着替えるにしても、汗を流さなきゃどうしようも無いってことで、放クラの皆と俺は銭湯に行った。
サウナ?
もちろん入ったぜ。
死ぬかと思った。
あと1つ、銭湯を見て思ったのは───
「やっぱウチの風呂でけーっすよね」
「そうね、1人で入るには少し広すぎるかしら?」
「まぁ、その点今回は良かったんじゃないすか?お嬢楽しかったでしょ?」
「えぇ、賑やかで楽しかったわ」
俺は1人で死にかけてた分、こっちの楽しそうさが光るぜ。
俺達は銭湯で1杯、風呂上がりのあれを飲んだ後、何故か283プロダクションの事務所に集まった。
最初は俺が入んのは不味くねーかと話したが、お嬢からは「付き人だから大丈夫よ!」、お嬢以外の4人からも「別に大丈夫じゃない?」と言われてしまった。
まぁ、信頼してもらってると受け取っとこうかな。
会って数時間だけど。
プロデューサーさんにあったら土下座しとこ。
「ふぃ〜、あったまったぜ」
「ぽかぽかするね〜」
オヤジみてぇな座り方の樹里さんと、溶けてスライムかなんかになりそうな感じの園田さん。
湯冷めするかと思ったけど、気温がいい感じだったもんで逆にリラックスできたらしい。
結構歩いたんだけどな。
やっぱアイドルは伊達じゃねぇか。
「はぁ〜・・・・・眠くなっちゃいます・・・・・」
喋らず溶けてるのがお嬢と小宮さんと杜野さん。
今目の前には風呂上がりのジャージ姿の5人がいる。
これから外でなんかする雰囲気でもねーし・・・・・ここはひとつ、俺から用意してやるか。
「人生ゲームでもやりますか」
どこから取り出したかは聞くな。
「あら?珍しいわね」
そうでもねぇんだなこれが。
お嬢とやるのはなんか気乗りしなかっただけ(お嬢は「そんな暇あったらトレーニングよ!」とか言うと思ってたから)だけど、今は放クラの皆がいるし、いっちょかましてやるか。
「罰ゲームとかつけます?」
「自分の首を絞める必要はないわよ?」
あぁん!?
ったく、お嬢様かと思ったら油断ならねぇ、とんだ
「はいっ!あたしやりますっ!」
「私もやるー!」
「凛世も、是非」
「じゃあアタシも」
おぉ、ノリいいな。
一瞬で6人集まった。
よし、お嬢には絶対負けねぇぞ!
「・・・・・それで?罰ゲームはどうするの?」
「そうっすね・・・・・」
さっきは煽られて反応しちまったから言ってなかったな。
えーと・・・・・───
「下位
「お嬢!?」
「夏葉!?」
「夏葉ちゃん!?」
何考えてんだウチの主人は!
・・・・・待てよ?
「それ、お嬢も下位に入ったらやってくれるってことすか?」
「当然よ」
・・・・・めっちゃ見てぇ。
ていうか放クラ全員分見てぇんだけど。
てか「アイドルとして」ってことは、俺はアイドルじゃねぇから何位でも良いんじゃねぇか?
はっはー、ただただ得だな。
「楽しみね。太郎くんが何を言うか」
「ん?俺もやるんすか?」
「当たり前じゃない。参加するんでしょう?ゲームに」
絶対勝つ!!
