「お嬢、男女2人はまずいっすよ!」
「そうかしら?」
「俺に下心があったらどうするんすか!?」
「あるの?」
「無いっすよ!」
でもこんだけ美人だと油断出来ねぇ。
いつ俺がやらかすかも分からねぇんだから。
「なら良いじゃない」
「・・・・・良くないっすよ」
「もし間違いがあっても、そうなる前に私が止めるわ」
「お嬢が俺をすか?」
「鍛えているもの。任せなさい」
正直、力比べしたら絶対勝てる自信はある。
俺だって鍛えてるし、男女の差はあるし、俺とお嬢の体格差を考えれば良くないことになっちまう。
・・・・・けど、それを言ってもお嬢は信じねぇんだろうな。
「1回力比べしときます?」
「良いわね!」
お嬢はノリノリで机に肘を乗せる。
腕相撲か。
「とりあえず、家に男を上げるのがどれだけ危ないか知ってもらいますよ」
「上等よ!」
お嬢の手を握る。
こんなほっそい指なのにどっから自信が湧いてんだ。
「レディ・・・・・ゴー!!」
「っ!」
お嬢、結構力あるな。
ちゃんと構えてなかったら負けてたかもしんねぇ。
「っ、く・・・・・!」
お嬢は全力でやってるんだろうけど、こっちは多少の余裕がある。
俺は涼しい顔で、向こうは顔真っ赤。
「だから言ったじゃないすか」
あくまで余裕ある風にしとかなきゃな。
「ほい」
「あっ!」
勝った。
当然っちゃ当然だけど、お嬢は随分悔しそうにしていた。
「くっ・・・・・もう1回よ!」
この人めっちゃ負けず嫌いだな。
○○○○○
ボコボコにした。
お嬢はずっと悔しそうにしてた。
「だから言ったじゃないすか」
「次に勝負する時は必ず勝つわ!」
「そういうことじゃなくて───」
「それまでこの家を離れることは許さないわ!」
やっべぇ、目が燃えてる。
「主人命令よ!」
初対面からそんなに時間経ってねぇのに、随分印象が変わった。
最初はお嬢様と呼ぶに相応しい感じだったが、今は負けず嫌いの女の子だ。
「それ言ったら何でも通ると思ってないすか」
「力づくで通すわ!」
「さっき全敗したでしょ」
「っ、うぅ〜〜〜っ!!」
もしかしてこの人、結構PONなのか?
大人びた雰囲気と今みたいな子供っぽさのギャップがすげぇ。
「そういやお嬢って幾つすか?」
「・・・・・女性に年齢を聞くのはタブーよ?」
そうだけど、お嬢ならなんとなく教えてくれると思ったんだが・・・・・ダメかな。
「20歳よ」
言うんかい!!
「えっ年上?」
「えっ?太郎くんは何歳なの?」
「18っす」
「えっ!?」
○○○○○
───結局、俺はお嬢の部屋に住むことになった。
俺の部屋を1つ作ってもらって、随分好待遇だと感じる。
つっても寝る場所が違うだけで、ほぼ2人暮らしになってる。
良くねぇなとか思いつつ、美人と住めることに「うひょー」なんて思ったりしてた。
「お嬢、朝っすよ」
「ん・・・・・」
このお嬢様の朝の弱さたるや、マジでやってらんねぇって感じだ。
あんだけストイックな雰囲気出してんのに寝起きが1番やべぇ。
「おはよう・・・・・」
「何寝ぼけてんすか。「挨拶はハッキリと」っすよ」
無防備過ぎる。
格好とかより雰囲気が。
ぽやぽやしてるって言うのかな。
こん時だけは歳上に見えねぇ。
「飯作ってるんで、準備済ませてください」
「うん・・・・・」
格好とかよりとは言っても、格好も十分無防備なもんだ。
流石に見る訳にはいかねぇから、極力お嬢を見ないように起こし、かつ動くのを確認するのが毎朝の事になった。
「カトレア・・・・・」
「お嬢だけすよ。まだ飯食ってないの」
「分かったわ・・・・・」
あくびしながら歩くお嬢。
この時には服はそんなに際どくなくなってる。
まったく、ハラハラするご主人様だ。
本音?めちゃくちゃ可愛いしありがたいですねぇ。
朝から元気出るからよ。
「ごちそうさま」
「早く学校行ってください」
「えぇ。それじゃ、行ってくるわ!」
朝の女の子っぽさが嘘みてぇに元気になった。
この切り替えの緩急、結構面白ぇ。
「うす」
なんとお嬢は、最初は俺もついてこさせようとしてた。
けどいくら付き人っつったって俺在校生じゃねぇし、お嬢に迷惑はかけらんねぇからな。
迷惑ってのは変に噂されることだ。
お嬢はモテるだろうし、勘違いされちゃ困る。
俺としては構わねぇけど、お嬢が嫌がるんならそんなことさせるわけにゃいかねぇ。
日は浅いとはいえ、雇ってくれてる訳だからな。
「ふぅ・・・・・」
それに俺は鈴木さんが好き・・・・・とは言うけど、お嬢もマジで可愛い。
告白されたらコロッといっちまうかも。
男って愚かなもんだ。
○○○○○
お嬢の朝の世話をした後、俺は結構な時間暇になる。
最初は東京ってこともあって(鈴木さんに会えねぇかなとか思って)適当に散歩とかしてたが、会える気が一向にしなかったので辞めた。
今は釣りをしてる。
釣って捌いて、時間を潰す。
やっぱ楽しいことしてると時間がすぐ経つからな。
とはいえお嬢の家から調味料や道具をかっぱらって来てる訳だから、バレたら怒られるかも。
そんなことを考えてると、携帯が振動した。
《仕事で帰りが遅くなるわ。先に寝てて大丈夫よ》
先に寝てて・・・・・ってことは大分遅くなるな。
カトレアに飯やって、俺の分の飯・・・・・は適当に外で済ませて、風呂も銭湯で良いか。
そろそろいい時間だから、道具直すのと荷物取りに行くので一旦家に帰る。
《うす》
てかお嬢の仕事ってなんなんだ?
あんま聞かねぇ方がいいのかなとか思ってるけど、ちょっと気になるな。
モデルとかか?
全然有り得るな。
○○○○○
「あったまるぜ・・・・・」
そんな独り言が思わず出ちまうが、今、ここの銭湯には如何せん人がいねぇ。
まぁ時間も早ぇし、流石に平日に人がそんなに来ることはねぇか。
ま、これはこれで悪くねぇからな。
贅沢って感じして好きだぜ。
「飯どうすっかな・・・・・」
適当に飲食店巡り(店を見るだけ)をしていると、激烈な美少女がスーツの男と歩いてきた。
くっ、スーツの男といやぁ鈴木さんの横にいたやつを思い出すぜ。
嫉妬しまくりだ。
いかんいかん、無意識に顔が凶悪に。
俺だって鈴木さんとデートしたことなんかねぇのに。
・・・・・食いもん奢るのはデートに含まれるかな?
うん、含まれるな。
よし、気が楽になってきた。
「プロデューサーはさ、どう思う?」
「アイドルとして、あんまりそう言う事は言わない方が───」
チラッと聞こえたが、アイドルとプロデューサーらしい。
アイドルってのは最近多いんだなぁ。