
「んっ……何よ、音羽のつもり?」
「私はそんなつもりありませんが……音羽さんも、こんな感じなのですかね」
「ふふっ。なにそれ」
2人が笑い合っていると、いつの間にかキーホルダーを手にした音羽が2人の方を向いていた。
「はい、マルちゃん。獲れたよ」
「わぁ……はっ! あ、ありがとねっ」
「2人とも、何を話してたの?」
「……ふふっ、内緒よ。ね?」
「はい。内緒、です」
そう言って、マルガレーテと冬毬は再び笑い合った。
***
ゲームセンターを後にした3人は、県外へ下校する冬毬を見送る為に、駅へと付き添っていた。
「今日は、ありがとうございました」
「こちらこそだよ。それで、その……」
「どうかしましたか?」
「どうだったかな? その、OTHPって言うのは、増えたと思う?」
「そうですね。とても多くのOTHPを獲得できたと思います。ですが……」
「ですが?」
「音羽さんから貰ったこのキーホルダー。ポイントなどで表せない、大切なモノを頂きました。それが、何よりも嬉しいです。改めて、ありがとうございました」
「ふふっ。こちらこそ、ありがと」
「っ……で、では失礼します」
赤く染まった顔を隠すかのように、冬毬は改札へと吸い込まれていった。
「さ、マルちゃん。僕達も帰ろっか。送ってくよ」
「そうね、OTHPの稼ぎ時だし」
「もう、マルちゃんってば」
「ほら、行くわよ」
そう言って歩き出したマルガレーテの後に、音羽も着いていったのだった。
「マルちゃんは、サメのキーホルダー気に入ってくれた?」
「……ありがと」
「どういたしまして」
むくれながらも答えるマルガレーテに、音羽は笑顔を返す。
「……私は、今日音羽と仲良くなれたと思う」
「急にどうしたの?」
「独り言よ。音羽には関係無い」
「ん~……じゃあ、こっちも独り言。僕は、とっくにマルちゃんと仲が良いって思ってるから」
「っ……そ、そう!」
そんな音羽の答えに、マルガレーテはまたそっぽを向いたのだった。