原作設定あやふやな所もありますので、苦手な方はブラウザバックして頂けると幸いです。
僕は、生まれつき目が見えなかった。形は普通の人と同様に綺麗らしいが機能は一切していない。
それが原因なのかは分からないけれど、赤ん坊の時に、普通の人が寄りかからないような場所に捨てられていたようだ。
そして今に至るまで育ててくれた親であり、剣の師である男が忽然と消えていた。
当然、突如として消え去った親に対して僕の胸中は穏やかでない────────
「…ようやく、元の世界とやらに帰れたのでしょうか」
────なんて事はなかった。
物心ついた頃から、「儂はこの世界の人間じゃない!」が口癖の変わった人だった。子共心に「この人は頭がおかしいんじゃないだろうか?」と思っていた。
けれども、彼の言う元の世界とやらの事を、懐かしそうに話すその声色は、慈愛ともう元の世界に戻れない事を嘆くような哀愁を感じさせた。
傍から聞いた人なら妄言にしか聞こえない彼の話は、嘘では無いのだと思わせるには充分な語らいだった。
「では、僕もここを立つことにしましょうか」
目が見えない僕の為に、師はこの世界で僕の視界に光を灯す方法を必死に探し続けてくれていた。
師自身も今まで生きてきた世界と勝手が違うこの世界で、苦労も絶えなかったはずだろう。
僕としては、視界が戻っても戻らなくてもどちらでも良かった。というのも僕は視覚は不自由だが、聴覚、嗅覚と空間把握能力が優れていたので生活に労する事はなかった。
けれども師はそんな冷めた態度を感じとってこう言ったのだ。
「お前はこの世界を目で見て感じた事がないからそう思うんだ。朝の陽射しや星の輝き、包み込むような月の優しい光。お前は賢い子だから理解は出来るだろう。だが頭で理解する事と実際に目で見る光景は全然違うんだ。儂はこちらの美しい世界をお前に見せてあげたいんだよ」
熱の篭ったその言葉に何も言い返すことは無かった。師がここまで言うのだから、いつか視界が手に入った時に目にする世界に想いを馳せる事にした。
そして視界を得る可能性を、師は見つけてくれたのだ。
この世界の中心と呼ばれる迷宮都市オラリオ。そこに「あいてむめいかー」なる人物が居て様々な魔道具を作成しているらしい。
聞くところによると、神様とやらもそこいらにいるらしく師は「神が人の世にたくさん点在しているとはどういう事なんだ…?」と深く疑問に思っているようだ。元の世界では普通では無いらしい。
まぁ、百聞は一見にしかずと言うらしいので、師と別れる事になったらその地に行くことを決めていた。
別れの時までら剣術の稽古をつけてもらっていた。師は元の世界では剣聖などと呼ばれていたらしく、その名に恥じぬ剣術の使い手だった。
きっと視界が、十全だったとしてもおおよそ理解の追いつかない体捌きだったろう。
師に向けて放った本気の刃がいつの間にか手から消え去っていたり、かと思えば振り抜いた後に手元に戻っていたり…、狐につままれたような感覚だった。
師が刀を握ればピシャリと空気が張り詰め、どこか気の抜けた様相でも一部の隙もない佇まいは歴戦の猛者のようであった。
幸いな事に、僕の剣の腕前も非凡なものだったようで、師が去る直前には1本を取り、晴れて免許皆伝となった。
「お世話になりました」
そして今日、十数年間お世話になった小屋に別れを告げ迷宮都市オラリオに出立した。
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路銀を元にオラリオへ向かう。師から受け継いだ刀と杖替わりに稽古で使用していた木刀を杖代わりに北へと向かう。
実際、自分が歩く事で鳴る足音の響きで障害物やモンスターの位置が手に取る様に分かるので、杖は必要ではないのだが、こうしている方が何かと人と接する上で都合が良い事が多い。気を使って温情を受けられるなら願ったり叶ったりだ。
というのも、ここから約2ヶ月程かかるらしい。手持ちが心許ないので同情でもなんでも利用出来るものはしないとオラリオに着く前に力尽きてしまうだろう。
「あの人も、もう少し路銀を残しておいてくれたらなぁ…」
もう居ない師に向けて軽い愚痴を零しながらオラリオに旅立つのであった。
暇つぶしに描き始めました。不定期更新です。