鈴木羽那?めっちゃ恋してますけど?   作:フェンネル

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283プロ・・・・・恐ろしい事務所っ!

やっっっっべぇ・・・・・。

いやヤバくねぇよ。

ヤバくねぇしむしろ超嬉しいけど、とにかく何かヤバい。

 

「久しぶりだね?田中くん」

 

今俺の目の前には、天使がいる。

俺が何度ゲームを挑んでも勝てなくて、結局漫画を取られたままで、関わる人を皆虜にする、純白の天使。

 

「そうっすね。あん時以来すか」

 

「アイドルになったあたし、どうかな?」

 

「いつも通りっていうか・・・・・変わんないすね」

 

「もーっ、ちょっとはアイドルっぽくなったとか言ってくれると思ったのにー」

 

俺の大好きな人、鈴木羽那が。

 

「あら?あなた達知り合いだったの?」

 

「そっすね。お嬢と会う前は遊んだりしてました」

 

「ねー。あたしもびっくりだよー。夏葉ちゃんは田中くんとどうやって知り合ったの?」

 

「岡山に行った時に偶然ね。それから付き人になってもらってるわ」

 

「付き人!?すっごいねー!」

 

女子トークが始まった。

俺?アウェイ1000%だよ。

てか、我ながらすげぇ運良いよな。

鈴木さんと過去形とはいえ一緒に遊べて、お嬢みたいな良い人に出会えて、雇ってもらえてんだから。

 

「結構ハチャメチャだけどね?」

 

「今日1日の方がハチャメチャっすよ。現に結構驚いたし」

 

「えー?そんな風には見えないけどなー?」

 

すっ、と身体を近づけて俺の顔を見つめる鈴木さん。

やべぇ。

再会して数分で「魅せられた」気がする。

こうなるともうゲーム勝負(ずっとドキドキ)してた時のことしか考えらんなくなっちまう。

 

「握手会とかも来てくれないしさー、寂しかったんだよ?」

 

「応援はしてた・・・・・ってのじゃダメすか」

 

「えーっ、ずっと待ってたんだよー?」

 

俺は今、猛烈に鈴木さんに説教をかましたい。

「アイドルがそんな思わせぶりなこと言っちゃダメだ」と。

とはいえ、鈴木さんが思わせぶりなのは前からだし、それよりファンの人達が心配だ。

至近距離で握手とかしてみろよ。

キュン死する。

 

「田中くんはさ、あたしに会いたくなかった?」

 

超会いたかったです。

とは言うけど、今にして思えば会ってなくて正解だったかもな。

この光に消される。

 

「そんなことないっすよ。ファンなんだから」

 

なーんか小っ恥ずかしい。

鈴木さん相手だと変に緊張しちまうな。

 

「あははっ。()()()()()()、守ってくれてるんだ?」

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

『あたしのこと、ずっと応援してて』

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

「・・・・・まぁ」

 

「うれしいなぁ・・・・・今だから言うけど、「言ってみただけ」みたいなところあったんだよ?」

 

俺があの約束を守ると思ってなかったって事か?

ふん、鈴木さんに嫌われるような真似するわけねぇだろ!

 

「あんなこと言ったの、あれっきりだからさ」

 

正直ホッとした。

別に不安がってた訳じゃねぇけど、俺以外にあの時の約束の言葉を言われてるようなファンとかがいたら軽く死んでた。

俺にとっては大事な約束だからな。

 

「破るわけにはいかないじゃないすか」

 

「ふふっ、ありがとう」

 

やっぱ可愛い。

いい笑顔だ。

 

「じゃあ・・・・・ちゃんと約束を守ってくれた田中くんに、あたしからお礼するね」

 

お礼?

なんかくれんのかな?

 

「はい」

 

鈴木さんは何故か手を伸ばしてきた。

 

「なんすか?」

 

(そもそも勝負すらしてねぇのに)また私物取られんのかと思ってちょっと身構えると、鈴木さんは困ったように笑った。

お嬢に助けを求めようと探すと、俺らをほっぽって人生ゲームを新しく始めてた。

何やってんだぁ!!

