1級冒険者ですが、コミュ障なのでソロとして頑張ってます 作:究極の闇に焼かれた男
1級冒険者であるアイン・スバルターの朝は早い。 毎日午前4時には起床し、身支度や朝食を済ませると先ず最初に自身の扱う武器の点検を行う。 毎朝欠かさずに武器を点検する事で後どれくらい使えるのか、そろそろ替え時かそうじゃないのかを確認し、クエストへ向かう為の準備を整えるのだ。
全ての準備を整えた後は午前7時に自宅を出てクエストに長時間潜ることを想定して市場へと向かい、必要な小道具や昼食用の食糧を何品か確保する。 これによりクエスト時に小腹が空いたり武器が刃こぼれを起こした場合に対応することが出来るのだ。
午前8〜9時頃、イフール・カウンターへと向かい、真剣に吟味しながらクエストを受注する。 毎回受けるクエストの数は一つのみにしている。 そうする事により受付嬢達が残業で少しでも苦しまずに済む様に配慮してのことである。 ただでさえ受付嬢という職業は安心安全且つ、福利厚生が確りしていて家のローンも組めるからといって、無遠慮にクエストを受けたりする冒険者がいれば受注書や報告書などの紙の山が積み重なり残業と化してしまう。 悪質なクレーマーや態度の悪い冒険者達に苦労し、多大なストレスを抱えている受付嬢達に追い打ちをかけない為にと考えての事である。
それ以降はクエストの内容やアインの気分次第で10時以降は毎回違うので割合させて貰う。
午後6〜7時頃、自宅へと帰宅。 お風呂に入り、晩御飯を食べ、歯磨きを済ませた後は寝巻きに着替えて最後に今日1日の出来事を綴った日誌を記入し、夜9時30頃になれば日誌の記入を終わらせ、ベッドに入り就寝する。
これがアインの基本的な1日の過ごし方である。
毎日同じ様な過ごし方をしているアインだが、本人としては変わり映えのしない毎日を楽しく過ごせて満足している。
ただ、少し不満があるとするのなら、それは自分がコミュ障な上に仲の良い友人が居ないという事である。
冒険者となった当初は友達作りを頑張ろうと意気込んでいたものの、極度のコミュ障であるアインは他人を前にすると緊張してしまい、時には自分が無意識に圧を飛ばしている事に薄々勘づいてはいるが一向に改善する事が出来ないのが現在の悩みである。 そのせいで周りに誤解を生むアインは少しでもコミュ障を改善する方法を模索している。
その為にアインが考えた方法、それはコミュ力の高い冒険者と関わる事だと普通に馬鹿じゃないだろうかと言いたくなる方法だった。
そんなアインが目を付けたコミュ力の高い冒険者、それは他でもない冒険者で最強と謳われる【白銀の剣】の面々であるのだが、持ち前のコミュ障により未だに話し掛ける事が出来ずにいた。
これはマズいと考えるものの、どうすれば良いのか悩んでいるアインに転機が訪れようとしていた。
それが何かと言うと…
「──あの…アインさん。 おはようなのです」
自分に挨拶をして来たのは、同じ冒険者にしてアインが目を付けていた白銀の剣の一員である桃色髪の少女【ルルリ・アシュフォード】だった。
この絶好のチャンスを前にアインの内心はと言うと、
(ど、どうしよう……何て挨拶すれば良いんだ!?)
思わぬ遭遇だったのか凄くテンパっていた。
ルルリside
私、ルルリ・アシュフォードは、現在ある冒険者と偶然にも遭遇を果たしていた。
(こ、こんな所でアインさんと出会うなんて思わなかったのです!?)
内心そう思いながら目の前に立っている鉄仮面を着けた冒険者こと、アインさんを前にして私は焦りに焦っていた。
「(こ、こういう時は挨拶するのです!?)あの……アインさん。 おはようなのです」
若干上擦った声で挨拶すると、私の声にアインさんは鉄仮面越しに視線を向けながら小さく頷き返してきた。
「…ああ、おはよう」
とても小さな声だったが挨拶を返して貰えた事に安堵する。
「アインさん、今日も1人何ですか?(って、凄く失礼な事を言ってしまったのです!?)」
「……まあ、な……そう言うルルリは、ジェイド達とは、一緒じゃないのか?」
「(あれ? 怒ってないのです?)はい、なのです。 ジェイド達は武器や防具の修理の為に武具屋に行って、私は1人で買い物の最中なのです」
「そうか……その……良ければ、俺も、買い物に同行させて貰えないだろうか?」
「え!?」
まさかのアインさんの言葉に、私は思わず目を見開いていたのです。
過去side
その日、ルルリ・アシュフォードは1人の英雄…否、死神と遭遇を果たした。
「──大丈夫、か…?」
そう言いながら、巨大な大鎌を担ぐボロ布のローブを羽織る鉄仮面を被った死神が聞いて来ると、ルルリは半ば無意識に叫んでいた。
みんなを助けて──
ルルリの言葉を聞いた死神は小さく頷き返すと、瀕死の重症を負っていた仲間達に手を翳しながら呪文を一つの唱えた。
「この者たちに癒しの風を──"祝福の宴"」
呪文を唱えた瞬間、ルルリは初めて本物の"奇跡"を目の当たりにした。 もはや虫の息と化していた仲間達の傷が癒え、片腕を無くしていた仲間も無くした筈の腕が元通りとなった。
欠損した身体の一部を完全に治すスキルなど聞いた事も無かったルルリは思わず死神に視線を向けると、死神は大鎌を手に自分達が対峙していたレイドボスを一太刀で両断する姿が映った。
レイドボスを倒した死神は大鎌を軽く振るうと、刃に付いた血を払い落として肩に担ぎ直すと鉄仮面越しにルルリに視線を向け、小さな声でただ一言、
「無事で良かった」
そう言い残して死神はルルリの横を通り過ぎて行った。
この出会いが後にルルリの運命を大きく変える切っ掛けになるとは、当時のルルリは知らずにいた。
面白かったり良かった点が御座いましたら、コメントの方をお願いします。