「うおおおおおお!!!!」
○○○○○
「あら、「ダンベルが破損して怪我」ですって」
「コワ〜・・・・・夏葉ちゃんも気を付けてね?」
「ダンベルをも跳ね返す体を作るべきかしら?」
「違うよ!?」
○○○○○
「「着物美人に刺される」・・・・・えっ?」
「・・・・・田中さま?」
「杜野さんって、結構バイオレンスな人なんすか?」
「違ぇよ!」
「ふふ、ご冗談を・・・・・」
○○○○○
「「正義の味方になって、怪人を倒す!」やりましたー!」
「果穂は特撮が好きなんだよ」
「へぇ〜、かっこいいっすね・・・・・って怪人俺かよ!?」
○○○○○
「「家の宝石を盗まれる」・・・・・太郎くん?」
「違いますよ!?」
○○○○○
「「サプリメントで激痩せ・・・・・リバウンドの心配なし!」だって!じゃあこの前食べた分も───」
「智代子?」
「ハッ!?」
○○○○○
「「着物美人に結婚詐欺」・・・・・杜野さん!?」
「た、田中さま、違います・・・・・っ」
「凛世がそんなことする訳ねーだろ!」
「す、すんません!そ、そんな泣きそうな顔しないでくださいよ!冗談っすよ冗談!わかってますって!」
「あら凛世、泣き芝居上手じゃない!」
「ふふ・・・・・成長で、ございます・・・・・」
「・・・・・俺はもうダメだ」
「田中ーー!?」
○○○○○
「メ、「メイド喫茶でNo.1になる」ぅ!?」
「樹里ちゃんすごいですー!ナンバーワン!ですよ!」
「や、やめろって、アタシにそういうのは似合わねぇんだから!」
「あら、そんなことないわよ?」
「やめろー!!」
○○○○○
「「身近な人からの裏切り」・・・・・誰かしら?」
「誰でもないっすよ!?」
「誰でもないよ!?」
「誰でもねぇぞ!?」
「誰でも、ございません・・・・・」
「そんなことしませんっ!」
○○○○○
「「足の小指強打、3回休み」・・・・・3回休み!?」
「園田さんも大概運悪いっすよね」
「チョコに関してはなー・・・・・」
「フォローしてよぉ!?」
「いや、いっつも食い過ぎてるから───」
「樹里ちゃん!!」
○○○○○
「「火事、盗難、事故」・・・・・さっきからマイナスなやつにしか止まんねぇんだけど!?」
「そういえば、私もそうね」
「樹里さんもヤバいっすね」
○○○○○
負けた。
何回やるんだよこのパターン!
クソが!
「結果として、太郎くん、凛世、樹里になった訳だけど」
「ア、アタシハサイゴデイイゼ」
こんな分かりやすい緊張があんのか。
しょうがねぇ。
勝負を吹っ掛けた身だ。
一肌脱ぐのも務めってもんだろ。
「俺いきます」
「楽しみね。キャラは?」
「そうっすね・・・・・「天性のアイドル」とかどうすか?」
「へぇ、面白そうじゃない」
「ファンを虜にするアイドル」だって?
そんなん決まってんだろ。
バトミントンの時、お嬢に投影してた姿を俺に写す。
まぁ思い込みだな。
「握手会でいきますか」
「随分やる気ね?」
「アイドルなんで。ファンサっすよ」
「せっかくだし、私がファンとしていかせてもらうわ」
前に立ったお嬢を見て、俺は深呼吸して思い込む。
強く、深く。
こういうのは拙くても向こうに「何かある」と感じさせるのが大切だ(多分)
「こんにちは───」
お嬢と握手して、できるだけ人当たりのいい優しい笑顔になる。
目を見てからニコッ、とする感じだ。
「初めての握手会?来てくれてありがとう♪」
喜んでる言い方で。
語尾の「♪」はアイドルらしさの表れだ。
そんな事を考えて次の言葉を言おうとした時、ドアが開いた。
「あれ?人がいっぱい───」
思わず反応しちまって、お嬢じゃなくてドアの方に顔が向いちまった。
「会えて嬉しい───」
で、入ってきた人とめちゃくちゃ目が合った。
「───よ・・・・・」
俺は絶句した。
「───あはっ」
しばらく目が離せなくなってると、その人は俺の目を見て、「全員を虜にする」ような笑顔になった。
そして手を後ろで組んで、覗き込むように、脳が蕩けるような声で言った。
「私も♪」