なんて心の中であーだこーだ抜かしていると、

 

「もーっ、握手!」

 

()()()()()()()()俺の手を握ってきた。

 

「マジすか」

 

やばい。

手汗が死ぬほど出る予感がする。

早めに終わらせねーとまずい。

 

「田中くんってさ、握手会とか初めて?」

 

「そういえばそうすね」

 

好き好き言ってるけど、元気な姿を直接じゃなくても見れりゃいいみたいに思ってるとこは若干あった。

まぁよくよく考えてみりゃ、本当は行こうと思ってすぐ忘れてるだけなんだけどな。

(緊張するのももちろんあるけど)

 

「事務所で初めての握手会って、何か特別だと思わない?」

 

・・・・・あークソ!!

この人はすぐこういうこと言う!

 

「普通は絶対無理っすよこんなの」

 

「嬉しい?」

 

「そりゃ、まぁ」

 

嬉しくねぇわけねぇだろ!!

手握れただけでも心臓が飛び出そうだってのに、「特別」とか言われたら男はその気になるんだよ!

 

「・・・・・むっ」

 

そんなことを考えて1人緊張してると、鈴木さんはジト目で俺を見てきた。

 

「なんすか」

 

ほっぺ膨らますな可愛いから!

 

「ちゃんと、言葉にしてほしいな」

 

・・・・・これ、言うまで目離さないやつだ。

鈴木さんにじっと目を見つめられると、一瞬頭が真っ白になる。

今でこそすぐ元に戻るけど、最初の方とか、好きになってからはやばかった。

久々なのもあってか、今もちょっとまずい。

 

「すげぇ嬉しいっす」

 

「ふふっ、そっかーっ」

 

とはいえ、こういう風な事が今まで何回もあったお陰か、褒める事に恥ずかしさはない。

まぁ元から恥ずかしさも何もねぇけど。

好きな相手でも照れてることに気づかれずにしっかり言えるってことだ。

鈴木さんが「言って欲しい」って言ってくれるタイプだからこそでもあるけど。

 

「あたしも田中くんに会えて、すっごく嬉しい」

 

ぐはっ!

そういうの言われると、心臓が爆発しそうになる。

マジで危ねぇ。

 

「あーっ、何で目逸らすの!」

 

できるだけ、合わせられる事なら目を合わせてたいけど、キャパオーバーで無理な時もある。

今がそれだ。

普通に鼻血出そう。

 

「すんません」

 

・・・・・よし、いつも通りに戻った。

ていうか、いつまで握手してくれるんだ?

 

「終わった方がいいかな?」

 

「そんな訳ないでしょ」

 

あれ?

口に出したっけ?

顔に出てたかな。

 

「・・・・・あはっ、そっかぁ♪」

 

なんか、楽しそうだな。

こっちは過剰供給で死にそうだってのに。

一旦間が空いた隙に、俺は極限まで冷静になった。

鈴木さんは何か考えてる。

 

「ね、あたしから1つお願いしていい?」

 

なんだかんだ、俺が断ると思ってなさそうな気もする。

(もちろん実際のことはわかんねぇ)

端から断る気ねぇけど。

 

「なんすか?」

 

そう聞くと鈴木さんはまた目を合わせてきた。

今なら大丈夫だってことで、俺も目を逸らさずその「お願い」ってやつが言われるのを待つ。

 

「せっかくの握手会なんだからさ───」

 

そして、俺の手を両手で挟んできた。

 

「手、握り返して欲しいな?」

 

・・・・・やっべぇ。

頭クラクラしてきた。

 

「うす」

 

一応、かなり弱々しくなっちまったけど握り返した。

それから数秒したら、手は離れた。

 

「それじゃ、あたし次のお仕事あるから」

 

名残惜しいような、今終わってホッとしてるような。

 

「またね!」

 

ていうか次の仕事あんのに握手会でファンサしてもらえるって、今日の俺すげぇな。

 

「仕事頑張ってください」

 

「うん!ありがとー!」

 

元気な返答が来た。

そして階段を降りていったから次に会うのはいつだろうなんて思ってたら、何故かまた上がってきた。

そしてドアから顔だけ出して、内緒話をするポーズで、俺にだけ聞こえる声で、

 

「待ってるね♪」

 

そんなことを囁き声で抜かしやがった。

しかも言い終わった後、めっちゃ可愛い笑顔を見せて事務所の階段を下りていった。

うーん、まずい。

キュン死しそう。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

「羽那、急にどうしたんだ?事務所に寄りたいだなんて・・・・・」

 

「ごめんねプロデューサー。ちょっと忘れ物しちゃって」

 

「あぁ、そうだったのか。取りに行けて良かったな」

 

「うん。本当に良かったよー」

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

───さっきまでのドキドキはどこへやら。

俺は我ながら凄まじい切り替えで、放クラと遊び倒していた。

人生ゲームでチーム戦したり、ジェンガとか腕相撲大会とか。

杜野さんが華奢過ぎて加減がむずかった。

お嬢?ちゃんとボコったぜ。

前も言ったかわかんねぇけど、負けるわけにゃいかねぇだろ。

お嬢女の子だし、俺鍛えてるし。

 

「〜っ!次は勝つわ!」

 

「良いんすか?連敗記録増やしても」

 

「・・・・・・・・・・いじわる」

 

お嬢がほっぺ膨らまして睨んでくる。

・・・・・お嬢がほっぺ膨らませてる!?

 

「えっ可愛い」

 

「えっ」

 

「あ」

 

実際、連敗した時のお嬢の顔はめっちゃ可愛かった。

思わず負けてやりそうになるくらい。

 

「そ、そうかしら?」

 

やべ。

お嬢に対してそういう言葉(可愛いとか)を言うと、気まずくなるようになってるんだった。

つっても数時間前からの話だけど。

(悪い気まずさじゃねぇんだけど、俺も普通に恥ずい)

 

「言っときますけど、世辞じゃないんで」

 

他の人に言ったら口説いてるみたいだし普通に気持ち悪がられちまう。

けどお嬢は褒め言葉を正面から受け止めてくれるから、遠慮しなくて良いんだ。

 

「わかってるわ。ちゃんと伝わるもの。ありがとう」 

 

こんな感じで。

こういう性格の人は、本当に魅力的だと思う。

 

「・・・・・少し恥ずかしいわね」

 

あと褒められた時のちょっと照れた顔が素晴らしい。

ちょっと困り顔になるんだ。

それがめっっちゃ可愛い。

 

「・・・・・で、それはそうと言いたかったことあるんすけど」

 

「!」

 

今、樹里さんが露骨にビクッとしたな。

 

「俺以外の2人の罰ゲームはどうなってんすかね」

 

杜野さんは樹里さんの反応に隠れて影を薄めてやがる。

とりあえず樹里さんのを見せてもらうか。

 

「どういうシチュエーションにしようかしら?」

 

ここでピンポーン、と俺のボタンが目立つ音を鳴らした。

 

「はい太郎くん」

 

「メイド喫茶の樹里さんでお願いできないでしょうか」

 

「おい!?」

 

今、俺はめっちゃ頭下げてる。

だって見てぇだろ!

樹里さんが「萌え♡」とか言ってるの。

絶対可愛いだろ!

 

「採用よ!樹里、用意はいいかしら?」

 

「ちょ、夏葉!もうちょっとマシなやつ───」

 

()ゲームと言ったでしょう?さ、髪のセットから入るわよ!」

 

「ちょっ、おい!」

 

なんでお嬢がこんなに乗り気なんだろうか。

まぁ、俺よりお嬢の方が言葉の権力があるだろうし良いんだけどな。

 

「ここに偶然にもメイド服があるわ!これを着れば見た目はばっちりね!」

 

「俺外出とくんで、あとお願いします」

 

さっさと外に出ると、樹里さんの悲鳴がドアを貫通してきた。

他の4人は楽しそうにしてる。

イベント事は、準備が1番楽しいっていうしな。

樹里さんのメイド服・・・・・絶対可愛いっていう確信がある。

 

「太郎くーん!入っていいわよー!」

 

ほぼ反射でドアを開けた。

放クラの4人がニコニコしてる真ん中で、顔を真っ赤にして震えている樹里さんがいた。

 

「は、早く終わりにしろって!」

 

俺は静かに目を閉じて、拍手する。

今、自分の頬を涙か伝うのを感じた。

 

「お嬢」

 

「どうしたの?」

 

無言で親指を立てると、お嬢も同じポーズを返してきた。

 

「神はここにいた」

 

「照れるわ」

 

限界化しながらガッツポーズしていると、

 

「樹里ちゃん!写真撮っていーい?」

 

「バカ、おいやめろ!」

 

そんなやり取りが聞こえ、微笑ましいななんて思ったりする。

 

「樹里ちゃん、すっっごく似合ってますー!」

 

年相応に目をキラキラさせる小宮さん。

 

「や、やめろって」

 

小宮さん相手には言い方やら声の迫力やらが優しくなってた。

うん、ただただ良い子。

 

「樹里さん、反則でございます・・・・・」

 

落ち着いた声と喋りのペースだけど、大概杜野さんも胸を撃ち抜かれてるっぽい。

見えねぇから分かんねぇけど。

実は、俺は既に樹里さんを見ていなかった。

何故か。

 

「セリフはどうしようかしら」

 

「お嬢」

 

「どうしたの?」

 

「何であんなに胸元開いてんすか」

 

そう、ビビる程エロいのだ。

胸の辺りの露出が半端なかった。

俺が咄嗟に目を閉じたのは、限界化したのと見ないようにするための2つが理由だった。

(割合で言ったら半々な気もする。ただ、嬉しい気持ちと男としての配慮がせめぎ合ってるから、とにかくその2つが理由だ)

 

「私達も衣装着たりするけど、あんなものよ」

 

何!?

お嬢もああいう服着てたってことか!?

待てよ?283プロ所属ってことは・・・・・つまり鈴木さんもあんなことになる可能性があんのか!?

・・・・・まずいやら嬉しいやらもうわからん。

 

「とりあえず俺はもう樹里さん見れないんで、せめてセリフのオーダーしてもいいすか」

 

「そうね。他の3人ははしゃぎ過ぎてそれどころじゃないものね」

 

お嬢も決めようとしてたろうに、譲ってくれてありがてぇ。

 

「・・・・・でお願いします」

 

「えぇ?本当にそれでいいの?」

 

俺はこれが聞きてぇ。

 

「お願いします」

 

「わかったわ。樹里!」

 

名前を呼ばれた瞬間、またビクッとした樹里さんは、恐る恐るお嬢の要望を聞く。

 

「えぇ・・・・・アタシのキャラじゃねーんだけど・・・・・」

 

その後は、さっきもみくちゃにされて照れ疲れたのか、最初のように叫ぶような様子は見せなかった。

 

「じゃあお願い」

 

「小宮さん」

 

「はい?」

 

「いっくよー!凛世ちゃん、カウントお願い!」

 

「ちっくしょー!やってやらぁ!」

 

「樹里さんの、台詞まで・・・・・3・・・・・2───」

 

「ちゃんと首を傾げるのよ!」

 

「───1・・・・・どうぞ」

 

俺と放クラの4人は瞬きせず、耳をすました。

俺は目閉じてるけど。

 

 

 

 

 

『ご主人様、一緒に・・・・・寝よ?』

 

 

 

 

 

「ごはっ!」

 

「太郎くん!?」

 

「田中さん!?」

 

「田中くん!?」

 

「田中さま・・・・・!?」

 

思わず倒れそうになった俺を、お嬢が受け止めた。

小宮さん、園田さん、杜野さんも心配そうに駆け寄って様子を見てくれている。

そんな中俺はお嬢の目を見て、最後の力を振り絞って言った。

 

「後は・・・・・頼みます」

 

「太郎くん!?太郎くん!」

 

俺は今日、初めて知った。

あまりにも限界からぶっちぎると、気持ちを言語化できなくなるんだ。

普段限界化してる時は訳が違う。

これが・・・・・西城樹里の、潜在能力(ポテンシャル)───

 

「───とりあえず着替えさせるから、一旦外よ?」

 

「アッ、ソウスネ」

 

言われるがままにサササッと外に出た。

ていうか樹里さんは駆け寄ってくれなかったな。

なんて思いながら外に出てドアを閉める直前、樹里さんが小声で言った。

 

「ばーか」

 

えっ可愛い。

ドアを閉めると、放クラ5人でキャッキャし始める声が聞こえた。

 

「うーん・・・・・」

 

結論・283プロダクションはえげつねェな・・・・・

 

「こんなオチで良いのか?」

 

その後、時間も時間なので小学生の小宮さんのことも考え、俺たちは解散した。

後でムービー送ってもらお。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凛世にはやらせねぇのかよっ!!」

 

「急にどがんしたと!?」

 

 

 

 

 

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